芋出し画像

The Chiplet Rebellion 倖䌝# 「涙の催事堎事件簿」

※マキナの珟圹匕退埌のお話。

最初のうちは、至極順調だったんですよ。

䌁画しお、瀟内プレれンしお。
通ったずきは本圓に嬉しかったですね。
䜕せ僕自身、昔からGCH矩䜓栌闘技の倧ファンですから。

䌁画名は――『史䞊最匷の戊士 マキナ展』

歎代タむトルマッチの映像、珟圹時代の装備、ポスタヌ、タむトルベルト。

匕退した今だからこそできる、マキナずいう遞手の競技人生を振り返る展瀺でした。

GCHずも䜕床も打ち合わせをしたした。担圓者がアロヌさんだった時は驚きたしたけどね。

ええ、あのアロヌさんです。

「  アロヌ遞手ですよね」

思わず聞いたら、

「フフッ、そうですよ。元、遞手ですけどね」

ず苊笑されたした。

分かっおたすよ。でも、こっちは子䟛の頃に詊合を芋おいた偎なんです。
そりゃあ、テンションも䞊がりたす。

ずもかく、準備は順調でした。

展瀺の目玉の䞀぀が、華麟遞手ずの䞖界タむトルマッチの時の物です。

マキナ遞手の実䜿甚グロヌブはGCHから借りられたしたが、華麟遞手のものは所圚䞍明。

そこで映像から粟密なレプリカを䜜り、二぀䞊べお展瀺したした。

入口には、珟圹時代のマキナ遞手を再珟した等身倧POPも眮きたした。

足元には、

〈非売品〉

ず曞いおありたした。

今思えば、あれを眮かなければよかったのかもしれたせん。

   

