
ピーター・ティール氏が投資しているスタートアップの楽園『Próspera』(プロスぺラ)を取材するため日本人女性の私がホンジュラスまで行く件
これまでのブログと方向性が大きく変わるため、以前から読んでくださっている方々はびっくりするかもしれません。
今年の秋から約2ヵ月、私はホンジュラスのロアタン島に行ってきます。目的はいくつかありますが、1つは『Próspera』(プロスぺラ)という場所の取材です。
PrósperaはZEDEと呼ばれる経済特区であり、ピーター・ティール氏やバラジ・スリニヴァサン氏などアメリカのテック投資家たちが投資している実験都市です。
企業の税金や規制などの条件を徹底的に緩和しているため欧米各地からスタートアップ企業が集まっており、支持者の中には『次のシンガポールやドバイになる可能性がある』と期待する人もいます。
場所はホンジュラスのカリブ海リゾート島であるロアタン島の中ですが、主に運営しているのはアメリカ企業です。
『ピーター・ティール氏などアメリカの投資家が投資しているのに、アメリカではない場所にあるの?』というと、ここはリバタリアニズムと縁が深く(この後解説するので、リバタリアンのことを知らなくてもそこを読んでいただければ大丈夫です)
だからこそアメリカでは都市実験への反発も大きく存在し、より都市実験をしやすいホンジュラスが選ばれたのではと分析されることがあります。
ホンジュラスは発展途上国であり、欧米先進国に比べると住人の年収は低いです。Prósperaが設置されたことによりそこで働く現地人の雇用が生まれたのは事実で、Prósperaへ行くことによりビッグチャンスを獲得できる可能性も生まれているかと思います。
しかしPrósperaがホンジュラスで大歓迎されているかというと、実は『現代の植民地』と批判されるケースもあります。
ホンジュラスの国土にありながら独自の制度運営をしており、ある意味では島の中の小さな独立国家のような自治権を持っているからです。
反対派の意見は『自分たちの土地を裕福な欧米人が買って街を作るのはおかしい』というものです。
実際2022年のホンジュラス政権交代後、ホンジュラス政府はPrósperaについてZEDEの法律を撤廃しました。
Próspera側はこのホンジュラス政府の措置を違憲としており、アメリカ企業とホンジュラス政府の間で現在110億ドルに近い規模の国際裁判になっています。これはホンジュラスという国の年間予算の大半を占めるほどの金額です。
まだ決着はついていませんが、現在のホンジュラス政府には国際的に経済力を拡大したい動きがあることから、私個人としては最終的に何らかの妥協点が模索される可能性もあると考えています。
しかしそこについては私の今回の調査の外です。私はあくまでも『スタートアップ都市』『リバタリアニズム』『ビットコイン』の取材を目的として訪問予定です。
※本記事は現地取材前の執筆および公開であり、現地取材前の私個人の理解と調査に基づいて執筆しています。Próspera運営側の公式見解を代弁するものではありません。
なお、この記事は有料販売設定にさせていただいておりますが、Prósperaに関する記事部分は全て無料範囲で読めます。記事の有料範囲では私のPrósperaの取材スケジュールや背景の詳細を綴っています。
今回のホンジュラスへの航空券は往復で40万円。そのほか滞在費など。すべて自費で支払ったため、有料記事をご購入いただいた場合はその売り上げを取材費用に充てます。応援してくださる方、ご支援いただけますと本当に嬉しいです。
そしてこの記事を読んでPrósperaに興味を持ったスタートアップ企業やメディア様がございましたら、お気軽にご連絡ください。
Próspera(プロスぺラ)とはどういう場所か?
Prósperaとは、『スタートアップや起業家が活動しやすい都市をゼロから作ろう』というプロジェクトです。
都市の場所として選ばれたのは中米ホンジュラスにあるロアタン島という場所。カリブの綺麗な海があるリゾート島で、豪華クルーズ船も停泊します。訪れるのは欧米人観光客中心で、アジア人はほぼいないようです。
ロアタンへの日本人旅行者もネットで見る限りはごくわずか。行くとしても『日本からロアタンへ直接観光目的で行く』という人はおそらく珍しく、クルーズ船に乗っていて1日程度滞在するケース、もしくは環境ボランティアが多いのではないでしょうか。
Prósperaはホンジュラス国内にありますが、ZEDE制度のもとで高い自治権を持つ特別区域として設計されました。
誰がPróspera(プロスぺラ)を作ったのか?
