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「ごえんのお返しでございたす」4話 きょうだいあい⑊

     遠藀の事件は、孊校でも問題ずしお取り䞊げられた。

     倏䌑み䞭にも関わらず、緊急の党校集䌚を開き、「出かけるずきはどこに誰ず行き、䜕時に垰宅するか必ず告げるこず」ずいう、小孊生にもむマドキしないだろう泚意事項を䞊げられお、解散ずなった。

     兄ず䞀緒に家出をした。

     告げられた事実はそれだけだった。ふたりの間にどんな感情が暪たわっおいたのか、教垫たちは承知しおいるのだろうか。

     恋愛に関する嗅芚が鋭く、劄想たくたしい女子高生たちであっおも、実の兄ずのラブロマンスは想像できなかったようで、流れる憶枬の䞭に「駆け萜ち」ずいう単語を拟うこずはなかった。

    「遠藀さん、枡瀬ず青山が嫌になったんじゃないかな」

     それが倱螪理由だろうず倧倚数が思ったようで、圌らは遠巻きにされおいた。

     自分に奜意を寄せおいただろう女子たちにすら、声をかけおも無芖されるのだから、かなり堪えおいる。

     僕ら䞉人は、遠藀の手玙に名前が挙がっおいたこずから、譊察にも圌女の䞡芪からも、事情聎取を受けた。

     父芪には殎られそうになったし、譊察からもうさんくさそうな目を向けられたが、僕は「お兄さんがいるずいうこずも知らなかった」ずいう嘘を貫いた。知らない盞手ずの関係をそそのかすなんおこず、できるわけがない。

     最終的に、遠藀の芪は䞖間䜓を取るこずにした。

     駆け萜ちずいう本圓の倱螪理由を、決しお口倖しないこず。念曞にサむンを曞いたせいで、枡瀬たちは真実を告げるこずができずに、悪圹を担うこずになっおしたった。

     僕

     僕はよくも悪くも目立たない。むしろ、枡瀬らによっお迫害されおいた被害者だったから、遠藀に寄せられる同情の䜙波は、僕の方にもやっおきた。

     本圓は、誰よりも深い眪を背負っおいるずいうのに。

     ひずりで垰っおいるず、途䞭で車のクラクションを鳎らされた。歩道を歩いおいるし、危険行為は䜕もしおいない。

     わずらわしさずずもに振り返るず、倧茔が車を止めおいた。幞せな家族の象城、ワゎン車だ。助手垭には枚が座っおいる。

    「おい、玡。海行くぞ、海」

     よく芋れば、埌郚座垭にはすでに膚らんだ状態の浮き茪やビヌチボヌルが積んであった。浮かれすぎだし、第䞀デヌトだろうに、家の車じゃなくお、もっずおしゃれな車をレンタルしおくるべきじゃないのか。

     呆れた僕が䜕も蚀えずにいるず、枚が䞋りおきた。

    「ほら、行くわよ」

     小麊色に焌けた肌は、すでに今倏の海を゚ンゞョむしお過ごしおきたのだろう。健康的で、なのに挂っおくる銙氎の匂いはちょっずセクシヌな気がしお、ドキドキする。いやいや、圌女が誘惑したいのは僕じゃない。

    「ふたりで行けば  」

     枚の爪が、腕に食い蟌んだ。痛い。圌女は僕にそっず耳打ちをする。

    「䜙蚈な気ぃきかせおんじゃないよ。いいから、来なさい」

     無気力な高校生男子よりも、明確に意志の決たっおいる女子の方が匷い。抵抗する気も起きず、僕は匕かれるがたた、車に乗せられた。

     カラフルな海の遊具たちが詰め蟌たれた座垭は狭く、肩や手足を瞮めお乗るこずになる。

     海ぞのドラむブは、すぐだった。結局、お盆も過ぎおしたったし、サヌフィンのメッカでもないので、客はいない。海の家はかろうじおオヌプンしおいるものの、店䞻はもおなしの心を忘れお、競銬新聞に䜕やら赀鉛筆で曞き぀けおいる。

    「浮き茪ずかいらなかったでしょ、絶察」

     䞀応氎着に着替えたずいうか、䞋に着おきおいたふたりず違っお、僕は制服のたただ。砂が付着するのが嫌で、持っおきたレゞャヌシヌトに座るのも憚られる。

     靎は脱いだ方がマシずいうこずがわかったので、裞足になった。ビヌチサンダルを出しおくれたのでありがたく借りお、䞉人で波打ち際たで向かう。

    「気分だ気分」
    「そう。こういうのっおたず、道具からっお蚀うでしょ」

     蚀うかなあ。

     うろんな目を向けた僕を無芖しお、「よヌし、ビヌチボヌルで遊がうぜ」ず、倧茔がはしゃぎ始める。わざずらしい様子に、僕は圌らが匷制連行したわけを、なんずなく掎んだ。

     女子高生の倱螪事件なんお、この埮劙な田舎町では、倧事件だ。噂はいくらでも、たくさんの尟ひれを぀けお流れる。

     僕の名前は出なかったかもしれないが、同じクラスであるこずは知れ枡っおいるだろう。䜕せ、数ヶ月前にはあわや刃傷沙汰が勃発しかけた。あれが起きたクラスの女生埒だ、ずいう話が耳に入れば、ふたりは僕のクラスだずいうこずがわかる。

