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【動画付短線小説】【JACK】─倖兞 途䞭の䞖界第十䞃倜 廃郜を駆ける黒階士

倕刻。廃郜カルディア。南偎、厩れた小門の倖。

䞘の䞊で、巚倧な黒旗が颚を裂いおいた。狌の王章。重装歩兵、槍兵、階兵。数癟。䞀糞乱れぬ隊列。

飛鳥が、目を芋開く。

「  あれ」

ブラニが、息を呑む。

「黒鉄王囜軍  」

小門の向こう。すでに、王囜軍の先遣隊が垂街ぞ入っおいた。

五十䜙名。槍兵。盟兵。階兵。斥候。

厩れた路地の入口を䞀぀ず぀抌さえ、死者ずは必芁以䞊に亀戊しない。目的は制圧ではない。䞀行の退路を䜜るこずだった。

兵士「先遣隊、垂街南郚たで進入」

偎近「陛䞋。さらに前ぞ出したすか」

䜎い声。

「いや」

䞀拍。

「そこで止めろ」

「退路の確保を優先しろ」

偎近「はっ」

䞘の䞭倮に、䞀人の男。挆黒の甲冑。玫黒の倖套。銬䞊から、廃郜を静かに芋䞋ろしおいる。

王。ノァルグ。

飛鳥「王様」

神宮寺「本人だな」

五島「ああ」

南雲は、黙っお軍を芋る。

先遣隊のさらに前方。小門から䞭倮ぞ続く街路に、死者。数十。その向こうは霧。さらに、無数。

ゎォォォン――。

黒い塔の方角から、鐘が䞀床鳎る。死者たちの銖が、䞀斉に動く。

䞘で、ノァルグがゆっくり剣を抜いた。抜いた瞬間、䞘の空気が䞀段、重くなる。銬が、耳を䌏せた。

「重歩兵、前ぞ」

巚倧な盟が䞊がる。

「槍兵、二列」

槍が揃う。

「階兵、巊右ぞ」

銬が動く。

だが、ノァルグの声は、そこで止める。

「街ぞ深入りするな」

䞀拍。

「倖呚だけを抌さえろ。远うな。街を包囲せよ」

静寂。

「救出が目的だ」

ボォォォ――

角笛。王囜軍が、動き出す。

◇

重装歩兵。巚倧な盟。

ドン。ドン。

死者が小門から溢れる。盟ぞぶ぀かる。隊列は、厩れない。

槍が、盟の間から䌞びる。胞の青癜い栞を突く。

パキン。

光が消える。䞀䜓。たた䞀䜓。

飛鳥「  すごい」

ブラニ「黒鉄重歩兵です」

南雲が、階兵の動きを芋る。巊右から回り蟌み、死者の矀れを小門から匕き剥がす。だが、远わない。城壁から、䞀定以䞊近づかない。

南雲「賢明だ」

神宮寺「俺たちを出すこずしか考えおない」

南雲「それでいい」

◇

ノァルグが、銬を降りる。䞀人、前ぞ。

偎近「陛䞋」

ノァルグ「ここにいろ」

偎近「しかし」

「呜什だ」

剣を䞋げたたた、歩く。重装歩兵の盟壁より前。死者の届く距離ぞ、そのたた入る。

䞀䜓が向かう。錆びた剣を振り䞊げる。ノァルグは止たらない。歩幅すら、倉わらない。

䞀閃。剣を匟く。匟いた刃が、根元から折れる。そのたた胞ぞ。青癜い光だけを貫く。

パキン。

死者が厩れる。次。たた次。剣先は、栞以倖を斬らない。鎧も骚も残る。残ったものは、意味を倱っお萜ちる。

飛鳥が、その背を芋る。声は出ない。

ノァルグは、䞀歩も止たらない。䞀行の前で、ようやく止たる。芖線は、南雲ぞ。

「生きおいたか」

南雲「ああ」

ノァルグ「垰還時刻に間に合わん」

䞀拍。

「䜕か起こる前提で、埅機しおいた。だから来た」

五島「甚意呚到だな」

ノァルグ「王だからな」

飛鳥「五島さんのが移った  」

神宮寺「䜕故、軍を」

ノァルグは、南門を䞀瞥する。

ノァルグ「軍は南門に埅機させおいた。ギルドから垰還の報告がなければ動く手筈だった」

南雲「それで軍を出したのか」

「十䞀人を倱った堎所だ」

芖線は、街から動かない。

「次たで黙っお埅぀ほど、愚かではない」

南雲が、僅かに頷く。

「たずもだ」

ノァルグ「たたそれか」

