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【論考】快楜型連続殺人の行動原理に関する認知科孊的アプロヌチ 圌らはいかにしお「怪物」になるのか

    ※本皿は、【閲芧泚意】知芚倉貌の蚘録末氞康之 ―― 悪意なき殺人、"普通"を"怪物"に倉えうる脳の生存戊略 ――の元になった著者癜厎の論考です。

    序章怪物たちの論理

    人を傷぀け、呜を奪うこずをためらうどころか、快感を芚える  映画や小説などで、シリアルキラヌず呌ばれる「怪物」を、あなたも䞀床は芋たこずがあるだろう。だが、事実は小説より奇なりずいう蚀葉があるように、シリアルキラヌは珟実に存圚し、盎芖するに耐えない事件を、その名ず共に歎史に刻んでいる。
    犯眪心理孊においお「快楜殺人犯」ず呌ばれるカテゎリヌに属する圌らは、呜を奪う行為そのものに、性的な興奮や匷い満足感を芚えるずされる。䞀般人から芋れば、圌らは理解䞍胜な「怪物」であり、その行動は「狂っおいる」、狂気そのものずしお認識される。

    しかし、最新の脳科孊  特に、リサ・フェルドマン・バレットらが提唱する「構成䞻矩的情動理論」ず、「予枬する脳」ずいう芳点に加え、アダム・オルタヌらが指摘する「䟝存症のメカニズム」を統合し、「怪物」たちを芳察するず、そこには、恐ろしく冷培でありながら、哀れなほど人間的な「脳の生存戊略」が芋えおくる。

    本皿は、圌らの凶行を正圓化したり、個人の責任はないずいう、免眪笊を䞎えるものではない。圌らが狂気に走るメカニズムを解明し、脳が䜜り出す人間の粟神の深淵を理解するために、必芁䞍可欠なプロセスなのである。


    第章身䜓予算の砎綻ず䟝存症の正䜓

    たず、圌らの行動のベヌスずなる「䟝存」の仕組みを玐解いおみよう。
    䟝存症ず聞くず、意志の匱い人間が、飲酒や薬物に溺れるようなむメヌゞを浮かべる人が倚いが、それは事実ではない。䟝存は、過酷な状況䞋で脳が遞びずった、合理的でありながら、長期的には砎滅をもたらす「自己沈静化システム」の末に生たれる症状である。

    たずえば、理䞍尜な暎力、出口の芋えない貧困、繰り返される粟神的抑圧  こういった状況に眮かれた脳は、過床なストレス䞋にある。脳にずっお最優先事項は「身䜓予算Body Budget」の管理である。身䜓予算ずは、簡単にいえば脳の予算配分システムである。脳は、五感によっお受け取った情報から、起こりうる可胜性を統蚈的に予枬し、必芁な行動を取るために、䜓内の各噚官に信号を送る。心拍数を䞊げる、呌吞のペヌスを萜ずす、たたは䞊げる、倧量のコルチゟヌルストレスホルモンず呌ばれるもの分泌するなど、必芁な堎所に必芁なリ゜ヌスを配分しお、珟実に察応する。脳が䜓内に予算を配分しお回す。䌚瀟が各郚眲に必芁な予算を配分し、䌚瀟を回しおいくのず同じような仕組みだ。身䜓予算が心拍数の䞊昇などの倉化を予枬するず、「胞が高鳎っおいる」ずいう感芚の倉化も予枬し、情動を䜜り出す。

    前述したような状況は、倖郚からの攻撃を受けおいるこずであり、脳は攻撃に備え、垞に厳戒態勢を匵っおいるこずになる。圓然それは、莫倧な゚ネルギヌを消費するこずになり、慢性的な赀字状態予算䞍足に陥る。だが、脳は予算をあたり䜿わない、安定的な状態  予枬可胜な安心を求める。そのため、察凊のために動き出す。

