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「ひずりで生きおきたような顔をしお」


    #創䜜倧賞2026 #フヌド郚門

    〈倉わっおゆくものず倉わらないもの〉
    匕っ越しをする床に台所が倉わる。
    広さも、䜿い勝手も、刻んできた家族ずの時間も、それぞれに異なる新しい堎所になっおいく。

    それでも、ずっず倉わらず持ち続けおいる包䞁や食噚類。それが私の暮らしのベヌスにあっお、「いいな」ず思うものを少しず぀足しながら、自分の台所を䜜っおきた。

    家族になっお、子育おず仕事に远われおいた時期に、私たちは私の䞡芪ず実家で暮らしおいた。食卓には、垰りが遅くなる私に倉わっお、母の手料理が䞊んだ。

    〈嫌いだった『茶色のお匁圓』〉
    ひじきの煮物、切り干し倧根、肉じゃが。
    なんおこずのない地味なおかず。
    けれど、家を離れお随分ず経぀長男は、今でも時折、「おばあちゃんの味がな぀かしい」ず口にする。

    今でこそ、その蚀葉の重みがわかるけれど、䞭孊生の頃の私は違った。

    お匁圓の時間になっお、呚りの友だちがお匁圓を開くず、色ずりどりで可愛らしい䞖界が広がっおいた。そこには、タコさんの赀いカクテルりむンナヌが笑みを浮かべおいた。

    それに匕き換え私のお匁圓ずいえば、芋事なたでに茶色だった。それが嫌でたたらなかった。

    あんなに地味でも矎味しいおかずたちを、圓時の私は内心、恥ずかしいず思っおいたのだ。

    それから時は流れ、3人の子どもたちも成長しお瀟䌚ぞず出お行った。その間にも、床重なる匕っ越しがあった。

    〈愚痎の向こうに芋えたあの頃の私〉
    「私たちがやるのを圓たり前だず思っおるよね」
    「䞊から目線で蚀うよね」
    久しぶりに集たった友人たちずの間で飛び出す、子どもたちに察するストレス発散の愚痎。ひずしきり盛り䞊がり、笑いあったその埌、ふず静かな波が打ち寄せる。

    ヌヌヌあぁ、私も若い頃、たったく同じこずを母にしおいたんだなぁ。
    ひずりで倧きくなっお、ひずりで生きおきたような顔をしお。

    母が台所に立぀こずを圓たり前だず思い、差し出されるものの䟡倀もわからずに、勝手に぀たらなさそうな顔をしおいたあの頃の自分が、友人たちの蚀葉の向こう偎から、私をじっず芋぀めおいるような気がした。

    今にしお思う。子どもたちが今も恋しがるあの味が、なぜあんなに矎味しかったのか。

    〈母の背䞭越しに芋えた湯気の正䜓〉
    母は幌い頃、戊争で生家を倱った経隓があった。
    倧阪の商人の街「船堎」。
    か぀おそこで、鰹節問屋を営んでいたず聞いおいる。どれほどの時代が移り倉わり、激動の波に揉たれおも、母の生家の台所にはい぀も、あの四角い朚の「鰹節削り噚」が眮いおあった。
    そしお嫁いで、私が暮らしおいた台所にも。

    あの頃の台所は、母が背䞭を向けお䜜業をするような壁぀けの流し台だった。
    孊校から䞀目散に台所に駆け぀け、今日あった出来事をあれこれ話しおも、母は「あぁそうか」ず静かに盞槌を打っおあしらわれた。母は、手元に集䞭しお、きっず半分くらいしか私の話を聞いおなかったのではないかず思う。

    けれど、忙しくしおいる母の背䞭の向こうからは、い぀も真っ癜な湯気ず豊かな出汁の銙りが立ち䞊っおいた。

    シュッシュッず小刻み良く響く鰹節を削る音。お湯に攟たれた瞬間に、呚りを優しく包み蟌むあの銙り。

    䞭孊生の私が、「茶色で嫌だ」ずそっぜを向いおいたお匁圓のおかずは、母が毎日䞁寧に出汁を匕いお䜜ったこの䞊なく莅沢なものだったのだ。

    蚀葉少なでも、母はい぀ものあの背䞭を向けお、出汁の銙りで私たちの食卓を䜜っおくれおいた。

    〈『食』を通しお芋える私の未来〉
    歳を重ねるに぀れお、私の䞭に「日々の暮らしの䞭にあるものを倧切にしたい」ずいう想いが増しおいる。

    「バトンを枡された」ず蚀うず倧それたこずのように聞こえるかもしれないけれど、実は私の䞭に息づいおいる料理の蚘憶、道具を遞ぶ目、矎味しいものを食べる、食べさせたいず思う気持ちヌそのすべおが、䞡芪をはじめ、出䌚った人たちが残しおくれたもので出来おいるこずに今曎ながらに気づく。

    どうしお私はこんなにも食べるこず、䜜るこずが奜きになったのか。その答えはずっず前にあの狭い台所で、私に背䞭を向けおいた母が、湯気ずずもにそっず手枡しおくれおいたのだ。

    ひずりで生きおきたような顔をしお、尖っおいた私を枩かな出汁の銙りで包み蟌み、今日たで運んできおくれた蚘憶に心から感謝を蟌めお、今日も私は愛おしい私の台所に立぀。残しおもらった倧切なバトンを私の手から嚘ぞず手枡せるように。


     
     
    はじめたしお😊 私たち「おいしいもの」ず、䜕気ない暮らしの䞭の「小さな発芋」を芋぀けるのが倧奜きな60代女友だち2人組です。遠出しなくおも近堎で楜しむ、旅でもなく散歩でもない「ちいさんぜ」。アンテナ匵り぀぀歩いお、偶然䌚ったこずにドキドキする💓そんな五感を倧切にさんぜしたす。

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