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【読書感想文】村田沙耶香『世界99(上)』人に合わせて生きるという選択

    私は60歳になった今でも、まだ、この世界を生きていくのに必要な考え方を模索しています。

    村田沙耶香さんの考え方は、普通とちがうけれど、なんだか真理のような気がして、新刊が出るたびに読んでしまいます。

    村田沙耶香さんの独特な世界観(=「クレイジー沙耶香」とも称される常識を揺さぶる作風)を代表する作品を5つ紹介します。

    1. 『コンビニ人間』
      18年間コンビニでアルバイトを続ける女性を通じ、社会における「普通」という概念の不気味さを浮き彫りにした芥川賞受賞作。

    2. 『地球星人』
      社会を「人間を生産する工場」と捉える主人公が、洗脳された地球人としての生き方を拒絶し、常識や倫理の彼方へ突き進む衝撃作。

    3. 『殺人出産』
      「10人産めば、1人殺してもいい」という狂気的な制度が施行された近未来を描き、命の価値と倫理観を問い直すディストピア小説。

    4. 『消滅世界』
      セックスが忌避され人工授精が当たり前になった世界を舞台に、「家族」や「夫婦」の定義を根底から覆す物語。

    5. 『しろいろの街の、その骨の体温の』
      ニュータウンの学校という閉鎖的な空間で繰り広げられるスクールカーストと、思春期特有の残酷さを痛々しいほど鮮烈に描いた三島由紀夫賞受賞作。

    この5冊どれも怖かったです。
    ぜんぶ震えながら、読みました。

    倫理的に人間としてどうか、と思う価値観なのに、その気持ちがわかる気がする私もどうかしているのか、という怖さがあります。

    そんな村田沙耶香さんの2025年3月刊行の『世界99(上)』について感想をメモしておきます。
    長編なので、(下)については、また次回にします。

    まず、主人公の空子さんは、10歳のころから人に合わせる子どもでした。

    「意志を持て」と言われても、身構えてしまう

    「もっと自分の意見を言ったほうがいいよ」
    「合わせてばかりじゃ損をするよ」

    そんな言葉を、親切で言う人は少なくありません。

    それでも正直なところ、空子さんはよく思います。
    できれば人と争わずに生きたい。


    波風を立てず、その場が穏やかに終わるなら、それでいいのではないか、と。

    その結果、空子さんは、人に合わせて、自分を分裂させる生き方を選んでしまいます。


    人はまず「安全」を選ぶ生き物


    作品の中で、空子さんはこう言います。

    「私に意志なんてない。危険を回避して安全に生きていくこと。誰とも摩擦を起こさず、ただただ、楽に生き延びること」

    空子さんの言葉は、投げやりに聞こえるかもしれません。
    でも、よく考えると、とても自然な感覚でもあります。

    知らない場所では慎重になるし、空気が張りつめている場では、つい言葉を選びますよね。

    それは意志が弱いからではないのです。
    人が生き延びるために身につけてきた本能なのだと思います。

    高校、大学と成長するにつれて、空子さんの世界は、出会った相手に合わせてどんどん分裂していきます。


    私だって、つい人に合わせてしまう

    たとえば、みんなで食事に行くとき。
    本当は別のお店がいいな、と思っていても、
    私はたいてい誰かが決めた案に「それでいいよ」と言ってしまうタイプです。

    後から後悔することもあります。
    でも同時に、その場の空気が壊れなかったことに、ほっとする自分もいます。

    「合わせる=自分がない」とは限りません。
    私はその場を穏やかに保つ選択をしているだけなのかもしれません。
    そういう私なので、空子さんの気持ちもわかる、と思いつつ読み進めます。

    しかし、空子さんの合わせ方は徹底的です。
    35歳になったとき、空子さんの世界はくっきり3つに分かれていました。

    世界① 小学校時代からの地元の友達
    世界② 大学以降のセレブな知り合い
    世界③ こだわりをもった意識の高い人々

    それぞれに合わせてふるまう空子さんは、もう一人の人間とは思えません。


    「ただ生き延びる」から始まる生き方

    夢や目標をはっきり決めている人を見ると、少しまぶしくて、羨ましく感じることがあります。

    でも、誰もが同じように強い意志を持てるわけではありません。

    今日は無事に終わった。
    大きな衝突もなかった。

    それだけで十分な日も、確かにあります。

    「ただ楽に生き延びる」
    そう思う自分を、責めなくてもいいのではないか。

    そんなふうに考えて、空子さんを見守っていた私ですが、(上)の終盤に来て、とうとう世界は99に分裂してしまいます。

    救いはあるのでしょうか。
    驚愕の(下)に続きます。


    noteの世界で分裂して

    この本は、半年前に読んでいたのですが、改めて感想をまとめようと思ったのは、私がnoteの世界で分裂しそうだからです。

    いろんなnoteの歩き方があって、どれも間違いじゃない、と思います。
    じゃあ、私はどう進む? 
    空子さんスタイルの先には絶望の未来しかないのに?

    今すぐ答えは出せません。
    (下)の感想をまとめたら、考えてみたいと思います。

    みなさまも村田沙耶香さんの怖い世界、一度のぞいてみてはいかがでしょうか。

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