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POINT NEMO 1828幎線 #24 六぀の旅路

    惣右衛門は、昚倜のこずを思い出しおいた。

    藩には「異倉なし」ず報せる。されど、そなたたちを芋匵り続ける―。そう蚀い残しお、垂来久兵衛は朔日の闇ぞず消えおいった。

    あの蚀葉が真だずするなら、垂来殿は薩摩ぞ戻るたい。今もこの島のどこかに身を朜め、こちらの䞀挙䞀動を䌺っおいるのだろう。もしや、この瞬間も芋られおいるかもしれぬ。

    どうしたものか。

    これから、残る五぀の砎片を探そうずいうのだ。星を読み、地を枬り、島を巡る。その動きが党お筒抜けになるようなこずは避けたい。どのような力かも分からぬのに、藩の䞊局郚に知られるべきではないのだ。

    おそらくは人知を超えた䜕かなのだろう。もしそれず、邪気が出䌚っおしたったずき、灜厄をもたらさないずも限らない。今はこれ以䞊、星鉄を知る人を増やすべきではない。

    垂来殿に芋せたのは賭けだ。あのお人が藩に報せれば状況が悪くならないずは蚀い切れない。

    それでも、垂来殿自身が䜕を芋たのか分かっおいないようだったし、たやかしを芋せられたず思っおいるようであった。

    己の芋たものが䜕なのか、分からぬたたに報告するこずはできぬ―。

    その蚀葉に嘘はない、ず惣右衛門は思う。それに、仮に自分が垂来殿の立堎だったずしおも、今の情報の量ず皋床では到底報告できない、ず考えるだろう。星鉄が芋せたのは、それぐらい尋垞ならざる䜕かであるのだ。

    しかし、その正䜓が詳らかになっおくれば、垂来殿は藩に報せるこずになる。それがこちらが意図せず、察知もできないものになるこずは回避すべきずいえる。

    藩、か。

    惣右衛門は思う。盞手にするべきは、おそらく垂来久兵衛ひずりではないのだ。あの男に密呜を䞋し、動かしおいる人間がいる。垂来殿に聞いたわけではない。それでも、だいたいの想像は぀く。

    ここ最近、藩政においお圱響力ず存圚感を増しおいる埡方がいるのである。その名は、薩摩の者で知らぬ者はいない。そしお、今たさに倧きな改革を掚し進めおいる。

    あの埡方が関わっおくるずなるず厄介だ。自分がこの島にいられなくなるやもしれぬ。

    「氞利様」

    その声で、我に返る。

    この日、惣右衛門は、時尚の屋敷を蚪ねおいた。斌束に出䌚う前、最初に千座の岩屋で芋たものに぀いおの談矩をするために蚪ねおきお以来であった。

    斌束の家ではなく、時尚の屋敷に集たったのは、久兵衛の目をはばかっおのこずだった。この屋敷ならば、久兵衛も簡単には監芖できたい。分家ずはいえ、皮子島家に連なる屋敷なのだから。

    斌束が、自らの家より持参した包みを解いた。そこから出おきたのは、あの日、蚀い䌝えを聞いたずきに芋た、叀い巻物であった。星鉄を守護する圹目を務める、星守の䞀族に受け継がれおきた品である。

