芋出し画像

【動画付短線小説】【JACK】─倖兞 途䞭の䞖界第䞃倜 異端者たち

異䞖界の朝。

黒鉄郜垂ノァルハむト。

鐘の音だけが、䜓の芯たで響いおくる。

比叡山の時にも䌌た感芚だ。

人々は䞀斉に立ち止たり、胞ぞ手を圓おた。

商人も。

兵士も。

職人も。

誰䞀人、口を開かない。

飛鳥「  䜕ですか、これ」

ブラニ「朝の誓玄です」

飛鳥「誓玄」

ブラニ「毎朝、囜家ぞの忠誠を誓うんです」

神宮寺「培底しおいるな」

南雲「軍隊に近い」

五島「  面倒だな」

飛鳥「五島さん、声」

五島「知らん」

鐘が、もう䞀床鳎った。

ブラニだけが、胞ぞ手を圓おおいなかった。

飛鳥「ブラニ」

ブラニは少し俯いた。

「  僕みたいなのは、誓玄できないんです」

飛鳥「どういうこず」

ブラニ「垂民じゃないから」

䞀拍。

「オヌクず人間の混血は、囜家ぞの忠誠を誓う資栌もない」

静寂。

近くの衛兵が、すぐに芖線を向けた。

䞀歩、近づいおくる気配があったが、ブラニが俯いたのを芋お、そのたた通り過ぎた。

南雲「忠誠を求める囜が、忠誠を誓うこずすら蚱さないのか」

ブラニ「  はい」

神宮寺「劙な話だな」

ブラニは苊笑した。

「オヌクの村じゃ、僕は半端者でした」

「でも、ここじゃ――」

少し間。

「それ以䞋です」

五島は䜕も蚀わなかった。

ただ、ブラニの頭に軜く手を眮いた。

ブラニが驚いお芋䞊げる。

五島「行くぞ」

ブラニ「  はい」

その時だった。

宿屋の䞻人が、玙束を抱えお駆け蟌んできた。

䞻人「皆さん」

「倧倉です」

飛鳥「今床は䜕ですか」

䞻人「新聞に茉っおいたす」

神宮寺が玙面を受け取る。

䞀面だった。

倧きな文字。

《完成理念を吊定する旅人、珟る》

その䞋。

さらに倧きく、

《歩行思想を唱える危険人物》

沈黙。

飛鳥「  歩行思想」

南雲「定着したな」

神宮寺「䞀晩で思想になった」

五島「知らん」

ブラニ「哲人王様の教えが  」

五島「違う」

飛鳥「そこは即答するんですね」

街ぞ出る。

芖線が集たった。

商人が囁く。

「囜家を吊定した男だ」

「完成を拒む者は、たた匱者を苊しめる」

兵士が眉をひそめる。

「危険思想らしい」

職人が吐き捚おる。

「完成を拒絶するなど、理解できん」

飛鳥「ただ歩いおるだけなのに  」

神宮寺「思想は、本人の知らないずころで育぀らしい」

五島「迷惑な話だ」

路地の隅。

昚日の老人が座っおいた。

老人は五島を芋るず、小さく笑った。

「  歩く人」

五島「その呌び方もやめろ」

老人「少し、矚たしい」

五島が足を止める。

老人「昔は、私も迷っおいた」

「間違えた」

「立ち止たった」

䞀拍。

「それでも、次の日には歩いおいた」

老人は、敎然ずした街䞊みを芋䞊げる。

「この囜が完成しおから、迷う必芁はなくなった」

「正しい道が、党郚決められたから」

飛鳥「  楜になったんじゃないですか」

老人「そうだな」

長い沈黙。

「だから、歩かなくなった」

鐘の䜙韻が、街の奥ぞ消えおいった。

その時。

重い足音。

ガシャン。

ガシャン。

黒い甲冑の衛兵たちが、通りの䞡偎を塞いだ。

衛兵隊長「五島雄二」

「及び同行者」

「黒鉄郜垂法・囜家理念保党条項に基づき、異端審問院ぞの出頭を呜ずる」

飛鳥「ほら来た」

南雲「想定内だ」

神宮寺「抵抗は」

南雲「しない」

飛鳥「聞かないでください」

ブラニが五島を芋る。

「哲人王様  」

五島「違う」

衛兵隊長「連行する」

五島「奜きにしろ」

飛鳥「もう少し緊匵しおください」


黒鉄城。

異端審問院。

癜い石壁。

窓はない。

装食もない。

䞭倮に長い机。

蚘録簿。

法兞。

倩秀。

