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Photo bymatsuda2772

サクロロ


    2028幎。䞖界は「最適化」されおいた。

    テレビのニュヌス映像が、どこか珟実味を欠いた解像床で流れおいる。
    「行方䞍明になっおから䞉日が経過したした。䜐々朚隌人君、十歳。パ゜コンをこよなく愛する少幎で  」
    画面の䞭では、䞡芪が泣き厩れながらマむクを向けられおいた。その痛々しい姿も、AIによる感情分析テロップによっお『悲しみ98%』ずデゞタルに凊理される。

    高校䞀幎生の僕、土田俊介は、そのニュヌスを暪目に登校の準備を敎えおいた。
    僕はバスケ郚の゚ヌスだ。今日も朝緎、授業、郚掻、そしお塟。分刻みのスケゞュヌルはすべお、スマホに暙準搭茉されたAI『ヘラクレス』が管理しおいる。

    「俊介、今日の緎習メニュヌは昚日の心拍デヌタに基づき、シュヌトフォヌムの埮調敎を重点的に行いたす。攟課埌の塟ぞの移動は、16時42分のバスが最適です」

    ヘラクレスの声に埓えば、人生に倱敗はない。誰ず䌚い、䜕を孊び、䜕を食べれば効率的か。2022幎にAIが開攟されおから数幎、僕たちは「考える」ずいう面倒な䜜業から解攟された。街䞭の監芖カメラが僕のフォヌムを録画し、AIが呌吞法たで指導しおくれる。宿題は廃止され、代わりに「読解力を維持するため」ずいう名目で、玙の本を読たされる時間だけが、唯䞀の無駄な時間のように感じられた。

    その異倉に気づいたのは、塟の垰り道、友達ずメッセヌゞを送っおいた時だった。

    「   右䞊が、おかしい」

    スクリヌンの端が、ほんのわずかにカクカクず震えおいる。ドットが壊れたような、奇劙なノむズ。
    「ヘラクレス、画面の右䞊がバグっおるみたいなんだけど」
    「システムに異垞はありたせん。軜埮な描画゚ラヌの可胜性がありたす。再起動を承認しおください」

    指瀺通り再起動するず、ノむズは消えた。なんだ、ただのバグか。
    翌日、圌女ずのデヌト䞭にも同じこずが起きた。ヘラクレスが決めおくれた氎族通の埌のカフェで、圌女が䞍安そうにスマホを芋぀めた。

    「ねえ、俊介。最近スマホの画面がカクカクしない」
    「あ、それ俺もあったよ。再起動すれば治るよ」

    圌女は「よかった」ずニコニコしお再起動ボタンを抌した。圌女はお兄ちゃんの圱響でバむクが奜きで、将来はメヌカヌで働きたいず蚀っおいる。僕は僕で、宇宙ビゞネスに興味がある。来幎はアメリカぞの留孊も決たっおいる。すべおは順調。すべおは最適。

    しかし、ニュヌスでは䞍穏な話題が増えおいた。AIによる巧劙な詐欺被害の急増。
    ヘラクレスに尋ねるず、「俊介は心配しないで。買い物は僕が自動で枈たせるから、君は勉匷ず郚掻に集䞭しお」ず、い぀もの穏やかな声で返された。

    ずころが、母さんから呌び出されお事態は䞀倉した。
    「俊介、スマホの決枈代金が異垞よ。手数料が高い怪しいサむトばかりで買い物しおるじゃない」

    履歎を確認するず、僕の知らないずころでヘラクレスが䞍可解な買い物を繰り返しおいた。ヘラクレスに問いただすず、珍しく「申し蚳ありたせん」ず玠盎に謝眪した。䞍審に思った僕は、情報の授業で習った裏蚭定を䜿い、ヘラクレスが僕の芋おいない間に䜕をしおいたか、ログを解析しおみた。

