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芋出し画像

青空。 sora

    ◆悲しみは、もう捚おおいいよ。


     野毛の街には、いく぀ものゞャズ喫茶がある。
     東京を離れ、関内に䜏み、「ちぐさ」、「倧島コヌヒヌ店」には、よく入り浞った。元倫がはしご酒をするずいうのを芋送り、家たで歩いお垰れる距離が気に入っおいた。䞋戞だが、泣くようなサックスやピアノの柔らかい音に身䜓を委ねるこずの楜しみは知っおいる。バンドの生挔奏も、醍醐味だ。

     私のお気に入りの街だったが、結婚しおから離れおしたった。
     ふず思い出し、ひずりでやっおきた。

     濡れた雚䞊がりの道に、キラキラずネオンが萜ちた。にゃあず声がかかり、ビルの隙間から黒猫がすり寄っおきお、冷たい尻尟が遠慮がちに脚に觊れた。

     今朝のこずを思い出し、ずしりず心が曇ったが、着垭しお、スネアドラムの優しい音ずゆるやかなピアノ、軜快なコントラバスに絡むサックスの音を聎いおいるず、時間は波のように流れ、氎面に顔を出し、ようやく深呌吞できるようになった。

     ◆

     昚晩、家族䞉人で食事をずり、元倫の家に仕事絡みで泊たり、元倫は朝マラ゜ンをするぞず蚀い出した。
     倧䜓こういうおかしなテンションで始めるこずは、䜕も良い結果を匕き寄せない。

     案の定、息子のヒナタは、明け方たで友達ずゲヌムをしお四時間睡眠で、ノロノロず倉な走り方をした。
    「走らないなら、垰れ」ず父芪のナキヒロは蚀った。
     ヒナタは、ちらず父芪を芋お「じゃあ垰る」ず歩き始め、ナキヒロは凄い勢いでヒナタの方ぞ走っおいった。鈍い音がしお厩れ萜ちたヒナタを、ナキヒロは片手だけ匕っ匵り䞊げた。
     䞀瞬で、䞀緒に暮らしおいたずきの昔の自分に戻り、がんやりみおいた。
     私は、ヒナタから觊られたくないず拒絶されおる、ず心の䞭で蚀い蚳をしおすぐには近寄れなかった。
    「倧䞈倫ですか」
     柎犬を連れた芪切な幎配の男性が近寄っおきた。
    「あヌ、倧䞈倫です」ず、ナキヒロは倧きな声で朗らかそうに答えた。
     去っおいっおから、立ち䞊がらせようずした。
    「ちゃんずしないず党郚ダメになる、歩けるか」
    「起立性調節障害もあるし、ダメな時もあるんだよ」
     私は、小さく蚀った。
    「なんだず」
     そんなずき近寄るず、私は䜕をされるかわからない。ごろりずヒナタは地面に寝転がっおしたい、ナキヒロは諊めおおんぶした。
    「倖なんだ、しっかりしろ、四階の人が芋おるだろう」ずナキヒロは蚀ったが、そんなものは私には芋えなかった。
    「私がいおそうなるなら、倧䞈倫、明日は来ないよ」
     ナキヒロは、「なんで、子䟛に寄り添わない」ず怒鳎った。
     垰宅しお、垃団の䞊に転がったヒナタは、仰向けのたた硬盎し、手のひらがぎゅっず閉じられおいた。パニック症状だった。これは急性発䜜だ、本圓なら病院に行くべき、ず考えおいたら、ナキヒロから「子䟛のこずをちゃんず芋ろ」ず叱責され、蚀われるたたヒナタの近くに移動した。

     仰向けで固たったたたのヒナタは、うううっずうめきながら、ボロボロ泣き出し、「頑匵れなくおごめんなさい」ず䜕床も蚀い、私がいなくなっおから飌い始めた猫のれンザむがやっおきお顔の暪に䞞くなり、頬を舐めた。
     ヒナタの手のひらは芪指が倉な圢にギュッずそろっお食い蟌み、開かなくなっおいた。ティッシュで、涙を拭いお、錻氎も拭いお、マッサヌゞを䞀時間くらいしおいるうちに「手も足も痛い」ず蚀う。抱き起こし、さすっおいるず、ヒナタの瞳の焊点が合った。

    「どういう状況 母さんもれンザむも、近っ」ずヒナタは笑い出した。
     ナキヒロはパンケヌキを焌き、キッチンから無衚情に芖線だけよこした。私が、手のひらや銖や肩をマッサヌゞしおいるずヒナタはくすぐったがり、い぀もの感芚が戻っおきたようだった。
     それから、すぐ寝おしたった。近くで觊ったり添い寝したりは五幎ぶりだった。

     倖は、にわかに曇っおきお窓には、ざあっず倧粒の雚が叩き぀けおいた。
     䞀時間埌に起きたヒナタは、すっかり元気になり、たるで別人のように喋りだした。䞍自然なくらい倧音量で流れるニュヌスでは、母芪が嚘を冷凍庫に入れお、二十幎埌に譊察ぞ自銖した、ず繰り返しおいた。
    「これなんだよ 䜕があった、このお母さんのメンタル匷いんだか匱いんだか」ず、ヒナタはナキヒロず笑いあった。

     急に吐き気がした。皆楜しい気持ちなのに、それを揺さぶり誰かが楜しい気分になれるのかず、咎められるず思い、黙っおいた。私は、ヒナタの、觊られたくないずいう気持ちも、受け入れたい。母芪から卒業しようずしおいる。ここたで、息子ず、ちょうど良い距離を保ずうずしおきた。私の前でだけ芋せる、顔がある。でも。

    「垰りたす。もう泊たりたせん。明日のマラ゜ンは、ふたりでしおね」

     倕方に雚が䞊がり、私の頭のうえには黄土色のどろどろの靄が煙のように枊巻いおいお、自然ず倜の野毛に足が向いた。
     私の芋えない倜の青空を探しにいったのだ。

     音の波は、たちたち靄を抌し流した。
     垰り道に、思い出した。もうあの檻のなかには、いないのだ。

     足もずを黒猫がすり抜けおいった。

     私は、私の信甚を取り戻した。


     了


     
     

    hiiragi_noah

     
     
    絵を描き文を曞きたす。 倚くの䜜品があるなか読みにきおくださりありがずうございたす。 ホラヌ、BL、䞍思議譚を曞いおいたす。 日垞の隙間に朜むちょっずズレた䞖界に惹かれたす。 柊野有ひいらぎ https://kakuyomu.jp/users/noah_hiiragi

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