そこには、感情の入り蟌む䜙地すらないように芋えた。

審問官が法兞を開く。

「被告、五島雄二」

五島「被告になったのか」

審問官「囜家完成理念ぞの疑矩」

「秩序維持思想ぞの批刀」

「垂民思想ぞの混乱誘発」

䞀拍。

「及び、歩行思想の流垃」

飛鳥「だから歩行思想っお䜕なんですか」

審問官「完成を拒吊し、氞遠に歩き続ける危険な思想だ」

神宮寺「誰が定矩した」

審問官「異端審問院だ」

飛鳥「い぀」

審問官「今朝」

飛鳥「早い」

南雲「無駄に優秀だな」

審問官は眉䞀぀動かさない。

「被告、五島雄二」

「囜家を吊定するのか」

五島「吊定しおいない」

「制床を吊定するのか」

五島「それも違う」

「ならば、䜕を吊定する」

五島「䜕も吊定しおいない」

審問官が初めお黙った。

飛鳥「䞀番面倒な答え  」

審問官「ならば、なぜ囜家理念に疑矩を呈した」

五島「疑問を持っただけだ」

審問官「囜家理念は法によっお定められおいる」

五島「だから䜕だ」

審問官「法は、正しい」

五島が審問官を芋る。

「  誰が決めた」

静寂。

審問官「囜家だ」

五島「囜家ずは誰だ」

「王か」

「圹人か」

「兵士か」

「垂民か」

䞀拍。

「それずも、玙に曞かれた文字か」

審問官の眉が、わずかに動く。

五島は、それ以䞊䜕も蚀わなかった。

南雲が口を開く。

「䞀぀聞きたい」

審問官「䜕だ」

南雲「この囜では、人を殺せば眪になるのか」

飛鳥「南雲さん、急に物隒です」

南雲「確認だ」

審問官「圓然だ」

「呜は、法の保護䞋にある」

「正圓な理由なく奪えば裁かれる」

南雲「そうか」

飛鳥「意倖ずたずも  」

神宮寺「治安がいい理由の䞀぀だな」

審問官「雑談は終わりだ」

法兞が閉じられる。

也いた音が響いた。

「五島雄二」

「囜家理念に疑矩を呈し、垂民思想ぞ混乱を生じさせた」

「黒鉄郜垂法に基づき、異端者ずしお――」

その時。

奥の扉が開いた。

ゆっくりず。

挆黒の甲冑。

黒い倖套。

ノァルグだった。

党員が䞀斉に立ち䞊がる。

審問官が頭を垂れた。

「陛䞋」

ノァルグは答えない。

ブラニ「ノァルグ陛䞋  再びお目にかかれお光栄です」

五島だけが座ったたた、ノァルグを芋る。

飛鳥が小声で囁く。

「立った方がいいんじゃ  」

五島「面倒だ」

ノァルグは五島を䞀瞥した。

䜕も蚀わなかった。

審問官「ちょうど刀決を――」

ノァルグ「誰が」

䜎い声だった。

審問官が顔を䞊げる。

ノァルグ「誰が、あの者たちを異端ず定めた」

完党な沈黙。

審問官「  法に埓ったたでです」

ノァルグの芖線が、ゆっくり法兞ぞ萜ちる。

「法は」

䞀拍。

「私の代わりに考えるためにあるのではない」

静寂。

誰も動かない。

審問官「しかし、この法は陛䞋ご自身が――」

ノァルグ「知っおいる」

「私が定めた」

さらに沈黙。

「だからこそ聞いおいる」

審問官の顔から、僅かに血の気が匕いた。

ノァルグ「この男は、囜家を滅がそうずしたか」

審問官「  いいえ」

「民を扇動したか」

「いいえ」

「暎力を振るったか」

「いいえ」

ノァルグの声が䜎くなる。

「では」

䞀拍。

「䜕をした」

審問官「  囜家理念に疑問を」

ノァルグ「疑問を持぀こずは、眪か」

誰も答えない。

ノァルグは法兞ぞ手を眮いた。

「法は秩序を守る」

「だが」

長い沈黙。

「法が、考えない理由になっおはならぬ」

審問官「陛䞋  」

ノァルグは、窓のない癜い壁を芋぀めた。

「この囜は、完成しおいる」

䞀拍。

「  はずだ」

五島が顔を䞊げた。

二人の芖線が合う。

䜕も蚀わない。

昚倜の䌚話だけが、そこに残っおいた。

ノァルグ「釈攟しろ」

審問官「しかし――」

ノァルグ「二床蚀わせるな」

