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私はそこでもイビキをかくのだろうか


    先日のNHK、とある日本人夫婦の登山家を追ったドキュメンタリーを放送していたのを、いつもの如くソファで鼻をほじりながら金麦をチビチビ、時折「ゲェッ」などとげっぷをおり混ぜながら、観ていた。その度に足元の犬がピクッと動く。
    画面の中では生死の境で岩壁を読む男の姿が映し出される。同じ人間でこうも違うものか。

    登山。
    そんな生優しい言い方ではないのか。私に人生が百回あったとしても、徹頭徹尾てっとうてつびできそうもない。
    その尋常でない過酷さも去ることながら、そんなことの前に高所恐怖症である。お話にならないのだ。またひとつ我が身の弱点をさらす。ぴえん。

    名は忘れたが、最高峰といわれる山の断崖絶壁、その岩肌をジリジリ進む2人の姿をカメラが下から追う。巨大なリュック、よくわからない重そうな金具やら綱をこれでもかと身に付けている。いつも思うがこれカメラマンも命懸けであろう。

    金麦で虚うつろになり始めた私の脳を揺さぶるシーンがあった。
    日も暮れ薄暗く翳かげり始めた頃、ご主人が「今日はここまで。今夜はここで休もう」と口にしたその場所が、人間2人が辛うじて横になれる程度、平坦なのかどうかも怪しいごくごくわずかなスペースだった。
    当然そのわずかな空間から下は1000メートル以上の絶壁である。

    え、え、そこで寝るんすか? 落ちますよ。

    想像しただけで金麦が喉を逆流してくる。

    映像で観たそんなこんなを後日、社内で多少登山をかじっているという者に話したところ、どうやらそんなものらしい。登山に挑む人間がもともと寝相が良いのか、その鍛錬半ばで身じろぎせずに眠る術を身につけるのか知らないが、とにかくそういうものらしい。
    そして、排泄もままならないのでたいがいオムツを装着している、という事もついでに教えてくれたのだ。
    考えてみればそりゃそうだ。そこは考えた事もなかった。神聖なる連峰の山肌を固形物がポトポト落下する光景は確かに想像出来ない。下の頂いただきにも別のクライマーがいたりするだろう。頭で受け止め「おぉ、今日は運ウンがあるぞっ 」などと勘違いもしかねない。

    ぬおおおおおぉぉぉ… クライマーイズグレイト、あんびりぃーーーーばぼーーーー

    番組終盤、2人が無事登頂に踏み込む映像を観ながら唸うなり、私は懲りずに3本目の金麦をプシュッと開ける。
    その音に足元で寝ていた犬が目を覚まし、私の顔を見ながら、「おまえ少し見習えや」みたいな目つきをした。



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    真実はディテールに宿る。笑って生きれば人生も愛しいAI無縁、生腕ひとつで書いてま。

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