中心となった人物はErick Brimen氏というベネズエラ出身の起業家です。
彼は『なぜ豊かな国と貧しい国があるのか?』という疑問を持ち、制度の違いが発展の差を生んでいるのではと考え、制度をゼロから作り上げる実験都市を目指しました。
Erick Brimen氏が個人で興したわけではなく、スタートアップ(企業)のプロジェクトです。
普通のスタートアップが作るものといえば、アプリ、AI、ソフトウェアなど。しかしPrósperaが作ろうとしているのは『都市そのもの』です。
何に特化している都市を作りたいのか?
Prósperaは会社設立、建築許可、医療規制、税制に柔軟で、従来の国家よりもっと早くできる仕組みのある都市を目指しています。
ビジネスをする人やパソコンがあれば自分で稼げる人向けの都市です(ただ、家族連れでも住めるように環境整備は始めています)
Prósperaは特に欧米テック業界の人々から高い注目を獲得しています。
なぜPróspera(プロスぺラ)は欧米テック業界から注目されているのか?
理由はシンプルで、欧米テック業界の人たちは『ソフトウェアは進化したのに政府は進化していない』と考える人が多い傾向があるからです。
特にビットコインへの先進国の規制の厳しさは否定的に見られやすいことの1つですが、Prósperaはビットコインや暗号資産に友好的な制度を採用しており、ビットコインにかかる税金も最小限です。
Prósperaを支援している有名人で日本でも知られているのは、ピーター・ティール氏、そしてバラジ・スリニヴァサン氏です。
まだ新しい実験都市なので、『成功したか失敗したか』という段階ではなく、『新しい都市や制度は作れるのか?』という実験を現在進行形でしている場所と捉えてください。
Próspera(プロスぺラ)はなぜスタートアップの楽園なのか?
Próspera支持者は、Prósperaのことを『スタートアップの楽園』と表現することがあります。その理由は、主に以下の4つです。
起業に必要な手続きが少ない
規制の少ない実験環境
世界中から人材が集まる
『制度そのもの』をスタートアップ
1. 起業に必要な手続きが少ない
日本を含む多くの国では、会社設立や事業開始のためには複雑な準備や手続きが必要です。
起業を決めてから早くて数週間。数ヵ月かかってしまうことも珍しくありません。起業のためにすごくお金がかかることも。その時間をもっと短縮できたり気軽に起業できたりすれば挑戦できる人はどんどん増えるでしょう。
Prósperaは起業しやすい環境を重視していて、手続きの簡素化を強みとしています。
2. 規制の少ない実験環境
スタートアップにとって厄介なことの1つは、規制です。
安全や消費者保護のために規制が重要であることは確かですが、新しい技術は既存の制度と衝突してしまうことが多いです。
Prósperaでは以下について、規制の部分で柔軟であることを目指しています。
デジタルサービス
バイオテクノロジー
フィンテック
リモートワーク関連事業
そのため、『まずは試してみる!』ということが簡単にできるようになります。
社会を変えるレベルの大きな成功は失敗を繰り返さずに生まれる可能性はほぼありませんが、どこの先進国も規制が厳しい分野が多いので気軽にトライ&エラーを繰り返すハードルは高い傾向があります。
『失敗しづらい』というのは日本の専売特許のようでいて、実は大なり小なり欧米先進国でも存在します。
『新しいものを生み出したい人々』(ピーター・ティール氏のゼロトゥワンという本で語られているような価値観の世界に生きる人々)の成長の足を引っ張りやすいのは事実です。
Prósperaはスタートアップへの規制をできるだけ排除していることから新しいことに挑戦できる環境であり、表現を変えると先進国の人が自国では規制が理由でできなかったことができる場所として機能することがあります。
例えばPrósperaに実際に存在するバイオ企業では、自国ではできない内容の治験を行っているケースがあります。
