メインコンテンツへスキップ
見出し画像

【エッセイ】悪戦苦闘の教習所

    ちょうど今から1年前、私は自動車学校に通っていた。特段車に乗りたいという欲求があった訳ではない。だが、大学生が終わる前に免許を取らなければ、この先一生取らないだろう。そんな予感に駆られた私は、重い腰を上げて自動車学校に通うことにしたのだ。

    今から振り返ってみれば、私の運転が特別下手だったなんてことはなかっただろう。なんやかんや3ヶ月程で取得できたので、まあ平均くらいといったところだと思う。
    だが運転している時の私は全く自信がなかった。教官は口を揃えて「肩の力抜いてよ〜大丈夫大丈夫〜」と言うが、その楽観さは一体どこから来るのか、私は一人一人に面接をしたいくらいであった。

    そんな不安がピークに達したのは、仮免試験の時であった。その日は雨が降っていて、かつ私はトップバッターだったのだ。
    なんだか今日は無理かもしれない。私は一瞬そう思った。
    しかし、そんなことを思っていても今更試験を免除することなどできまい。私はどうやって辿り着いたか分からないが、倒れ込むようにして運転席に座り、いつもの3倍くらいは重くなったであろう腕を使って運転をすることになったのである。

    すると私の暗示が自らかかってしまったのであろうか、なんと、今まで脱輪したことのない踏切を渡ってすぐの所で脱輪した。一体何がどうなっているのやら。
    わけも分からずそのまま運転は再開した。1度脱輪した私はS字カーブのところでまた脱輪する予感に襲われた。全く、そんな悪いことばかり考えなければ良いものを、そう思ってしまった私は、本当に曲がりきれないことを察してしまった。後輪が僅かに乗り上げた時、全てを諦めた私は何とも大胆なことにそのままアクセルを踏んで突き進もうとした。

    そこで教官からストップがかかり、私は再試験を言い渡される羽目になってしまった。
    もっとも、そこでアクセルを踏んで突き進もうとする人間が世に放たれたら大惨事なので、教官の判断は至って適切なのである。
    若干落ち込んだが、他の人にこの話をしても笑われるだけで誰も慰めてはくれなかった。仕方が無いのでAIにもこの話をしたところ、AIが1番暖かい返しをしてくれた。その時私は、やはり人間は信用できないと感じることとなったのである。

    その後落ち込みから立ち直った私は、無事に仮免をクリアし、路上へと進むことになったわけだが、なんと私に再試験を言い渡した教官とまた再会することになってしまった。
    一方的に気まずい思いを抱えながら運転していたが、その教官が「今日はいいな!」と言ってくれたのだ。私が「いやあ」と言いかけたところ、「天気が!」と会話をぶった切ってきた。何故そこで使ったのであろうか。体言止めを。
    そして天気より私の運転を見てくれないだろうかと思いながら、教官とのドライブをしばらく続けたのであった。


     
     
    駆け出し社会人 エッセイとか書きます

    あなたへのおすすめ