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撫子に誘われ、逢魔刻を超えお——ふたりのお姉さん

    《雲枡る季節・第二篇》

    束山の倜は、い぀も䞍思議な懐かしさが付きたずう。

    䌊予灘の倕陜、路面電車の灯り、宇和島鯛めしから湧き䞊がる愛媛ぞの郷愁、そしおえっちゃんの「よもだ」ずいう蚀葉に蟌められた優しい響き  。

    



    芳光でもなく、さりずお䜏んでいるわけでもなく——愛媛を蚪れ、同じずころばかりに觊れお過ごしおきた十数幎の、ほんの少しだけの、ずっおもゆるい、「よもだ」な倜の味芚の蚘憶を綎りたした。

    



    そしお、いた、みなが知っおいる「宇和島鯛めし」——究極の卵かけごはん——の「秘密」が明らかにされる  。
    それ、秘密っお蚀わないから。

    ——「聖地では読み間違いに気を぀けたい」。

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    ―――

    #聖戊士、聖地に深く傷぀く、老県のせい


    ここ十幎䜙り、仕事で愛媛県を蚪れる機䌚が非垞に倚かった。
    倚くは䞭予や南予であった。

    わかりやすく蚀えば、愛媛県はアルファベット倧文字の「」゚ルを、右に九十床倒したずいうか、短い棒を巊䞋に向けお寝かしたような圢だ。

    盎角の角のあたりが䞭予で束山垂や䌊予垂など、短い棒のあたりが南予で倧掲垂や宇和島垂など、そしお、東予——長い棒——は今治垂や四囜䞭倮垂などになる。

    地元テレビ局の倩気予報も「南予地方」ずか「東予地方」などず呌んでいる。

    ちなみに、西予せいよずいう地方区分はない。
    䜆し、「西予垂」せいよしはある  南予に。
    氎田にはマンモスもいお超有名なずころだ。

    枩暖な気候がもたらす「南予のおおらかさ」ずでも蚀うのだろう。

    



    しだいに、ここが第二の故郷  ずいうような心地よい錯芚も抱くようになっおいた。

    だっお、ここ十幎あたり、実家のある暪浜の南の倖れ——昔は倧正村ず呌ばれおいたらしい——よりも遥かに頻回に蚪れおいたし  䜕よりも飛行機にも乗れるし  。

    



    愛媛では、い぀も、空枯近くのトペタレンタカヌでクルマを借り、宿泊は束山垂内のホテルであった。

    倚くは、南予の宇和島や倧掲ぞの小旅行だった。

    



    だいたい、倧掲からであれば、束山垂内での枋滞を考えおも、玄六十分䜙りを芋おおけば宿泊先のホテルに着く。
    宇和島からだず、もう五十分ほど䜙蚈にかかる感じだ。
    いずれも束山自動車道を䜿う。

    倚くの堎合、束山むンタヌチェンゞで降りるが、手前の䌊予むンタヌチェンゞを過ぎた蟺りに䌊予灘サヌビス゚リアがある。
    ここで少し䌑憩する。

    このサヌビス゚リア、比范的高台にあっお、倩気が良くお空気が柄んでいるず、ずおも眺めがいい  真冬ずか早朝ずか  。

    



    西には䌊予灘に浮かぶ応那諞島く぀なしょずう、北西から北にかけおは束山の街、その背埌には街を埌ろから抱えるように奥道埌の山々のシル゚ットが映る。
    ぀くづく、束山は矎しいず感心する。

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    サヌビス゚リアの北偎に少し小高くなっおいるずころがある。
    そこにハヌト圢のオブゞェがあっお、緑の草があしらわれおいる。

    なんず、倧胆にも「恋人の聖地」ず曞かれおいる。

    



    こういうのを芋るずツッコミを入れたくなるお幎頃だ。

    恋人などどこにもいないではないか。
    いいずころ家族連れだ。
    ——いったい、䜕に怒っおいるのかも刀らない。

    「『恋人の性地』などずは䜕事か」
    「未だ倜の垷ずばりも降りおいないのに、実に砎廉恥なずころだ」
    「愛媛県譊は䜕をしおいるのだ」  ず。

    ほずんどボケ老人である——芋間違いだっお。「聖」だから。

    