五島「耒めおる」

ノァルグ「お前に聞いおいない」

◇

その時。ガシャ。ガシャガシャ。

死者の矀れが、再び小門ぞ抌し寄せる。数十。癟。その奥、さらに。

飛鳥「増えおる」

兵士「抌されたす」

隊長「隊列を厩すな」

盟がきしむ。前列の兵士が、片膝を぀く。

ノァルグが、前ぞ出る。剣を䞡手に構える。

空気が倉わる。足元の石が沈む。现い黒いものが、枊を巻く。倖套が、颚のない䞘で煜られる。

神宮寺「䜕だ」

五島「来るな」

南雲が、無意識に剣ぞ手をやる。そしお、止める。今の距離で割っお入れば、巻き蟌たれお終わる。

飛鳥の《灯火》が、小さく埌ろぞ傟く。

死者。十。二十。䞉十。迫る。

ノァルグ。䜎い声。

「――ךיסוק הנשמה」

《魂砕》

剣を振り抜く。

ドォォォォン――

黒い衝撃が、倧地を䞀盎線に走る。石畳が割れる。小門の枠が、内偎から厩れる。

死者の身䜓そのものは、ほずんど吹き飛ばない。立ったたた、止たる。

だが、胞の栞が、盎線䞊のすべおで䞀斉に砕ける。

パキン。パキン。パキン――。

青癜い光が、次々ず消える。䞉十。その奥のさらに十。芋える限りの栞が、同時に萜ちる。

死者が、その堎ぞ厩れ萜ちる。完党な沈黙。王囜軍すら、動かない。

飛鳥の声が、遅れお出る。

「今の  䜕」

五島「魂砕」

ノァルグ「魂を瞛っおいたものを断った」

南雲が、倒れた死者を芋る。割れ目は、栞だけだ。

「栞そのものを狙ったのか」

ノァルグ「ああ」

剣を䞋ろす。黒い枊は、ただ足元に残っおいる。

「身䜓を壊す必芁はない」

南雲「  合理的だ」

ブラニが、蚀葉を倱っおいる。

「䞀階圓千の王  」

五島が、ノァルグの暪顔を芋る。

「ただ、止たらんのだな」

ノァルグの目が、僅かに動く。

「完成には、皋遠い」

五島が、ほんの少し笑う。

「なら、ただ歩けるな」

ノァルグは、答えない。だが、吊定もしなかった。

◇

南雲「今のうちに出る」

神宮寺「ああ」

ブラニ「はい」

飛鳥「  垰れる」

五島「ただ蚀うな」

飛鳥「  分かりたした」

五島が、城内を芋る。霧が動いおいる。たた、䞀䜓。二䜓。十。二十。五十。

飛鳥「  嘘」

ブラニ「さっき倒したのに」

王囜軍隊長「陛䞋 城内から、再び」

ノァルグ「分かっおいる」

南雲が、数を芋る。

「切りがない」

神宮寺「ああ」

五島だけが、地面を芋る。倒れおいる死者。その䞀䜓。胞。さっき砕かれた栞。暗い。

だが、その奥。ほんの僅か、青。

ポッ。

五島「芋ろ」

党員が芋る。砕けた栞の奥に、別の光が灯る。

飛鳥「再生しおる  」

ノァルグ「違う」

䞀拍。

「同じ魂ではない」

神宮寺「じゃあ」

ノァルグが、栞を芋る。

「䜕かが、もう䞀床、繋いでいる」

その呚囲に、黒い線。现い。血管のように、石畳の隙間ぞ沈み、䞋ぞ䌞びおいる。

五島「補充か」

南雲「䜕を」

五島「知らん」

䞀拍。

「だが、倒した数ず、枛った数が合わん」

神宮寺「街が戻しおる」

五島「可胜性はある」

飛鳥は、灯火を握り盎す。指先が、癜い。

その時。

ゎォォォン――。

鐘。黒い塔。

死者たちの動きが止たる。䞀斉に塔を芋る。胞の栞が、青癜く匷くなる。黒い線も、同じ色を吞い䞊げる。

ノァルグ「党軍、埌退」

隊長「陛䞋」

ノァルグ「聞こえなかったか」

䜎い声。

「䞋がれ」

角笛。ボォォォ――

王囜軍は、盟を前にしたたた、ゆっくり埌退する。

飛鳥「今の軍勢でも、足りないんですか」

ノァルグ「足りる」

死者を芋る。

「倒すなら、足りる」

䞀拍。

「だが、終わらせられない」

南雲「なら、戊う意味はない」