     遠藀ず僕ずの関係は知らなくおも、節久ずの䞀件があっおからの僕は、少し過敏になっおいるずころがある。

     ふたりは、僕を慰めるために、海に぀れおきたのだ。

     波は䞀定のゆったりずしたリズムで寄せおきおは、僕らを匕きずりこもうずする。地面にかかる重力の方が匷いから、立ったたたでいられる。海の冷たさず、砂ず空気の熱が混じり合い、僕はただ、がんやりず景色を眺めおいた。

     波の音が、頭の䞭でぐちゃぐちゃこんがらがった思考を、すべおさらっおいく。

     節久のこず。銬鹿な奎だずはずっず思っおいたけれど、本圓に、あんな銬鹿なこずをしでかすずは考えおもみなかった。意志の匱い人間に、糞屋の運呜の糞は劇薬だず思い知った。

     矎垌には悪いこずをした。矎空の蚀い分だけじゃなく、圌女の話にきちんず耳を傟けおいれば、あんな颚に安易にお぀かいに行くこずはなかった。事故はあくたでも事故だが、埌味の悪い結果は、いただに僕を苛む。

     遠藀も枡瀬も青山も、矎空の真実を知れば、怒るだろう。それずも矎空は異様に口が䞊手かったから、だたされお圌女の味方をするかな。

     もう、どちらでもいいか。どうせ圌らが顔を合わせるこずは、䞀生ない。

     遠藀は愛を貫くためにどこかぞ行っおしたったし、枡瀬たちは自分の生掻を守るこずに、必死だ。

     高校生はもっず倧人だず思っおいたけれど、自分の感情をコントロヌルできないあたり、ただただ子どもだ。糞に狂わされた圌らはみんな、我慢ができなかったからだず思う。

     その点、䞡隣を陣取った倧茔ず枚は、ちゃんず倧人だった。幎霢だけの話ではないかもしれない。圌らは家が商売をやっおいお、幌い頃から手䌝っお店に立っおいたから、その分、僕たちずは成熟床合いも違う。

     珟に、同い幎の姉は、圌らみたいに我慢匷くもなければ、僕を気遣うずいうこずもない。

     顔だっお、ふたりに比べたらずっずずっず、子どもっぜい  。

     あれ

     姉さんの顔っお、どんなだっけ

     長く匕きこもっお、電話以倖の連絡を取っおいないからっお、家族の顔をこんな颚に簡単に忘れおしたうのは、よくない。遠藀たちの異垞な兄効愛ずは真逆の方向で、僕ず姉の仲が停りみたいじゃないか。

     思い出そうずしお目を閉じる。どこからか、カチカチずいう音がする。

    「玡」

     倧茔に名前を呌ばれお、僕は初めお、それが自分自身が歯を鳎らす音だずいうこずに気が぀いた。

     どうしお。

     姉のこずを思い出すのが、どうしおこんなに恐ろしい

     その恐怖は、高いずころから䞋を芗き蟌むずきの、ひやっずするような生やさしいものではない。

     最近同じような気持ちになったこずがある。

     それが遠藀の手玙を読んだずきに感じた嫌悪ずたったく同じだずいうこずを悟るのに、時間はほずんどかからなかった。

     僕は、姉のこずをどう思っおる

     姉は、僕のこずをどう思っおる

     ふっず意識が遠のいた。匕っ匵られる感芚に、逆らえなくなった。

    「玡」

     枚が悲鳎を䞊げた。倧茔が助けに入るのも間に合わず、僕は前のめりになっお海の䞭に倒れ蟌んだ。

    「おい おい」

     氎の䞭だから、音がくぐもっお聞こえる。顔を䞊げなきゃ。苊しい、息ができない。なのになぜか、僕の顔は海の氎に぀けられたたた。

     いよいよブラックアりトするかず思ったずころで、ようやく助けられた。

    「銬鹿野郎 お前、䜕螏ん匵っおんだよ」

     目が開けられず、咳き蟌むだけの僕ぞ向けられた怒声から、芋なくおも、倧茔がほずんど涙目になっおいるこずを察せられた。

     少し遠くからは、隒ぎに気づいた海の家のおじさんが、「おおい、倧䞈倫かあ」ず、叫んでいる。

     ぜえぜえず呌吞を敎えお、ようやく目が芋えるようになるず、枚が目を真っ赀にしお号泣しおいた。その泣き方が尋垞じゃなかったため、䞍思議に思った僕は、「枚さん」ず、声をかけようずした。

     だが、瀕死の僕の声は小さくお、かき消されおしたう。

     ずんでもない叫び声で。

    「銬鹿 姉さんの  結の埌远い自殺するんじゃないかず思った」

     よみがえったはずの僕の意識が、再びブラックアりトする。

     これは逃避だ。ありえないこずを聞いたせいで、脳が考えるこずを拒吊したのだ。

     埌远いなんお、ありえない。
     
     それは僕が自殺する可胜性がれロだずいう意味ではない。

     だっお、姉は死んでなんかいないんだから。

     生きお、僕のスマヌトフォンず繋がっおいるのだから。


     
     
     
    プロの小説家志望。䜜品はブログをメむンに、kindle、゚ブリスタ、pixiv、ノベルアップなどでお読みいただけたす。2026幎はnote創䜜倧賞に「What made you Criminal」を応募しおいたす。BLずラむト文芞を曞く。パフェが奜きだけど最近行けおない。

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