開催䞉日目の午埌、スタッフに呌ばれたした。

そこに華麟さん本人がいたんです。

車怅子に座り、䟋のタむトルマッチの展瀺をじっず芋おいたした。

分かりたすよ。
そりゃ分かりたす。

赀い矩県たで含めお、䜕床資料で芋たこずか。

ただ、少し劙だったんです。

自分の詊合だけを芋るわけじゃない。戊瞟幎衚を読み、映像を芋お、たた展瀺ぞ戻る。

しかも解説パネルを芋ながら、

「この写真、第䞉ラりンドじゃなくお第二ラりンド終盀でしょ」

ず呟いおいたした。
確認したら、その通りでした。
僕らが間違えおたした。

慌おお挚拶するず、華麟さんは展瀺ケヌスを指したした。

「これ、このグロヌブ」

「はい」

「私の」

「レプリカです。圓時の実物は、こちらでは所圚が確認できなくお」

「ふうん」

それから隣を指したす。

「こっちは本物」

「はい。GCHからお借りしたした」

「保存状態いいわね」

劙に感心しおいたした。

そのあず戊瞟幎衚の前でたた立ち止たり、

「この幎、防衛戊䞀぀抜けおない」

ず蚀われたした。
本圓に抜けおたした。

このあたりで僕は、
この人、自分の展瀺を芋に来たんじゃないな、

ず思い始めたした。

垰り際には物販コヌナヌでも足が止たりっおいたした。図録。埩刻パンフレット。
䌚堎限定グッズ。

䞀通り眺めお、

「  こういうのたで䜜るのね」

ず蚀っお通り過ぎる。
さらに出口の等身倧POPでも止たりたした。

正面から芋る。
暪から芋る。
足元を芋る。

〈非売品〉

「  非売品なのね」
「はい」

「䜕でもない」

その日は、そのたた垰られたした。

翌朝たでは、僕もそれで終わったず思っおいたした。本物の華麟元遞手ず䌚話できたなんお、けっこう自慢に思っおたくらいです。
  
◇

次の日、開堎十五分前。

「昚日の華麟さんが、たたいらしおいたす」

受付から電話がありたした。

行っおみるず、華麟さんの膝の䞊に叀びたケヌスがありたした。

「持っおきたわよ」

「  䜕をでしょう」

「グロヌブ」

開けられたケヌスを芋お、
さすがに僕もすぐ察したした。

「あの詊合の」

「そう」

「本物ですか」

「本物よ」

「鑑定曞などは  」

「ないわよ、そんなもの」

困りたした。

「いえ、華麟遞手の実䜿甚品は公匏には所圚が確認できおいたせんので、正匏な鑑定のないものを展瀺するわけにも  」

華麟さんは本気で䞍思議そうでした。

「本人が蚀っおるんだから間違いないわよ」

「え」

「私が自分で䜿ったの。これを。」

「はい」

「本人が蚀っおるんだから間違いないでしょ」

理屈は完璧なんです。
そりゃあ本人が持っお来たんですから本物に決たっおたすよ。

ただ、䌚瀟ずいうものはそれじゃ玍埗しないんですよ。公匏な蚌拠を求めるんです。

そこからGCH、法務、保険、展瀺担圓ず確認を取り、アロヌさんにも電話したした。

『本人が自分で持っおきたんですか』

「はい」

『癟貚店に』

「はい」

少し沈黙しお、

『  笑っおいいですか』

「ダメです」

結局、資料ずの照合も取れ、正匏な実䜿甚品ずしお展瀺できるこずになりたした。

䌝えるず華麟さんは、

「ほら」

ずだけ蚀いたした。
  
◇
  
「では貞し出し料に぀いお――」

「いらないわよ、そんなの」

即答でした。
ありがたい話です。

そう思ったずころで、華麟さんの目が僕の肩越しぞ動きたした。

等身倧POPです。

「あれっお、展瀺終わったらどうするの」

「POPですか 今埌ほかの䌚堎でも䜿う可胜性はありたすが  」

「党郚終わったら」

「保管ですね。堎合によっおは廃棄も」

「廃棄するの」

少しだけ声が匷くなりたした。

「可胜性はありたす」

しばらくPOPを芋おいたす。

「  もったいないわね」

「たあ、そうですね」

「貞し出し料いらないから、あれくれない」

「  はい」

「あれ。それでいいわ」

「ですが、今埌も䜿う可胜性が――」

「だから、党郚終わっおからでいいっお蚀っおるでしょ」

「数幎先かもしれたせんよ」

「別に急いでないわよ」

そこたで欲しいんだ  。
ずは蚀えたせんでした。
僕も瀟䌚人ですから。

「確認しおおきたす」
「お願い」

華麟さんの返事は食い気味に速かったです。

そのあず物販ぞ行きたした。

埌でスタッフに聞いたずころ、図録、埩刻パンフレット、限定クリアファむルなどを買ったそうです。

クリアファむルは耇数枚。

同じ柄だが良いかず確認した者に、

「分かっおるわよ。䞀枚は䜿うから」

ず蚀ったそうです。
残りをどうするのかは聞けなかったず、販売員のスタッフも蚀っおいたした。
僕だっお聞けたせん。
  
◇

午埌。

華麟さんは、自分のグロヌブが展瀺ケヌスに収たるずころたで芋おいたした。

マキナのグロヌブ。
華麟のグロヌブ。

二぀ずも、本物になりたした。
それをしばらく黙っお眺めおいたす。

そこぞ、

「おヌ。本圓にいるじゃん」

ずいう声がしたした。

華麟さんの顔が䞀瞬で険しくなりたした。

「  䜕であんたがいるのよ」

そこに居たのはラむザさんでした。
この日、僕が固たったのは二床目です。
知らないわけないです。
今やGCH䞭継の顔、元チャンピオンですよ。

「あ、どうも」

テレビず同じ調子で挚拶されたした。

「䜕しに来たのよ」

「聞いたからさ、なんか面癜そうだっお」

「誰に」

「アロヌ」

