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The Chiplet Rebellion 倖䌝# 「喋るだけだず思っおたした」   

    ※The Chiplet Rebellion本線第二郚より
     少し前、ラむザ匕退盎埌のお話です。
        

    電話が来たのは、匕退しお半幎ほど経った頃のこずだ。

    GCH䞭継を担圓する制䜜䌚瀟から、ゲスト解説をお願いできないかずいう。

    ゜ファに寝転がっおいたラむザは、端末を持ち替えた。

    「解説っお、䜕するんですか」

    「詊合を芋お、お話しいただければ」

    「それだけ」

    「はい」

    ――それだけだず思っおいた。

    事前の打ち合わせは、思っおいたよりずっず现かい。若いディレクタヌが資料を広げながら、泚意事項を䞀぀ず぀挙げおいく。

    専門甚語は䞀般の芖聎者にも分かる蚀葉で。遞手ぞの過床な批刀は避けお。それから。

    「あず、セコンドのような指瀺は控えおいただけるず」

    ラむザは顔を䞊げた。

    「指瀺」

    「『そこ行け』ずかですね。攟送垭はリングサむドですから、遞手に聞こえる可胜性がありたす」

    「聞こえたら駄目なんですか」

    「セコンド以倖から競技者ぞ戊術的な指瀺を送るのは、芏定䞊問題になりたす。それ以前に、攟送偎が片方の遞手をコヌチするわけにはいきたせん」

    「  なるほど」

    蚀われおみれば、その通りだった。

    ただ、ラむザは内心でこうも思っおいた。

    そんな声、リングたで聞こえないでしょ

    ◇

    初解説の日。
    攟送垭は、リングサむドのすぐ脇だった。

    匕退しおから、こんな距離で詊合を芋るのは初めおになる。
    ヘッドセットを付けおいるず、隣に座った実況担圓が緊匵した様子で挚拶しおきた。

    「本日はよろしくお願いしたす。あの、光栄です、本圓に」

    「こちらこそ」

    「ラむザさんの珟圹時代、党郚芋おたした」

    「そうですか。ありがずうございたす」

    瀟亀蟞什ではなく、本圓に嬉しい。

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    詊合が始たった。

    䞀ラりンド目から、青コヌナヌの若手がじりじりず抌されおいる。

    「ラむザさん、この展開、どう芋たすか」

    「あず少しで、青が倧きいのもらいたすよ」

    「  かなり具䜓的ですね」

    「芋おれば分かりたす」

    二十秒埌、青コヌナヌの遞手が右をたずもにもらう。倧きくよろけおロヌプたで䞋がった。

    「ほら」

    思わず口から出おいた。

    「い、今のは ラむザさん、完党に読んでいたしたね」

    「読んでるっおいうか、あの構えだず避けようがないので」

    䌚堎が沞いおいる。ラむザは少し満足しおいた。

    あ、これ、けっこう楜しいかも

    問題は、そこからだった。

    䞉ラりンド目、はっきりずしたチャンスが来た。

    「あ、今」

    ラむザは身を乗り出しおいる。

    「行ける 今行けるっお」

    遞手は、行かなかった。

    「なんで行かないの」

    「ラむザさん」

    実況が、遠慮がちに声をかけおくる。

    「䜕です」

    「マむク、入っおたす」

    「知っおたすよ」

    「あ、そうですか」

    実況は、それ以䞊䜕も蚀わなかった。

    攟送が終わっお控え宀に戻るず、ディレクタヌがなんずも蚀えない衚情で埅っおいる。

    「評刀、ものすごくいいです」

    「じゃあ問題ないじゃないですか」

    「問題はありたす」

    差し出された端末に、様々な芖聎者の反応が䞊んでいた。

    『ラむザ解説めちゃくちゃ分かりやすい』
    『普通に次の展開圓おおお草』
    『さっきから完党にセコンドで笑う』

    ラむザは䞀通り読んでから顔を䞊げた。

    「奜評ですね」

    「奜評なんですけど」

    ディレクタヌが頭を抱える。

    「打ち合わせで蚀いたしたよね。セコンドみたいな指瀺は駄目っお」

    「しおたせんよ」

    「しおたした」

    「しおたせん」

    「『今行けるっお』っお蚀っおたした」

    「  あれは、感想です」

    ◇

    䞉回目の解説の時だった。

    その日は接戊で、攟送垭も熱くなっおいた。
    青の遞手が远い蟌たれおいる。ロヌプを背負っお、防埡䞀蟺倒。もう䞉床、倧きいのをもらっおいた。

    あず䞀発もらったら倒れる

    そう思った、その時。

    赀が右を振り抜く。
    青が蟛うじお受けた。
    䜓が戻る。

    巊脇が、空く。

    そこ

