
1885年アルゴス号座礁-Prologue of liminality-(キャンペーン購読)
1885年 アルゴス号座礁
1. はじめに
忘れられた史実から、一つの物語が生まれました。
1885年、長崎県崎戸沖の芋島で英国船アルゴス号が座礁し、島の漁師たちが乗組員全員を救助していた――。
そして、翌1886年、同じ芋島で石炭の鉱脈が発見されました。そして近代日本を支える炭鉱となりました。
この二つの出来事は、当時の公文書などにも記録が残る史実です。
座礁事故については、長崎県令・石田英吉から政府へ提出された報告書に、その救助の経緯が記されています。
2. 動機
私がこの出来事に興味を持ったのは、これら史実そのものだけが理由ではありません。
親戚の家がこの芋島のすぐ近くにありました。確かな記録は残っていません。しかし、もし先祖があの事故の夜、救助に加わっていたとしたら――。
石炭発見に関わっていたとしたら――。
その「かもしれない」という想像が、この物語の始まりでした。
本作は、アルゴス号座礁と乗組員救助という史実、石炭発見という史実をもとにした歴史小説です。
登場人物である、長崎県令の石田英吉は元海援隊士です。坂本龍馬や陸奥宗光、そして天満屋事件も描いています。

3. 歴史の中の記憶
登場人物の心情や会話、人と人との交流、そしてその後の物語は、史実への敬意を持ちながら私が創作したフィクションです。
歴史には、名前が残る人もいれば、残らない人もいます。
もし、あの夜、名も残らなかった誰かの中に先祖がいたのなら。
そんな想いを胸に、この物語を書きました。
この物語は、一冊で完結する歴史小説です。
しかし、ここで描いた人々の想いや、この島に刻まれた記憶は、私の中では終わっていません。
4. 時代が変わっても残るもの
時代は明治から昭和、平成、令和、そして「AIの時代」へと移り変わります。
それでも、人が未来へ何を託し、何を守ろうとしたのか。その問いは、今も変わらないように思います。
答えはまだ出ていません。描くことも出来ません。
これからの時代に私たちが答えを探していくのです。
本作は、私が描いている「66.7シリーズ」の時間軸の原点に位置する第四作でもあります。
そして、その先に続く物語が、第五作『Liminality』です(近日公開)

もしこの島の歴史や、人から人へ受け継がれていく記憶に興味を持っていただけたなら、その先の物語も、ぜひ手に取っていただければ幸いです。
:tokisuke
第一作デス:碓氷峠を舞台としたAIと人間の関わりを描いています。
こちらは第二作:長野県東御市の耕作放棄地を舞台に、AIの出す最適解と残すべき土地について描いています。
そして第三作は、第一作の外伝です:峠の路線を支えた者たちの物語