
妄想バトル 第1話【電車編】|エンタメ作品
あらすじ
ローカル線の車内で、ただしは気づいてしまった。
反対側に立つ女性・まどかが、
さっきから微動だにしないことに。
そして、彼女もまた、こちらをじっと見ていることに。
――この人、もしかして・・・。
芽生えた小さな疑いは、いつしか妄想へ。
前世の記憶、隠された正体、狙われる二人。
頭の中だけで物語はどんどん壮大になっていくのに、
なぜか二人の距離は縮まらない。
その理由は、読んでのお楽しみ。
しょうもない現実と、暴走する妄想のギャップで笑う、
掛け合いコメディ、開幕。
ただしの現実
ー 電車の走行音
「ガタンゴトン、ガタンゴトン・・・」

ただし
(僕は、いま、ローカル線の
電車に乗っている。)

ただし
(ドアの窓からのぞく、いなか町の風景は、
とても気持ちいいものだ。)
ただし
(車内はガラガラ。
席にすわって休みたいところだが・・・)
ー 電車の走行音
「ガタンゴトン、ガタンゴトン・・・」 ー

ただし
(なんてこった・・・。
完全に、やっちまった・・・。)

ただし
(電車に駆け込んだ時、
上着の一部をドアに挟まれ、
身動きが取れなくなっちまった。)
ただし
(緊急ボタンを押したいが、
さすがに届かないかー。)
ただし
(助けを呼ぼうにも、
反対側のドアのそばに立っている
女性がひとりだけ。)
ただし
(さて、なんて声をかけるか・・・。)
ー 電車の走行音
「ガタンゴトン、ガタンゴトン・・・」 ー

ただしの妄想
ただし
(しっかし、あの女性、
さっきから、こっちをチラチラ見てる気が
するんだよなぁ。)
ただし
(まさかとは思うが、
好かれている・・・のか・・・?)

前に立つ女性
「・・・あのー」
ただし
「ん? あぁー、どうしました・・・?」
前に立つ女性
「・・・もしよければ、
一緒にお話しませんか?」
ただし
(こ、これは!)
前に立つ女性
「さぁ席にすわって、お話ししましょう。」

ただし
「うっ」
前に立つ女性
「えっ、どうしました?」
ただし
「ちょっと・・・、
ドアに上着を挟まれてしまって」
前に立つ女性
「あらっ、大変!」
ただし
「こっ、この状態でよければ、ぜひ、
お話ししましょう・・・」
ただし
(んー、妄想してしまった・・・)
ただし
(ダメだ〜、せっかく
お近づきになれるチャンスが。
なんかダセェ・・・)
ー 電車の走行音
「ガタンゴトン、ガタンゴトン・・・」 ー

まどかの現実
まどか
(わたしは、いま、
ローカル線の電車に乗っている。)

まどか
(ドアの窓からのぞく、
いなか町の風景は、
とても気持ちいいものだ。)
まどか
(ただ、少し気味が悪いことがある。)
まどか
(反対側のドアのそばに立っている男性。
さっきから、こっちを見てる気がする。)
まどか
(ガラガラなんだから、座ればいいのに。)
ー 電車の走行音
「ガタンゴトン、ガタンゴトン・・・」

まどか
(わたしが先に座れば良いって?
それは無理な、お話。)

まどか
(そう、わたしは、
いま、ドアに上着が挟まれ、
動くことが・・・できない・・・。)

ー 電車の走行音
「ガタンゴトン、ガタンゴトン・・・」 ー

まどかの妄想
まどか
(それにしても、あの人、
チラチラ見てくるなぁ。)
まどか
(・・・はっ、まさか・・・
あの人・・・捜査中の警察官とか?)
前に立つ男性
「あのー」
まどか
「ひっ・・・」
前に立つ男性
「警察の者ですが、
ちょっと、よろしいですかな?」
まどか
「はっ、はい・・・」

前に立つ男性
「あなた、さっきから・・・
妙な動きをしてますね」
まどか
「い、いえ、そんなこと・・・
な、ないですよ・・・」
まどか
(と、というか、動けませんし・・・)
前に立つ男性
「あやしいなー」
前に立つ男性
「ちょっと署まで、ご同行ねがえますか。」
まどか
「いやーーー」
ー 電車の走行音
「ガタンゴトン、ガタンゴトン・・・」

まどか
(んー、妄想しちゃった。)
まどか
(ダメだ〜ダメだ。
捕まる前に、早くこの状況から、
抜け出す方法を考えなくちゃ。)
ー 電車の走行音
「ガタンゴトン、ガタンゴトン・・・」

