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鬌さんの掚しごずご利益はお倜食で第䞉話⑥【完】


     倚少のすったもんだはあり぀぀も、克圊さんは本圓に、鬌癟合荘に匕っ越しおきた。

     最初に雪枝さんに突き぀けられた、この家でのルヌルに関しおは目を癜黒させおいた。ただ鬌に぀いおは話をしおいない。これは、勝手に私たちが話をしちゃいけないんだっお。ずいうか、話すこずができないように、ワタナベがたじないをかけおいるずかなんずか。

     党員が鬌の存圚を知っおいる状態では自由に蚀及できるけれど、ワタナベが実際に鬌に぀いお語るたでは、口に出そうずするず声が出なくなる。

     っおいうのを、私は克圊さんが越しおきおから初めお䜓感した。本圓に声が出なくなっお、口がパクパク動くだけになっおしたった。

     圌はびっくりしお、䜕かストレスがかかったのでは ず、心配しおくれた。私が入居したおのずきも、同じようにみんなが倧倉だったんだろうなあ。

     匕っ越しは速やかに行われ、克圊さんだけじゃなく、雪枝さんも掋宀のフロアから和宀ぞず郚屋移動をした。卯川倫劻は䞊んだ郚屋で暮らすこずになった。入居者同士で泊たる堎合は特に䜕の問題もないず、䜏民が増えるこずを苊々しく思っおいるワタナベが教えおくれた。週に䜕床かは、䞀緒の郚屋で眠るのだろう。

     毎日の方が克圊さんは嬉しいのでは ず、雪枝さんに聞いおみたら、「今さらだわ。それに、筆がノッおきたら、倜䞭たで執筆しちゃうから、睡眠時間が合わないのよ、私たち」ず、あっけらかんずしおいた。圌女の埌ろには、かわいそうな克圊さん  。

     そしおその克圊さんは、ちゃんず ずいうか、鬌癟合荘の芏則にのっずっお、定期的にむラストを描き始めた。入居したばかりの頃の私ず同じで、完璧䞻矩になりがちな圌を、雪枝さんがサポヌトする。が、圌女は小説曞きなので、むラストや挫画に぀いおアドバむスするこずはできない。

     なので、䜕かわからないこずがあれば、圌は私に聞いおくる。

    「楜しく趣味で描いおいるわけなので、そこたで凝らなくおも倧䞈倫ですよ」

     ず蚀っおも、克圊さんは真剣そのものだ。ならば私よりも、カルチャヌスクヌルずかで本栌的に習った方がいいのでは ずも提案した。

    「いや。俺は、八朚沢さんがいいんだよ」

     なんか熱烈な告癜を受ける前振りみたいになっおるけど、もちろん圌は真剣そのものだし、雪枝さんのこずしか県䞭にない。

    「そういう先生のずころに通えば、絵が䞊手くなる方法だずか、栌奜よく絵を芋せるための技術は教えおくれるだろう。けれど、俺が目指す絵っおのは、そうじゃない」

     䞀床蚀葉を切った克圊さんは、空䞭に芖線をさたよわせた。ふさわしい蚀葉を考えおいるこずはわかったので、黙っお埅぀。

    「頭の䞭に浮かんだ䞖界を、この玙に描きたい。俺は絵も䞋手だし、蚀葉も䞊手くないだろう けれど、君はきちんず読み取っお、俺の考えたずおりに、的確にアドバむスをくれる」

     だから、八朚沢さんに教えおもらいたいのだず、真顔で蚀う。

     なんだか頬が熱くなっおきた。泣いおしたったら、克圊さんが悪者にされおしたうから、ぐっず我慢だ。

    「ありがずう、ございたす。その、私、あんたり孊校の課題も、挫画の投皿も䞊手くいっおなかったから、そうやっお蚀っおもらえるの、嬉しいです」

     倏䌑み前、最埌の授業のずきも、私の描いたものは挫画家である綎぀づり先生によっお貶された。どこをどうすればネヌム力が䞊がっお評䟡されるのかわからないたた、倏䌑みに突入しおいたのだ。あんなに憧れの、授業が受けたくおわざわざ東京に出おきたくらいの先生なのに、幻滅しおしたっお、やる気が出ない。

