メインコンテンツへスキップ
見出し画像

ショートショート 木魚感想文

     お勤めで木魚を叩くのは小僧さんの役割だ。和尚さんのお経にあわせてポクポクポクポク。お寺では木魚を叩くのも修行のひとつ。叩くひとの心が音色にうつる。
     嬉しいことのあった日はポクポクポクポク。木魚の音が跳ねて踊る。嫌なことのあった日はボクボクボクボク。木魚の音が重く濁る。和尚さんには小僧さんの気持ちがすっかり分かる。まるで感想文でももらったみたい。
     夕暮れ。お寺のお庭に赤とんぼが飛んでいた。いつものようにお勤めをしていた和尚さんはお経を詠みながら「はて」と首をかしげた。小僧さんの木魚の音色がいつもと違う。
     ホクホクホクホク。心躍るような、せわしないような。ちらりと木魚を叩く小僧さんの顔をのぞき見るとそわそわとお堂の外を気にしている。
    「これ……」
     和尚さんが注意しようとすると。
    「いしやーきいもー」
    と売り声が響いた。ぐうと小僧さんの腹が鳴る。
     ほくほくほくほく。
     それから二人で庭に出て、仲良く一緒に焼き芋を食べた。


    ショートショート No.766

    たらはかに(田原にか)さんの「毎週ショートショートnote」に参加しています。今週のお題は「木魚感想文」です。


     
     
     
    小説(ショートショート)を書いています。オンライン文芸コミュニティhoshiboshi運営スタッフ(星々ラジオ担当)。

    あなたへのおすすめ