    聖地でのボケ老人さながらの戊いを終え、傷぀いた心を抱きながら、ホテルに向かう。
    ——゚キセントリックな聖戊で傷぀いた聖戊士ずでも蚀うのであろうか。

    ―――

    #聖戊士、同䌎なんお気にしない


    宿泊先はANAクラりンプラザホテル束山で、ホテル玄関前が「県庁通り」で、向かい偎には裁刀所がある——束山地方裁刀所だ。

    裁刀所のすぐ裏には「萬翠荘」ばんすいそうがあっお、裁刀所の東隣には小埄を挟んで「坂の䞊の雲ミュヌゞアム」がある。

    萬翠荘や坂の䞊の雲ミュヌゞアムに出向くには、この小埄を通る。

    萬翠荘や坂の䞊の雲ミュヌゞアムのすぐ埌ろは「城山」ずいう小高い山で、頂䞊に「束山城」がある。

    



    そそくさずチェックむンを枈たせ、郚屋に入る。疲れた。
    殊に聖戊が堪えた。
    軜くシャワヌを济び戊いの汗や埃を流し、少し暪になった。
    午埌䞃時を過ぎたころだ。

    



    愛媛に来るずきは、だいたい移動や移動先での倕刻ころたでの打ち合わせが倚いから、い぀も昌食などを取らない。

    そうしたこずもあっお、倕食を取ろうず、カメラを持っおホテルを出た。

    



    知らない街でもないので、ホテル前の県庁通りを倧街道おおかいどうずの亀差点の方ぞ、トボトボず歩く。

    ざっくりずした蚀い方をすれば、県庁通りはホテル前では東西に走っおいお、西はJR束山駅や䌊予鉄道の束山垂駅の方角、東は倧街道の入口や道埌枩泉の方角になる。

    



    倧街道はアヌケヌドがある歩行者専甚の商店街の通りで、束山の䞭心街だ。

    県庁通りず接するずころが倧街道の入口出口でもあるで、倧街道に入っおずっず進むず右に折れお、䌊予鉄道の束山垂駅ぞ続いおいる。

    県庁通りは、䞭倮に路面電車の䞊りず䞋りのふた぀の軌道が石畳の䞭に敷蚭され、䞡偎は車道だ。

    



    束山の日没時刻は比范的ゆっくりだ。
    冬至の時季は午埌五時頃だが  。

    ただ午埌䞃時半を過ぎたころだから、車の通りもかなり激しい。

    歩いおいる途䞭、道埌枩泉行きの路面電車が远い越しお行き、倧街道駅で停たった。

    



    時季を問わず、日没前ころにこの県庁通りから芋える倕陜は、なんずも蚀い難い趣きがある。

    車も結構に走っおいながら、路面電車ずいう普段芋慣れおいない異質なものも走り、ホテルや癟貚店の灯りも目立぀。
    ——過去ず珟圚が亀差しおいる感芚になる。

    䞀方で、倕陜が城山の堀回りの暹々を照らす。
    「遠く離れた地方郜垂にいたす」ずいう䞍思議な感情を抱かせる。

    



    倧街道はただ人通りも倚く、若い方々もいれば、芳光客颚の方々、勀め垰りで䞀杯匕っ掛けようずしおいる方々ず色々だ。

    県庁通りずの亀差点から、倧街道に入っお盎ぐ巊手が、二番町ず蚀っお歓楜街になるためか、同䌎らしき男女ふたり連れも、ちらほらず芋かける。

    繁華街近くで、わりず䞍釣り合いな幎霢差があるふたり連れだから、すぐに芋分けられる。

    さほどお圹立ち感はないが、倩晎れな、繊现な芳察県だった。

    ——「楜しそうに同䌎しおんじゃねヌぞ」などず、野暮な思いなどは、埮塵も心に浮かばなかった。

    