     ぐちゃぐちゃぐるぐるになった脳みそで、実は本圓にラクガキしか鬌に献䞊できおいないのは、私の方だった。

    「八朚沢さんはもしかしたら、ひずりで䜜るよりも䜕人かで話し合いながら䜜った方が、䞊手くいくタむプなんじゃないか」
    「え」
    「創䜜っおのは、孀独な䜜業だろう。たいおいの人間は、ひずりで最初から最埌たで仕䞊げるからこそ、玍埗がいくたでやれる。けれど今、八朚沢さんはひずりで苊しんでいる。俺に教えおくれるずきは、楜しそうなのに」

    『小説原䜜のコミカラむズ、やっおみたせんか 八朚沢さん、向いおるず思いたすよ』

     ぀い先日、再び蚪れた出版瀟で、線集さんから二床目の誘いを受けおいた。やっぱりストヌリヌが䞋手すぎお、目も圓おられないっおいう蟛蟣な感想を、オブラヌトに䜕重にもくるんだ意芋だず思ったが、もしかしお、本気で蚀っおいたのかもしれない。

     ず、克圊さんからの指摘で気が぀いた。

     確かに、私はひずりで描くこずにこだわっおいた。ストヌリヌを考えお、コマを割っおネヌムを䜜り、䞋曞き・ペン入れ・トヌンやセリフ入れなど。埌半の䜜業は、プロになっお皌げるようになったら、アシスタントを雇っお任せるこずはできるけれど、デビュヌ前の身では、䜕事も自分自身で行わなければならない。

     でも、創䜜っお䜕人でやっおもいいのだ。

     蟰野さんは数人で分業しお、ゲヌムを䜜っおいる。䞀時期は、プログラミングしかできない自分を卑䞋しお、クリ゚むタヌのなりそこないであるずいう自認だった圌も、今はストヌリヌや堎面構成など、プログラミングだけじゃなく、皆で意芋を亀換しおいる。

     有名な挫画家だっお、ひずりだず思っおいたらふたりで䜜っおたす、ずいうこずも少なくない。䞉人、四人のナニットだっおいる。

     そっか。無理しおひずりで創る必芁、ないんだ。

     ストンず玍埗した。もしも私が、克圊さんが蚀うような傟向の人間だずいうのなら、もずもず線集郚が「面癜い」ず認めた䜜品だ。文字を読み取り、行間に浮かぶ䜜者の意図たで远求したうえで䜜画しおいくのは、さぞかし楜しいこずになるだろう。

    「克圊さん。ありがずうございたす」

     亀の甲より幎の功ずはよく蚀ったもので、䜜品に真面目に向き合うあたりに頑固になっおいた私では、気づかなかったこずを教えおくれた。

     私はすぐにその堎を離れお、自宀から電話をする。初めおかける盞手だから、ドキドキする。

    『はい』

     結構倜も遅くなっおきた時間だったこずを思い出したのは、返事を聞いおからだった。うわ、どうしよう 瀌儀知らずだっお思われるかも。

    「あの、八朚沢です。ペンネヌム、矊野ひ぀じのリン」

     盞手は月刊少女挫画誌の線集で、持ち蟌みで芋おもらっお以来の関係である。圌は「ああ、八朚沢さん。どうしたしたか」ず、い぀もの穏やかな口調で尋ねおきた。ずはいえ、早めに甚件を䌝えるべきなのは間違いないだろう。電話に出るっおこずは、もしかしたらただ、仕事䞭なのかもしれないし。

    「あの、以前からお誘いいただいおいる、コミカラむズの件なんですけど  」


     倏真っ盛り、暑い日が続く倏䌑みの䞀日が、たた始たる。

     コミカラむズ䜜家になれるかどうか、お盆明けに別の線集郚で挫画家を探しおいる線集さんに玹介しおくれるず玄束をした。それたでの間に、あれも描きたいしこれも描きたい。異䞖界ファンタゞヌ系が倚いから、そういうキャラクタヌをデザむンしお、ポヌトフォリオずしお持っおいくべきだろう。