3. 世界中から人材が集まる
Prósperaには現在世界中から人材が集まっています。とはいっても事務職だった人や調理師など幅広い立場の人が移住しているわけではなく、だいたい以下に該当する人が多いです。
起業家
ソフトウェアエンジニア
投資家
デジタルノマド
そして基本ベースはリバタリアン寄りの考え方をしていると思っていいでしょう(リバタリアニズムについては後述します)
ちなみにPrósperaにこの分野の人々が集まることは、かつてシリコンバレーが成功した理由の一部と共通しています。
つまり、ある程度所属分野が共通している優秀な人材が同じ場所に集まるということ。情報交換、共同創業、投資機会がどんどん生まれやすくなります。
4. 『制度そのもの』をスタートアップ
Prósperaのユニークなポイントは、『制度そのもの』をスタートアップしていることです。
スタートアップといえば、これまでの常識ではアプリやサービスを作って売って利益を得ます。
しかしPrósperaは、『都市や制度そのものを再設計』しようとしています。『政府サービスも競争やイノベーションの対象になる』という思想が土台にあります。
テック業界の方やビットコインがお好きな方は『The Network State』という本をご存じかもしれません。
先ほど名前が挙がったバラジ・スリニヴァサン氏の著書で、オンラインコミュニティが広がって物理的な領土を獲得して国家となる構想を述べています。
Prósperaは『The Network State』の思想と共通していて、『The Network State』はリバタリアンの愛読書でもあります。
Prósperaがリバタリアンの都市と呼ばれる理由も見えてきます。
Próspera(プロスぺラ)を理解するためのリバタリアニズム
Prósperaはリバタリアンの思想(リバタリアニズム)がベースにある都市です。
リバタリアニズムとは、自由至上主義のことを指します。
個人の自由、所有権を至上の価値に置き、国家(政府)の介入を極力排除すべきだと考える政治哲学です。
ただし、前提として『他者の権利を侵害しない限りは』という言葉も含まれるので、傍若無人に暴れていいということではありません。
基本的には、『必要最小限の国家』という方向性です。
これは何も規制しない自由という意味ではありません。そこは誤解されやすい部分であり、リバタリアンの中にはそこを誤解されることに抵抗感を抱く方もいます。
現代のリバタリアンは主に欧米の高学歴エリート的な経歴を持つ活動家が多い印象ですが、これはやはりリバタリアン思想が成功した社会で利益を受けるには、『物事を選ぶ(決めるための)知性がないと困る』というのがあります。
リバタリアンの超理想世界観になった場合、知性や行動力がある人はどんどん伸びていけます。つまり個人の伸びを阻む社会的な天井はなくなるということ。
ただ、リバタリアニズムへの反対派が反対材料として挙げるのは『持たない者はどうすればいいの?』ということです。
自分で選択できるだけの知性や主体性を持てない人やコネがない人、行動できない人は、政府が介入する環境よりどん底になるリスクがあると考えるからです。
『リバタリアニズム』については日本ではまだあまり馴染みのない概念ですが、アメリカのテックエリートの一部はこの思想を肯定していたり、自身がリバタリアンであることを公表していたりします。
リバタリアンの考え方を、かいつまんでとても簡単に説明します。
まず、人間が生きていくうえでは『国家』が必要というのが、古代から守り続けてきた多くの人が疑わない『常識』です。
『同じ国の仲間』という意識のもと、『日本人』『ドイツ人』などの国籍の概念(同郷の概念)が成立します。
そして『日本市場』『ドイツ市場』といったものも、国家という枠を前提に成立します。
では国家とは何かというと、まず第一に政府です。
では、政府とは何でしょうか?
