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旅と片づけと理想

    ひかり


    「旅行に行く前に部屋を片づけていくのって、好きじゃないの」

    まだ30代の頃。
    何度か一緒に遊んだり旅をした友人が、そう言った。

    当時、彼女もわたしも汚部屋だった。

    日々仕事に趣味に忙しく暮らして、部屋を整える時間も気持ちにも余裕がなかった。

    わたしは旅行前に少しでもきれいにして出かけようとしていたが、それを聞いた友人が言ったのが、冒頭のセリフ。

    なんで?と理由を尋ねたわたしに、彼女はあっけらかんと言った。

    「だってなにかあったら、覚悟してたのかなってなるじゃん?」

    一言一句同じではないけれど、そんな意味の言葉だったと思う。

    なるほど。

    わたしはそれ以降、時間がない中で無理に片づけて旅に出るのをやめた。

    その方が楽だから。
    片づけなくていい理由に、飛びついたのだろう。


    だけどよく考えてみれば。
    なにかあった時、片づいていた方がいいのは明らかだ。

    万が一の時、誰が部屋に入っても恥ずかしくないように、とまでは思わないけれど、整頓されている方が立ち入った人は困らないだろう。


    夫はきれい好きの片づけ上手で、モノも少ない。
    モノを処分するのに躊躇しないタイプ。
    わたしと真逆。

    結婚して10年も一緒に暮らせば、汚部屋出身のわたしでもそれなりにきれい好きにはなるもので、独身の頃よりずいぶんマシになった(と思う)。

    3日以上家を空ける時は、

    • 冷蔵庫を空にする。

    • バリスタやティファールの中の水は空にして、乾かしていく。

    • LDK、玄関、寝室はきれいに整えていく。

    この3つがマイルール。


    例外は自分の部屋。
    モノが多すぎて自分でもどうにもならなくなって、見るたびにため息が出るありさま。

    それでも、これだけはやると決めた場所だけ片づけて旅や帰省に出れば、帰ってくるなりうんざりはしないし、30〜40分で旅荷物の解体整理ができる。

    なによりこの10年で、わたしは、散らかった部屋に帰宅するより、きれいに片づいた部屋に帰ってきた方がホッとするようになった。


    だからいずれは。
    自分の部屋もきれいに片づいた状態で、旅や帰省に出られるようになりたい。




    (840字)
    #33日ライラン



     
     
     
    信州在住の物書き。エッセイ、掌編小説など思うままに綴ります。創作大賞2025 中間選考通過(フード部門)。 2026年は小説『羅針盤の示すその未来(さき)へ』をオールカテゴリ部門に応募。桜や花、航空機、風景などを中心に撮影も。記事中の写真は基本、本人撮影。たまに夫(掲載了承済)。

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