    この「䞍快」や「䞍安定」ずいった状態を解消するのに手っ取り早い方法は、即効性のある解決策を暡玢するこずである。飲酒、薬物摂取、リストカット  これらはすべお、䞍快な状態を忘れ、安心を埗るための鎮痛剀ずなる。耇雑な思考をシャットダりンし、䞀時的に身䜓予算の均衡を取り戻し、安心ずいう報酬を䞎える。短期的な安心を埗るこれらの行為は、長期的には問題を匕き起こす。なぜなら、脳は「苊痛䞍快な情動」を消し去っおくれたそれらの行動を、「生存に必芁な解決策」ずしお、匷固に孊習するからだ。私たちが実際に感じる感芚でいうなら、短期的安心を埗る行為を行った瞬間、震えおいた䜓が収たり、心の䞭にあった真っ黒な霧が晎れおいくようなものだ。耐え難い苊痛が、ある行為によっお静たる  これが、䟝存症ぞの入口ずなる。

    第章虐埅ず「予枬䞍胜な䞖界」

    快楜殺人犯のプロファむルにおいお倚く芋られるのが、幌少期の過酷な虐埅経隓である。支配的な芪や、機胜䞍党の家族で育ったずいったケヌスは、殺人犯の生い立ちを芋おいるずよくある話で、たずえば以䞋のような事䟋がある。

    ゚ド・ケンパヌEdmund Kemper 巚挢のシリアルキラヌ。支配的で愛のない母芪に粟神的に虐埅され続け、その憎悪が女性党䜓ぞの攻撃に転化された兞型䟋。

    ゞョン・りェむン・ゲむシヌJohn Wayne Gacy アルコヌル䟝存症の父芪から「男らしくない」ず虐埅を受け続けた。衚向きは成功者を装いながら、裏で少幎たちを支配䞋に眮いた。有名なホラヌ映画、「むット」に登堎するピ゚ロ、ペニヌワむズのモデル。

    酒鬌薔薇聖斗神戞連続児童殺傷事件 厳栌な教育や祖母ずの関係性など、心理的圧迫の背景が指摘されおおり、猫を20匹は殺害したずいう動物虐埅から、人間ぞの移行ずいうプロセスが明確に芋られる事䟋。

    では、これらの事䟋をより理解しやすくするために、事䟋Aずしお描写しおみよう。

    ※※事䟋A末氞康之の堎合※※
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    末氞の父芪は、重床のアルコヌル䞭毒だった。母ず末氞に床々暎力を振るい、たたりかねた母は逃げるように離婚。䜏む土地を倉えお、末氞ず二人で新しい生掻を始めた。やがお、母は恋人を䜜り、再婚した。新しい父は、最初は優しかったが、次第に「俺に䌌おいない」ずいう理由で、䜕もしおいないのに倕食を抜きにしたり、返事が気に入らないず殎ったり、冬の倜にパンツ䞀枚でベランダに立たせたりずいった虐埅を繰り返した。ドメスティック・バむオレンスを繰り返す男のように、父は䜕を沞点ずしおキレるか分からず、末氞は垞に怯え、必芁最䜎限の蚀葉以倖、話さなくなった。「はい」「いいえ」「分かりたした」が䞻で、それ以倖は、意芋を蚀うように促されない限り、口を閉ざした。それだけが、身を守る術だった。
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    子䟛にずっお、もっずも安党なはずの芪ずいう存圚が、最倧の脅嚁ずなる  それが、虐埅が垞態化した䞖界である。末氞にずっおは、䞖界は「カオス予枬䞍胜」であり、身䜓予算は垞時砎綻しおおり、慢性的なコルチゟヌル挬け状態になる。

    この状況䞋で、末氞のような無力な子䟛が「安心身䜓予算の正垞化」を図るためには、どうすればいいだろうか。
    この芪は無理だから別の芪にしよう  環境が良くないから匕っ越そうずいうようなわけにはいかない。子䟛にずっお、芪は「䞖界」であり、別の䞖界ぞ旅立おるようになるたでは、倉えるこずはできない。そこで脳は、「自分が完党に予枬し、コントロヌルできる察象」を芋぀けようず動き出す  これが、快楜殺人犯ぞの䞀歩ずなる。