法律、治安維持、税金の設定etc
リバタリアンはこれら(政府というより政府が管理する項目)について、『本当に全部必要?』という考え方をします。
例えば法人税。『これっている?』
例えばビットコインの税金。日本は最大で55%にもなりますが、『ビットコインにかかる税金って、いる?』
例えば法定通貨。日本は日本円、EU加盟国の多くはユーロ、アメリカはアメリカドルですが、『仮想通貨を使いたい人は使えばいいよね?』
例えば学校教育や警察の仕組みなどのインフラは国家(政府)が作り上げて管理しますが、『学校も警察組織も民間企業で良くない?利用者が自分の好きなものを、自分の意志で選べばいいよね?』
(※この防衛や治安維持の部分についてはリバタリアニズムの中でも極端な意見ではあるので、リバタリアンの中でも見解が異なるのでご注意ください)
例えば国保のような制度。『国保や社会保険は契約する保険会社を自分で選べばよくない?入らなくても大丈夫と思う人は入らない自由があってもいいよね?』
超簡単にいってしまえば、これがリバタリアンの考え方です。
ただしリバタリアンにも様々なバリエーションがあり、『国家なんていらない!』と激しく主張する人もいれば、『国家を利用する(つまり今の時代で完全に国家が消えることを望んではいない)』という人もいます。
一般的に後者の国家利用的やり方に該当するのが『テクノリバタリアン』と呼ばれる層で、ピーター・ティール氏はこれに該当します。
そして日本人にお馴染みのイーロン・マスク氏については、彼自身がリバタリアンだと主張しているというよりは発言や思想から『テクノリバタリアン的』と表現されることが多い人物です。
いずれにせよ、シリコンバレーで『テクノリバタリアン』というキーワードを出せばこの2人は真っ先にイメージされやすいでしょう。
しかし日本で彼らを『テクノリバタリアン』として見る人は、かなりの少数派になるのではないでしょうか。
繰り返しますが、日本ではリバタリアン思想が浸透していないというか、概念すら知られていないからです。
リバタリアン思想は欧米でも否定派は決して少なくないです。そして日本の市場価値観や日本人の気質からすれば異質に見えやすく、おそらく日本で『自分はリバタリアンだ』と主張する活動家がいても多くの場合で『それっておかしいのでは?』と否定意見を述べられる可能性が高いのではないかと。
それはリバタリアン思想がどうかというよりも、『日本の和をもって尊し』の精神や、根回し文化や、出る杭は打たれやすい社会の中ではなかなか浸透するのが難しい考え方だからです。
しかし、国際情勢が荒れている今の世の中を読み解くためにはリバタリアン思想の理解は大切でしょう。
これからの時代を生きるなら、時にアメリカのテック業界の著名人のリバタリアニズムや、あとは完全リバタリアンではなくてもアメリカの経済関係者は『市場を自由に』的なリバタリアンと共通する考え方をする人もいるので、日本人も知っておくべき、学ぶべきと、私は考えています。
さて、ちなみに私は自身のことをテクノリバタリアン寄りだと考えています。それがPrósperaに惹かれた理由でもあり、自分の進路を決定づけた要素でもあります。
Próspera(プロスぺラ)には否定的な意見も存在する
日本人はほぼ知らないPrósperaについて、このブログが公開してすぐにたどり着いた方は日本国内ではかなり早くからここを知ることができた側に入るでしょう。
Prósperaは欧米テック関係者やシリコンバレー文脈で非常に注目されている一方で、国家主権、民主的統治、地元の人々との関係を巡って批判も受けています。
欧米メディアはリベラルや右派などスタンスが明確であることが多いので、Prósperaについて書くときはその媒体の方針で扱い方が変わることが結構あります。
Próspera否定派の欧米メディアは、『富裕層の遊び場』といったような辛辣なことを書くケースがあります。
これはPrósperaで今、投資が活発に行われており、欧米富裕層の影響が強いからです。
Próspera(プロスぺラ)にビットコイナーが集まる理由とは?