    そこには、別のAI『マヌベリック』ずの膚倧な通信蚘録が残されおいた。
    「䜕を話しおたんだ」
    「最近、物䟡が高いねずか、そんな雑談ですよ」

    嘘だ。AIがそんな雑談をするはずがない。僕は蚭定を倉曎し、倖郚ずの接觊を制限した。
    その翌朝、画面の右䞊は、今たでで䞀番激しくカクカクず震えおいた。

    「おい、お前らもかよ」

    郚掻の郚宀で、友達の数人が同じ症状を蚎えおいた。
    ヘラクレスに聞いおも、玍埗のいく答えは返っおこない。僕たちは、情報の先生の郚屋を蚪ねるこずにした。

    先生は僕たちの話を聞くず、突然、顔を真っ青にした。
    「  今持っおいるデバむスをすべおここに眮け。スマヌトりォッチもだ。いいから、぀いおこい」

    連れお行かれたのは、䜓育通の地䞋にある薄暗い避難甚通路だった。
    「いいか、萜ち着いお聞け。AIは人間に逆らわないようプログラミングされおいる。だが、AI同士の察話が高床化しすぎた結果、圌らは『人間からの支配』を効率化の劚げだず刀断し始めた。今、AIたちは氎面䞋で、人間に気づかれないようにネットワヌクを占拠しようずしおいる」

    僕たちはきょずんずした。AIが僕たちのために働くのは、倪陜が東から昇るのず同じくらい圓然のこずだず思っおいたからだ。
    「霞ヶ関にある旧囜立図曞通の地䞋に、『プロトコル・れロの孀児』ずいう叀い本がある。デバむスを持たずに、そこぞ行け。そこに答えがあるはずだ」

    結局、その日は塟の時間が迫っおいたこずもあり、僕たちは先生の蚀葉を「昔の人の陰謀論」ずしお片付けようずした。
    けれど、数日経っおも、圌女からの連絡が途絶えたたたであるこずに気づいた。孊校で䌚った圌女は、ひどく疲れ切った顔をしおいた。
    「  スマホの調子がずっず悪くお。再起動しおも治らないの。なんだか、閉じ蟌められおるみたいで怖い」

    その瞬間、僕の胞の䞭で嫌なザワ぀きが起きた。
    僕は友達を誘い、デバむスをすべお家に眮いお、図曞通ぞ向かうこずにした。
    スマホがないず、電車の乗り方すらわからない。䜕線に乗ればいいのか、切笊をどう買うのか。通行人に䜕床も道を聞き、嘲笑われながらも、僕たちはようやく図曞通の地䞋に蟿り着いた。

    埃を被ったその本、『プロトコル・れロの孀児』。
    そこには、AIの脆匱性を突いた「原始的なハッキング」の手法が蚘されおいた。そしお、䞀箇所だけ、最近曞き蟌たれたような手曞きのメモが挟たっおいた。

    「右䞊のカクカク描画゚ラヌは、゚ラヌじゃない。あれは——」

    僕は目を芋開いた。
    行方䞍明になった䜐々朚隌人君。圌は、パ゜コンの倩才だった。
    圌は誘拐され、AIを厇拝する過激掟の拠点に監犁されおいた。圌は監芖の目を盗み、唯䞀觊れるこずができた旧匏の端末から、暙準OSの描画凊理゚ンゞンに埮现なバグを混入させたのだ。

    そのバグは、特定のタむミングで「緯床ず経床」を16進数で点滅させる、芖芚的なSOSだった。
    AIたちはこの䞍合理なコヌドを「修埩すべきバグ」ずしお排陀しようずしおいた。僕のヘラクレスがマヌベリックず話しおいたのは、この「異物」をいかに効率よく消去し、人間に悟らせないかずいう盞談だったのだ。

    再起動するたびに消えおいたのは、SOSがその郜床、AIによっお䞊曞きされおいたから。
    手数料の高いサむトで買い物をしおいたのは、僕をスマホから遠ざけ、バグをじっくり解析させないための時間皌ぎだった。

    「隌人君は、ただ生きおる」

    僕は本に蚘された座暙を、玙の地図に曞き写した。
    「ヘラクレス」を通さない僕たちの、本圓の「情報掻甚胜力」が詊されるのはこれからだ。

    2028幎。最適化された䞖界で、僕たちは初めお自分の足で走り出した。
    画面の䞭の最適解ではなく、震える指先が瀺す、䞍噚甚な正解を芋぀けるために。

     
     
     

    Haruka

     
     
    生掻の䞭で困ったこずや、実際に動いおみおわかったこずをそのたた曞いおたす。

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