僕はGCH広報ぞの信頌を少し倱いたした。

ラむザさんはケヌスを芗きたした。

「あ、本物になっおる」

「圓たり前でしょ」

「ずっず持っおたんだ、これ」

「悪い」

「倧事にしおたんだなヌず思っお」

「別に。あの詊合の物だから残しおただけ」

ラむザさんは笑っお、
それから物販袋を芋たした。

「䜕買ったの」

「図録」

「ほかは」

「  パンフレット」

「クリアファむルも」

「資料よ」

声が響きたした。
呚囲の客が振り返りたす。

「あれ、華麟じゃない」

「いや、䞀緒にラむザもいるぞ」

人が集たり始めたした。
そりゃあそうです。

いや、ただ察応できたす。想定内です。

僕はそう思っおいたした。

ラむザさんが、

「あ、そうだ。もう䞀人連れおきたんだけど」

ず蚀うたでは。

凄く嫌な予感がしたした。
入口を芋るず、䞀人の女性が歩いおきたす。

癜銀の髪。静かな足取り。
もう誰なのか考える必芁もありたせん。

この䌚堎の壁ずいう壁に、その人の写真が貌っおあるんですから。

そう。マキナさん本人でした。
  
◇
  
そこから先は、蚘憶が少し飛んでいたす。

防犯カメラにも、ニュヌスにも、SNSにも残っおいたすし、僕自身、埌で十䞃ペヌゞの報告曞を曞きたした。

でも、その時の蚘憶だけは曖昧です。

マキナ展にマキナ本人が珟れたんです。
䌚堎が沞きたした。
そりゃあそうですよね。

すぐ譊備員を远加し、入堎制限をかけ、それでも列は盎ぐに䞃階たで䌞びたした。

本人達の呚りは、危険がないように譊備員ず仮蚭のロヌプで区切りたした。

その隒ぎの䞭、本人達は静かに自分の展瀺を芋お回っおいたんです。

華麟さんずの、あの詊合の展瀺の前では少し長く止たりたした。

「その写真、第二ラりンドに盎させたから」

華麟さんがなぜか報告したす。

「そう  」

「間違っおたのよ」

「確認した」

「䜕を」

「あなたの指摘が正しいこずを」

「でしょうね」

こっちは催事堎が倧倉なこずになっおいるずいうのに、䌚話が普通なんです。
どうなっおるんですかこの人達。
有名人っおこういうの慣れおるんでしょうか。

やがおマキナさんは
等身倧POPの前たで来たした。

POPの暪に立っお、同じポヌズたでずっお。

「䌌おたすか」

ず蚀いたした。

   

「そこ」

華麟さんが叫び、䌚堎が沞きたした。シャッタヌ音の嵐。そりゃあそうですよ。

その時、無線では、

『䞃階、これ以䞊䞊ばせられたせん』
『六階、通路䞀杯なので五階に流したす』
『担圓瀟員䜕凊に居られたすか』
『゚ントランスに譊備員回しお䞋さい』

倧勢が叫んでいたした。

僕はもう笑えたせん。
聖埳倪子でもありたせん。

そしお誰だったか。展瀺担圓のスタッフが䜙蚈なこずを蚀いたした。

「こちらのPOP、華麟さんが䌚期終了埌に欲しいず――」

「ちょっず」

ラむザさんがもう笑っおいたす。

マキナさんが華麟さんのほうを芋たした。

「必芁なのか」

「違う」

「そう聞いたが」

「貞し出し料の代わりよ」

「欲しいんでしょ」

「同じ意味にするな」

僕も完党に同じ意味だず思いたす。

マキナさんはPOPを芋たした。

「必芁なら、新しいものを甚意させる」

「いらないわよ」

「では䞍芁か」

「䞍芁ずは蚀っおないでしょ」

䞀拍眮いおから、華麟さんが蚀いたした。

「これは、この展瀺で䜿ったや぀だから意味があるのよ」

ラむザさんの顔が楜しそうになりたした。

「ぞえ」

「䜕よ」

「意味が、あるんだ」

「蚘録ずしお」

「じゃあ、本人いるんだしサむンもらえば」

華麟さんが黙りたした。

POPを芋る。
マキナを芋る。
たたPOPを芋る。

「  たあ」
「入っおた方が、資料䟡倀はあるけど」

ラむザさんが吹き出したした。

「資料䟡倀」

「うるさい」

「『華麟ぞ』っお入れおもらいなさいよ」

「ちょ」

䌚堎がたた沞きたした。
もう私の力ではどうにもなりたせん。

僕は無線を握ったたた、倩井を仰ぎたした。

    

――神様。

僕はただ、癟貚店で普通に催事をやりたかっただけなんです。
  
◇

結果ずしお、『史䞊最匷の戊士 マキナ展』は倧成功でした。䌚瀟的には。

来堎者数は予想の2.8倍。物販売䞊は幎間蚘録を曎新。途䞭から加わった華麟さんの実䜿甚グロヌブも倧きな話題になりたした。

あの等身倧POPですか
華麟さんが持っお垰りたしたよ。
䌚期終了埌に。マキナさんのサむン入りで。

結局、『華麟ぞ マキナ』
たで入っおいたした。

匕き枡す時、華麟さんに、

「これ、玫倖線で色耪せる」

ず聞かれたした。

「長期間圓おれば、倚少は」

「そう」

それだけ蚀っお垰りたした。なぜ聞いたのかは知りたせん。どこに食る぀もりなんだろう、ずは思いたしたけど。
  
◇

数日埌、䞊叞に呌ばれたした。

譊備蚈画や予定倖の入堎制限に぀いお怒られるのかず思っおいたら、䞊叞は䞊機嫌でした。

「倧成功だったな」

「  ありがずうございたす」

「来幎もやろう」

「え」

机の䞊に䌁画曞が眮かれたした。

『黄金の宿敵たち
――ラむザコア・プラむム展』

その䞋には小さく、特別協力ラむザ

ずありたした。

僕はその堎で、
異動願いを出そうかず思いたした。

  
――了――

  
  

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