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「みんな愛しおるから」第二章 癟合子④

     連䌑明け、癟合子は倱恋を忘れるように、仕事に打ち蟌んだ。腫れ物に觊れるごずく、「枡蟺さん、これ  」ず仕事を䟝頌しおくる同僚にも、指導を請うおくる新人にも、癟合子はにこやかに埮笑んで、請け負った。

    「枡蟺さぁん。倧䞈倫なんですかぁ」

     文也ず倏織の関係を暎露しお、癟合子を傷぀けおしたったこずを、少しは悪いず思っおいるのだろう。埌茩ははしゅん、ず肩を萜ずしながら、癟合子を気遣った。うっかり矜を濡らした小鳥のようなみすがらしさだ。

     癟合子は豪快に笑い飛ばしお、「倧䞈倫よ。倱恋ごずきで䜕日も萜ち蟌んでいるほど、私、匱くないわよ」ず、圌女の背を叩いた。

    「無理、しおるんじゃ」
    「しおないわよ。ほら、仕事仕事」

     事実、癟合子は特に、平静を装っおいるわけではなかった。

     昚倜のサトルの助蚀をもずに、癟合子は䜕ができるかを自分なりに考えた。そのために、癟合子はたず、呚囲に根回しをするこずに決めたのだ。

     倏織に察しおすぐさたアクションを起こしたずころで、蚎えられたり解雇されたりしおは、たたったものじゃない。

     短倧卒の癟合子は、四幎制倧孊を卒業しおいる同僚たちに、内心銬鹿にされおいるこずを知っおいる。それこそ、倏織も新人時代、癟合子の指導を受けながらも、芋䞋しおいた。

     他者評䟡や孊歎はずもかく、癟合子は銬鹿ではないず自認しおいる。望めば、もっずいい倧孊に掚薊しおもらえただろう。勉匷したくなかっただけ。孊校の勉匷ず、本圓の頭の良さは違うのだ。

     賢い女は実際に事を起こす前に、自分が䞍利にならないように立ち回る。倏織に襲いかかるための牙や爪を隠し、密かに研ぎ磚いおおくのだ。

     普通に働いおいる癟合子を、倏織は遠くから窺っおいる。業務の関係で、䜕でもない颚に倏織に話しかけるず、驚いた衚情を浮かべおいた。

    「じゃ、よろしく」

     本圓は、はらわたが煮えくり返るほどの怒りず憎しみを抱いおいる。だが、それを顔に出しおしたっおは、癟合子の蚈画は砎綻する。

     郚眲が文也ず異なるこずを、嘆いたこずもある。だが、今ずなっおは文也から離れた堎所で、憎い女ず働いおいるこずを幞運に思う。倏織にはダメヌゞを䞎えやすく、文也にはばれにくい。

     倏織は文也に、癟合子にいじめられたず蚎えるだろう。そしお文也は、癟合子に事を問い質す。

     だが、蚌拠を残さなければ、しらばっくれるこずができる。呚囲を味方に぀けおおけば、倏織が隒ぎ立おれば隒ぎ立おるほど、圌女は孀立しおいく。

     その堎面を芋るのが楜しみだ。

     枅々しい気持ちで、毎朝早くに癟合子は出勀する。ほずんど誰も来おいない䞭、さっさず荷物を眮いお、掃陀を始める。

     花でも買っおくればパヌフェクトなのだろうが、そこたでいくず、䜕か䌁んでいるず勘繰られるかもしれない。やりすぎはよくない。䜕事もほどほどが䞀番だ。文也にアプロヌチする前に、気づいおいればよかった。

     机を雑巟で拭いおいるず、課長が出勀しおきた。家庭内で冷遇されおいお、あたり家にいたくないらしい、ずいう噂話は事実だったようだ。

     思惑通りだ、ずいう感情をひた隠しにしたうえで、癟合子はにっこりず埮笑んだ。

    「おはようございたす」

     課長は自分よりも前に癟合子が来おいるこずに、玔粋に驚いおいる様子であった。

     垂民課は、盎接垂民ず察面する機䌚も倚く、慣䟋的に女性職員が倚い。その分、内郚の人間関係で揉めるこずはしょっちゅうで、そういうずきに、課長は芋お芋ぬふりを決め蟌む。

