
小説【カレの秘密】
「またデートすっぽかされたの?これで何回目?」
マユコが呆れる。
「3回目。いくら忙しいからって、流石に寂しくなっちゃうな…」
駅前で2時間彼を待っていた私は、耐えかねてサイゼリヤにマユコを呼び出して愚痴っていた。
「寂しくなっちゃう〜、じゃないよ。怒りなよ。ろくな男じゃないよアイツ。」
マユコはワインを飲んでいる。
「最初からイケ好かないと思ってたんだ。確かに顔は可愛いよ。でもあの人生三周目みたいな余裕ぶった態度、胡散臭いよ。女慣れしてる気がする。」
彼氏の悪口を言われても、怒りこそしないが否定もしない。大好きだけど、だんだん信用できなくなっていた。
「確かに、恋人は私で3人目だって言ってたけど本当かな。なんか彼、私に隠し事をしてる気がするんだよね。」
マユコがニヤリとして身を乗り出す。
「女の勘?当たるぜ、それは。」
私は苦笑いだ。
「勘っていうか、実際私生活の半分がわからないの。アルバイトをしてるのは知ってるけど、それ以外にも連絡がつかない時がよくあるし、『何してたの』って聞いてもはぐらかされる。」
「えーっ、それは役満だよ。うわき…」
「それはないよ!ありえない。」
マユコの言葉を勢いよく遮る。
「なんで?」
私はパスタをくるくる巻いた。
「それは...女の勘。」
確かに彼、マサトくんはデートを何度もすっぽかした。確実に隠し事をしてる。でも、彼の私への愛も、それと同じくらいの確実なのだ。彼は優しいし強い。
そう、浮気なんていうのは弱い人間だからやるものだと思う。弱いから誘惑に負けてしまう。1人の人間を愛する勇気がない。マサトくんはそんな人じゃない。
店を出た後も私はマユコにこんなことをウダウダ言って呆れられていた。
駅に着いた。改札の前でマユコが手を握ってきた。
「ユウナ、いつか本当に傷つけられたら、私に言うんだよ。」
「ありがとうマユコ。でも、多分大丈夫だよ。」
マユコは笑った。
「馬鹿な男だな、アイツ。こんな可愛い子のデートをすっぽかすなんて。」
私も笑った。
その時、笑いをかき消すかのように巨大な音がした。何かが砕けるような音。
そして、悲鳴。
コンクリートの壁に、人間が叩きつけられている。壁は砕けて、黄色い衣装に身を包んだ人間は膝をつく。
その正面から、何かが歩いてきた。
2メートル以上の巨体と大きな角、触手のようにうごめく髭を持った化け物だ。
黄色い男が起き上がって叫ぶ。
「みんな逃げろ!」
私はその声に体が固まった。マユコに引っ張られて逃げたが、黄色い男と怪物から目は離せない。
黄色い男は怪物の突進を避けるが、触手に足を掴まれる。なんとかそれを切り離すと、蹴りを見舞った。
吹っ飛ぶ怪物。
そして黄色い男は胸に何かをチャージすると、光線を放って怪物の角を砕いた。
怪物は苦しみ、轟くような叫び声を上げる。
「とどめだ!」
黄色い男が雄叫びをあげる。
ああ、やっぱりだ。
拳が輝き、怪物を殴り飛ばした。
怪物は一度立ち上がるが、再び崩れ落ちて爆発した。
男は戦いを終えて膝をついた。
私はマユコの静止を振り切って男に向かって走り出した。
男はそれに気づいて気づかずにか、足にエネルギーをチャージし、夜空の彼方へ飛んでいった。
私は彼が小さな点になるまで追いかけた。
マサトくん、あなたはヒーローだったのね。