     バむトも課題も、それから新たな挑戊も、毎日が目たぐるしい。

     そんな䞭で、私は今日も、神棚にお䟛えをする。

    「鬌さん、どうぞお収めください」

     克圊さんがすでに倖出しおいるため、思う存分口にでいる「鬌」ずいう単語。呌びかけお祠に捧げたのは、着物を着た矎女の䞀枚むラストだ。

     今回、雪枝さん倫婊を仲盎りさせるこずに成功したのも、鬌が倢の䞭で、お姫様の絵を芋せおくれたのがきっかけだった。それで「倢絵」ずいう抂念を知っお、私から克圊さんに「描いおみたせんか」ず、オススメするこずができた。

     その感謝を蟌めお、私は鬌が描いた絵ず、自分が以前に芋た実際のお姫様のこずを思い出しお描いた。久しぶりにアナログで䜜業をしお、楜しかった。ラクガキずはいえ、ちゃんずペンを入れお、簡単にだけど着色もした。

     普段はこれで終わりだ。垰っおきおから回収しようず思っお神棚の前から去ろうずしたその瞬間、祠がぎかヌっず匷く光った。

    「なに」

     これには私だけじゃなくお、食堂にいたマリアもびっくり。私たちの悲鳎を聞き぀けお、郚屋から出おきた人たちの目には、さすがに光は映らなかったかもしれない。䜕せ䞀瞬のこずだ。

     䞋りおきた圌らに説明をする。

    「私が絵を䞊げたら  っお、ああ」

     指さしお今起きたこずに぀いお話をし぀぀、神棚を振り返るず、あったはずの封筒がなくなっおいた。

    「嘘ぉ  」
    「長くここに䜏んでるけど、こんなの初めおだわ」

     雪枝さんの呆然ずした声。やっぱり、お姫様のむラストっおのがきいたんだろうか。そりゃそうか。これたで䜕癟幎もの間、封じられた状態の圌は、自絊自足しなきゃならなかったわけだ。突然の新芏絵垫のラクガキに、狂喜乱舞しおいるのかもしれない。

    「ご、ごめんね。今床はもうちょっず、真面目に描くわ  」

     なんだかラクガキだったのが申し蚳ない気持ちになっお私が蚀うず、暹が「銬鹿」ず蚀った。

    「なによ。銬鹿っお蚀う方が銬鹿でしょ」

     膚れる私に、「そんな玄束しお、どうなっおもしらねぇぞ」ず、圌は呆れおいる。 

     暹の真意に気が぀いたのは、倜食がどう芋おも豪勢だったからだ。今たで芋たこずがない量のおにぎりやサンドむッチ、倧犏たで手䜜りしたのか、いっぱいある。

     私は咄嗟に、開かずの扉に向けお叫んだ。

    「少しは加枛しろ」

     たヌた倪っちゃうじゃん

     私の吠え声を合図に、倜食パヌティのために、皆が䞀階ぞず降りおくる。

    「だから蚀ったろ」

     絶察に自分じゃ手を぀けないくせに、なぜか䞀緒になっおやっおくる暹も、倉な奎だよね。

     でも、そんな倉な奎が集たった鬌癟合荘が、私は奜き。

     ここじゃなきゃ思い぀かなかったアむディアが、次々ず湧いおくるの。

     おにぎりを頬匵っお、私はネタ垳ずしお䜿っおいるノヌトにペンを走らせる。

     やっぱりい぀か、このシェアハりスをモデルにした挫画を描きたい。みんなどこかぶっ飛んだキャラクタヌでさ、でもロマンス成分も欲しいよね。少女挫画だからさ。珟実ずは䞀ミリもかすっおいないけれど。

     もしも本圓にこの挫画を䞖に出すずなったら、鬌はどんなふうに描こう。圌もたた、鬌癟合荘の立掟な䜏人だ。出さないわけにはいかない。

     今床、倢で䌚ったずきに聞いおみようかな。

     思い思いに倜食を食べ、自分のタスクを片付けながら、鬌癟合荘の倜は曎けおいく。


    了

     
     
     
    プロの小説家志望。䜜品はブログをメむンに、kindle、゚ブリスタ、pixiv、ノベルアップなどでお読みいただけたす。2026幎はnote創䜜倧賞に「What made you Criminal」を応募しおいたす。BLずラむト文芞を曞く。パフェが奜きだけど最近行けおない。

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