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この秘密を共有するならあいつに【ショートショート】

    拾ったトカゲに羽が生えた。
    「お前、ただのトカゲじゃなかったのか?」
    問いかけても答えは返ってこない。

    ネットで調べてみても、それらしいものは出てこなかった。SNSに写真を載せてみても、どうせAIだと思われて終わりだろう。

    ふと、あいつのことが思い浮かんだ。

    いや、本当はこいつを拾った時からずっと浮かんでいた。
    LINEの履歴を遡って懐かしい名前を探す。

    『今から家行ってもいい?』

    思ったよりすぐに返事がきた。
    虫かごにトカゲを入れて、3軒となりの家に向かう。

    「急にどうしたんだよ」
    「ちょっとみてほしいものがあってさ。上がっていいか?」

    何年振りだろう。
    二階へと向かう階段も低くなったように感じる。

    「みてほしいものって?」
    「こいつなんだけどさ」

    部屋につくなり、虫かごからトカゲを取り出してみせた。

    「こいつ...裏山で捕まえたのか?」

    驚いてはいるようだけど、飲み込みが早い。

    「そう、昔よく遊んでたところ」

    それっきり、何か考え込むようにずっと羽の生えたトカゲを見つめていた。
    そういう反応も無理はない。
    僕も黙って次の言葉を待つ。

    しかし、黙ったまま立ち上がったと思ったら、押し入れをゆっくりと開けた。
    出てきたのは、羽の生えたトカゲ。
    というより、もう小さなドラゴンと言った方がいい。

    「そいつは...こいつと同じなのか?」

    「おそらくな。俺が5年前に拾った時もそれと同じ見た目だった」
    「5年前って...お前中1の時からずっと育ててたってことか?」
    「そうだ。でも、あれから何度も裏山を探したが、こいつ以外の個体を見たのは初めてだ」
    「そいつ、ドラゴンなのか?」
    「いや、分からない。こいつのことを話したのは、お前が初めてだし。調べてもそれらしいものは出てこなかったから」

    5年間、誰にも言わずに未知の生き物を育てる。そういうやつだとは思っていたけど、実際そうだとやはり驚く。

    「俺が拾った時は、ただのトカゲだった。今朝起きたら羽が生えてたんだ」

    そういうと、顔つきが変わった。

    「拾った時は生えてなかったのか?羽が?」

    ぐっと顔を寄せてくる。
    圧に押されて、コクリと頷く。

    「それは考えたことがなかった。もしかしたら、裏山のトカゲは後発的に羽が生える可能性があるのか。今までは羽が生えた個体を探していたが、ただのトカゲから羽が生えるなら...今日、このあと時間あるか?」

    裏山に行くんだろう。
    僕だってそうしたい。
    でも今はサッカーも大事な時期だし...

    「明日の午後なら空いてるんだけど」

    「分かった。じゃあひとまず今日は一人で行って普通のトカゲを何匹か捕まえてみよう。明日は待ってるから、準備できたらいつでも来てくれ」

    そう、こういうやつだ。

    「あと、お前の家に消火器はあるか?」

    「...消火器?なんで」

    「こいつ、たまに火を吹くんだ。今後も飼うつもりなら、もしもの時のために備えておいた方がいい」

    「帰ったら確認しておくよ」

    やはり、僕一人で抱え込むには荷が重い秘密だった。

     
     
    ちょっとした思いつきを物語に、小さな日常をエッセイにしています。 ショートショート|エッセイ|動物|古着 1999年生まれ。妻と息子と3人暮らし。

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