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【埌線】【宇宙より叀い星】メトシェラ星ず、閉じおいく宇宙の窓

 【前線】はこちらです 

        

【語り郚の郚屋】
    

ようこそ  。

たた、いらっしゃいたしたね。

前の倜のこずを、芚えおいたすか。

おんびん座の方向、190光幎の圌方。

宇宙が若かった頃に生たれ、130億幎前埌を生き延びおきた、䞀぀の星の話をしたした。
     

  

そう、メトシェラ星。

そしお、
鉄をほずんど含たないもう䞀぀の叀い星。
圌らは、宇宙の幌幎期を知る蚌人ずしお、今も私たちの銀河の䞭を、䞀緒に旅しおいたす。

  けれど、前の倜の最埌に䞀぀だけ、問いを残したした。

圌らは、最初の星ではありたせん。

すでに死んでいった、もっず叀い星たちの遺灰から生たれた、次の䞖代です。

では、本圓に最初に生たれた星は䞀䜓どこにいるのか。

今倜は、その答えを探しに行きたしょう。

前の倜、私はこう申し䞊げたした。

最初の星を探しに行けば、私たちは宇宙の果おず芳枬の限界ぞたどり着く、ず。

今倜は、その蚀葉の意味をお話ししたす。

最初の星を探しおいたはずの私たちが、
なぜ未来の宇宙を芋るこずになるのか。

そしお、なぜその未来では、宇宙の始たりそのものが芋えなくなっおしたうのか。

  さあ、ペヌゞを捲りたしょう。

芋えおいる宇宙の、その、向こう偎ぞ。

   

【第䞉章最初の星たちが残した、遺灰だけの蚌蚀】
  

では。本圓に最初に生たれた星は、どこにいるのでしょうか。

宇宙の誕生から、およそ1億幎から2億幎埌。
暗闇の䞭で、最初の星々が茝き始めたず考えられおいたす。

ファヌストスタヌ。

あるいは、皮族III星。

それ以前の宇宙には、星の光がありたせんでした。ただ、氎玠ずヘリりムを䞭心ずするガスが暗闇の䞭を挂っおいた。

そのガスが重力によっお集たり、抌し朰され、そしおある瞬間、初めお栞融合の火が灯った。

  宇宙が、初めお星の光で自分の姿を照らした瞬間です。

それが、宇宙最初の星々です。
理論䞊、最初の星の倚くは、珟圚の星より倧質量だった可胜性がありたす。

䞭には倪陜の䜕癟倍、あるいはそれを倧きく䞊回る質量を持぀ものもいたかもしれたせん。

巚倧な星は、激しく燃えたす。

そしお、激しく燃える星は、
長くは生きられたせん。

数癟䞇幎。

宇宙の歎史から芋れば、もはやたばたきのような時間です。

最初の星々の倚くは、その短い生涯の果おに厩壊し、重い元玠を宇宙ぞたき散らしたず考えられおいたす。

宇宙で最初に光を灯した者たちは、人類が生たれるはるか以前に消えたした。

名前を䞎えられるこずもなく。
䞀぀䞀぀の姿を、蚘録されるこずもなく。

けれど、完党に䜕も残さなかったわけではありたせん。

圌らが䜜った元玠。
圌らが呚囲のガスぞ䞎えた光ず熱。
圌らの最期の爆発によっお生たれた、次の䞖代の星々。

姿は消えおも、圱響だけは残りたした。

前の倜にお話しした、鉄をほずんど含たないあの星も、そうした第二䞖代の星である可胜性がありたす。

その星の内郚に刻たれた元玠の組み合わせから、私たちは、さらに前の䞖代を掚枬したす。

この炭玠は、どのような星が䜜ったのか。

この鉄の少なさは、どのような爆発の埌に生たれたのか。

私たちは、生き残った星を調べながら、すでに消えた星の姿を埩元しようずしおいたす。

それは遺䜓のない事件を、灰の成分だけから調べおいるようなものです。

珟圚、ゞェむムズ・りェッブ宇宙望遠鏡をはじめずする芳枬装眮が、初期宇宙の銀河や星の光を探しおいたす。

宇宙が若かった時代の銀河は、すでに数倚く芋぀かっおいたす。

けれど、第䞀䞖代の星そのものを䞀個の恒星ずしお確定的に捉えた䟋は、ただありたせん。

圌らの存圚は、理論や元玠組成、初期宇宙に残された倉化によっお、匷く支持されおいたす。

それでも。

「これが宇宙で最初の星です」

ず、指し瀺せる光はただ、私たちの手の䞭にはないのです。

メトシェラ星が特別なのは、ただ叀いからではありたせん。

宇宙の初期を知るための蚌拠が、今も私たちの手の届く堎所に残っおいる。その事実そのものが幞運なこずなのです。
    

    

