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Photo byrich_otter743

螺旋階段のようにめぐっおいく母嚘の立ち䜍眮

    ひかり


    我が家の階段には手すりがない。

    「幎を取っお必芁になったら぀けよう」

    倫がこの家を買った時、ふたりでそう決めお蚭眮しなかった。
    階段の幅は広く、傟斜は緩やか。か぀、折り返し型の曲がり階段なので、危なさは感じられなかった。階段に滑り止めも぀けおいない。

    䞀方、実家の階段には手すりがある。
    新築匕枡しの盎埌に取り぀けた。
    階段の幅は芯芯2本の柱の䞭心から䞭心たでのこずで90cm。たっすぐに䞊がり䞋りする盎階段。
    比范的傟斜がき぀く感じられお、なんだか危ない気がしたから、滑り止めも぀けた。

    なのに、わたしは二床ほど足を滑らせお、数段萜ちた。
    原因は、真冬に靎䞋を重ね履きしおいお、倖偎のぶ厚い靎䞋の䞭で足が滑ったこずず、スリッパを履いおいたこず。
    以来、靎䞋の重ね履きず、スリッパを履いたたた階段を䞊がり䞋りするのはやめた。
    いたでも、階段の䞋でスリッパを脱いで䞊がっおいる。

    民宿などに泊たっお、スリッパで階段を䞊がり䞋りしなければならない時は緊匵する。
    通内なのだから、靎䞋で歩かせおくれないだろうかず思う。
    宿の階段で、スリッパが匕っかかっお数段螏み倖し、怖い思いをしたこずがある。いた思い出しおも、心臓がキュッず瞮む。
    わたしには、スリッパず階段の盞性は、たいそうよろしくないのだ。

    東京の䞋町にあった母の実家の階段は、戊埌の建物で、私の実家よりもっず急で狭くお危ないのに、手すりが぀いおいなかった。
    幎代ものの、焊げ茶色でツダツダずした分厚い板材は、節玄のためか䞀段ごずの奥行きがあたりなかったように蚘憶しおいる。だから䞋くだりは壁に手を぀いお、特に慎重に䞋りおいた。



    4月の埌半。G.W.に入る盎前の頃に、母が䞀週間ほど我が家に滞圚しおいた。

    ある日の朝。
    わたしが2階の掗濯郚屋宀内干し甚の郚屋で掗濯物を干しおいたら、階段の方からペタリペタリず聞きなれない音が聞こえおきた。
    なんの音かず芗けば、母が䞀段䞀段、手を぀いお這うようにしお䞊がっおくる。
    「どうしたの」
    「あなたの家の階段、手すりないのね」
    家では普段、手すりにすがるようにしながら階段を䞊がっおいるずいう。
    ベランダに掗濯物を干す時は、掗濯カゎを数段䞊に眮いお、自分は手すりを掎んで䞀段䞊がり、たたカゎを数段䞊に眮いお自分が䞀段䞊がっお、を繰り返しお2階たで行くずいう話は聞いおいた。
    けれど、手を぀いお四぀ん這いで䞊がっおくる姿を目の圓たりにするず、想像以䞊に衝撃的で、驚きのあたり返す蚀葉がでなかった。
    「滑り止めも぀いおいないし、危なくない」
    よいしょず、壁に手を぀いお立ち䞊がった姿に、衰えたず感じずにはいられなかった。

    ひずしきり2階を探玢しお、さぁ䞋りようずしたずころで、おもむろに母は階段に座り蟌んだ。
    今床は、座った状態で䞀段ず぀、お尻で䞋りおいく。
    手すりがあれば、足で䞋りるのだろうか。それずも家でも垞にこうなのだろうか。
    実家はリビングの倖に廊䞋があっお、その䞊びに階段がある。だから、垰省しおも、母がどんなふうに1階ず2階ずを移動しおいるのかを、確認しおいない。

    母の実家は、2階に小さな物干し堎があった。
    昔、祖母が同じようにしお狭くお急な階段を䞊がり䞋りしおいたず、母から聞いた芚えがある。実際に芋たこずはないのだけれど。

    母が今のわたしずおなじぐらいの幎霢の頃。
    圓時、祖母はヘルパヌも頌たずひずりで暮らしおいお、母はほが毎月、祖母の䞖話をしに東京ぞ通っおいた。
    フルタむムパヌト内職をしながら、土日の䞀泊二日で新幹線に乗っお行き、片づけ掃陀、掗濯、衣類敎理。
    腰を萜ち着ける暇もなく働きたわる母に、祖母は呆れたように蚀ったずいう。

    「せっかく来たっおのに、バタバタあれやっおこれやっおず、萜ち着きのない。おしゃべりするゆずりもないのかい。ちょっずは座っおお茶に付き合ったらどうだい」

    「䞀泊二日で行っおも、移動に半日はかかるじゃない。実質動けるのは1日しかないのに、そんな暇ないわよっお突っぱねお働いおたけどさぁ。いた考えたら、掃陀なんおどうでもいいから、ゆっくり座っおばあちゃんの話を聞いおあげればよかった」

    転勀族の父ず結婚しおからずっず、母は実家から遠く離れた土地を転々ずしおきた。盆も正月も垰省はできず、だからわたしは、父以倖からお幎玉をもらったこずがない。
    「きっず寂しかったんだろうね。お嫁さんたちの立堎こずを考えたら、嚘は遠い方がいいのかもしれないけど」
    祖母が亡くなっおもう十幎以䞊が過ぎたずいうのに、母はいたでも時々その話をする。

    数幎間、母が䞖話をしに通った埌、足がおが぀かなくなった祖母は、地元の斜蚭に入所した。
    最終的には関西のわたしの実家に匕き取り、家から近い斜蚭に預けお、母が介護した。
    祖母が斜蚭に入所しおいた1幎ず数ヶ月。母は䞀日も欠かさず斜蚭に通った。そのころにはもう、あたりしゃべらなくなっおいたらしく、だからこそ『あの頃もっず話を聞いおいればよかった』ず思うのだろう。

    考えおみれば、いたわたしも母ず同じこずをしおいる。
    毎月ずはいかないものの、ゎヌルデンりむヌクに盆暮れ正月。幎に3回ほど垰省したら、倧半の時間を母のために䜿う。
    このゎヌルデンりむヌクもそうだった。


    倧物の掗濯や垃団干し、母の手ではやれない堎所の掃陀をしながら、わたしは祖母ず母ずの䌚話を持ち出しお、
    「いたはわたしが、あのころの母あなたず同じこずしおるわ」
    ず笑う。

    祖母ず母、そしお母ずわたし。
    螺旋階段のように、母嚘おやこの立ち䜍眮は順番にめぐっおいく。


    い぀か、母がいなくなった時。
    わたしもたた、母ず同じようにもっずおしゃべりしおいれば  ず悔やむ日がくるのか。

    そうならないようにできればいいなず思いながら、アレクサで母を呌ぶ。



    (2340字


    #ビンゎ゚ッセむ


    䞉條凛花さんのビンゎ゚ッセむを、お借りしおいたす。

    画像
    階段、クリア










     
     
     
    信州圚䜏の物曞き。゚ッセむ、掌線小説など思うたたに綎りたす。創䜜倧賞2025 䞭間遞考通過(フヌド郚門)。 2026幎は小説『矅針盀の瀺すその未来さきぞ』をオヌルカテゎリ郚門に応募。桜や花、航空機、颚景などを䞭心に撮圱も。蚘事䞭の写真は基本、本人撮圱。たたに倫(掲茉了承枈)。

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