ふたりの現実
まどか
(それにしても、あの人ずっと
同じ姿勢のままなんだよね・・・。)
まどか
(おかしいな・・・
まるでドアに固定されているみたい。)
まどか
(はっ、まさか・・・あの人・・・
わたしと同じ状況?)
まどか
「・・・あのー」
ただし
「ん? あぁー、どうしました・・・?」
まどか
「間違ってたら・・・すみません。
もしかして・・・
そこから、動けないんですか?」
ただし
「えっ? あーはい!
ちょっとドアに上着を挟まれてしまって」
まどか
「実は・・・私も動けないんです・・・」
ただし
「え、そうなんですか? 大変だ!
じゃあ誰か助けを・・・」
まどか
「いや、誰もいませんよ」
ただし
「くそっ、なんでこんな時に、
僕たちしか乗ってないんだ・・・」
まどか
「・・・ですね」
ー 電車の走行音
「ガタンゴトン、ガタンゴトン・・・」 ー

ただし
「まさか、こんなことになるとは・・・」
まどか
「でも・・・なんか、映画みたいですね」
ただし
「・・・えっ?」
ー 電車の走行音
「ガタンゴトン、ガタンゴトン・・・」

ふたりの妄想
ただし
(こ、これは、いい展開なのか??)
ただし
「こ、こういうのって、
映画だったら・・・
運命的な出会いって、やつですよね?」
まどか
「・・・は?」
ただし
「いや、例えばですよ?」
まどか
「・・・はい」
ただし
「ここで動けなくなってる間に、
お互いのことを知って、惹かれ合って――」
まどか
「あ・・・あのっ、
ちょっと待ってください!」
ただし
「えっ?」
まどか
「それ、完全に私が
ヒロイン役じゃないですかー」
ただし
「え、だってこういうのって、
大体そういう展開になるでしょ?」
まどか
「いやいや、むしろ、
ここで助けが来るまでに、
お互いの秘密が、あばかれて、
一転して敵対する展開も、
あると思いません?」
ただし
「は? いやいや、
ここはやっぱりロマンチックに」
まどか
「違います! ここから・・・
サスペンスに持っていくんです!」
ー 電車の走行音
「ガタンゴトン、ガタンゴトン・・・」

ただし
「ん、ん?」
まどか
「例えばこうです!
実はこの電車・・・、
スパイが乗っていたんです!」
ただし
「お、おう?」
まどか
「そのスパイは・・・、
この車両に隠された秘密の荷物を
回収しようとしていた・・・」
ただし
「ん、ん?」
まどか
「・・・しかし、邪魔が入る! それがー、
私たち二人!」
ただし
「おー、俺たちがぁ、ね〜」
まどか
「そう! しかも気づいていないうちに、
私たちは何者かに狙われていて・・・」
ただし
「ちょっと、ちょっと待ってくれ!
それなら、俺の妄想も
言わせていただきたい!」
まどか
「んー・・・どうぞ?」
ただし
「実は、俺たちは前世で・・・
恋人同士だったんだ!」
まどか
「えーっ!? 急に
前世要素 入れるの反則じゃないです?」
ただし
「でも、悲劇の別れを遂げた。
そして運命のいたずらで、
こうしてまた出会ってしまった・・・!」
まどか
「・・・あの、私のスパイの流れ、
どこ行きました?」
ただし
「いや、スパイとかより、
ロマンチックな方がいいでしょ!」
まどか
「ロマンチックにするにしても〜、
もうちょっと現実的な方が〜〜・・・」
ただし
「わかった、わかった!
じゃあもう、
お互いの妄想をミックスします!」
まどか
「・・・はい・・・」
ただし
「俺たちは、前世で恋人だった」
まどか
「恋愛 好きですねー」
ただし
「そして・・・」
まどか
「そして?」
ただし
「前世でスパイ同士だったんだ!」
まどか
「いや、無理やりまぜたなー」
ただし
「でも前世の記憶は、封印されていて、
今はただの・・・」
まどか
「ただの・・・?」
ただし
「一般人・・・!」
ー 電車の走行音
「ガタンゴトン、ガタンゴトン・・・」 ー

まどか
「えーと・・・、整理させてください!」
ただし
「どうぞ」
まどか
「私たちは、前世で恋人同士」
ただし
「うん」
まどか
「そして、私たちは、前世でスパイ同士」
ただし
「うん」
まどか
「そして、私たちは、
前世の記憶を封印された・・・」
ただし
「うん」
まどか
「そして、いまは一般人!」
ただし
「そういうこと!」
まどか
「なるほどー、つかめてきました!」
ー 電車の走行音
「ガタンゴトン、ガタンゴトン・・・」

ただし
「だが、電車に乗った瞬間、
すべての記憶が、よみがえった!」
まどか
「そう、お互い敵同士だったという・・・
記憶も・・・ね!」
ただし
「その決着をつけるため、」
まどか
「100年の時を超え」
ただし
「再び、こうして」
まどか
「めぐり会った」
ただし
「ようやく・・・この時がきた・・・」