【第四章138億幎の宇宙が、465億光幎ある理由】
   

ここで、少し奇劙な話をしたしょう。

宇宙の幎霢は、およそ138億幎。

そしお光の速さには、限界がありたす。
ならば、私たちが芋通せる宇宙の半埄も、138億光幎ほどのはずだず思いたせんか。

  ずころが、違いたす。

珟圚、芳枬可胜な宇宙の半埄は、およそ465億光幎だず考えられおいたす。

幎霢の、䞉倍以䞊です。

光は138億幎ほどしか旅しおいないのに、なぜ、その光を攟った堎所たでの珟圚の距離が、465億光幎にもなるのでしょう。

その理由は、
宇宙そのものが膚匵しおいるからです。

非垞に遠い初期宇宙の領域から、138億幎前に光が旅立ったずしたす。

その光は私たちぞ向かっお進み始めたした。

光は垞に、その堎所の空間を光速で進みたす。

けれど、その光が旅しおいる間にも光源ず私たちの間にある空間は膚匵し続けたした。

光が進んでいるあいだに、その旅路そのものが長くなっおいったのです。

その結果。

光が旅した時間は138億幎ほどでも、光を攟った領域たでの珟圚の距離は、400億光幎を超えるこずがありたす。

私たちが芋おいるのは、
倩䜓の珟圚の姿ではありたせん。
その倩䜓が、はるか昔に攟った光です。

光源が今も存圚しおいるずしおも、その珟圚の姿は、私たちには芋えたせん。

今珟圚、どのような圢になっおいるのか。
どれほど遠くぞ隔おられおいるのか。
あるいは、すでに消滅しおいるのか。

今届いおいる光は、
その答えを持っおいたせん。

私たちは倜空を芋䞊げるたびに、珟圚の宇宙を眺めおいる぀もりでいたす。

けれど、実際に読んでいるのは。
すでに遠く隔おられた誰かが、倧昔に残しおいった、眮き手玙なのです。

差出人が今どこにいるのかも。
ただ生きおいるのかどうかさえ、
その手玙には、曞かれおいたせん。

  

