
娘に教えられた "完璧じゃなくてもいい"という話
「ママ、キーホルダー作って!」
その一言から始まったレジン作りで、私は思いがけない出来事を経験した。
「この子が付いてるキーホルダーがいい!」
大好きなキャラクターを入れたキーホルダーを作ってほしいという娘のリクエストに応えて、久しぶりにレジンを取り出した。
今回で八個目くらい。
制作動画を何本も見て、少しずつコツも分かってきた気がしていた。
……そう思っていた。
フィルムを貼るために刷毛タイプのレジンを塗り、表面をコーティングした。
「あれ? 少し浮いてるかな?」
そう思ったものの、「見た目だけの問題かもしれない」と、そのまま硬化した。
すると、フィルムの隙間から大きな気泡が現れた。
「あーーー……。」
完全にやってしまった。
私の中では、過去最大の「失敗作」だった。
レジンを作るたびに、新しい失敗が見つかる。
気泡が入る。
表面が欠ける。
作品が反る。
一つ気を付けられるようになると、今度は別の課題が現れる。
「私、ハンドメイド向いてないのかな。」
そんなことまで思ってしまった。
完成したキーホルダーを娘に見せながら言った。
「ごめんね。今まで作った中で一番失敗しちゃったよ……。」
すると娘は、慌てたようにキーホルダーをのぞき込んだ。
そして返ってきた第一声は、
「かわいい〜♪」
一瞬、耳を疑った。
「本当にこれでいいの?」
思わず聞き返すと、
「うん!」
迷いのない返事だった。
そのやり取りを聞いていた息子も作品を見て、
「全然失敗じゃないよ。」
と言った。
そのときは、二人とも気を使ってくれたのだと思った。
娘にはもっときれいなものを渡したくて、
もう一つキーホルダーを作ることにした。
作っているのを見つけた娘は、嬉しそうにのぞき込み、
「こっちも私のね!」
と言う。
「はいはい(笑)」
そんなやり取りをしながら作った二つ目は、ホログラムはきれいに出たものの、少し反っていた。
表面には小さな気泡の跡が残り、ほんの少し欠けてもいた。
私から見れば、これも満足のいく出来ではなかった。
それでも、一つ目よりはずっと良かった。
「こっちも失敗しちゃった……。」
そう呟き、二つのキーホルダーを机に置いたまま、お風呂へ向かった。
いつもなら、娘はすぐに片づけたりしない。
だから、お風呂から出ても、そのまま机の上に置いてあると思っていた。
ところが、机の上には一つしか残っていなかった。
残っていたのは、あとから作った方。
なくなっていたのは、私が「大失敗作」と呼んだキーホルダーだった。
どうやら、あの「かわいい〜♪」は、お世辞ではなかったらしい。
残っていた方を手に取り、
「これはいいの?」
と聞くと、
「それはお母さんにあげる。」
娘はそう答えた。
正直、驚いた。
私なら、迷わず出来の良い方を選ぶ。
でも娘は違った。
そのとき、ふと思った。
もしかしたら私は、作品の欠点ばかり見ていたのではないか。
気泡。
欠け。
反り。
「もっと上手に作れたのに。」
そんなことばかり考えていた。
でも娘が見ていたのは、大きな気泡でも、フィルムの浮きでも、欠けでもない。
大好きなキャラクターだった。
この出来事は、レジンだけの話ではない気がした。
私はnoteを書いたあとも、
「これで伝わるかな。」
「この表現、違ったかもしれない。」
そんなふうに、自分で欠点ばかり探してしまう。
その結果、下書きばかりが増え、公開に進めない。
でも、読む人は違うところを見ているのかもしれない。
私が気にしている欠点ではなく、その文章から何かを受け取ってくれるのかもしれない。
そう思うと、文章を書くことが少しだけ怖くなくなった。
数日後、娘が子ども用のカメラで遊んでいた。
お気に入りのキャラクター。
写真立てに飾った赤ちゃんの頃の自分。
自分で折った折り紙。
夢中になって、お気に入りを写真に残している。
その途中で、USJのお土産の缶を持ってきた。
娘の宝物をしまっている缶だ。
中身を一つずつ並べて写真を撮る。
その中に、私が「失敗作」と呼んだキーホルダーがあった。
娘にとっては、最初から失敗作ではなかったのだ。
それを見つけた瞬間、思わず口角が緩んだ。