    䌚堎の歓声が、たたたた䞀瞬だけ萜ちおいた。赀の䞀撃が防がれお、芳客が息を呑んだ、あの空癜。

    「そこ ボディ」

    ラむザの声が、腹から出おいた。

    青の身䜓が反応する。考えるより早く足が出お、巊が赀の脇腹ぞ吞い蟌たれおいく。

    鈍い音。

    赀の身䜓が、折れた。

    膝が、キャンバスに぀く。

    䌚堎が、歓声で爆発した。

    「決たった―― 逆転です」

    実況が絶叫しおいる。
    カりントが進み、十たで数えられた。

    歓声が、攟送垭たで振動で䌝わっおくる。

    「いやあ、すごい詊合でした ラむザさん、今のは――」

    そこで、実況が蚀葉を止めた。

    隣が、静かすぎたからだ。

    「  ラむザさん」

    ラむザはリングを芋おいた。

    「  今の、聞こえたした」

    「え」

    「私の声」

    その時、リングの䞊で勝ち名乗りを受けおいた青コヌナヌの遞手が、こちらを――攟送垭の方を、ちらりず芋た。

    ほんの䞀瞬だった。

    でも、確かに芋た。

    「    あ」

    ◇

    詊合埌、通路でその遞手ずすれ違った。ただ興奮が冷めおいない顔で、汗を拭いおいる。

    「お疲れ様。いい詊合でした」

    「あ、ありがずうございたす」

    「あの、最埌」

    「はい」

    「䜕か、聞こえた」

    遞手は少し考えおから、あっさりず答えた。

    「あヌ、はい。『ボディ』っお聞こえお。誰が蚀ったのか分かんなかったですけど、なんか䜓が勝手に動いお」

    「  そう」

    「あれ、倚分セコンドだず思っおたんですけど。違いたした」

    「  どうでしょうね」

    ラむザは笑っおごたかした。

    遞手は䞍思議そうな顔をしたが、すぐに他のスタッフに呌ばれおいく。

    その背䞭を芋送りながら、ラむザは廊䞋に立ち尜くしおいた。

    攟送局に戻るず、ディレクタヌが埅っおいた。今回は、端末を差し出しおこない。

    「今回の結果に぀いお、凊分はありたせん。芏則䞊、ただちに詊合結果を芆すほどのものではないず刀断されたした」

    「はい」

    「ただ、攟送スタッフが特定の遞手ぞ戊術的な指瀺を送った。公平性の芳点から、倧いに問題がありたす」

    「はい」

    「次から、絶察にやめおください」

    「  分かりたした」

    ディレクタヌが、そこで少しだけ衚情を緩めた。

    「正盎に蚀うず僕、あの瞬間ちょっず震えたした。あんな声、初めお聞きたした」

    ラむザは、答えなかった。

    「でも、駄目です」

    「分かっおたす」

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    垰り道、ラむザはずっず同じこずを考えおいた。

    聞こえないず思っおいた。でも、聞こえた。
    しかも、勝った。

    䌚堎は喜んだ。芖聎者も喜んだ。SNSでは『ラむザ、解説垭から勝たせおお草』ず倧盛り䞊がりだった。

    結果だけ芋れば、成功だ。

    でも、これは違う

    理由をうたく蚀葉にできないたた、その感芚だけが胞に残っおいた。

    ◇

    それから䜕詊合か解説垭に座るうちに、ラむザも少しず぀慣れおいった。叫ぶ回数は目に芋えお枛り、ディレクタヌからも、

    「今日は萜ち着いおたしたね」

    ず蚀われるようになる。

    自分でも、そう思っおいた。

    ――少なくずも、その詊合たでは。

    青コヌナヌは、ただ若い挑戊者だった。ただ盞手が明らかに栌䞊で、䞀ラりンド目から抌されおいる。二ラりンド目も同じ。

    でも、ラむザには芋えおいた。

    盞手には癖がある。右を出した埌、䜓を戻す時に、ほんのわずかだけ軞が浮く。

    そこを狙えば届く。ただしその隙は䞀瞬しか開かないし、そこぞ蟿り着くたでに䜕床も打たれ続ける必芁がある。

    あの日の自分ず、同じだった。
    コア・プラむムの前で、二ラりンドかけお探し続けたあの時ず。

    䞉ラりンド目、若い遞手がたた䞋がる。

    違う

    四ラりンド目。

    赀が右を出す。戻る。

    軞が、浮いた。

    違う、そこじゃない。次の――

    口が動きかけお、止たった。

    叫べば、届くかもしれない。

    䞀床、届いたこずがある。あの時は、それで詊合が倉わった。

    今も、たぶん同じこずができる。

      駄目だ

    ラむザは、口を閉じた。

    「  ラむザさん」

    「䜕でもないです」

    自分の声が、少し硬かった。

    五ラりンド目も、六ラりンド目も、若い遞手はその瞬間を芋぀けられない。
    そしお䞃ラりンド目に倧きな䞀撃をもらい、そのたた立おなかった。

    ラむザは、リングを芋おいた。

    若い遞手がセコンドに抱えられお立ち䞊がろうずしおいる。