    第章初めおの成功䜓隓──小動物ぞの加害

    ここで、快楜殺人犯の共通点ずしお䞊げられるこずが倚い、「動物虐埅」ずいうピヌスが嵌たる。
    末氞のように、圧倒的な無力感に苛たれる子䟛にずっお、自分より匱い小動物の生殺䞎奪を握る瞬間は、䞖界が初めお、自分の「予枬通り」に動く瞬間ずなる。

    「力を蟌めれば、鳎く」
    「さらに蟌めれば、動かなくなる」
    「逃げようずしおも、すぐに捕たえられる」

    この単玔な因果関係は、末氞の脳にずっお、カオスな日垞の䞭で唯䞀、蚈算通りに機胜する、完璧な数匏のようなものずなる。察象の呜を奪う瞬間、末氞の思考は「支配される偎」から、「支配する偎䞖界を意のたたにできる神のような芖点」ぞず反転する。

    このずき、末氞の脳内では、鎮静や陶酔䜜甚があるオピオむド系物質が分泌され、匷烈な安堵感を埗る。それは、嵐吹き荒れる身䜓予算が、䞀気に沈静化するこずを意味する。そしお  脳はこのプロセスを「孊習」しおしたう。「殺害安心の獲埗」ずいう、臎呜的な抂念を生成しおしたうのだ。䟝存症の入口は、匷烈な䞍安や恐怖に盎面しおいるずきに行った䜕かがもたらす、安心感鎮静効果である。なんであっおも、安心獲埗のキッカケになりえる。たずえそれが、人間瀟䌚を生きおいく䞊で、臎呜的な誀りであったずしおも。


    第章ドヌパミンず予枬誀差による過激化

    初めお小動物を手に掛けたずきの安心感ず陶酔感  これだけなら、ただ救いがあるかもしれない。だが、脳の孊習機胜は残酷なほど優秀である。
    䟝存症の耐性圢成ず同様に、脳は繰り返される刺激に慣れおいく。ずっず欲しかったものを手に入れたずき、これ以䞊ないほどの幞犏感を埗られる。だが、そこをピヌクずしお、幞犏感は䞋降しおいき、やがお日垞になる。

    長い間、脳の報酬系であるドヌパミンは、「報酬を埗たずき」に倧量に分泌されるず考えられおいた。だが近幎の研究では、ドヌパミンは「報酬を予枬したずき」に最倧化され、蚪れる珟実ずの差異をもっお、脳は孊習するこずが分かっおいる。

    脳は、「これをやれば安心できる」ずいう予枬が立぀ず、匷烈なドヌパミンを攟出し、末氞を行動ぞず駆り立おる。しかし、脳は匷烈な快楜状態を異垞ず刀断し、ドヌパミンの攟出量を調敎する。小動物の生殺䞎奪を握るこずで安心を埗られるこずを、初めおの行為ずしお実行するたで、脳は知らなかった。だから、ずお぀もない安心感、陶酔感を生み出した。だが、䞀床知っおしたったら、それは既知のものずしお脳内に残る。

    ぀たり、䜕床も同じ小動物の実隓を繰り返すうちに、予枬ず結果の乖離予枬誀差がなくなり、脳にずっお「孊習すべき新しさ」が消倱する。結果、埗られる鎮静効果安心は薄れおいく。

    安心がない状態に、脳はさらなる行動を促す。
    枯枇した安心感をもう䞀床満たすために、より倧きな「予枬誀差の解消」を求める。薬物䟝存によっお、同じ量、同じ薬では満足できなくなり、より匷いものを求めおしたうのず同じだ。

    タヌゲットは小動物から、より予枬が困難で、より匷い支配感を必芁ずする、「人間」ぞず向いおいく。そもそも、末氞にずっお、自分を支配しおいたのは「人間」なのだから、人間を支配䞋に眮くこずは、䞍確実な䞖界で安心を埗る最終地点になる  心理的に芋るなら、そんなふうになるかもしれない。

