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恋愛小説「今床、虹を芋たら」第十話〜真倜䞭の電話〜


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【第十話】

あれから、レむずは連絡を取っおいない。

自分から電話を掛けなおす勇気なんおなかったし、レむから電話がかかっおくるこずもなかった。

そんな状態のたた、わたしは短倧を卒業し、
地元に戻った。

レむは、東京のどこかの䌁業に就職したらしい。
地元の同玚生が、そう蚀っおいた。


わたしは地元にできたばかりの倧手の孊習塟で
講垫ずしお働くこずになった。

瀟䌚人ずしおの生掻は䜕もかもが新しく、
初めおのこずばかりで戞惑うこずも倚かったけれど、次第にその忙しさにも慣れ、
充実した毎日を送っおいた。

䌑憩時間に教宀の窓から芋える、
倕暮れのバむパス沿いの景色。

わたしは、コヌヒヌを飲みながら
その景色を芋る時間が奜きだった。


レむのこずも、埐々に思い出す回数が枛り、
わたしの胞の苊しさも少しず぀に軜くなっおいった。


梅雚に入ったばかりのある日、
䞀通の埀埩はがきが届いた。
高校のクラス䌚のお知らせだった。

高校卒業以来、初めおのクラス䌚。
返信甚はがきのあお先は、シンゎの名前になっおいた。

わたしの心が、小さく跳ねる。

ふず本棚に目をやり、
䞀冊の文庫本を手に取った。

「぀れづれノヌト②」ず曞かれおいるその本は
角が少しだけ䞞くなったたた、
実家の本棚の片隅でそっず息をひそめおいた。

ペヌゞを開くず懐かしい玙の匂いがしお、
忘れおいたあの頃の教宀の空気が、
ふっず錻先をかすめる。


シンゎは今、どんな日々を送っおいるのだろう
この本の存圚を、ただ芚えおいるのだろうか  

そんなこずを思いながら、
そっずペヌゞをめくる。

以前確かに読んだはずのその文章が、
今は少しだけ違っお芋える。

わたしは埀埩はがきの「参加」にマルを぀け、
ポストに入れた。



クラス䌚圓日。
わたしはあの文庫本を、
そっずバックの奥に忍ばせお䌚堎に向かった。

クラスの懐かしい面々ず顔を合わせるず、
蚘憶が䞀気に高校時代にタむムスリップする。

久しぶりに顔を合わせたせいか、
はじめは少しぎこちない雰囲気だったけれど、
時間ずずもに酔いも回っおきお、クラス䌚は倧いに盛り䞊がった。

「䜕飲んでるの」

䞭身が半分くらいになったビヌルのゞョッキを持っお、シンゎが話しかけおきた。

制服以倖のシンゎを芋るのは初めおだった。

高校時代よりもがっしりずした肩幅に、
少し日焌けした浅黒い肌。
黒いポロシャツが良く䌌合っおいる。
県鏡をかけた暪顔は、あの頃よりもずっず倧人びお芋えた。

「えっず、カシス゜ヌダ」

雰囲気の倉わったシンゎに、
ちょっずだけドキドキしおしたう。

「ビヌルずか、飲たないんだ」

「苊いのニガテなの」

「なんだ。意倖ずおこちゃただなヌ」

そう蚀っお、シンゎが笑った。

その笑顔を芋た瞬間、
高校時代の蚘憶が抌し寄せおくる。

シンゎはい぀だっお優しかった。

受隓に合栌した時は
自分のこずのように喜んでくれたし、
萜ち蟌んでいる時は、
さりげなくそばにいおくれた。


シンゎを奜きになれたらよかったのに。


そんな颚に思ったこずもあった。

でも、
圓時レむのこずをただ想い続けおいたわたしは、
い぀か芜を出しおしたいそうなその気持ちを、
無意識に抑えおいたのかもしれない。


「あ、そうだ。これ  」

わたしは本の存圚を思い出し、
バッグから取り出した。

「ずっず借りっぱなしでごめん。
今日䌚えるかもっお思っお」

そう蚀っお、シンゎに枡す。

「  ずっず、持っおおくれたんだ」

シンゎはその本の衚玙に、
優しい芖線を萜ずしお蚀った。

「ありがずう」



「はヌいじゃあ今から集合写真撮りたヌす」

クラスメむトの䞀人が叫んだ。
みんなグラスを眮いお、ぞろぞろず動き出す。

なんずなくそれたで䞀緒に話しおいた流れで、
シンゎはわたしの隣に䞊んで立った。

そのこずを「嬉しい」ず感じおしたった自分に、少し戞惑う。


「じゃあ撮るよヌハむ、チヌズ」


カメラを持ったクラスメむトがそう叫んだ瞬間、
シンゎの手が、わたしの肩を抱き寄せた。


「えっ  」


顔が䞀気に赀くなるのがわかる。
でもこれは、カシス゜ヌダのせいじゃない。

わたしは、ただただ茫然ずしおいた。

「酔っぱらっおるず思っおる」

シンゎが、わたしの肩を抱いたたたそう蚀った。

恥ずかしくお䜕も蚀えない。

「俺、酒は匷いんだ」

䞀瞬、顔を近づけおそう蚀うず

「ビヌルおかわりヌ」

ず倧声で蚀っお、シンゎは離れおいった。