【第五章閉じおいく窓】
  

さお。

今倜本圓にお話ししたかったのは、
実はここからです。

宇宙は、膚匵しおいたす。

しかもその膚匵は珟圚、加速しおいるず考えられおいたす。これが䜕を意味するのか。

少し、想像しおみおください。

遠くの銀河は、私たちから離れおいきたす。

そしお加速膚匵がこのたた続くなら、ある距離より向こうの銀河から、これから攟たれる光は、私たちぞ届かなくなりたす。

光が、止たるわけではありたせん。
その堎所では、垞に光速で進み続けたす。

それでも、光源ず私たちの間にある空間が膚匵し続けるため、氞遠にこちらぞ到達できない光が生たれるのです。

すでに旅を始めおいる叀い光は、しばらくの間、届き続けたす。

けれど、その光も宇宙の膚匵によっお波長を匕き䌞ばされおいきたす。

赀く。暗く。匱く。

やがお、
芳枬するこずが極めお難しくなるほどに。

銀河が突然、消えるわけではありたせん。
䞀倜にしお、倜空から抜け萜ちるわけでもありたせん。

ただ、少しず぀。
限りなく静かに。

その銀河から届く情報が、
现くなっおいくのです。

最埌には、そこは存圚しおいおも、二床ず確かめられない堎所になる。

  これは、はるか遠い未来の話です。

珟圚の人類が心配するような時間ではありたせん。けれど宇宙論では、そのような未来が真剣に考えられおいたす。

加速膚匵が今埌も続くなら。

遠い未来、私たちの局所銀河矀に属さない銀河は、䞀぀ず぀芳枬できなくなっおいきたす。

その頃、倩の川ず近隣の銀河は合䜓し、䞀぀の巚倧な銀河のような姿になっおいるかもしれたせん。

その倖偎には、
䜕もないように芋える、暗闇。

  もしその時代に、新たにどこかで文明が生たれたずしたら。
圌らが倜空を芋䞊げおも、遠方の銀河は䞀぀も芋぀からないでしょう。

銀河の距離ず赀方偏移の関係を枬るこずもできたせん。

宇宙の倧芏暡な膚匵を瀺す、芳枬察象そのものが残されおいないからです。

ビッグバンの名残である宇宙背景攟射も、膚匵によっお波長を匕き䌞ばされ、怜出が極めお難しくなっおいるかもしれたせん。

軜い元玠の比率や、銀河に残された叀い星々。

わずかな痕跡から、過去を掚枬するこずはできるかもしれたせん。

けれど、私たちが珟圚持っおいるほど豊かな蚌拠は、もう残されおいないでしょう。

そのずき、圌らはどう考えるでしょうか。

こう結論するかもしれたせん。

芳枬できる宇宙には、この孀立した銀河だけが存圚する。宇宙は静的で、昔からこの姿だったのだ、ず。

  圌らの芳枬は、間違っおいたせん。

蚈算も、正しい。
芳枬装眮にも、故障はありたせん。

目の前に残されおいるものを、誠実に、䞁寧に調べ䞊げた、その結果ずしお本圓の歎史ずは、たるで違う宇宙ぞたどり着くのです。

圌らは、結果ずしお間違っおいたす。
けれど、圌らは愚かなのではありたせん。

蚌拠がもう残っおいないのです。

  そしお圌らには、自分たちが䜕を倱っおいたのかを確かめる方法がありたせん。

    

【語り郚の郚屋最埌に】
  

さあ  。

今倜の話は、ここたでにいたしたしょう。

私たちは、幞運な時代に生きおいたす。

宇宙の膚匵を芳枬できたす。
遠くの銀河の光を芋るこずができたす。
ビッグバンの名残である熱を、今もかすかにではありたすが怜出できたす。

叀い星の元玠を調べ、宇宙の最初期に䜕が起きたのかを掚枬できたす。

そしお190光幎先には、宇宙の幌幎期から生き延びた星が、今も燃えおいたす。

メトシェラ星。

それは、宇宙初期の蚌人です。

ただ、蚌人が生きおいるこずず、蚌蚀を聞き出せるこずは、同じではありたせん。

この星が、どこで生たれたのか。
どの銀河を旅しおきたのか。
その空に、どのような星々が茝いおいたのか。
130億幎近い時間の䞭で、䜕を芋おきたのか。

星は、䜕も語りたせん。

私たちは、光ず元玠のわずかな違いから、その過去を想像するしかないのです。

宇宙の歎史を読み解くための材料は、ただ、私たちの手元に残されおいたす。

けれどその窓は。

今この瞬間にも未来ぞ向かっお、ごく僅かず぀、静かに閉じ続けおいたす。

  ここで、
䞀぀だけ、問いを眮いおいきたす。

遠い未来の芳枬者たちは、倱われた蚌拠の存圚を知らないたた、䞍完党な宇宙像を組み立おるでしょう。

圌らには、それが䞍完党であるこずが分かりたせん。芳枬できるものが少ないのです。

では。
私たちは、どうでしょうか。

私たちが今、宇宙のすべおだず思っお眺めおいるこの空も。

今芳枬できる蚌拠だけを集めた、䞍完党な景色にすぎないのではないでしょうか。

私たちに䞀床も光を届けるこずができず、䜕の痕跡も残さなかったものを。
私たちは、倱われたずは呌べたせん。

存圚したこずさえ、知らないからです。

最初から知らないものを、倱った、ず気づくこずはできたせん。

ファヌストスタヌは、盎接その姿を特定されないたた消えたした。

それでも、遺灰の䞭に痕跡を残したした。

では。

遺灰さえ残さず、
光も、元玠も、空間の歪みも、
䜕䞀぀私たちぞ届けなかったものは。

いったい、どれほどあったのでしょうか。
   
  

  そろそろ、窓を閉める時間ですね。

もし、垰り道に倜空を芋䞊げるこずがあったら少しだけ、思い出しおみおください。

今倜あなたが芋おいるその星空は、宇宙のすべおでしょうか。

それずも、閉じかけた窓の隙間に残された、ほんの切れ端でしょうか。

190光幎の圌方では、宇宙の幌幎期から生き延びた星が、今倜も静かに燃えおいたす。

その星が芋おきたもの党おを、私たちが知る方法はありたせん。

  そしお、知る方法がない、ずいうこずず、

そこに䜕もなかった、ずいうこずは、

同じこずではないのです。

   

どうぞ、お気を぀けおお垰りください。

それでは。 

良い、倢を  。


  
  
  

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