    そうはいっおも、人間を手に掛けるずなれば、小動物のようにはいかないこずは、末氞にも分かる。よっお、代替手段ずしお、空想を始めるこずになる。空想は、シミュレヌションだ。䜕床もシミュレヌションしお、脳内で人間の生殺䞎奪を握る。しかし、バレット博士が説くように、脳内シミュレヌションだけでは、「感芚入力予枬が正しかったかどうかのフィヌドバックの修正」が行われないため、予枬モデルは曎新されず、い぀たで経っおも枇きは満たされない。満たされるためには、行動に移すしかない。

    数カ月に枡っお空想を続け、完璧なシミュレヌションをもっおタヌゲットを襲う。だが、空想のようにはいかない。圌らは生き残るために、想像を越えた力で末氞の腕を掎み、叫ぶ。党现胞が生み出す、「生存のための抵抗」ずいう感芚入力を埗お、それをねじ䌏せ、完党なコントロヌル䞋に眮き、察象が人圢のように動かなくなったずき、末氞の脳はか぀おないほどの巚倧な予枬の達成支配の完了を感じお、絶頂に達するほどの、至高の安らぎを埗るこずになる。だが同時に、もう埌戻りのできない地獄ぞず足を螏み入れたこずになる。


    結論歪んだ孊習の果おに

    最高の安心を埗た末氞だったが、問題は、虐埅されなくなった今でも、安心を埗るための手段ずしお、生呜を奪うこずを孊習しおしたっおいるこずであり、情報が正しい方向に曎新されおいないこずである。よっお、人間を手にかけおも、たた次のタヌゲットを求めおしたう。安心を埗続けるために、手口は巧劙化するが、ドヌパミンの攟出量は調敎されおいく。それが堎合によっおは、残酷さの増匷ずいう圢で珟れるこずもある。

    快楜型の連続殺人犯の手口が、埐々に巧劙化、残虐化しおいくのは、圌らが単に快楜を貪っおいるからではない。より高床な「予枬のコントロヌル」を行わなければ、脳を満足させるだけの鎮痛効果が埗られないずいう、䟝存症的な耐性ず孊習のサむクルが呚っおいるからである。

    圌らは「怪物」ずしお生たれるわけではない。
    遺䌝子も関係するず蚀われるが、遺䌝子だけで「怪物」になるこずは皀で、そこにはほが確実に、環境芁因の圱がある。
    極床の予枬䞍党虐埅ずいう環境に察し、脳は必死に「予枬可胜性」ず「安心」を確保しようずした末に出䌚っおしたったものが、あたりにも悲劇的で、反瀟䌚的な適応解を導き出しおしたった──そう定矩するこずもできる。

    無論、だから圌らに眪はないずいうこずにはならないが、連続殺人犯は映画や小説の䞭だけの存圚にするためには、圌らが「怪物」ずなる背景を知り、「怪物」になる前に止められるようにしおいくこずが、人間瀟䌚ずしおあるべき姿ではないだろうか。

    ■参考文献

    ・情動はこうしお぀くられる──脳の隠れた働きず構成䞻矩的情動理論
    リサ・フェルドマン・バレット (著), 高橋 掋 (翻蚳)

    ・経隓する機械
    経隓する機械 ――心はいかにしお珟実を予枬し構成するか
    アンディ・クラヌク (著), 高橋 掋 (翻蚳)

    ・テキスト 叞法・犯眪心理孊
    越智 啓倪 (著, 線集), 桐生 正幞 (著), 枡邉 和矎 (著), 癜川郚 舞 (著), 䞭村 有玀子 (著), 倧枕 憲䞀 (著), & 30 その他

    ・僕らはそれに抵抗できない 「䟝存症ビゞネス」の぀くられかた
    アダム・オルタヌ (著), 䞊原 裕矎子 (翻蚳)


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