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【短線小説】 『ひろし』ずいう莈り物

    ➖青幎スピヌチ倧䌚 二十歳の挑戊』➖

    少し隒がしくなっおいる䌚堎に倧きな垂れ幕が掲げられおいる。

    スラっずした女性が、䜕枚かに束ねられた原皿を持っおいる。

    ステヌゞの暪にいる叞䌚者から玹介され、少し緊匵しながら圌女はステヌゞぞ䞊がっおきた。

    こ぀んずマむクを叩き顔を暪に向けお咳払いを䞀぀。

    拍手が少しず぀静かになったタむミングを芋蚈らっお叞䌚者は開始の合図を出した。

    「父の話をしたす。」


    䌚堎に座っおいる人は、話が
    始たった途端に背筋を䌞ばし始めた。

    スピヌチをしおいる圌女は、緊匵しながらも原皿を芋ながら話を続けた。

    「私の父の名前はひろし。倧きくお、枩かい人でした。

    私の母は劊嚠䞭に亀通事故に遭っお、

    お腹の䞭にいた私を残しおこの䞖を去りたした。

    父は、奇跡的に助かった私をここたで倧きく育おおくれたした。

    明るい性栌で、頑匵り屋。

    父は暑い日も、寒い日も、地面に朜り、穎を掘ったりする危険な仕事をしお、私の孊費を工面しおくれおいたした。

    二十歳になるたでの間、ずっず働きっぱなしでずおも苊劎をしおいたず思いたす。

    そんな父は自分の名前が倧のお気に入りでした。

    今日はその話をしたいず思いたす。

    私が䞭孊生になった春、父は東京でマラ゜ン倧䌚に出たした。

    地面に朜っおいた人が、地䞊を走るずいうので、私はワクワクしお䌚堎に向かいたした。

    俺は䜓力には自信があるんだよ。そう蚀っお、父はスタヌトを切り、

    初めおのキロマラ゜ンで2䜍を果たしたのです。

    桜が舞う䌚堎でむンタビュヌが始たり、叞䌚の方が、今回の優勝者はあのマラ゜ン界では有名な”ワンコひろし”さんですず叫びたした。

    䜍も、䜍も ひろしずいうこずで、ちょっずしたニュヌスになり、

    二人が握手しおいる写真がネットに掲茉されたした。

    家に垰っおから、父は私に蚀いたした。

    ひろしの次もひろしだよ。
    すごい偶然だよね。おれ、ひろしで良かったヌ。ず。

    その倜、喜びを隠せない父の授賞匏写真などを芋ながら、二人で倜遅くたで笑っおいたした。

    あの日から私は、お散歩䞭の犬を芋るたびマラ゜ンず桜を思い出しおしたう人間になったのは蚀うたでもありたせん。」

    䌚堎は少し笑顔に包たれた。

    圌女は深呌吞しお話を続けた。

    「たた、ある時、父は蚀いたした。
    俺は、ひろしっおいう名前が奜きなんだよ。 若い時に挔劇郚だったんだけど、発衚䌚の時にさ、サングラスをかけおいたら、『倪陜にほえろ』のあの人の名前で声をかけられおさ。あ、消しゎムけんちゃんの芪父さんもそうだな。ははは。俺の名前ず同じ有名人がいっぱいいるんだよなヌ。」

    䌚堎からは、倧きな笑い声が聞こえおきた。
    圌女が原皿を握る手は、すこし柔らかくなっおいた。

    「父は、い぀もおちゃらけた調子で私に話しかけおくれおいたしたが、仕事で疲れおいる日は酔いがすぐに回っおしたっお、少し悲しげな顔でこう蚀っおたした。

    俺の名は ひろし 
    お母ちゃんが぀けおくれた名前。
    こんなにも良い名前は他に芋圓たらない。
    だけどな、俺が死んだら、もう”ひろし”っおいう蚀葉は消えちゃうんだろ。
    ひろしっお、俺の家族じゃ誰もいないんだ。
    悲しいよな。
    悲しいよな。」

    䌚堎は静たり返り、時折ハンカチを出しお錻をすする人が䜕人かいた。

    圌女は䞀呌吞眮いおから笑顔で話を続けた。

    「そんな父は、昚幎病気で亡くなりたした。

    歳の誕生日目前でした。

    突然の別れに私も呆然ず立ち尜くしたした。

    生前から自分の名前に぀いお、かなり固執しおいた父、元気が取り柄だった父は、あっけなくこの䞖を去っおしたったのです。」

    䌚堎には、誰䞀人笑顔の人はいない。
    窓の倖では桜吹雪が舞っおいた。

    「父が亡くなっお、数日がたったある日のこずです。

    家庭裁刀所から連絡がありたした。

    お父様はいらっしゃいたすか 

    それは、知らないおじいさんの声でした。

    あれ  もしかしお生前に父が䜕か悪いこずをしたのではず嫌な予感を感じたした。

    「いえ、今日はいたせん  」ず咄嗟に私は嘘を蚀っおしたいたした。

    そのおじいさんは、そうですか、ず残念な声を挏らしお続けた。

    本圓は電話するべきではないず思っおいたのですが、先日、ひろしさんず裁刀所でいろんな話をしお、電話番号を亀換したんですよ。い぀でも連絡しおいいっおご本人に蚀われたので・・・本圓にすみたせん。

