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「みんな愛しおるから」第䞀章 倏織⑊

     次の日すぐに、文也は倏織が劊嚠したこずを䞊叞に申し入れ、退職の旚を切り出した。倏織は圌の隣で、黙っおいるだけでよかった。

     おめでずう、ずいう祝犏の声が、ぱらぱらず䞊がった。以前子䟛ができた職員に察しおは、もっず皆、声を倧に祝っおいたのに。倏織は自分の評䟡が地に萜ちおいるこずを、改めお実感した。

     話し合った結果、倏織は月末で退職するこずになった。あず二週間ほどの勀務だが、閑職に远いやられおいたので、匕き継ぐ業務も䜕もない。

     週に䜕日かは出勀する必芁があるが、残っおいる有絊の消化に努め、文也の棲むマンションに匕っ越しする準備にあおる。

     倏織が「残り期間もわずかではありたすが、よろしくお願いしたす」ず頭を䞋げた埌の、癟合子の衚情は芋ものだった。

     わなわなず唇を震わせお、充血した目で倏織を睚み぀けおくる。その異様さに、近くにいた同僚たちは、圌女から距離を眮いた。

     圌らの目は、「もしかしお、叀河さんが癟合子さんにやられたっお蚀っおたの、本圓だったんじゃないの」ず、癟合子を疑う目になっおおり、やがおその空気は䌝播し、課長にも䌝わった。

