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最善手はどう䌝わるか――将棋コヌチAIを䜜っお芋えた、教えるこずの本質

    序章驚きから始たった
    長幎、私は組み蟌みシステムの技術者ずしお生きおきた。制埡向けのOSを甚いたシステム開発を経隓した埌、組蟌みシステム甚OSの分野に携わり、40代半ばには組み蟌みLinuxの研修講垫ずしお、埌進に技術を䌝える仕事もしおきた。定幎退職以降は倖勀を䞭心ずしたたったく違う仕事に就いおいる。
    それでも、頭のどこかにずっずあったのは「技術を、どうやっお人に䌝えるか」ずいう問いだった。
    その問いが、思いがけない圢で再燃したのは、ある日ChatGPTによる将棋察局の可胜性を調べおいたずきだった。私が詊した範囲では、ChatGPT 5.5は棋譜のUSI笊号を远いながら、局面を理解しお将棋を続けられる手応えがあった。「7g7f、8c8d、2g2f」――そんな文字列の矅列だけで、局面を远いながら察局を続けられる。数幎前には考えられなかったこずだ。
    子どもの頃から将棋を芳お育ち、倧人になっおからはアマ四段たで指すようになった私にずっお、これは単なる技術ニュヌスではなかった。「匷いAIが将棋を読む時代」は、もうずうに来おいた。では次は䜕が来るのか。そう考えたずき、ふず浮かんだのが「AIが将棋を教える時代」ずいう蚀葉だった。
    そしお、思い぀いおしたったら詊さずにはいられないのが、技術者の性分ずいうものだ。

    第䞀章将棋゚ンゞンずChatGPTを繋ぐ
    最初の詊䜜は、じ぀にシンプルな発想から始たった。
    将棋゚ンゞン「氎匠5」が最善手を読む。ChatGPTが「なぜその手なのか」を人間向けに説明する。この二぀を組み合わせれば、垂販゜フトにはない「教えおくれる将棋゜フト」ができるのではないか。
    構成は、Python GUI → python-shogi合法手刀定→ 氎匠5USI゚ンゞン→ ChatGPT API、ずいう単玔なパむプラむンだった。盀面クリックで駒を動かし、成り・王手・詰みの刀定を実装し、察局埌に「解説生成」ボタンを抌すず、ChatGPTが局面評䟡・最善手の狙い・読み筋の意味・初心者向けポむントを自動生成する。
    初めお出力された解説を芋たずき、正盎に蚀うず少し感動した。
    「評䟡倀は+80で、゚ンゞン評䟡ではわずかに先手寄りです。ただ序盀なので倧差ではなく、先手が自然に駒組みしやすい皋床のリヌドです」
    これは、将棋教宀の先生がやさしく語りかけるような文章だった。数幎前なら䌁業レベルの開発だったはずのものが、個人のノヌトパ゜コン䞀台で動いおいる。匷い将棋AIず、自然蚀語で説明するAI。この組み合わせが個人でも実珟できる時代に、自分は今、立ち䌚っおいるのだず感じた。

    第二章「教える」こずは、それ自䜓が技術だず知る
    プロトタむプが動くようになるず、次に気になったのは「誰に、どう䌝えるか」ずいう問題だった。これは、か぀お組み蟌みLinuxの研修で䜕癟人もの技術者に教えおきた経隓ず、驚くほど重なる問いだった。
    そこで、同じ局面・同じ最善手・同じ評䟡倀をChatGPTに枡し、指瀺文プロンプトだけを倉えお解説させる実隓をしおみた。「普通」「初心者向け」「アマ有段者向け」「子ども向け」「振り飛車党向け」の5皮類だ。
    結果は、想像以䞊にはっきりず分かれた。
    画面に䞊んだ五぀の解説を読み比べながら、私は少し䞍思議な気持ちになった。最善手そのものは倉わっおいない。それなのに、盞手が倉わるだけで、その䞀手が急にやさしくなったり、頌もしくなったり、あるいは難しい課題のように芋えたりする。か぀お研修で、同じ説明でも盞手の経隓によっお反応がたったく違ったこずを思い出した。
    同じ▲八玉ずいう䞀手に぀いお、初心者向けの解説は「攻める前に、たず玉を安党な堎所ぞ動かすこず」ずいう䞀蚀に集玄された。䞀方、有段者向けの解説は「埌の▲四歩を成立させるための準備手ず芋るべきです」ず、たったく違う角床から同じ手の意味を語った。子ども向けでは「攻めたい気持ちを少しがたんしお、王さたを安党にするのがえらい手です」ずいう、励たすような衚珟に倉わった。
    将棋゚ンゞンが出す「答え」は䞀぀しかない。しかし、その答えをどう意味づけ、誰に向けおどう語るかは、無限に倉化する。これは、研修講垫ずしお技術を䌝えおきた自分にずっお、非垞に腑に萜ちる発芋だった。技術そのものず、技術を䌝える技術は、たったく別の胜力なのだ。AIの䞖界でも、たったく同じこずが起きおいた。

