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[4] 禁じられた「パン」が食べたい!

    少年ショパンが書いた手紙の謎を読み解いています。

    14歳のショパンの手紙には、何度も「パンが食べたい!」という言葉が出てきます。
    主治医が禁じたパンとは?なぜ禁止命令が出たのだろう?
    今回はその二つについて考えてみました。

    (1) ショパンの健康状態と主治医

    ショパン家のふたりの虚弱体質児

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    ショパンと末妹のエミリアは体が弱く、病気がちでしたので、健康に関するいろいろな注意や禁止事項がありました。しかし治療方法は、今見ると奇妙なものも多いです。ショパンの時代には、抗生物質はなかったのです。
    参考:19世紀の治療方法。瀉血(しゃけつ)


    主治医ジェラルド

    ショパンの主治医はフランス人のジェラルド先生です。彼は元ナポレオン軍軍医で、ポーランドで家庭医となりました。ショパンのお父さんもポーランドに住むフランス人なので、フランス繋がりでしょうか。

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    ジェラルド先生の肖像画は見つけられかったので想像図
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    絵の資料。昔のお医者さんのカバンは「ドクターバッグ」

    François Girardot (1773-1831) 
    フランソワ・ジェラルド(ジラルド)
    長年ナポレオン近衛軍のポーランド軽騎兵連隊の外科医を務めたが、戦場で負傷し脚を切断した。除隊時に男爵の称号を授かる。1816年以降はワルシャワに定住し、クラシンスキ家(軍人貴族)のかかりつけ医となる。また、街の貧しい人々にも医療活動を行った。

    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11625197/ 
    NCBIアメリカ国立医学図書館記事(※関連記事要約)

    貴族のかかりつけ医で男爵の称号を持つのに、不自由な足で、わざわざ出かけて貧民街で治療をしていた。歴史上はほぼ無名ですが、立派な人だと思いました。


    (2) パンの種類と背景

    さて、次は「パンが食べたい!」の、パンの種類について調べます。

    手紙に書かれた「ロールパン」はどんなパン?

    日本ではあのツヤのある巻き型のパンを想像しますが、ポーランド語で検索しても、このタイプのパンが出てこないのです。「ロールパン=bułka」で出てくるパンは…

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    「ロールパン=bułka」は、バターロールではないのだ!

    日本で見られる「ロールパン」は「テーブルロール」「バターロール」と言い、戦後のアメリカ経由です。ポーランドでショパンが「ワルシャワで食べてたロールパン」とは「カイザーロール」の事だと思います。

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    パンの絵を描こうとして、言葉のイメージの違いに初めて気づきました

    ■参考:各国のパン ウィキペディア(日本語)


    主治医が田舎パンを禁じた理由

    手紙に出てくる「禁じられた田舎パン」についても調べてみます。ポーランド語で『chleb wiejski』の英訳は『country bread』。日本語訳は普通に『田舎パン』ですね。
    ライ麦や雑穀が入った、黒っぽい硬いパンの事です。

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    ポーランド語wikiによると、世界最大のライ麦パン輸出国はポーランド

    19世紀の認識では、ライ麦パンは値段が安く貧乏人が食べるものでした。「アルプスの少女ハイジ」でも、貧しいおばあさんに白パンを食べさせてあげたいという話があり、日本でも、白い米は「銀シャリ」で、雑穀米や麦飯は「ぼそぼそしている」「黒い」「くさい」と嫌う時代がありました。
    ジェラルド先生も、生地が粗く硬く酸味があるライ麦パンは、病人にはよくないと判断したようです。

    ライ麦パンや雑穀米は、実は栄養価の優れた健康食なんですよね。わたしは大好きです!しかし前時代のこの悪評のためにライ麦の生産量は激減し、現在では白パンより値段が割高なのです。

    都会と田舎のライ麦パン、きめ細かさの違い

    さて、言葉のイメージ確認を続けます。
    「ショパンの手紙」では「田舎のパンの方が白く、キメが細かい」とあります。『都会』の方がより洗練され、パンもきめが細かいような気がしますが、この差はなぜなんでしょう?

    「きめが細かい」とは、粉の精製に「手間がかかる」こと。当時のパン職人は街のギルドに属しています。パンを購入するのは街の人です。都市部のパン屋に求められたのは、手間をかけたきめ細やかなパンよりも、いつでも安く手に入る、そういう大量生産的なパンなのではないでしょうか?

    対する田舎のパンを考えます。
    ショパンは、夏休みに招待されて田舎に行きました。この場合の田舎とは「貴族の屋敷」です。そうすると田舎の田舎パンとは「貴族の領地の農民が領主のために作ったパン」になります。大量に安く作る必要はないわけです。手間ひまかけて粉を精製し、きめ細かいパンを丁寧に作っていたのではないでしょうか?

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    田舎のパンの方が高級品

    ショパンが「田舎のパンの方が上等だ」と言うのは、そういう理由だと思われます。

    ポーランドでのパンの食べ方

    田舎パンは硬いので、薄くスライスして食べます。
    ポーランドでの食べ方を調べてみました。

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    19世紀のパンの食べ方資料は見つけられなかったので、ポーランドの現在の食べ方を画像検索してみました。

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    オリーブオイルと塩!わたしも田舎パンを買ってトライしてみました!
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    酸味のあるパンにベリー系のジャム。瓶詰めの写真がとても綺麗です!
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    はちみつは、専用スティックがあるようで、初めて見ました。
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    いろんな野菜や肉をのせると、ますます美味しそうですね!

    さまざまにトッピングされたライ麦パン。自分だけ禁止されて食べられないなんて!普段は食が細いショパン少年も、それはそれはツラかったことでしょう!
    「ライ麦パンを食べる許可をください!」
    14歳のショパンが、旅先から初めて家族に出した手紙には、こういう背景があったのです。


    次は、「手紙の中に出てくる音楽」を調べたいと思います。


    マガジンメニュー「ショパンの手紙に見る少年時代」

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