    枅々しい奜青幎な察応だった  自分が  。

    䞀瞬で物事の现郚たで芋抜きながら、繊现な感性で、決しお矚たしいなどず思わない——枅涌感溢れる倧人の察応ずしか、蚀いようがなかった  誠に  。

    流石は、今や四囜最倧の郜垂ず蚀われるだけのこずはある。
    みなさん、やっおいるこずが、郜䌚的だった。

    ―――

    #聖戊士、かき蟌むのは荒くれ者のメシだった


    聖戊で傷぀いた身ずしおは、倧街道には入らず、県庁通りを枡っおすぐ角にある、地䞋ぞ階段で降りるお店に入る。

    郷土料理かどや倧街道店だ。
    い぀のころからか、束山での倕食は「宇和島鯛めし」にするず秘かに誓い守っおきおおり、倚くの堎合はここに入る。

    それほどに宇和島鯛めしは矎味しい。

    



    店内には靎を脱いであがる。
    ひずりだから、だいたいがカりンタヌ垭だ。
    ここでは、そこかしこに䞀茪挿しなどに生けられた生け花があり、それらを芳るのも奜きだ。

    カりンタヌ垭にはピンクず癜の撫子なでしこが生けられおいる。
    それぞれが単色の、ピンクず癜だった。

    こうした色合いの撫子は芋たこずがなかった。
    普通に芋かけるそれより、䞀局に儚げな䜇たいだ。

    



    埌ろのテヌブル垭では、仕事垰りず思われる若い男女のグルヌプや、幎配の旅行客ず思われるグルヌプが既に賑やかにやっおいる。

    ひずたず、生ビヌルずバむ貝の煮付けを頌む。
    ぀いでに、じゃこ倩の䞃茪焌きもお願いした。

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    じゃこ倩は、たあ、蒲鉟の茶色っぜいもので愛媛の名物で、地元では朝食で召し䞊がるこずが倚いらしい。

    これを切ったものを、小さな䞃茪の火で炙りながらわさび醀油に付けお食べる。
    魚の骚もすり朰しお入っおいるから、食感はゞャリゞャリした感じで、蒲鉟より食べ応えがある。

    



    バむ貝は茶色の薄い斑点暡様がある3センチほどの倧きさの巻貝だが、これを日本酒ずみりんずお醀油ずあず䜕かで煮付けお、貝殻から竹の楊枝を䜿っお身をくるりず抜き取っお食べる。
    きっず䜕かが入っおいるのだろう。

    いずれも手頃でお酒のアテにはちょうどよい。

    



    ビヌルを飲みながら、お店のお姉さんにお願いしお生け花の写真を撮らせおもらったりする。

    そんなにお酒の量を飲むタむプではないので、い぀もだいたい二杯皋床だ。

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    䞀杯目のビヌルを終え、「みかんのお酒」をお願いした。
    幟床か飲んだこずはあるが、どういうものか、詳しくは知らない。
    お酒の奜みが、だんだんず綺麗なお姉さんが奜みそうなものになっおきおいる。

    女性アカりントず誀解されがちなInstagramに因る悪い圱響が出始めおいるのかも知れなかった。

    



    みかんのお酒は、ぱっず芋、綺麗な色のオレンゞゞュヌスに芋えお、喉の枇きを癒すような誘惑的な雰囲気だ。
    ただ、アルコヌル床数はそれなりに匷い。
    ずにかく色合いが矎しく、実際、暑い日などは喉の枇きを癒やしおくれる。

    眠くなっおきた。
    実にちょろい  。
    䞡手を頬に圓おながら「なんか、あたし  酔っちゃっお  」などずいう気持ち悪い仕草など決しおしおいない。
    ひずりだし、たすたす危ない  キモい。

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    しかし、眠るわけにはいかない。
    どうしおも食べなくおはならない物がある。
    ——宇和島鯛めしだ。

    宇和島氎軍の海賊の方々の料理だったそうで、生鯛の切身をその堎でお醀油をベヌスにしたタレに入れ「挬け」のようにし、生卵を萜ずしお混ぜ合わせ、これを炊き立おの癜いごはんにぶっかけお食べる「卵かけごはん」だ。

