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血はめぐり肉ほぐれる白い日の夜



    ひとり、遅い夕食をモソモソ食べていると、傍かたわらの妻がポツリ

    「あぁ 肩ぱんぱん」と言う。

    季節の変わり目、ダルさも感じる時期。
    「ゆっくり湯船に浸つかるがよき」と入浴を促し、引き続き芋煮などをつついていると、今度は

    「腰も痛」と言った。

    ふうむ…  、腰ね。まおれも痛いっちゃ痛いし。

    長年培って来た、"あうんの呼吸" とやらに照らし合わせれば、それは

    「揉めっ」

    というシグナルで間違いなかった。仕方ない。

    ひとまず食事を終え、最後の金麦をグビリと流し込む。広くないリビングのカーペットへ移動、

    「ではここに横たわるがよき」と伝えた私、

    自身も疲労気味、決して万全の態勢ではなかったものの、向こう数日の平穏が補償されるチケットには変えられない。
    気持ちを切り替え腕まくりをし、そこに横たえた妻の身体の脇によいしょと鎮座、
    サロン椎名式揉みほぐし春爛漫コース
    を開始する。

    でわぁ、よろしくお願いしまあすぅ

    まず首から。
    モミモミモミモミ モミモミモミモミモミモミ

    しれりと肩へ。
    モミモミモミモミ モミモミモミモミ…

    起承転結は必要だ、変化も加える。
    モミモミモミモミィ… モミグリグリ、グリグリ、グリリリリ

    背骨脇も丹念に施す。経由して腰へ。

    肉が解ほぐれていくのが分かる。こう見えてもどう見えるのか知らんけども私はマッサージが上手いのだ。

    ひと通り解ほぐれた感が出て来ただろうか。正味15分程度の春爛漫コース、ようやく終盤ふくらはぎまでコースは及び、私自身も少し汗ばんで来た。
    そろそろふぃにっしゅに差し掛かろうと言う時、
    フンフウンと吐息をもらしていた妻が口を開く。


    「今日ホワイトデーだったね」



            …   ぬ、ぬおおおおぉぉぉぉ


    老年、バレンタインもホワイトも今やなかろうと思しき我々も、気持ち程度にチョコやお酒、クッキーやクリームなどをやりとりする慣習は根強く残っていた。先月白ワインを頂戴ちょうだいしたばかりの私は不覚にもこの日を失念、滲む汗が加速した。

    「さ、さよう…。であるからして、こうして、こうしてそなたの体を、和らげている次第じゃ。
    お、まだほぐれてないところが…、さあ、抜きなさい、力を、抜きなさい」

    なぜか江戸時代風になる理由もないのだが、こうして春爛漫コースは急遽20分延長に突入、もうこちらの腕や指は限界チェリーブラッサム狂い咲き



       ♦︎             ♦︎             ♦︎             ♦︎



    来てくれて感謝。季節の変わり目、慎重に…


     
     
    真実はディテールに宿る。笑って生きれば人生も愛しいAI無縁、生腕ひとつで書いてま。

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