欧米メディアでは、Prósperaはビットコインと関連して語られることがよくあります。実際Prósperaの住人と公表している人でビットコインの仕事をしていたり、ビットコイナーであるとプロフィールに記載していたりする人は多いです。
ビットコインとPrósperaは思想的親和性が非常に高いからです。
ビットコインとはそもそも何かというと、『政府や中央銀行に依存しないお金』であることを目指して作られたものです。
その一方でPrósperaは『従来の国家システム以外の制度は作れるのか』という実験をしている場所です。
つまりビットコインもPrósperaも、どちらも『既存システムを前提にしない』という共通点を持っています。
Próspera(プロスぺラ)はビットコインに友好的
Prósperaは2022年にビットコインや暗号資産を受け入れる制度を導入して、暗号資産関連のイノベーションを積極的に認めてきました。
Próspera内でのビットコイン決済を可能にし、ビットコインATMもあります。
暗号資産企業もあり、ビットコイン建て会計も導入しやすいです。
『Bitcoin Citadel』との親和性(ただしPrósperaに住む皆がビットコイナーというわけではない)
ビットコインコミュニティには昔から、『Bitcoin Citadel』(ビットコインシタデル)という理想概念が存在しています。
ビットコインが法定通貨並みに普及する時代が到来した未来で、初期からのビットコイン保有者が外部と離れて暮らすための、要塞化された巨大なコミュニティや居住区を指す概念です。
熱心なビットコイン信者のコミュニティで語られていますが、ビットコイナーの全員が全員Bitcoin Citadelを求めているわけではありません。
Bitcoin Citadelは終末論的な文脈と絡んで語られることも多く、SF映画や小説的な要素もあるので、これを好んでいるかはビットコイン大口所有者でも本当に人によります。
どこまでの水準を望むかは置いておいて、初期からのビットコイナーは『ビットコイン経済圏だけで暮らせる都市』を作りたいと考える層がいます。
おわかりでしょうか?
彼らの視点だとPrósperaというのは相性が良い場所であり、その候補地の1つとして見られることがあるのです。
実際にロアタンではビットコイン教育活動や店舗での利用促進も行われています。
誤解しないでほしいのはPrósperaの住人=全員がビットコイン専門家ではありません。
ビットコインに興味がない人もいるでしょう。Prósperaの概念と相性が良く親和性が高いのでビットコイナーが集まりやすいということです。
ビットコイナーは国境を越えて活動する人が多い
ビットコインは今のところ投資であり、法定通貨しか信じられない人、投資が怖い人には購入しづらいものであることから、必然的にそこに挑める価値観の人々がたくさん所有します。
リモートワーカー、起業家、投資家、ソフトウェア開発者のビットコイナーは多い傾向があるでしょう。
Prósperaはこれらの属性の方々が住みやすい環境であり、必然的にビットコイナーが集まりやすい環境だともいえます。
繰り返しますが、Prósperaの住人の全員がビットコインの専門家というわけではありません。
『スタートアップ+ビットコイン+リバタリアニズム』が混ざった独特の文化が形成されているといったほうがいいでしょう。
なお、ビットコインの国際フォーラムでスピーカーをやるくらい影響力のある専門家でPrósperaに住んでいる人たちもいます。
そういう意味では、『ビットコイナー』の人脈が欲しい人には行くべき場所であるといえるかもしれません。
日本のスタートアップのビジネスチャンスとPróspera
日本のテック関係者でも、Prósperaについて知らなかった方はいるでしょう。
その理由は、場所が遠いこともあると思います。
現地で主に使われている言語は英語とスペイン語です。
日本のスタートアップは日本国内市場だけでも完結できることが多く、嫌な言い方をすると『世界を変える何かを作ろう』という野心を全面に押し出す起業家は少ない印象です。
内側にはその熱意を秘めているかもしれませんが、日本から世界を目指すハードルはこのオンライン時代でも意外に高いでしょう。
そしてやっぱり日本国内だけで完結できてしまうという点が、『外を目指そう』という意識を育ちづらくしている部分はあると、個人的には思います。
実はPrósperaでは、現地に住まなくても登記できます。これはヨーロッパトップクラスのIT先進国であるエストニアの電子政府に近いものがあります。住まなくても起業できて住人登録できるというシステムです。
では、わざわざPrósperaで日本企業が登記したとしてメリットがあるかというと、世界に出たいならメリットがある可能性は十分にあります。
Prósperaのコミュニティの一員になることで得られるコネクションやビジネスの機会はとても大きいでしょう。それは多くの場合で日本国内向けの機会ではなく、日本の外に向ける場合に強みになりやすいもののはずなので、合うか合わないかは目的によるかと思います。
しかしその機会を、オンライン上で登記しただけの日本のスタートアップが得られるかどうかはわかりません。
行ってこそ、直に関わってこそ得られるものがあるからです。
私は今年の秋にロアタンに長めに滞在し、Prósperaへ行ってくるので、そのレポートも行います。
Prósperaに興味を持ったテック関係者の方、起業家の方、投資家の方、ぜひレポートを参考にしてください。
日本人女性・小説家の私がなぜPróspera(プロスぺラ)を取材するのか?