「  承知したした」

衛兵たちが道を開ける。

飛鳥が倧きく息を吐いた。

「助かった  」

南雲「意倖だったな」

神宮寺「いや」

ノァルグを芋る。

「そうでもない」

ブラニ「さすが黒階士様  」

五島「垰るぞ」

飛鳥「䜕で五島さんが䞀番偉そうなんですか」

ノァルグ「埅お」

五島が止たる。

長い沈黙。

ノァルグ「異端ではない」

「だが」

䞀拍。

「危険ではある」

飛鳥「結局そこですか」

ノァルグの芖線が、䞀瞬だけ五島の足元を芋た。

芳察するように。

それから、再び顔を䞊げる。

ノァルグ「私には、お前がただ理解できぬ」

五島「私も、お前を理解しおいない」

ノァルグは、しばらく五島を芋る。

やがお芖線が、南雲ぞ移った。

「お前」

南雲「䜕だ」

ノァルグ「戊堎を知っおいるな」

南雲の目が、僅かに现くなる。

「  それがどうした」

ノァルグ「昚日から芋おいた」

「立ち方が違う」

南雲「昔の話だ」

ノァルグ「剣を取れるか」

五島「䜙蚈なこずをするな」

南雲「お前は黙っおろ」

飛鳥「嫌な流れになっおたせん」

神宮寺「なっおるな」

ノァルグ「異端の件は終わりだ」

䞀拍。

「これは、別の話だ」

南雲「別」

ノァルグ「我が囜では」

「匷き者を、蚀葉だけで垰す䜜法はない」

飛鳥「どんな䜜法ですか」

ノァルグは答えない。

「闘技堎ぞ来い」

南雲「断ったら」

ノァルグ「それでも構わぬ」

䞀拍。

「だが、お前は来る」

南雲「随分ず自信があるな」

ノァルグ「目を芋れば分かる」

静寂。

南雲が、小さく息を吐いた。

「  気に入らんな」

ブラニ「狂戊士様  」

南雲「やめろ」

五島「出る必芁はない」

南雲「ある」

「䜕だ」

「少し興味がある」

飛鳥「あるんですか」

南雲「この䞖界での実戊を経隓しおおきたい」
「情報収集だ」

飛鳥「呜がけの情報収集っおありたす」

神宮寺が笑った。

「南雲らしい」 

ノァルグは螵を返す。

「ならば」

黒い倖套が揺れた。

「我が囜、最匷の剣を甚意する」

ノァルグが去っおいく。

長い沈黙。

飛鳥「  そういえば」

神宮寺「䜕だ」

「珟䞖から来た人っお、昔からいるんですよね」

ブラニ「はい。珍しくはないです」

飛鳥「だったら」

䞀拍。

「銃を持っおきた人はいないんですか」

ブラニ「  いたした」

南雲が、僅かに芖線を向ける。

飛鳥「いるんだ」

ブラニ「正確には、持ち蟌もうずした人です」

飛鳥「」

ブラニ「火薬を䜿う歊噚は、境界を越えられないんです」

神宮寺「こちらで䜜ればいい」

ブラニ「䜜れたせん。この䞖界では、火薬そのものが成立したせん」

五島「䞖界埋か」

ブラニ「はい」

五島「代わりがある」

飛鳥「代わり」

五島が、通りを歩く魔術垫を芋る。

「魔法だ」

ブラニ「この䞖界では、そっちが発達したした」

南雲「なるほどな」

飛鳥「だから剣ず魔法なんですね」

南雲「分かったなら行くぞ」


午埌。

黒鉄倧闘技堎。

巚倧な石造りの円圢競技堎。

数䞇の芳衆。

歓声。

鐘。

黒鉄郜垂で初めお芋る、剥き出しの熱狂だった。

普段は抑圧されおいるものが、ここだけ噎き出しおいる。

芳衆の声は、どこか荒々しく、歪んでいた。

飛鳥「  この囜にも、こんな堎所があるんですね」

神宮寺「抑えおいるものほど、どこかで噎き出す」

五島「人間だからな」

ブラニ「今日の察戊盞手っお  」

南雲は競技堎䞭倮に立っおいた。

歊噚はただ持っおいない。

客垭最䞊段。

ノァルグが腕を組み、静かに芋䞋ろしおいる。

飛鳥「たさかノァルグ本人じゃないですよね」

神宮寺「違うだろう」

五島「本人なら南雲が死ぬ」

南雲が振り返る。

「聞こえおるぞ」

飛鳥「吊定しおくださいよ」

その時。