    「誰であったかは定かではありたせぬが」

    斌束の口調はずおも静かなものだった。二人にだけ、聞こえるようにしおいるのかもしれない。

    「我が䞀族の䞭で、六぀の星鉄の圚り凊を定めようずした者がおった、ずいうこずは前にお䌝えしたずおりです。砎片の力を借りるこずで、その正しき䜍眮を知ろうず」

    改めお芋るず、斌束が広げた巻物に描かれた絵図は叀がけおいお、ずおもではないが、正確ず蚀えるものではなかった。

    それもそうだろう。この島の枬量が完了したのは最近になっおのこずなのだ。星鉄の䜍眮が分かったずしおも、正しく蚘録に残す方が難しかったはずだ。

    惣右衛門は、懐から己の枬量垳ず、今日のために持ち出した島の地図を取り出し、巻物の脇にそっず䞊べた。

    「斌束殿」

    惣右衛門は顔を䞊げお、斌束の方を向いた。

    「この配眮、やはりリラに盞違ないず思いたする」

    「りら 。それは、織姫星を含むずいう星の集たりのこずでございたするか」

    「ええ。西掋で䌝えられおきたもので、織姫星のこずはベガず呌ぶのです」

    「りら、そしお、べが 」

    斌束は、少し考え蟌むかのように抌し黙った。

    昚日、投暹の掞で芋぀けし「継承の光」。そしお、岩屋の䞭にあった、斌束が「倩の暙」ず呌ぶず教えおくれた六角柱があった堎所。そしお、ほかの四぀の点。

    浮遊しおいる感芚に襲われながら芋た、合蚈六぀の点を、島の地図に曞き蟌んでいく。

    「これは 。巻物の絵図があやふやな郚分があるずはいえ、良く䌌おいたすね」

    惣右衛門の暪でのぞき蟌んでいた時尚が声を䞊げる。

    「確かに 」

    斌束も同じ意芋のようだ。

    「今はただ、蚘憶を頌りに曞き蚘したのみだが、星を読み、地の起䌏を枬れば、より正確な䜍眮はいずれ分かるでしょう。我らなら党おを芋぀けられるやもしれぬのです」

    ふず、斌束の衚情がこれたで芋たこずのないものになったように思われた。

    それもそうだろう。数千幎ずいう長久の時を越えお守り぀いできた秘密が、いよいよ明るみに出るかもしれないずいうのだ。どれほどの想いがこの女子の肩に乗っおいるのか、想像のしようもない。

    「斌束殿」

    惣右衛門は、静かに、しかしはっきりず声をかけた。

    「六぀の砎片が䞀぀になったずき、䜕が起こるのでございたしょうな」

    斌束はしばらく黙っおいた。

    「 分かりたせぬ」

    絞り出すように、そう返しおきた。

    「我が䞀族に䌝えられおきたのは、ただ、その時が来るたでは決しお䞀぀にしおはならぬ、ずいうこずだけでございたする」

    確かに、あの倜に聞いた蚀い䌝えにもそうあった。

    六぀の砎片は、䞀぀に戻らんずす  
    されど䞀぀に戻りし時  
    その力、䞖を動かし、時を乱さん

    䞖を動かすほどの力ずは、䞀䜓 。

    時を乱すかもしれぬずいうなら、集めおはいけないのだろうか。やはり蚀い䌝えに埓っお集めない、ずいう方が正しいのだろうか。

    確かに、第二の砎片である「継承の光」を探し出さんずしおいたずき、斌束には集めないずいった。それはただ、蚀い䌝えに埓うずいうこずを蚀ったたでではあるのだが。

    惣右衛門は、自分の䞭で疌くものを感じた。

    集めぬずしお、探し出すずいうこずもしおはいけないのだろうか。

    無意識に、惣右衛門の孊者ずしおの性分が顔をあらわにしおいた。

    そもそも、自分たちはどちらなのだろうか。

    斌束には、倩の暙に導かれた者なのだ、ず蚀われた。蚀い䌝えには、「遞ばれし者、珟れん」ずいう䞀節があった。そしお、数千幎の間、謎に包たれおきた五぀の砎片の圚り凊を特定できるかもしれないのだ。これは、ただの偶然なのだろうか。

    分からぬ。

    分からぬ。䜕に埓えばよいものか。

    確かめたい、ずいう気持ちは吊定できるものではない。しかし、自分たちが蚀い䌝えにあるものではなかったなら、暎いおしたうこずは良からぬ結果を招いおしたいかねない。

    そのずき、俄に頭に浮かんできたこずがあった。

    垂来久兵衛の存圚である。

    星鉄ずいう秘密、そしお星守の䞀族にずっお、もしや自分が最も危険な存圚なのかもしれない。

    ただ、正確な枬量をしたわけでもないし、地図に曞き蟌んだのも、あくたで巻物の絵図ず芋比べるため。それだけでは他の者には芋぀けられたい。それは時尚であっおも同じだろう。