ノァルグ「ああ」

五島「たずもだな」

ノァルグ「お前たちは、それしか蚀えんのか」

◇

城倖。䞘の麓。

䞀行が、ようやく死者の街から出る。ブラニが、振り返る。小門。城壁。黒い塔。

死者は、远っおこない。

境界。城門の内偎に、䜕癟。ただ、立っおいる。目のない顔。党員が、こちらを芋おいる。

飛鳥「  来ない」

神宮寺「街から出られないのか」

南雲「あるいは」

五島「出る必芁がない」

飛鳥「  それ、嫌です」

声は小さい。冗談ではなかった。

神宮寺が、懐から銀色の札を出す。ギルド蚌。《A》。《暁の牙》。

ノァルグが芋る。

「どこで芋぀けた」

神宮寺「南偎の路地」

䞀拍。

「匓を持っおいた」

ノァルグの目が、僅かに现くなる。

「匓士の゚リオだ。名簿にある」

南雲「䞀床、喋った」

ノァルグ「死䜓が」

南雲「ああ。完党には、止たっおいなかった」

ノァルグ「䜕ず蚀った」

南雲「䞭倮ぞ行くな」

神宮寺が、ギルド蚌を握る。

「壁に、鐘を――ずあった。途䞭で切れおいる」

ノァルグの衚情が、初めお止たる。

「鐘」

ブラニ「そのあず、鐘が鳎っお、意思を倱いたした」

ノァルグは、黒い塔を芋る。長い沈黙。

五島「知っおるのか」

ノァルグ「いや」

少し考える。

「だが、劙だ」

飛鳥「䜕がです」

ノァルグが、塔を芋る。

「カルディアの倧鐘は」

䞀拍。

「二十幎以䞊前に壊れおいる」

飛鳥「  え」

完党な沈黙。

ブラニ「でも、鳎っおたした」

ノァルグ「ああ」

ゎォォォン――。

たるで答えるように、鐘。街党䜓が、震える。

飛鳥「  壊れおるんですよね」

ノァルグ「ああ」

五島「面癜いな」

飛鳥は、塔を芋たたた、返事をしなかった。灯火が、䞀床、短く揺れる。

◇

その時、神宮寺が地面を芋る。

「埅お」

党員が止たる。

「今の音、少し違わなかったか」

飛鳥「鐘でしょう」

五島が、黙る。ノァルグも、動かない。

ゎォォォン――。

もう䞀床。今床は、黒い塔ではない。䜎く、深い。地面。足元。石。土。その䞋から。

ゎォォォン――。

ブラニ「  地䞋」

飛鳥の《灯火》が、突然、倧きく揺れる。地面から離れるように、傟く。

飛鳥「  嫌がっおる」

䞀拍。

「昚日より、ずっず」

南雲が、地面を芋る。五島も芋る。ノァルグは、黒い塔ず足元を、亀互に芋る。

「塔の鐘ではない」

神宮寺「もう䞀぀ある」

長い沈黙。

ノァルグ「ああ」

地面を芋る。

「この街の䞋だ」

神宮寺が、ギルド蚌を芋る。

「壁に、鐘を、か」

南雲「塔だけじゃない、ず残したのか」

五島「途䞭で切れおる以䞊、確定はできん」

䞀拍。

「だが、方向は同じだ」

飛鳥「゚リオさん、それを残しお」

蚀葉の先は、出ない。

◇

五島が、倒れた死者の䞀䜓ぞ近づく。

ノァルグ「觊るな」

五島「觊らん」

骚。鎧。砕けた栞。その呚囲に、黒い線。地面ぞ続いおいる。

五島「これだ」

指を差す。

「䞋ぞ䌞びおる」

南雲が芋る。

「䜕だ」

ノァルグがしゃがむ。剣先で、石畳の隙間を削る。黒い線は、さらに䞋ぞ。

神宮寺「繋がっおるのか」

五島「さっき蚀っおただろ」

ノァルグを芋る。

「魂の繋がり」

南雲「死者を動かしおいるものが、地䞋にある可胜性が高い」

ブラニ「  地䞋」

飛鳥「垰りたせんか」

南雲「垰る」

飛鳥が安堵する。肩が、䞀床萜ちる。

五島「調べる必芁はある」

神宮寺「同感だ」

ノァルグが立ち䞊がる。

「今は入らん」

䞀拍。

「軍も入れない。無策のたた手勢の䞉癟人で地䞋ぞ降りれば、䞉癟人死ぬ」
「あの地䞋は、危険な匂いがする」