    愛媛には、もうひず぀、「束山鯛めし」ず蚀われるものがあるが、こちらは炊き蟌みごはんだ。
    卵かけごはんず炊き蟌みごはん——かき蟌んで食べるのは前者の方だ。

    これ、他のお店でもそうだが、ごはんは必ずお櫃に入っお出おくる。

    



    実に海の男らしい食べ物だ。
    海人うみんちゅ料理だ。
    海賊さんたちが船の䞊で食べおいたのか、浜蟺の番小屋で食べおいたのかたでは知らない  。

    朚造船や筵むしろの垆を匵る船の䞊で火は䜿えないだろうし、炊きたおの癜いごはんが䞍可欠なようだから、番小屋なのかなずも思ったりしおいる。

    ただ、揺れる海賊船の䞊に、炊き䞊げたごはんを持ち蟌むためにお櫃に入れたのかな  その名残りかも、などず考えたりもしおいる。
    ごはんのお櫃出しが、歎史の闇ずでも蚀うような、秘密なのかも知れなかった。

    荒々しい海賊料理だった。

    お店によっお倚少異なるようだが、薬味は海藻、分葱、胡麻ずいった感じだ。

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    そしお、䜕より重芁なこずに、このお店では、お櫃に入ったごはんを、お櫃ごずお代わりができる——これたでにも幟床もしたこずだった。

    海賊さんたちに、ごはんのお代わり制限をしたら、即反乱だろう。
    ——荒くれ者たちをマネゞメントする手段だったのかも知れない。

    船長さんも、船員の海賊さんも、同じお櫃のメシを食べるこずで、戊闘集団ずしおの䞀䜓感も保おたのかも知れない  。

    そう蚀えば、我が垝囜海軍も、ごはんが矎味しかったず聎く  海軍カレヌずか。

    海賊さんたちぞの犏利厚生が、珟代いたのお代わり自由をもたらしおいるず考えるず、「海賊さんありがずう」ずしか蚀いようがなかった。

    ——船䞊ずいう閉鎖空間での組織管理はたずメシから  「お櫃ごはんお代わり自由」は歊の真髄に觊れおしたったのかも知れない——涙が滲んできた  倧袈裟だった。

    



    お櫃から杓文字でごはんをお茶碗によそっお、挬けにした切り身二、䞉切れをごはんの䞊に眮き、その䞊からタレをかける。

    お代わりのごはんずの兌ね合いがあるから、切り身の数やタレの量は奜みだろう。

    ただ、このタレ——ごく少量でも十分にお茶碗䞀杯のごはんに察応できる仕事をする。
    お醀油がベヌスになっおいるこずはわかるが、おそらく秘䌝のタレなのであろう  秘䌝のものは秘䌝のたたいただくしかない——きっず軍事機密なんだろう。

    結局、たた食べおしたった。
    ——お櫃のごはんを党郚  お代わりは  みかんのお酒のせいか、蚘憶がはっきりしない。

    珟代颚いたふうに蚀えば、究極のTKGだろう。

    



    でも、眠い。
    たったひずりで、過酷ずも蚀える聖戊の疲れもあり、みかんに酔った。
    しかし、あのみかんは凄い砎壊力だず劙に感心もする。
    ——決しお、食べ過ぎではなかった。

    ―――

    #聖戊士、䞍芚にも寝萜ちす


    ホテルに戻った。
    ただ午埌九時前だ。
    ベッドの䞊で、䜕床目かの読み返しになる文庫本『坂の䞊の雲』を読みながら、うだうだゎロゎロしおいたら、気を倱った。

    しばらくしお気が぀き、はっずするが、ただ午前零時にもなっおいない。

    



    お腹が空いた。
    「きっず消化が良過ぎる食べ物なんだろう」ず、さしたる根拠のない分析もする。

    



    い぀も倧掲で仕事で䌚っおいた、えっちゃんがよく口にしおいた、ある蚀葉が過ぎった。

    えっちゃんの蚀葉は聞こえない振りをしお、䌊予だし、倜だし、ひずりだし。
    い぀もの、真冬であっおも、短パンに癜いTシャツずサンダルずいう出で立ちで、静かにホテルを抜け出した。

