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「毒親」とは思えない

    母と祖母の関係は最悪だった。
    毎日のように口喧嘩をしていた。
    その間に挟まれる父も、
    機嫌が悪かった。


    だから、
    いつも両親の顔色をうかがっていた。


    父も母も、
    感情が表に出やすいタイプだった。

    怒鳴る。
    テーブルを叩く。
    皿を割る。
    泣き出す。


    夕食時が嫌いだった。
    いつ、どんなタイミングで、
    両親と祖母の言い争いが始まるかわからなかったから。

    だから、早食いが身についた。
    とにかく早く夕食を食べ終えて、
    食卓を離れたい一心だった。


    けれど、
    両親のことを「毒親」とも言い切れない。

    高校、大学は私学に通わせてくれた。
    奨学金無しで。

    それなりに、
    小遣いもくれた。

    20代後半まで実家に住まわせてくれた。

    実家を出る時や結婚した時には、
    少なくない額を援助してくれた。

    新卒で入った会社で初めて適応障害を発症した時も、
    とりあえずは受け入れてくれた。

    少なくとも、
    身体的な虐待は受けていない。
    たった一度だけ、
    母親に木の棒で尻を殴られた記憶があるだけ。


    むしろ、
    「良い親」だったのかもしれない。


    とはいえ、
    カウンセリングを受けると、
    どうやら幼少期の両親との関係が、
    今の僕の性格に影響を与えているらしい。


    「こんなひどい親に育てられた。
    だからこんなに苦しい思いをしている」

    そんな風に思えたら、
    どんなに楽だろうか。


    「結局は自ら招いた結果なんだ、
    今のこの状況は…。
    親のせいでもなく、
    祖母のせいでもなく…」

    やはりそんな思考に、
    頭の中を支配される。


    だからこそ、
    今は両親と顔を合わせたくない。

    「あなた方が手塩にかけて育てた息子は、
    40を前にしてこんな有り様です」
    とは、口が裂けても言えない。

     
     
     
    ホリノウチ ヘラルド|エッセイ|掌編小説 フリーランスで、適応障害で、たぶんHSP。 herald.horinouchi@gmail.com

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