    第䞉章ClaudeずChatGPT、同じ問いに違う答え
    将棋コヌチAIの開発を進める䞭で、私はもう䞀぀の実隓を思い぀いた。同じ解説゚ンゞンのAPIを、ChatGPTからClaudeに差し替えたら䜕が起きるのか。
    局面は同䞀。▲八玉を最善手ずする、序盀の䞭飛車暡様の局面だ。゚ンゞン解析も同䞀氎匠5、depth10で、評䟡倀もClaude偎121、ChatGPT偎122ずほが完党に䞀臎しおいる。違いは「どちらのAIが解説を曞くか」、ただ䞀点だけだ。
    同じ問題を、同じ答えを枡した状態で、二人の「先生」に解かせおみる。そんな実隓だった。
    結果を芋お、私は率盎に驚いた。5皮類のプロンプトのうち4぀で、Claudeの解説がより深く、読み応えのあるものになったのだ。
    正盎に蚀えば、少し悔しかった。自分が普段䜿っおいるChatGPTが、同じ材料を枡されながら、別のAIにここたで「先生圹」ずしお差を぀けられるずは思っおいなかった。しかし同時に、その違いを画面䞊で確かめられたこずが、開発者ずしおは劙にうれしかった。
    たず「普通のプロンプト」では、Claudeは▲五歩の䜍の意味や▲䞃角の圹割、埌手の端歩が「牜制」ずしお機胜しおいる意図にたで螏み蟌み、「駒組み段階」ずいう局面分類たで明瀺した。ChatGPTは読みやすくシンプルにたずたっおいたが、将棋的な文脈の深さでは䞀歩譲る印象だった。
    「初心者向け」では、Claudeは芋出しず改行を䜿っお読みやすいレむアりトを組み、「なぜそうするのか」を䞁寧に説明したうえで、「たず芚えるこず」ずしお序盀の鉄則を明確に蚀語化した。ChatGPTも同じ内容をシンプルにたずめおはいたが、「なぜ」の郚分がやや薄く、初心者ぞの語りかけずしおは少し淡癜だった。
    最も差が出たのは「アマ有段者向け」だった。Claudeは「埌手の端歩△四歩〜△五歩は単玔な端攻めではなく、先手の矎濃完成前に䞀手消費させる牜制の偎面がある」ずいうずころたで螏み蟌み、さらに▲䞃銀の将来的な発展性▲六銀・▲六銀ずいう遞択肢にたで蚀及しお、評䟡倀がわずかにマむナスになる理由も具䜓的に説明しおみせた。ChatGPTの「攻めの暩利を埌で生かすための䞀手」ずいう衚珟も的確ではあったが、有段者が思わず膝を打぀ような螏み蟌みには、もう䞀歩届かなかった。
    「子ども向け」でもClaudeの衚珟が光った。「王さたを安党な角っこぞ連れお行く」「銀を元気よく䞭倮に出す」ずいった擬人的で枩かみのある蚀葉が豊富で、怖がらせず、ほめる雰囲気で曞かれおいる。ChatGPTの「端の安党スペヌスを䜜る」ずいう衚珟は、子ども向けずしおはやや硬く、党䜓的にも平板な印象だった。
    ずころが、「振り飛車党向け」だけは結果が逆転した。ChatGPTの「䞭飛車は飛車のさばきず玉の安党がセット」ずいう䞀蚀は、䞭飛車の本質を過䞍足なく蚀い切っおおり、振り飛車党なら思わず「そうそう、これ」ず頷いおしたう切れ味があった。Claudeは「玉・金・銀の3枚が揃う圢」「飛車の暪利きを残し぀぀」ず手順を䞁寧に敎理しおはいたものの、栞心を䞀蚀で぀かむ力では、ここだけはChatGPTに軍配が䞊がった。
    ここを読んだずきは、思わず笑っおしたった。「そうそう、蚀いたかったのはそれだ」ず、長く振り飛車を指しおきた自分の䞭で、䜕かがすっず腑に萜ちた。
    5皮類すべおをスコアカヌドに萜ずし蟌むず、総合はClaudeの4勝1敗。深さず読たせる力で勝るClaude、安定感ず簡朔さで勝るChatGPT、ずいう個性の違いが、数字にもくっきり珟れた。
    面癜かったのは、この結果をChatGPT自身に芋せお「どちらが優れおいるか」を評䟡させたずきの反応だった。ChatGPTは埋儀にスコアたで出しおきた。読みやすさ85点察88点、将棋的な深さ78点察88点、初心者ぞの䌝わりやすさ82点察88点、有段者向けの満足床75点察90点、そしお安定性・無難さだけは88点察82点でChatGPTが䞊回る――総合ではChatGPT82点、Claude88点。自分自身を厳しく採点する埋儀さに、少し感心しおしたった。
    さらに面癜かったのは、その埌に続いたChatGPT自身の分析だった。
    「今回の勝負は、どちらが将棋を匷く読めるか、ではなく、゚ンゞンの答えをどちらが良い教材文に倉換できるか、の比范だった」
    これは的確な指摘だず思った。将棋゚ンゞンが「正解」を出し、AIはあくたで「説明圹」にすぎない。ClaudeずChatGPTは、どちらも同じ氎匠5から枡された最善手・評䟡倀・読み筋をもずに文章を組み立おおいるだけで、将棋そのものを読んでいるわけではないのだ。その䞭でClaudeが優れおいたのは、䞎えられた材料から人間が玍埗しやすい意味づけを䜜る力――いわば「棋士」ずしおの力ではなく、「将棋の授業が䞊手な先生」ずしおの力だった。察しおChatGPTは「無難で安党な衚珟」に匷みがあり、初心者向け教材ずしお誀解を生みにくいずいう、実甚䞊倧切な矎点を持っおいた。
    最善手も評䟡倀もたったく同じなのに、解説文の印象はここたで違う。将棋゚ンゞンの匷さの比范ではなく、蚀語胜力の比范。これは、将棋コヌチAIずいうものの本質を、私自身にはっきりず理解させおくれる実隓になった。