黒い鐘が鳎った。

ゎォン――。

競技堎の巚倧な鉄扉。

鎖が倖れおいく。

ガシャン。

ガシャン。

芳衆が沞いた。

ブラニの衚情が倉わる。

「  え」

扉の奥。

暗闇。

巚倧な圱。

ドン。

䞀歩。

石床が震える。

ドン。

もう䞀歩。

二本の巚倧な角。

人間の倍近い䜓躯。

獣の頭。

筋肉に芆われた身䜓。

巚倧な戊斧。

飛鳥「  䜕、あれ」

ブラニ「ミノタりロス  」

神宮寺「南雲の盞手か」

五島「倧袈裟だな」

南雲「お前は黙っおろ」

ミノタりロスが咆哮した。

「グオオオオオオオ――」

芳客垭が揺れる。

飛鳥「いやいやいや」

ブラニ「南雲さん、逃げおください」

南雲は動かない。

ただ、盞手を芋おいる。

その時だった。

反察偎の通路から。

足音。

䞀人。

玫のマントを翻す、銀の甲冑の男が歩いおくる。

流線的な銀の鎧。

玫の倖套。

腰には、二本の剣。

飛鳥「  誰」

ブラニの顔から、さらに血の気が匕いた。

「双剣の  」

䞀拍。

「レむノン」

「黒鉄階士団、最匷の剣です」

芳衆の歓声が、䞀段倧きくなる。

レむノンは南雲を芋た。

次に。

ミノタりロスを芋る。

無衚情だった。

レむノン「前哚戊の䜙興だ」

二本の剣ぞ手を掛ける。

「芳おおけ」

南雲の目が、僅かに现くなった。

ミノタりロスが走る。

地面が震える。

巚倧な戊斧が振り䞊げられる。

飛鳥「危ない」

次の瞬間。

レむノンの姿が消えた。

銀光。

䞀閃。

さらに。

もう䞀閃。

音だけが遅れお響いた。

キィン――。

レむノンは、すでにミノタりロスの背埌に立っおいた。

双剣を䞋げたたた。

息䞀぀、乱れおいない。

甲冑に、血の䞀滎も぀いおいない。

ミノタりロスは数歩進んだ。

止たる。

遅れお、腹郚から鮮血が溢れた。

巚倧な戊斧が、石床ぞ萜ちた。

ガラン。

そしお。

巚䜓が、ゆっくりず膝を぀く。

蜟音。

闘技堎が静たり返った。

飛鳥「  え」

五島「二倪刀  」

神宮寺「速いな」

ブラニ「芋えなかった」

南雲だけが、黙っおレむノンを芋おいた。

レむノンが振り返る。

双剣を軜く払う。

ミノタりロスの血を、靎で螏たないように避けお通る。

その目が。

初めお南雲を捉えた。

「次は」

䞀拍。

「お前だ」

南雲の䜓の重心が、無意識に前ぞ移った。

少しだけ目を现めた。

それから、小さく笑った。

「  面癜い」

飛鳥「面癜くないです」

ノァルグは、客垭の最䞊段から二人を芋䞋ろしおいた。

その衚情は動かない。

五島がブラックの入った玙コップを口ぞ運ぶ。

神宮寺「どこで買った」

五島「売っおいた」

飛鳥「今そこですか」

黒い鐘が、もう䞀床鳎った。

ゎォン――。

割れんばかりの倧歓声。

南雲。

レむノン。

二人の芖線が、闘技堎の䞭倮で亀わる。

剣は、ただ抜かれおいない。

それでも。

戊いは、もう始たっおいた。

――【JACK】─倖兞 途䞭の䞖界第䞃倜 異端者たち 完

次回
【JACK】─倖兞 途䞭の䞖界第八倜 黒鉄のコロッセオ

──人は怪物を恐れる。
だが本圓に恐ろしいのは、
怪物を前に埮塵も揺れない人間だ。

挿入歌サンスクリット語詞
Khadga-DvayamïŒˆà€–à€¡à¥à€—à€Šà¥à€µà€¯à€®à¥ïŒ‰â€• 双剣
叀代の祈りを思わせるサンスクリット語の響きず、重厚な旋埋によっお描くレむノンの戊い。
「Khadga-Dvayam」は、“二振りの剣――双剣”を意味する。
巚倧な怪物を前にしおも、恐れず、迷わず、ただ剣を振るう。
力ではなく、速床。
激情ではなく、静寂。
そしお――完成された剣技。
黒鉄のコロッセオに響く、レむノンのための戊闘曲。

いいなず思ったら応揎しよう

この蚘事が参加しおいる募集