     課長は癟合子から、倏織の悪評を散々に聞かされ、冷遇しおきた匵本人だ。

     圌は咳払いをしお、「ずにかく、最埌たで頑匵っお働いおくれ」ずだけ蚀い残し、そそくさずその堎を離れた。

     課長を芋送り、それから倏織は、癟合子に再び芖線を戻す。

     癟合子は青い顔をしお、唇を噛みしめおいた。二重あごがたるんでいお、その顔はずおも醜い。

     嫉劬に塗れた女を、倏織は芋䞋した。錻で笑いそうになっお、じっず堪えた。

     痩せおもっず魅力的な女になろうずいう努力もせず、倧人しく自分の蚀いなりにできそうな文也に狙いを定めた、浅たしい女。

     倏織ずの亀際を知ったずきに、倧人しく諊めおいれば、こんなに惚めな思いをするこずはなかっただろう。

     すべおは圌女の自業自埗だ。

     倏織は埮笑みを浮かべお、癟合子から芖線を倖し、デスクに戻った。



     珟圚文也が暮らしおいるマンションに移るだけなので、準備にそう人手はいらない。

     そんな倏織の䞻匵は通らなかった。劊嚠しおから、文也はずおも過保護になった。ただ安定期じゃないんだから、ず諭された。

    「君や赀ちゃんに䜕かあったら、僕は䜕をするかわからないよ」

     い぀もず違う匷い口調ず真顔に、倏織は頷くこずしかできなかった。癟合子に傷぀けられおいたずきも、䌌たようなこずを蚀っおいた。

     䞇が䞀、劊嚠に気づかないたた、癟合子の嫌がらせによっお流産しおいたずしたら、圌はその元凶である圌女を、どんな目に遭わせおいただろう。ちょっず芋おみたい気もした。

    「ごめんね、明矎。䌑みの日に手䌝いに来おもらっちゃっお」
    「いいっお」

     食噚を緩衝材で梱包しながら、明矎は蚀った。他に手䌝いを頌める友人などいなかった。

    「宅配䟿で送るんだっけ」
    「その぀もりだったんだけれどね。文也くんが、知り合いから軜トラック借りおきおくれるっお  あ、噂をすれば」

     ピンポン、ずチャむムが鳎った。ゆっくりず立ち䞊がり、倏織は圌を出迎える。

    「どうぞ。ただ散らかっおるけど」

     宀内に促すず、文也ず明矎が初めお察面する。明矎は圌の顔を芋お、䜕か蚀いたげな衚情で、倏織を芋た。

     蚀いたいこずはわかっおいる。改めお、文也が倏織の元圌たちずは党然違うのだず実感したのだろう。

     ワむルドで性的なアピヌルに特化しおいた男たちは、恋人にするにはよいが、結婚盞手ずしおは信甚できない。䞉十幎近く生きおきお、文也ず出䌚っおようやくわかったのだ。

     幞せは、平凡ずほがむコヌル。結婚盞手に危うさを求めおはならない。

    「小野田明矎です。倏織ずは、倧孊時代からの友人で」

     よろしく、ず差し出された手を、文也は握った。

    「浅倉文也です。倏織さんから、お話は䌺っおたすよ」
    「あらやだ。悪口かしら」
    「明矎」

     止めなければ、䜕を蚀われるかわかったものじゃなかった。鋭い䞀声に、明矎は肩を竊め、鞄の䞭から財垃を取り出した。

    「どこ行くの」
    「そろそろお昌だから、買い出し。なんか食べたい物ある」

     それなら僕が行きたすよ、ず文也は蚀ったが、明矎はにやにやず笑った。

    「いいえ。私、お邪魔虫ですから」

     そう蚀っおスタスタず郚屋を出お行っおしたうものだから、倏織は文也ず顔を芋合わせ、苊笑する他なかった。

    「なんずいうか  面癜い人だね」
    「マむペヌスなのよ。昔っから。よくも悪くもね」

     掋服の海に埋もれたたた、倏織は明矎の話をした。孊生時代から今に至るたで、圌女の笑える゚ピ゜ヌドはたくさんある。その䞀぀䞀぀を順を远っお玹介するず、文也は声を䞊げお笑った。

     䌚話をしながらも、文也の手は止たらなかった。䞍甚品ずしおあらかじめ陀けおあった物を、ゎミ袋に分別しおいく。

     それを暪目で芋ながら、倏織は匕っ匵り出しおきた掋服たちを吟味する。

     しばらく働くこずもないだろうから、これを機に、かっちりしたスヌツの類は凊分しおもいいのではないだろうか。マタニティドレスも買わなければならないし、文也の家のクロヌれットを占領するわけにもいかない。

     掋服の仕分けに没頭しおいる倏織の耳に、䞍甚品ず栌闘しおいる文也の「あれ」ずいう声が耳に入った。

    「どうかした」
    「いや、倏織さん、喫煙者だったかな、ず思っお」

     文也の手の䞭にあるのは、灰皿だった。

     したった。先に捚おおおけばよかった。

     だが、今曎埌悔しおも遅いので、倏織は顔に出さないように努めお、笑顔で「ああ」ず蚀った。

    「昔、よく泊たりに来おた友達がね。その子が持ち蟌んで、そのたたになっおるだけ」
    「捚おおいいの」
    「いいのよ。どうせ、もう取りになんお来ないわ」

     決しお嘘ではないが、眪悪感は残る。蟌み䞊げおきた苊い物を、ごくりず飲み䞋しお、倏織はさっさず掋服の敎理に戻った。

     半分くらい分別が終わったずころで、明矎がコンビニから戻っおくる。はい、ず枡されたのはビニヌル袋だけではなかった。

    「これは」
    「垰っおきたら、郵䟿受けからはみ出おるのが芋えたから、持っおきちゃった」

     癜い封筒には、切手もなければ、宛名もない。倏織は銖を捻り、裏返しおみたが、送り䞻の名前も曞いおいなかった。

    「䜕かしら  」

     盎接投凜された手玙に、䞍気味な予感がしお、倏織は二人に芗き蟌たれないように、䞭身に目を通した。

     䞀瞬だけ息を詰めお、それから倏織は、ビリビリに手玙を匕き裂いた。小さく砎いお、ゎミ袋にそのたた攟り投げる。

     そのあたりの玠早さに、文也ず明矎は目を䞞くしおいる。

    「どうしたの」
    「䜕でもない。ただの、ダむレクトメヌルよ。それより早く、お昌にしたしょ」

     今床は明確に、嘘を぀いた。぀き通さなければならない。

     コピヌ甚玙には、たった䞀蚀、こう印刷されおいた。

    『すべお知っおいる』

     ず。

     
     
     
    プロの小説家志望。䜜品はブログをメむンに、kindle、゚ブリスタ、pixiv、ノベルアップなどでお読みいただけたす。2026幎はnote創䜜倧賞に「What made you Criminal」を応募しおいたす。BLずラむト文芞を曞く。パフェが奜きだけど最近行けおない。

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