まどか
「・・・待ちわびたわ!」

ただし
「何度も夢見たよ・・・」
まどか
「・・・この瞬間を!」

ー 電車の走行音
「ガタンゴトン、ガタンゴトン・・・」

ただし
「いざ・・・勝負!!」
まどか
「・・・いくわよ!!」
ただし
「うらーーー!!!」
まどか
「はぁーーー!!!」
ー 電車の走行音
「ガタンゴトン、ガタンゴトン・・・」

ただし
「うっ・・・」

まどか
「くっ・・・」

ただし
「なんてこった・・・」

まどか
「そ、そんな・・・
目の前にやつがいるのに・・・」

ただし
「俺は・・・」

まどか
「私は!」

ただし
「この場から・・・」
まどか
「動け・・・なかったんだ・・・」

ー 電車の走行音
「ガタンゴトン・・・ガタンゴトン・・・」

ー 電車のドアが開く音 ー
ー 夕方 電車が駅に停止ー

電車の外
ただし
「いやー助かったー」
まどか
「ほんと、一時はどうなることかとー」
ただし
「・・・あっ・・・えっとー」
まどか
「・・・なんか、すごく・・・
アホなことしてましたね、私たち」
ただし
「・・・はい」

まどか
「・・・では! 私は、こっちなので」
ただし
「・・・あっあぁ!
それじゃあ、お気をつけて!」
ただし
(ふー、疲れたなぁー。)
ただし
(けど、なんか楽しかったなぁ・・・。)

ただしの回想
ーただし 高校時代ー
げんた
「おい、ただしぃー」
ただし
「んー?」

げんた
「なんか、おもろいことない?」
ただし
「はぁ?ないないー
行動力も勇気もないもん」
げんた
「はぁ・・・おまえそれで幸せかー」
ただし
「まぁ、幸せだよー
妄想してればいいし」
げんた
「妄想かよ・・・いつか虚しくなんぞ!」
ただし
「いつか妄想好きの子と幸せになるよー」
げんた
「へーい」
ただし
(あの人、妄想好きだったのかなぁ・・・)
ただし
(もう、会うことも
ないんだろうなぁ・・・)
ただし
(追いかけなきゃ・・・)
ただし
(そんな気がした!)
ーまどかと別れた方向をふりかえる ただしー
ーそこには、まどかがいたー
まどか
「はぁはぁはぁ・・・」
ただし
「・・・え・・・」

まどかの回想
ーまどか 高校時代ー
なつみ
「ねぇ、まどか」
まどか
「ん?」
なつみ
「好きな人とかいないの?」
まどか
「うん、いないねぇ
妄想で間に合ってるし・・・」

なつみ
「ふーん」
まどか
「なつみも、妄想してみる?」
なつみ
「パスパス〜」
まどか
「はぁ〜悩みがあるとすれば
妄想仲間がいないことかなぁ〜」
なつみ
「なるほどねぇ〜
じゃあ妄想できる人見つけたら
即ゲットしなきゃ」
まどか
「ははは・・・勇気が出ればね」

まどかの現実
まどか
(はぁ〜今日は楽しかったなぁ)
まどか
(妄想仲間かぁ・・・)
まどか
(あの人、なってくれたのかぁ・・・)
まどか
(もう、会うことも
ないんだろうなぁ・・・)
まどか
「・・・」
ーまどか 走り出すー

まどか
(自然と走ってたー。)
まどか
(電車で妄想しただけの人ー。)
(どこの誰かも知らない人ー。)
まどか
(なんて声をかけるかなんて
考えてなかったー。)
まどか
(自分が、妄想の中でだけ
弾ける性格だってことも知ってたー。)
まどか
(でも、でも・・・)

まどか
(なぜか妄想バトルの後の自分は、
勇気が湧き出てきたー)
ふたりの現実
まどか
「はぁはぁはぁ」

まどか
「・・・」
ー気まずくなる2人ー
まどか
(だめだ・・・妄想中は、
あれだけ話せたのに
うまく話せない・・・)
ーうつむく まどかー
ーただし 切り出すー
ただし
「・・・あ、あの!」
まどか
「・・・え・・・」
ただし
「もし、よければ、
今度、妄想の続き・・・」
ただし
「どこかで話しませんか!」
まどか
「・・・はい!」
ーようやく笑顔になる2人ー
ただし
「では、次は、どこで戦いますか?」

まどか
「では次回は・・・」

ただし・まどか
「動きやすい場所で!」

ー彼らの妄想は、終わらないー
ー次回へ続くー
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良ければ、
stand fmで演じた
声劇(こえげき・せいげき)も、
お聞きください♪