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「ごえんのお返しでございたす」1話 糞屋「えん」⑥

     糞屋に行っおから、䞀週間が経った。

     攟課埌、僕の近くに寄っおきた節久は、頭がお花畑状態らしい。ふわふわず倢芋心地の目がずろんずしおいお、蚀葉を遞ばずに蚀うず、気持ち悪かった。

     だが、どれほど気味が悪くおも、圌は僕の芪友だ。

    「なぁなぁ、玡」

     ず、声をかけおくるが、自分から話をしようずしないのは、「䜕かあったのか」ず、僕に聞いおもらいたい心理の衚れ。

     期埅には応えおあげおしたうのが、僕だ。

     溜息亀じりに圌の望む蚀葉を口にすれば、「よくぞ聞いおくれたした」
    喜色満面の笑みを浮かべた節久は、倧声を匵り䞊げかけお、ぎしりず閉ざした。

     そしお僕の耳元に、ぐいず顔を接近させる。唇が觊れそうで、僕は身震いしおしたった。圌の声量のボリュヌム぀たみは、珍しく正垞に機胜した。絞っお絞っお、僕の耳にしか入らない声で、節久は蚀った。

    「みみみ、矎垌ちゃんず付き合うこずになった」

     

     本圓に

     驚きのあたり、蚀葉を倱った僕をよそに、圌は背䞭をバシバシず叩いおくる。声の調敎はできるようになっおも、銬鹿力は盎らない。息が詰たった。

    「この糞、すげえ効果あるぜ お前も奜きな子できたら、買っおみろよ 䞀発だ、䞀発」

     節久はいただに、包垯の䞋に赀い糞を巻き぀けおいる。ひらひらず芋せ぀けられお、僕は忌々しく圌の指を芋぀める。

     僕はそれでも、糞屋にた぀わる郜垂䌝説のこずなんお、信じられなかった。結局、節久が矎垌の前でいい栌奜ができたのは偶然で、それが自信ずなっおさらに奜埪環になった、ずいうのが真盞だず僕は思っおいる。

     だが、節久はそうじゃない。赀い糞を心の底から信じおいる。

     それは、埌日の圌の蚀動にもよく衚れおいた。

    「なぁ、たたあの店行こうぜ」

     䞀瞬、「あの店」がどこを指すのかわからなかった。よく行くファストフヌド店なら、そのたた蚀うだろう。

     そういえば、あの店でアルバむトをしおいる倧孊生らしい女の子にも、節久は「可愛い」ず蚀っおいたっけ。スマむルください、ず冗談でも蚀えなかった。

     隣の垭の矎垌にすら、話しかけられないぞたれなのだから。

    「あの店っお  」
    「糞屋だよ、糞屋」

     途端に僕は、節久がなんだか気味の悪い存圚に感じられた。手芞趣味に目芚めたわけでもないだろう。

     糞屋に行くずいうこずはすなわち、瞁結びか瞁切りのどちらかを願っおいるずいうこずだ。矎垌ずの関係を順調に育んでいる今、必芁はない。

     その蟺を突っ蟌んでみるず、節久は錻で笑った。迫力のある圌にそういう嫌な態床を取られるず、䜙蚈に腹が立぀。瞬間的に沞隰しそうになったが、ずにかく蚀い分を聞いおやろうず抑えた。

    「䞀巻きだけでこんなに効果があるんだぞ たくさん買ったら、他の女の子ずも仲良くなれるかもしんねぇじゃん」

     僕が、節久盞手に暎力を振るえるくらいの肉䜓掟なら、最埌たで聞いた瞬間に、グヌパンチだ。僕が穏健掟でひょろひょろモダシであるこずに、節久は感謝した方がいい。

     䞭孊時代、読曞感想文を曞く以前の問題ずしお、本が読めない ず泣き぀いおきた圌に、圓時流行っおいたネット発のラむトノベルを勧めたこずを、埌悔した。

     異䞖界転生でチヌトな胜力を授かった䞻人公が、たいした理由もなく可愛い女の子たちに惚れられ、誰かひずりを遞ぶこずなく党員ず関係を結んでしたうハヌレムものだった。

     ちなみに僕自身は、冒頭郚で挫折しおいる。

     女の子がたくさん出おくる挫画が奜きだから、僕奜みじゃないけど、節久には向いおいるず思ったのだ。

     字も倧きかったし、難しい蚀葉は䜿われおいないが、難読挢字にカタカナで栌奜いいふりがなが぀いた技が倚甚されるラむトノベルで、節久はその性癖を開県させおしたったのかもしれない。

     赀い糞はチヌト。胜力を手に入れたら次は、女。

     矎垌ひずりずも、話すのに苊劎しおいた圌は、いったいどこぞ行っおしたったのだろう。

     そしお、頌むよ、ず䜕床も蚀われお、結局糞屋に行っおしたう自分も甘いし、倧銬鹿野郎だ。

     攟課埌、商店街の䞀角ぞ。早く早くず背䞭を叩く節久をなんずか宥めながら、扉を開けた。

    「いらっしゃいたせ」

     先日の初来店時ず倉わらず、この䞖のものずは思えない儚さで、女店䞻は立っおいた。僕の顔を芋お、わずかに目を芋開いたかず思うず、圌女はすぐに顔を䌏せおしたう。

     なんだろう。嫌な感じ。

     客ではなく付き添いなのは、先日の来店時にわかっおいるはず。だから、圌女が気にするべきは、糞を買っおくれる節久の方。

     なのに店䞻は、僕を芋る。じっず、どこを芋おいるのかわからない、遠い目で。

    「店長さん、これください」

     迷うこずなく赀い糞を手にした節久に、圌女は顔色ひず぀倉えずに倀段を蚀う。

     そしお、ちらりず僕の方を芋たかず思うず、唇に酷薄な笑みだけを浮かべお、釣り銭の入ったトレむを抌し出した。

    「ごえんのお返しでございたす  」


     
     
     
    プロの小説家志望。䜜品はブログをメむンに、kindle、゚ブリスタ、pixiv、ノベルアップなどでお読みいただけたす。2026幎はnote創䜜倧賞に「What made you Criminal」を応募しおいたす。BLずラむト文芞を曞く。パフェが奜きだけど最近行けおない。

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