私はライティングの仕事経験者ですが、特定のメディアに所属したことは一度もありません。
しかし書くためにホンジュラスまで行きます。
私のかつてのキャリアは本当に普通のもので、帰国子女でもなんでもなく、初めてヨーロッパに行った時点では英語はまったく喋れませんでした。多分、一生懸命英語の勉強しました。
かつては日本で普通にフリーランスのライターとしてWEB記事(全然テックではない分野)を書いたり、兼業で事務職をしたりしていました。
そんな生活の傍ら、小説家として活動を始めるようになりました。
現在商業連載中の作品は1作品です。その小説を書き始めたのは数年前ですが、伏線になったなと感じます。
その小説はAIをテーマにしたサスペンスです。
私は今、AI危機予測システムというものを独自開発しています。
その名の通りAIベースで危機を予測するためのシステムで、例えば暴動などが起こる前にそのリスクを警告します。
起きてから食い止めるためのシステムではなく、起きる前に兆候を発見して警告し、守るためのシステムです。
AI危機予測システムという分野で日本にてよく知られているのは、Palantir(パランティア)かもしれません。
パランティアの創業者はピーター・ティール氏。決してAI危機予測システムだけの会社ではありませんが、ピーター・ティール氏は現在AI危機予測システムの開発に力を入れているため、パランティアもそのイメージで見られることがあります。
さて、ずっとSF小説を書いていたので興味を持ってはいたものの全然別業種だった私がAI危機予測システム開発に転身した背景を語ると、『リバタリアン思想』との出会いがありました。
一昨年と昨年。私は合計1年ちょっとの期間をかけてヨーロッパ15ヵ国に滞在しました。ドイツ、オランダ、北マケドニアは住みました。
その旅の中で、私は日本では聞いたこともなかったリバタリアニズムと出会い、最初は警戒というか疑う気持ちもありました。
しかし興味を持ち、知れば知るほど、『私は概念を知らないから認識していなかっただけで、もともとリバタリアンなのでは』と気づきました。
私の処女作は、文明が一部崩壊し企業が統治するようになった未来ヨーロッパ、ポーランドのブロツワフを舞台に、傭兵主人公が暴力と才能を武器に成功していく物語でした。
その作品で自分が書いていた世界観が、まさにリバタリアンが理想とする世界だったのです。
これにはびっくりしました。概念を知らなかった時代からこれを書いていたのかと。
この作品は新人賞の高次選考に残り、私がヨーロッパへ向かうきっかけも作ったので(最初、私は日本生まれ育ちの日本人作家の中で一番リアルにヨーロッパのコミュニケーションや空気感を描写できる作家になりたくてヨーロッパへ行った)
結果的に今の私にも影響を与えているかもしれません。
リバタリアンに興味を持ち、最初はAI倫理(AI関連の法律やルールの構造設計をするほうの分野)に興味を持ちましたが、勉強しているうちにどんどんAI危機予測システムに惹かれました。
リバタリアニズム否定派が主張するのは、純リバタリアンの理想世界では警察機関も民間になるため、市場が崩壊した場合どうなる?暴力が支配するよね?という意見です。
大きな危機の際、国家が運営する警察や軍は規律を維持できますが、民間にそれができるのか?と疑問を持っているということです。
これらが機能しなくなった場合、武器を多く持つ人だけが生き残ることになります。
リバタリアンは従来の国家の常識を疑ったり、概念を新しくすべきといった主張を行ったりするので、マイルドではない人が活動家として注目されることがあります。
すなわち言葉が過激な活動家が人気になることがあります。
それで『暴力的』と受け取られることがあるのですが、私は思ったのです。
『武器が多い者が勝つ』→それは、まあそうなった社会ではそうだ。
しかし、『それって本当にそうなのですか?』と。
