
Shashin de Isshu Anthology (No.1~52)
寄り道いただきありがとうございます。
高橋あつむと申します。
これまで投稿した「写真で一首」をまとめてみました。
写真で一首シリーズを投稿してから半年が経った区切りとして、一つの投稿で眺めたいな、と個人的に思ったためです。
振り返ると、どうしてこのような歌を詠んだのだろう、そして、詠めたのだろうという思いが沸き、恥ずかしさと感心が渦巻いています。
いつかまたこんなアンソロジーを出せるようにこつこつ積み上げていきたいです。
それではどうぞ。
1.
薄明かり磨りガラス越しの光
彩題「静物画:フラワーベース」

2.
月のない夜にパンケーキのような
灯りが包むクロネコ親子

3.
炎昼がスクールゾーンに映した
影から落ちたやつが鬼だよ

4.
手水舎に裏庭で摘む一輪を
浮かべる今日も祈りのように

5.
藤棚の光が零れ石畳
白昼に見るプラネタリウム

6.
白蛇はルビーの瞳微笑んで
ソフトクリームの擬態を解く

7.
釣鐘は全ての夏を吸い込んで
りんと一音打ち水のよう

8.
静謐に木洩れ日と風が奏する
ワルツのみ聞こゆブナの林

9.
サイダーの蓋から吹き出した初夏に
空へ溶け込むエゾアジサイは

10.
ブレーキは朝になおした君の待つ
海街の午後下ってゆくよ

11.
ワイ字路に突如現れ
身を挺し命を守れ飛び出し坊や

12.
夏空に昇るんじゃない朝日から
生まれおちるの日輪草は

13.
顔剃りがいつもの人じゃないと知り
椅子で呟く「オペ始めます」

14.
百日紅読めぬあなたが運転手
サルスベリと呟く横顔

15.
恐竜がいても驚かないだろう
1億年後サファリパークに

16.
あのイチョウ台風で折れたのですか
いいえ巨人が手折ったのです

17.
瓶入りは役目果たした令和まで
昭和生まれの明治牛乳

18.
作業場の青いホースは地下に入り
海から水を運んでいます

19.
「都だ」と一寸法師降りたけど
僕だって海へ帰りたいな

20.
母親のそれは食べるがわれ握る
これは食べないあなたが遠い

21.
ストローを頭に刺され潰されて
大丈夫ですか、おーい、お茶よ

22.
ジープから転がり落ちた香り紙
小さな本の栞にどうぞ

23.
いろはすは汗かき遠く見つめてる
ランナーはもう陽炎に溶け

24.
白熊は成層圏の大海で
北極星になる夢を見る

25.
下校中赤詰草に誘われ
蜜吸うときはいつもひとりだ

26.
花の名を覚えぬきみが知っていた
ジラソーレとはひまわりのピザ

27.
南方で過ごした梅雨を懐かしむ
青梅運ぶエゾリス見つけ

28.
探査機のようなタンクが知らせてる
コチラハチキュウミズノワクセイ

29.
ラベンダーソフトクリーム
根室までカブで走った八月ぶりだ

30.
給食のオニオンスープ脳内で
巻き戻し来た玉ねぎ畑

31.
トラクター今朝の仕事を終えまして
ザリガニみたく陽射しに眠る

32.
炭鉱も財政破綻も知らないが
メロンを食べて想うふるさと

33.
自動車が馬車であった頃からも
北の大地を鉄道は縫う

34.
窓の外シアンの宵を切り取って
題:大通り秋雨に濡れて

35.
王手して髭をゆっくり撫で下ろす
じいと来た夏 白髭の滝

36.
脳裏から離れてくれない照明が
スノーフレークとなる幻想

37.
瑠璃色に膨らむ星が吊るされて
風に吹かれて自転してゆく

38.
焦燥や怒りに餡をかけたなら
さめてゆくまで待てるだろうか

39.
僕の庭今日はラベンダーが咲く
手紙を読んだ蝶が来た朝

40.
原っぱの雪に桜が降り注ぐ
幻想のごとハツユキカズラ

41.
君が抜き差して新たな溝に挿す
雨を渡って傘は旅する

42.
お父さんもう満ちたねと助手席で
ふくれる吾子は詩人であった

43.
待つだけじゃ決して逢えぬ鯉だから
ボートに乗って漕ぎだしてゆけ

44.
桟橋の下の水面に映ってる
三日月のこと鯉といいます

45.
養分を空から吸って沼の中
翡翠より濃い葉を湛える木

46.
砂場へと打ち上げられた花びらに
耳を澄ませば海がきこえる

47.
僕だけのもしもを重ね続けても
世界は変わるはずがないだろ

48.
「縄張りに入った君のせいだから」
「お陰で落ち葉にならず済んだ」

49.
満杯に詰めた落ち葉を溢したが
風のせいにし籠眠る午後

50.
花筏桃色の堀
去り際の君に目を奪われたまま今

51.
紅白の源平咲きに戦乱の
名もなき猛者も報われるかな

52.
お互いに距離を保って中庭で
ワルツを踊るテーブルセット