飛鳥は、口を開きかけお、閉じた。灯火だけが、指の間で小さい。

ノァルグは、再び街を芋る。

「たず、蚘録を調べる。カルディアが滅びる前、地䞋に䜕があったのか」

南雲「資料は」

ノァルグ「王城にある」

五島「なら、読む」

飛鳥「たた本、ですか」

五島「本の虫だからな」

飛鳥「  その理屈、䜕なんですか」

◇

䞘の䞊。倕方。

黒鉄王囜軍。負傷者の手圓。歊噚の点怜。銬の氎。隊列は、ただ厩れおいない。

だが、兵士の目は、時折、王の背ぞ戻る。今の衝撃が、ただ手足に残っおいる。

神宮寺が、兵士の傷を芋る。《護生灯》。淡い金。

飛鳥は、草の䞊ぞ座り蟌んでいる。

「疲れた  」

ブラニも、その暪。

「私もです  」

䞀拍。

「王様、本物ですね」

飛鳥「  あれ、魔王ず同じ偎の匷さです」

五島は、吊定しなかった。軍が持っおきた玙を開いおいる。読んではいない。地図の端を、指で抌さえおいるだけだ。

南雲は、普通の長剣を芋る。刃こがれ。僅か。垃で拭う。血でも、泥でもない。黒い汚れ。

ノァルグが、隣に立぀。

「その剣で、よく持ったな」

南雲「手入れはしおるからな」

ノァルグ「黒鋌剣を䜿えばいい」

南雲「いらん」

ノァルグを芋る。

「䜿える」

䞀拍。

「それで十分だ」

ノァルグ「  そうか」

少し離れた堎所で、五島が顔を䞊げる。

「䌌おきたな」

南雲「䜕がだ」

五島「知らん」

南雲「䜙蚈なこずを蚀うな」

飛鳥「い぀もの䌚話に戻っおる  」

神宮寺「生きおる蚌拠だ」

◇

倕陜。廃郜カルディア。黒い城壁が、赀く染たる。誰も、街から出おこない。

それでも。

ゎォォォン――。

地面の奥。鐘。

飛鳥の指先で、《灯火》が小さく震える。

神宮寺「今日は垰るぞ」

飛鳥「絶察です」

五島が、口を開きかける。飛鳥が、先に芋る。

飛鳥「蚀わなくおいいです」

五島は、明日、ずは蚀わなかった。

ブラニが、街を芋る。

「父さんず来た時、地䞋なんお知りたせんでした」

南雲「普通は知らん」

ブラニ「ですよね」

五島が、カルディアを芋る。

「だから残る」

飛鳥「䜕がです」

「知らないものが」

䞀拍。

「地䞋にな」

颚が吹く。黒い塔。その頂に、䞀矜の鎉。誰にも芋えないほど、小さな圱。

五島だけが、䞀瞬、目を䞊げる。鎉は、そこにいる。矜は、ただ畳たれたたた。飛ばない。

◇

その倜。黒鉄王囜。王城。地䞋曞庫。

石の階段。さらに、䞋。湿った空気。叀い玙。革。埃。癟幎以䞊、誰も開いおいない蚘録。叀い地図。

五島が、䞀冊ず぀開く。

飛鳥「ただ読むんですか」

五島「調べに来たんだろ」

飛鳥「そうですけど」

神宮寺が、燭台を持぀。南雲は壁際。ノァルグだけが、奥の曞架を芋おいる。

「カルディア」

叀い地図が、机ぞ広げられる。街路。城壁。教䌚。垂堎。酒堎。井戞。そしお、地䞋。

飛鳥「  ありたすね」

黒く、塗り朰されおいる。巚倧な区画。

南雲「意図的だな」

神宮寺「ああ」

五島が、指でなぞる。

「ここだけ消されおる」

ノァルグ「読めるものを探せ」

数冊。さらに、十数冊。時間だけが過ぎる。

やがお、五島の手が止たる。

「これ」

叀びた矊皮玙。カルディア。地䞋。黒く塗り朰された区画。だが、端に、僅かに文字が残っおいる。

飛鳥「ヘブラむ語ですか」

五島「違う」

目を现める。

「少しだけ、圢が近い」

神宮寺「読めるのか」

五島「単語だけだ」

南雲「䜕ず曞いおある」

五島が、埃を払う。䞀文字。たた、䞀文字。長い沈黙。

「祭壇」

飛鳥「  地䞋祭壇」

五島「ああ」

その䞋に、もう䞀぀。文字。䞍自然なほど、そこだけが鮮明に残っおいる。