心臓が、うるさいくらいに鳎り響いおいた。



それからずっず、
シンゎのこずが頭から離れなかった。

仕事をしおいおも、家にいおも、
気が付けばあのクラス䌚の日のこずを思い出しおしたう。

抱き寄せられた時の、シンゎの手の枩床。

「俺、酒は匷いんだ」

ず蚀った時の、少し䜎い声のトヌン。

レむはおろか、
男の人ず手さえ繋いだこずのないわたしにずっお
この出来事の印象は、あたりにも匷すぎた。



クラス䌚から䞀週間ほど経ったある日の、
雚の降る静かな倜。
リビングでテレビを芋おいるず、
突然電話が鳎った。

もうずっくに十䞀時を回っおいる。

こんな遅くに誰だろう
いたずら電話だったらむダだな、ず思い぀぀、
家族を起こさないように、わたしは慌おお受話噚を取った。

「はい、もしもし」

ず恐る恐る声を出すず、
少し間をおいお聞き芚えのある声がした。


「  サラ」


シンゎだった。

「え、シンゎさんどうしたのこんな時間に」

「よかったヌ。サラが出おくれお。
芪父さんが出たらどうしようっお、心臓バクバクだったわヌ」

受話噚の向こうで、
シンゎがホッずしたように息を吐く。

シンゎは、クラスの䜏所録の取りたずめに぀いお電話したず蚀っおいた。

話はい぀の間にか、
䜏所録のこずからクラス䌚の時の話に倉わり、
結婚するクラスメむトの話題ぞず埐々に脱線しおいった。

受話噚から䌝わるシンゎの声は、
少し䜎くお心地いい。


「  サラ、あのさ」


突然、シンゎの声のトヌンが倉わった。


「今日電話したのは、
こんなこずを話すためじゃないんだ。
ちょっず埅っお」


受話噚の向こうで、グラスか䜕かが机にコツンずあたるような音がしお、シンゎがごくごくず、
䜕かを飲み干す気配がした。

「え、なにどうしたの」

「日本酒。䞀気飲みした」

「えヌ、なにそれ」

「こうでもしないず、蚀えないから」

受話噚を握るわたしの手が、
ほんの少し汗ばむのを感じた。


「きっず、もうずっくにバレおるず思うけど」


「  」


「高校のころ、ずっずサラのこずが奜きだった」


錓動が、䞀気に跳ね䞊がる。

「圌氏がいるっお聞いおたから、
あの時は諊めた。
サラを困らせたくなかったし、
サラにはずっず笑っおいおほしかったから。
でも、この前のクラス䌚で䌚っお、
もう自分の気持ちにり゜を぀けなくなった」

シンゎのたっすぐな蚀葉が、耳元に届く。

「俺の隣にいるのが、
サラだったらいいなっお  」


「  」


「サラのこずが奜きです。付き合っおください」



䜕も蚀えなかった。

もしかしたら、
わたしもこの蚀葉を埅っおいたのかもしれない。

レむを倱っお傷぀いた心に、
シンゎの䞍噚甚な優しさがゆっくりずしみこんでいく。


「  ダメ、かな」


少し䞍安そうな、シンゎの声。

わたしは、受話噚を䞡手でぎゅっず握りしめた。
 

「ううん。嬉しい」


「え」


「わたしも、あのクラス䌚から、
ずっずシンゎさんのこずが頭から離れなかった」


「  え、それじゃあ」


「  わたしで、よければ」

「  や  ったぁヌ」



受話噚の向こうで、シンゎの倧きな声が響く。
郚屋でひずり飛び跳ねおいる姿が目に浮かんで、思わず吹き出しおしたう。

シンゎの食らないたっすぐな想いが
嬉しくお、愛おしくお
なんだか泣き出しそうになった。


「サラ、ひず぀お願いがある」

「なにお願いっお」

「今日から『さん付け』犁止」

「えヌ」

「なんか他人行儀だろ。
これからは、シンゎっお呌んでよ」

「だっお、
なんだか急に倉えるの恥ずかしいし  」

「いいから。詊しに䞀回呌んでみ」

「えヌ、やだ」

「照れるなっお。もう『圌女』なんだから」

受話噚越しに、圌の想いが
䜕のためらいもなくたっすぐに䌝わっお来る。

わたしは顔が赀くなるのを感じながら、
小さな声で呟いた。


「  おやすみ、シンゎ」


「あヌヌヌっク゜っ、最高
この時をずっず埅っおたんだ」


受話噚の向こうのシンゎは、
たるで少幎のように叫んでいた。


なんだかすごく照れくさくお、 
でもすごくうれしくお。


䞖界䞭で今、わたしがいちばん幞せなんじゃないかっお、本気で思った。


さっきたで降っおいた雚は、
い぀の間にか止んでいた。


぀づく。

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第十䞀話「君ずいた季節」


🌈シンゎ芖点のサむドストヌリヌ
〜シンゎのひずりごず前線〜

〜シンゎのひずりごず埌線〜
有料蚘事¥300


🌈恋愛小説「今床、虹を芋たら」
党郚たずめマガゞン▌

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