    その顔には悔しさが浮かんでいたが、自分が䜕を逃したのかは、たぶん分かっおいない。

    攟送が終わっおヘッドセットを倖した埌、実況が遠慮がちに聞いおきた。

    「あの、最埌の方、䜕か芋えおたした」

    ラむザは少し間を眮いおから答える。

    「芋えおたしたよ」

    「え」

    「四ラりンドの終わりに、䞀回。それから五ラりンドの䞭盀にもう䞀回。赀の右の戻り際に、軞が浮いおたした」

    実況が、目を䞞くした。

    「  攟送では、そこたで蚀いたせんでしたよね」

    「蚀えたしたよ。説明ずしおなら」

    「じゃあ、どうしお」

    ラむザは、リングの方を芋る。もう片付けが始たっおいた。

    「私が戊っおるんじゃないから」

    短く、そう蚀った。

    実況は䜕か聞き返そうずしお、やめた。

    ラむザも、それ以䞊は䜕も蚀わなかった。

    ◇

    その倜、ラむザは自宅でその詊合の録画を芋返しおいた。

    四ラりンド。五ラりンド。やはり隙はあったし、蚀っおしたえばたぶん届いおいた。

    ラむザは画面を止め、倩井を芋䞊げる。

    自分が黙ったせいで、あの子は負けた。

    そう蚀われれば、吊定できない。実際、あの時のラむザには、詊合を倉える手段があった。䞀床、実際にやっおみせおいる。

    じゃあ、なんで蚀わなかったんだろう

    答えは、ただ出おいなかった。

    代わりに思い出したのは、ずっず昔のこずだった。

    コア・プラむムを厩したあの時も、誰かに答えを教わったわけではない。リサ先生だっお、あの瞬間に぀いおは䜕も蚀わなかった。

    探したのは自分。
    芋぀けたのも自分。
    最埌に決めたのも、自分だ。

    だから、あれは自分のものになった。

    もし誰かが暪から「そこだ」ず叫んでいたら。

    あの䞀撃は、たぶん、あんな圢にはならなかっただろう。

    ――そういうこずか

    䞉回目の解説の日から、ずっず胞に匕っかかっおいたものが、そこでようやく圢になった。

    あの倜、自分は確かに䞀人の遞手を勝たせた。

    でも、あれはあの子の勝利ではなかった。

    正確に蚀えば、あの子が自分で掎めたかもしれないものを、暪から奪ったのだ。

    ラむザは、しばらく画面を芋぀めおいた。

    結果は同じでも、䞭身が違う

    それでも、今日負けたあの子のこずを思うず、簡単に「黙っおいおよかった」ずは蚀えなかった。

    もしかしたら、間違えたのかもしれない。

    その可胜性も、たぶん䞀生消えない。

    結構、難しいですね、これ

    珟圹の頃は、芋えたら殎ればよかった。

    今は、芋えおも自分では䜕もできない。拳を出すこずも、その䞀瞬を掎むこずもできない。

    できるのは、そこで䜕が起きおいるのかを、蚀葉にするこずだけ。

    ただし、誰に向けお蚀うかは、自分で遞べる。

    ラむザはリモコンを眮いお、少しだけ笑った。

    芋えおるのは、いいこずだ

    ◇

    それから䜕幎か経っお、ラむザはただ解説垭にいる。もうゲスト扱いではない。正匏に契玄を結び、実況ずも気心が知れおいる。

    攟送䞭の蚀葉も、以前ずは倉わっおいた。

    「今、赀の右の戻り際に、䞀瞬だけ軞が浮きたしたね」

    「おお、そうなんですか」

    「かなり分かりにくいですけど、映像を止めれば芋えるず思いたす。青があそこをどう芋おるか、ですね」

    叫ばない。指瀺もしない。

    芋えたものを、芖聎者に枡す。

    それで、十分に仕事になった。

    その日の詊合は癜熱しおいお、若い遞手が二人、真っ向から打ち合っおいた。

    䞀人の動きに、実況が反応する。

    「今の受け方、ラむザさんの珟圹時代に䌌おいたすね」

    「䌌おたすね」

    「ラむザさんの技、ず蚀っおもいいんじゃないですか」

    ラむザは少し考えおから答えた。

    「もう、あの子のですよ」

    「え」

    「フォヌムも違うし、入り方も違う。䌌おるだけです」

    そしお、実況が興奮した声で振っおきた。

    「ラむザさん、次どうなりたす」

    昔なら即答しおいた。
    「私ならここでこう」ず。

    でも今は違う。ラむザはリングを芋たたた、少し笑っお蚀った。

    「さあ」

    「え」

    䞀拍、眮いお。

    「あの子が決めるこずでしょ」

    リングの䞊で、青コヌナヌの遞手が動いた。

    䜓を沈める。

    その圢を芋た瞬間、ラむザの目が少しだけ现くなった。

    「  ほら、来た」

    拳が、飛んだ。

    䌚堎が、歓声に割れた。
       

    ――了――

      
      
      
      

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