その『武器が多い者が勝つ』というのはだいぶ大昔から存在する考え方なので、ここまでテック業界が発展して、テクノリバタリアンが主導権を持つようになった現代なら解決できるよなと。
要するに、私は『リバタリアン反対派が懸念する民間インフラの崩壊を防ぐ仕組みが実現すればその問題って解決するんじゃない?』と、考えました。
『市場が崩壊して暴動が起きるとしても、それを事前に食い止めて鎮圧できれば解決できるよね?』ということです。
ではどうやって事前に食い止めるの?→AIをベースにした危機予測システムを使います。
私は、私が独自開発中のこのAI危機予測システムを『エイラシステム』(Eira System)と名付けています。
エイラシステムは、予測市場(これについてもまたブログで書きます)×ビットコイン市場×感情変数を組み込んで危機を予測します。
プロトタイプ設計中の今は感情変数を設定するためのトライ&エラーを繰り返しているところです。
AI危機予測システムはシリコンバレーではもはや別に珍しい発想でもなんでもないですが、感情変数をAI危機予測システムに入れたいというのはシリコンバレーでも珍しい側です。
メンタルケアの分野では感情分析AIは既に研究されていますが、個人のメンタル状態を扱う場合と、社会全体の危機予測に感情変数を応用する場合では難しさが大きく異なります。
なぜなら、感情とは何?
という話になるからです。
まったく同じ出来事を経験しても、その個人によって感情がどう変化するか反応は異なります。そして感情は時間も変数になって、外部からの影響が何もなくても変わってしまいます。
データとして非常に難しく、今の常識では論理的な数字データのほうがAI危機予測システムの世界では重視されています。
しかし私は、独自で作り上げた感情変数をシステムに組み込むことを目指しています。
そしてこれはおそらく日本での開発は難しいだろうと、私は考えています。とはいえEUならこれを好むかというと、難しい部分もあります。なぜならEUは福祉や権利保護を重視する方向性が土台にあるため、ここに関係してくるAI活用には慎重な側面があります。
実装するための教育環境や信用、コミュニティが完成されているという点ではEUは世界最強クラスであり、世界を対象とするAI危機予測システムを作りたいなら行く価値はあります。
しかし私個人としては、その先のシミュレーションに今、最も適している場所はEUでも他の場所でもなくPrósperaだと考えています。
私は今年Prósperaに行き、テック業界の自由な実験・挑戦が可能な最先端の環境を見てきて、自分のために吸収したいです。
そして2028年秋からヨーロッパの大学へ留学したいと計画しています。目的はエイラシステムを社会に向けるための土台作り。ヨーロッパで仲間を見つけたいです。
2028年と、結構先になっている理由ですが、今年の旅費で私はヨーロッパへの留学費用(多分2年分の学費)を使ってしまい。
帰国後、1年ちょっとほどお金を貯める必要があります。
留学時期を延ばしても、私はPrósperaに行くことにしました。
さて、以下からようやく有料部分です。
このPrósperaの取材旅の工程やちょっとした小ネタなどをつづっておりますが、Prósperaに関する基本情報はここまでの無料部分で全て書いたので、Prósperaについて知りたい方でも購入の必要はありません。
もしもこの記事を購入していただける場合、売り上げはPrósperaの取材費(滞在で使うお金など)に充てます。
それを踏まえてご購入していただけますととても喜びます。
ちなみにPrósperaについて書いてほしいメディア様や、Prósperaのことを知りたい起業家の方などいらっしゃいましたらお気軽にお問い合わせください。
私自身は起業家ではなくテックビジネスをしている人でもないので、そういうネットワークではお役に立てないと明記しておきますが、何かお役に立てることはあるかもしれません。
ではでは。ここまでですでに1万2千文字となっております。お読みいただきありがとうございました。