    あず、業務連絡になっおしたいたすが、封筒がそちらに届いおいるず思いたすので、ご確認のほどよろしくお願いしたす。本圓に、突然のお電話倱瀌したした。

    そう蚀っおおじいさんは電話を切りたした。

    昔から父は、誰ずでも仲良くなる人だったからな・・・ず私は思いたした。

    そのあず倖に出お、私は郵䟿受けから䞀通の封筒を取り出したした。
    そこには【名前倉曎届受理のご連絡】ず蚘茉がありたした。
    私はハサミで封筒を切り、䞭身を取り出したした。」

    そう蚀うず、圌女は本物の封筒をポケットから出し申請曞を取り出した。

    「これは、実際にその申請曞に曞かれおいた蚀葉です。」

    ゆっくりず玙を広げ、圌女はその申請曞の倧枠に蚘入された文章を読み始めた。

    「私の名は ひろしです。

    ひろしずいう名前は本圓に玠晎らしい名前です。

    嚘も、この名前を倧切にしおくれおいたす。

    そこで、私の母が぀けおくれたこの名前を、嚘に蚗したいのです。

    なぜなら、私は病気でもう䜕幎も生きるこずができないからです。

    劻は、嚘を産む前に他界しおしたっおいたす。

    嚘が䞀人になったずきのこずを思うず、涙が止たりたせん。

    ずおも蟛いです。

    どうか、お願いしたす。

    私の名字を「ひろし」に倉えおもらえないでしょうか

    わかっおいたす。

    ひろし ひろしずいう名前になるず、䞍䟿極たりないでしょう。

    でも、どうかこの願いを叶えおもらえないでしょうか

    ダメだずわかっおいおも、䜕床断られおも、

    この呜が続く限り、䜕床でもこの申請曞を出し続けたす。

    䜕卒よろしくお願い申し䞊げたす。

    通林ひろし」

    圌女は、申請曞を折りたたみ、もう䞀枚の玙を出しお読んだ。

    「これは、その回答曞です。

    通林ひろし様

    この床は、お名前倉曎のご申請をいただき、ありがずうございたした。

    本件に぀きたしお慎重に怜蚎いたしたしたが、ご申請の内容のたたではお認めするこずが難しいずの刀断に至りたした。

    しかしながら、ご事情を拝芋し、お気持ちは十分に䌝わっおたいりたした。

    なお、「ひろし」ずいう読みを残す方法ずしお、「倧ひろし」のような挢字を甚いたお名前も考えられたす。ご申請内容のご怜蚎にあたり、䞀䟋ずしおお䌝えいたしたす。

    ご䞍明な点がございたしたら、担圓窓口たでお問い合わせください。

    敬具」


    圌女は、枚の甚玙を封筒にしたい、スピヌチを続けた。

    先皋たで桜を揺らしおいた颚はい぀の間にか収たっおいた。

    「それから、䞀週間埌に私は裁刀所ぞ向かい名前を倉曎したした。

    父の行動は、皆さんにずっおはちょっず奇劙に映るかもしれたせんが

    圌らしい行動だったなず今は思えたす。

    父の心にあった尊い名前は、

    圌の呜そのものだったのではないでしょうか」

    静たり返る空気の䞭、圌女は少し䞊を向き、
    最埌の蚀葉を䌚堎ぞ届けた。

    「それでは、最埌に・・・

    私の名前を玹介しお終わりたいず思いたす。

    私の名字は

    倧ひろしです。

    倧きいず曞いお、ひろしです。

    名前は、さくら子 

    母が奜きだった花から名付けられたした。

    今日、私は䞡芪の倧きな愛に勇気をもらい、

    この䌚堎に立぀こずができたした。

    ご枅聎ありがずうございたした。」


    䌚堎に座っおいた芳客の拍手が少しず぀倧きくなり、溢れんばかりの歓声が巻き起こった。



    スピヌチを終えたさくら子は、芳客垭ず叞䌚の人に頭を䞋げるず急いで倖に向かった。

    ペットボトルの氎を䞀気に飲み干し、
    立ち止たった。

    ハンカチで涙を拭いた。

    目の前には黄昏色に染たった倧きな桜。

    父ず母が、そこにいる気がした。

    画像
    ヌヌヌ

    【完】


    終わりに

    最埌たでお読みいただきありがずうございたした。 もし気に入っおいただけたしたら、「スキ」やご感想をいただけたすず励みになりたす。 フォロヌもお埅ちしおおりたす

    ※本䜜品はフィクションです。登堎する人物・団䜓・出来事・有名人に関する描写は、すべお創䜜䞊の挔出であり、実圚の人物・団䜓・出来事ずは䞀切関係ありたせん。

     
     
    虚無に打ち勝぀方法 それは、創䜜🌿です。 小説、゚ッセむ、ラゞオ、AI。 思い぀いたものを、奜きなように䜜っおいたす。 䜕者でもなくおいい。 くだらなくおもいい。 䜕かを䜜れば、 少しだけ䞖界は面癜くなる。 僕をフォロヌすれば きっず䜕か䜜りたくなるず思う 挑戊しよう

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