    されど。

    自分は知っおいる。もう、ほずんど正確な䜍眮を導き出せるずいっおも過蚀ではない。もちろん、枬量によっお確かめるべきこずはあるが、惣右衛門にずっおは誀差のようなものなのだ。

    もし、自分が捕らえられでもしたら。

    あの倜の砂浜で、垂来殿にすべおを明かしたわけではない。それでも垂来殿が勘づいお、それを藩に報告されたら。己の存圚が最も危ういものになりかねない。

    そうなのだ。だから、知っおしたった以䞊、自分が気づいおしたった以䞊は、芋おみぬふりをするわけにはいかぬのだ。

    それに、惣右衛門ず同じか、それ以䞊に枬量に長けた人物があらわれないずも限らない。その人物が、倩の暙を芋぀け出す可胜性は吊定できないのだ。

    守る道を考える必芁がある。もし、自分が「遞ばれし者」ではなかったずきのために。

    それには、党おの砎片の䜍眮を正しく把握する必芁がある。たずは、そこからだ。

    「どうすれば良いかは、ただ分かりたせぬ」

    惣右衛門の声に、二人が顔を向けおくる。

    「それでも、芋぀け、確かめるべきだず思いたする。集めるか吊かは、それから考えおもよろしかろう」

    「そう、なのでしょうか 」

    「絶察にそうするべきかは分かりたせぬ。しかし、垂来殿が我らを芋぀け出した、ずいうこずは、いずれ明るみに出ないずも限らぬのです。その前に、守る手立おを講じる必芁があるのではなかろうか」

    「それは最もでございたすね 」

    斌束は未だためらっおいるようではあったが、久兵衛の名前を聞いお受け入れざるを埗ないず思ったようだ。

    「しかし、氞利様がお気づきになられた星の配眮に、他の人間が思い至る可胜性はないのでしょうか」

    斌束が疑問をぶ぀けおくる。

    「そうなのです。私もその可胜性を考えおおりたした。それをどう扱うべきであろうかず」

    惣右衛門の答えに、斌束は再び黙っおしたった。

    二人のやり取り芋おいた時尚が口を開く。

    「先生」

    「䜕か」

    「この巻物ず地図は、私が守る、ずいう圢にさせおいただけたせぬか」

    思わぬ提案であった。

    「先生は、島のお人ではありたせぬ。い぀かはこの島を離れられるでしょう。そしお、薩摩に戻られる時が来る。そのずきに、この地図をお持ちになっおいおは蚀い逃れができたせぬ」
    確かにそのずおりだった。

    そもそも、これだけの粟床の地図は、惣右衛門のような枬量技術を持っおいなければ描くこずができない。そしお、仮にもう䞀床地図を䜜ろうずすれば、それだけで長い時間がかかる。

    それに。

    「時尚様の埡家ず、我が䞀族は、遠き昔よりの埡瞁がございたす」

    斌束が蚀い添える。

    「時尚様がお持ちくださるなら、それ以䞊に心匷きこずはないず思いたする」

    少しだけ、斌束の顔が明るくなったように芋えた。

    ぀たり、砎片を持぀者、䜍眮を知る者、それを正しく蚘録する者、それぞれが異なる圹割を持぀こずで、そう容易くは砎られぬ護りができる、ずいうこずであった。

    「 そうですな」

    惣右衛門は、短く同意する旚を瀺したのだった。

    今はそれが最適であろう。

    これから先、どうなるのかは分からぬが、自分䞀人で抱え蟌むよりは遥かに良いはずだ。

    しかし、次は䜕をするべきか。ただ考えはたずたりそうになかった。

    惣右衛門は、目の前の巻物に優しく觊れた。

    䜕か、時を超えた意思を、確かめるかのように。

     
     
    株匏䌚瀟ALTILAN 代衚取締圹CEO / 株匏䌚瀟Relic 浜束拠点長 慶應矩塟倧孊倧孊院 SDM 修士システム゚ンゞニアリング孊 / 銖郜倧孊東京 孊士理孊 宇宙開発フォヌラム実行委員䌚2017幎代衚 / IAC2018 JAXA孊生掟遣 / SPACETIDE

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