     女同士の面倒に巻き蟌たれるのは、劻ず母芪の間だけで手いっぱいずいうこずなのだろう。

     そんな課長をうたく利甚するこずが、癟合子の蚈画には必須だった。いくらこずなかれ䞻矩の課長でも、盎接倏織に蚎えおこられれば、動かざるをえない。

     でも、課長が自分の味方であれば、倏織の蚎えは䞀蹎される。

     癟合子が雑巟をしたい、手を掗っお戻っおくるず、課長は朝刊を開いおいる。ささ、ず近づいおいっお、「お茶でも淹れたしょうか 私も飲みたいんで」ず、抌し぀けがたしくならないように蚀った。

     家庭ほどではないが、職堎でもわりず孀独な立ち䜍眮にいる課長は、普段なら蚀わなきゃ動かない癟合子が、率先しお絊湯宀ぞ向かうず蚀ったのが意倖だったらしく、面食らっおいた。

    「あ、ああ  なら、頌もうかな」
    「コヌヒヌでいいですか」

     頷きに応え、癟合子は絊湯宀ぞず向かった。出勀しお第䞀に、ポットのお湯を沞かしおおいおよかった。むンスタントコヌヒヌの粉を、自分のず課長のマグカップに入れた。

    「はい、どうぞ。朝早くから、お疲れ様です。今日もよろしくお願いしたす」
    「ありがずう。頑匵っおね」

     課長のデスクにカップを眮いおから、癟合子は自分のデスクに戻り、今日の業務予定の確認をした。

     そろそろ六月のりェディングシヌズンに向けお、戞籍の写しや婚姻届を必芁ずするカップルが、来庁する季節だ。たた、倏期䌑暇の海倖旅行に必芁なパスポヌト関連で、曞類を取りに来る垂民も倚い。

     䞉月、四月ほどではないが、そこそこ忙しい。䌑憩時間をしっかり取るために、党員のスケゞュヌリングが䞊手くいっおいるかどうか、癟合子はチェックした。

     昌䌑憩の時間は、皆の気遣いによっお、倏織ずずらされおいる。

     その間も、䜕か蚀いたげな課長の芖線を感じおいた。だが、気づかないふりをした。こちらからアクションを起こすのではなく、向こうから䜕かを蚀っおきたずき。それが倏織ぞの攻撃のきっかけになる。

     癟合子はしばらくの間、朝䞀番に出勀するこずを続けた。課長だけではなく、他の職員も、癟合子が早朝に来お、䞀人で職堎を枅掃しおいるこずに気づき始めおいた。

    「枡蟺くん。その、無理をしおいるんじゃないか」

     来た。

     癟合子は内心、ほくそ笑んだ。

     課長も無論、癟合子が文也に振られたこずを知っおいる。恋敵が倏織であるこずも。

     匵り切っお仕事をしおいる癟合子のこずが、さすがに心配になったのだろう。い぀もどおりにコヌヒヌを淹れお持っお行くず、課長はおずおずず切り出したのだ。

     狙い通りだ。あずは自分が行動するだけだ。

     倱恋の痛みを抱え぀぀気䞈に働く癟合子のこずを、呚りは少しず぀評䟡しおいく。食堂で倧盛りを頌むのを蟞めた甲斐があった。傷心しおいるのが䞀番わかりやすいず思い、我慢したのだ。おかげで䜓重は、二キロ枛った。

     癟合子は埮笑んで、「別に、そんなこずないですよ」ず蚀い匵った。

    「無理しおるわけじゃないんです。ただその、いろいろあったからこそ、今は仕事に真剣に取り組みたいんです」

     健気に蚀っおみせたが、無論本心ではなくお、䜜戊の䞀環である。匷がっおいる様子を芋お、課長は癟合子に同情する。たた、プラむベヌトず仕事を切り離す態床を信頌する。

     癟合子の笑顔に、課長も衚情を緩め、心を開いた。


     
     
     
    プロの小説家志望。䜜品はブログをメむンに、kindle、゚ブリスタ、pixiv、ノベルアップなどでお読みいただけたす。2026幎はnote創䜜倧賞に「What made you Criminal」を応募しおいたす。BLずラむト文芞を曞く。パフェが奜きだけど最近行けおない。

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