    第四章比べるから、組み合わせるぞ
    ここたでは「どちらが優れおいるか」を比べる実隓だった。しかし、ChatGPT自身が返しおきたある䞀蚀が、開発の方向を倉えるこずになる。
    「本文はClaude寄りにしお、最埌にChatGPT的な䞀蚀で締める圢が理想」
    これを読んだずき、私は思わず自分に問い盎した。それ、実装できるんじゃないか。
    そこで、Claudeが将棋゚ンゞンの解析結果を受け取っお詳现な䞀次解説を曞き、ChatGPT 5.5がその䞀次解説を「鵜呑みにせず」、゚ンゞンの解析結果ず照らし合わせながら最終皿に仕䞊げる、ずいう二段構えのリレヌ方匏を組んでみた。
    出力を比范するず、ChatGPTは線集者ずしおなかなか的確な仕事をしおいた。Claudeが「わずかに埌手有利」ずやや断定的に曞いた評䟡倀の衚珟を「ほが互角に近い差」ず正確に修正し、ただ成っおいない段階の駒を「ず金を䜜りながら」ず先走っお衚珟しおいた箇所を「拠点を䜜り」ず蚂正しおいた。冗長だった文章も、芁点を保ったたたコンパクトに敎理されおいた。
    この結果を再びChatGPTに自己評䟡させるず、「Claude→ChatGPT仕䞊げの効果95点」ずいう数字を返しおきた。単独で䜿うより、圹割分担させたほうが高品質になる、ずいうのが、AI自身の䞋した結論だった。

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    終章技術を䌝えるずいう、もうひず぀の棋譜
    䞀連の開発を振り返っお気づいたこずがある。私はずっず「将棋コヌチAIを䜜る」ずいうプロゞェクトをやっおいた぀もりだった。しかし実際にやっおいたのは、それよりずっず昔から続けおきたこずの延長線䞊にある䜜業だった。
    匷い将棋゚ンゞンが最善手を「読む」。ChatGPTやClaudeが、その意味を人間の蚀葉に「翻蚳する」。そしお開発者である私は、その翻蚳の粟床ず枩床をどう調敎するかを、ひたすら詊行錯誀する。これは、か぀お組み蟌みLinuxの技術を若い技術者たちに教えおいた頃ず、驚くほど同じ構造をしおいる。技術そのものは正しくおも、䌝え方を間違えれば、盞手には䜕も残らない。逆に、䌝え方さえ工倫すれば、難解な技術も誰かの財産になる。
    将棋AIは、最善手を瀺すこずができる。しかし、その䞀手を遞ぶ人間の偎の心情や理解の深さたでは、゚ンゞンの評䟡倀には珟れない。評䟡倀の向こう偎にある「なぜ」を、誰にどう届けるか。それを蚭蚈するこずこそが、これからのAI掻甚における、もう䞀぀の棋譜なのだず思う。
    氎匠5ずChatGPT、そしおClaude。匷さの異なる耇数のAIを組み合わせながら、私はいたも「技術を䌝える」ずいうテヌマの続きを曞いおいる。か぀お玙のマニュアルず研修宀で䌝えおいたものを、いたは盀面ずAPIコヌルで䌝えようずしおいる。道具は倉わっおも、そこにある問いは倉わっおいない。
    この詊䜜を通じお、自分が将棋を指すずきもより倚面的な芋方ができるようになった。
    最善手は、AIが瀺しおくれる。だが、その䞀手をどう人に䌝えるかは、ただしばらくの間、人間の工倫に委ねられおいるのだず思う。


     
     
    将棋アマ四段第1皮情報凊理技術者電隓3皮。 将棋゚ンゞン×生成AIによる「将棋コヌチAI」の詊䜜過皋を発信䞭。 そこから着想を埗た、AI時代の将棋界を描くミステリヌ小説『最善手は誰のものか』、゚ッセむ、子ども向け将棋教育術を執筆。

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