
輝きのそばに、君がいた ⑦
― ちぎれ雲、去りて輝き ⑦―
第七話「輝く君」
どこにでもある。
似たような笑顔。
似たような声。
似たような匂い。
それでも、輝きは確かにあった。
泣きじゃくる子供。
怒鳴り声の響く工事現場。
潰れた空き缶。
死んだ蛙の白い腹。
弥生は、シャッターを切り続けた。
綺麗なものだけが、光るわけじゃない。
痛みも。孤独も。人の中で、静かに息をしている。
暗室に、現像液の匂いが満ちる。白い紙の上に、像がゆっくり浮かび上がった。
古谷が、静かに言う。
「全部を背負わなくていい」
弥生は、乾きかけの写真を見つめたまま、小さく笑った。
「私は、輝きが美しいものだけと思ってました」
少し間を置く。
「そうではない」
*
翌月には悟と晴香の結婚式だった。
弥生は、カメラを抱えて会場を歩いていた。
笑顔。
緊張した横顔。
涙。
照れた仕草。
シャッターを切るたび、
光が零れていく。
「晴香、悟、おめでとう」
涙で滲んだ世界は、
驚くほど綺麗だった。
*
晴香たちを成田まで送り、
帰り道、里美が言った。
「海、見たいな」
車を走らせ、
四人は海辺へ向かった。
冷たい風。
群青色へ沈んでいく海。
古谷と里美が、
缶コーヒーを手に並んでいる。
弥生は、波打ち際を歩いた。
後ろから、
優馬が追いかけてくる。
水平線の向こうで、
太陽がゆっくり沈んでいく。
オレンジ色の空が、
藍色へ溶けていった。
「日が暮れるね」
弥生が呟く。
優馬は、しばらく空を見ていた。
そして、
「でも」
弥生は振り返った。
「君は、今もちゃんと輝いてる」
潮風が髪を揺らした。
弥生は、少し困ったように笑った。
優馬は照れたように目を逸らし、小さく息を吐いた。
「……たぶん、僕も同じものを探してた」
波の音だけが響く。
「これからは、一緒に探さない?」
弥生は、しばらく波を見ていた。
風の音かと思った。
優馬が、そっと弥生の手を握る。
掌に、小さなネックレスが乗っていた。
Yの頭文字。
「ずっと渡したかった」
優馬は静かに、ネックレスを弥生の首にかけた。
暮れていく空の下、二人の影が重なっていた。