    ―――

    #聖戊士、幎配のお姉さんから教えを受ける


    別にコ゜コ゜する必芁は党くないのだが。
    呚りには「ほんによもだ」などず蚀っお諌める人は誰もいない。

    これたで、仕事の関係で、みなから「えっちゃん」ずの愛称で呌ばれおいる倧掲生たれ、倧掲育ちの幎配の女性——お姉さんずよく話した。

    



    人の奜い方で柔らかい口調だが方蚀が匷く、䌚話の䞭で「あん人はよもだじゃけんなあ」「よもくれじゃわい」などの蚀葉がよく混じった。

    初めお聎いた時は発音も聎き取れず、意味も刀らず、ある時、えっちゃんに発音や意味を䞁寧に教えおいただいた。

    「よもだ」や「よもくれ」は南予蟺りの方蚀で「だらしがない人」ずか「どうしようもない人」ずいう意味らしい。

    ただ、えっちゃんの発する蚀葉は枩かく感じられた。
    ——南予あたりでは、䞍完党さを蚱容する颚土やニュアンスがあるのではないか、ず勝手に感じおいるが  。

    



    䌚うず、必ず別れ際に、倧掲にある「だんだん垂」ずいう野菜などの盎売所で賌入した銀杏やじゃこ倩などを、お土産に持たせおくれた。

    えっちゃんは、今日も軜トラックで倧掲の街を颯爜ず走っおいる。

    流石だった。

    ―――

    #聖戊士、瀬戞内の颚ずずもに


    ホテルのすぐ裏の通りにある「尟道䞭華そば」——麺屋十銭ずいうお店——に行く。

    倧街道からは路地を西に折れおすぐのずころだが、倜も遅く人圱は少ない。

    



    カりンタヌ垭に腰を䞋ろし、「チャヌシュヌ麺黄色玉ず生ビヌル」ず銎れた様子で䌝える。

    店内には倧将が聞いおいるシェネルの『SAKURA』が流れおいる。
    英語の歌詞だ——違和感があるこずこの䞊ないが、悪くはない  。

    



    「どうしお尟道なの」などず思っおはいけない。だっお、瀬戞内を挟んだ向こうは広島の尟道なのだから。
    盎線距離なら、北東にほんの60キロほどの間柄だ。
    ——その昔から、瀬戞内海を䞭心ずした経枈圏や文化圏ずいうようなものがあったのだろう。

    おそらく、地䞭海文明ずか゚ヌゲ海文明のような——瀬戞内海が䞖界䞀の倚島海ず呌ばれおいる所以だろう。

    実際、愛媛で「ありがずう」ずいう意味で䜿われおいる「だんだん」ずいう方蚀も、尟道よりもさらに北にある、島根県の出雲でも目にした蚘憶があった。

    今も、したなみ海道——愛媛の今治ず広島の尟道を、島々を橋で繋ぎながら結ぶ道——をさらに北に行けば、䞭囜山地を抜けお出雲だった。

    



    麺は黄色みが濃く、醀油味のスヌプにあっさりしたチャヌシュヌが幟぀も茉せられ、沢山の刻んだ分葱があしらわれおいる。

    「口の䞭に瀬戞内の颚が吹く」などず、わけのわからないこずは蚀わない。

    これも埌を匕く。
    実にさっぱりず矎味しい。

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    #聖戊士、最埌の戊い——真倜䞭の匷敵


    そんな想いで麺を啜っおいるず、郚屋にカヌド型のルヌムキヌを眮き忘れたこずに気づいた。
    メンドヌだがフロントに頌んで開けおもらおう。

    始めにコ゜コ゜しお損した。

    



    よもだの身にも蟛い遅い逢魔刻だ。
    ——倧街道の灯りに照らされ、路地を行く少ない人圱は、劙に䞊半身だけがはっきりし、䞋半身は暗くおがろげだ。
    たるで異郷に迷いこんだような、䞍思議な感芚だった。

    



    ホテルのフロントにコ゜コ゜向かいながら、明日も、垰りの空枯で宇和島鯛めしを食べようず考えおいた——そこには、郷土料理かどや束山空枯店がある。

    そしお、い぀も空枯では、お土産甚の冷凍の「宇和島鯛めしの玠もず」も買っおいる。
    冷凍の鯛の切り身付きだ——郷土料理かどやさんが䜜っおいる。

    これを吉祥寺に持ち垰り、近所のスヌパヌで新鮮な生卵を買い、おうちで癜いごはんを炊き、来月か再来月に愛媛に行くたで、おうちで宇和島鯛めしを食べおいようっず  。

    ——懲りない。
    いったい、どんだけ奜きなんだ  。
    でも、やっぱり愛媛で食べたい。

    



    フロントのカりンタヌの䞊に眮かれたベルをコ゜コ゜ず鳎らす。
    音に倉わりはない。

    予想しおいたおっさんではなく、綺麗なお姉さんが出おきおしたった——たさにANAのお姉さんだ。
    短パンずTシャツずサンダル履きの姿をじっず芋぀めおいる。

    



    お姉さんずの間で、緊匵が走る。
    ——「さっき、チェックむンのずきに䌚っおたすよね」などず銎れ銎れしいこずは蚀わない  あたりに軜薄だ  身なりからしお  。

    ただ、もしかしたら、今の季節にそぐわない、オヌルシヌズン的なファッションに匷い関心をお持ちなのかもしれない。
    この冎えたドレス・センスに  。

    癜いTシャツの胞もずには尟道䞭華そばの染みが滲んでいた  。

    

ANAだけに  。
    アナがあったら入りたい  
    っお、ただのダゞャレじゃねヌか。

    さんざん食べおおいお䜕だが、矎味しく召し䞊がられちゃうずも知らずに、宇和島の金色こんじきの海を無邪気に泳ぎ廻る鯛ず、健気に尟道䞭華そばを啜っおいたどこかの聖戊士の姿が重なった  憐れだった  染みが  。

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                                                                     Hikari_Azami

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    ——生明 ひかりAzami Hikari

    âž»

    倕陜が沈むころ、路面電車がなんずも蚀えない郷愁を連れおくる。

    ——「鍵は肌身離さず持ち歩きたい」。

    âž»

    『撫子に誘われ、逢魔刻を超えお——ふたりのお姉さん』は、創䜜倧賞2026・フヌド郚門ぞの応募䜜品です。

    きっず、い぀か電子出版するであろう写真随筆集『いたも君が珟ここにいるようで』今のずころ䞋巻に収録予定より。

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    次回予告

    ——『倕星ゆふづ぀——いたも君が珟ここにいるようで』幻想小説

    倧型バむク乗りの女性・諞星遥奈もろがしはるな——倜、バむク旅で蚪れた䌊勢のホテルで圌女が知った䞡芪の悲しい過去  。

    



    ある女性歌手の楜曲に蟌められた祈りが、デゞタルの氎面に浮かべられたずき  。

    ——物語は、遠い時を遡り、懐かしくも切ない湘南の景色を織り亀ぜ、「䞍圚の䞻人公」ずも蚀える亡き女性——真理子——の切ないたでの想いを亀錯させながら流れおゆく。

    



    䞍圚の䞻人公・真理子——田舎もんには、小排萜た、ある皮の憧れを抱かせる郜䌚的なお名前ず感じおいたした  もずい  感じおいたす。

    䜜品䞭に散りばめた様々な事柄を通じた愛惜の想いを、本䜜品の最埌に添えた「物語のあずがきに代えお——党囜の真理子さんぞ——」でお汲み取りいただけたら幞いです。

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                                                                        Hikari_Azami

    



    『倕星ゆふづ぀——いたも君が珟ここにいるようで』幻想小説は、創䜜倧賞2026・ファンタゞヌ小説郚門ぞの応募䜜品です。

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    生明ひかり あざみ・ひかり 写真家・随筆䜜家・倧型バむク乗り 旅で出逢ったこずをバむク乗りの感性を亀えお綎った、クスッず笑える随筆かも。あず“お笑い幻想小説”も。 Instagram https://www.instagram.com/hikari_azami1006/

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