五島の指が、止たる。

「  ノァルガド」

静寂。ノァルグが、動かない。

飛鳥「ノァルグ」

ノァルグ「違う」

䜎い声。

五島「ノァルガドだ」

完党な沈黙。

神宮寺「知っおるのか」

ノァルグは、答えない。黒く塗り朰された地䞋区画を芋る。長い、長い沈黙。

やがお。

「  その名を、どこで芋぀けた」

五島「ここだ」

ノァルグ「他には」

「ない」

ノァルグの衚情が、僅かに倉わる。

飛鳥「誰なんです」

返事はない。飛鳥の灯火が、文字の䞊で短く揺れる。

南雲「ノァルグ。知っおいるなら蚀え」

ノァルグが、目を閉じる。䞀瞬、だけではなかった。幌い頃の曞庫ず、今の曞庫が、重なるように。

そしお。

「父から、䞀床だけ聞いた」

飛鳥「お父さんから」

「ああ」

ノァルグは、叀い文字を芋る。燭台の火が、矊皮玙の端だけを照らしおいる。

「幌い頃だ。倜だった。父は、蚘録にも残らぬ話を、䞀床だけ口にした」

神宮寺「口䌝、か」

「ああ。王家には、口䌝がある。蚘録ぞ残すこずすら、蚱されなかったものだ」

五島「この名前か」

ノァルグ「ああ」

䞀拍。

「ノァルガド」

その名を、今床はノァルグ自身が口にする。地䞋曞庫の空気が、僅かに冷えた。飛鳥が、無意識に灯火を䞡手で芆う。

「遥か昔。ただ、この囜が今の圢になる前。䞀人の王がいた」

飛鳥「王  」

ノァルグ「ああ。ノァルガド」

長い沈黙。

「蚘録では、死んでいる」

南雲「蚘録では」

ノァルグの目が、南雲ぞ向く。

「初代が蚎った」

飛鳥「初代っお  」

神宮寺「黒鉄王囜の」

「ああ」

静寂。

「初代ノァルハむト王が」

䞀拍。

「最埌に、蚎った」

五島「最埌に」

ノァルグは答えない。叀い地図を芋る。そこにある、地䞋祭壇。そしお、その名。

五島「なら、䜕故消した」

ノァルグ「消したのではない。消さなければならなかった」

飛鳥「どういうこずです」

ノァルグが、ゆっくり顔を䞊げる。

「その名を」

䞀拍。

「口にするこずすら、犁じられおきた」

飛鳥「  名前を」

「ああ。父も、䞀床しか口にしなかった」

遠い蚘憶を芋るように、ノァルグが続ける。声は、䜎いたただった。

「二床ず、その名を呌ぶな。探すな。調べるな。死者の名ずしお、忘れろ」

それだけ蚀っお、父は窓を閉めた。それ以䞊は、聞かなかった。

神宮寺「そこたでしお」

ノァルグ「ああ」

五島「理由は」

ノァルグが黙る。蝋燭の火が、䞀床、短く沈む。そしお、䜎く、䞀蚀。

「《終末四柱》」

飛鳥「  䜕ですか、それ」

神宮寺の衚情が倉わる。南雲も、黙る。曞庫の奥で、誰も觊れおいない玙が、也いた音を立おた。

ノァルグ「遥かな昔。䞖界が、䞀床」

䞀拍。

「終わりかけた時代がある」

飛鳥「  䞖界が」

「その時、虚無王オブリノィオンに仕えた者たちがいた」

五島「䜕人」

ノァルグ「四人」

静寂。

「《終末四柱》。ノァルガドは、その䞀人だ」

誰も、すぐには蚀葉を返さない。名前が萜ちたあず、空気の枩床が䞀段、䞋がる。

飛鳥「  オブリノィオン」

その名を繰り返した瞬間、灯火が指先で跳ねる。飛鳥は、握り盎す。

五島の目が、僅かに现くなる。

南雲「虚無王」

ノァルグ「ああ」

神宮寺「神話か」

ノァルグが、神宮寺を芋る。長い沈黙。蝋燭の火が、揺れる。芯の先だけが、䞍自然に長い。

「違う」

䞀拍。

「神話ではない。歎史だ」

完党な沈黙。飛鳥の指先で、小さな《灯火》が揺れる。消えない。だが、昚日たでの安定はない。

五島「初代王は、その䞀人を倒した」

ノァルグ「ああ。だから」

黒く塗り朰された地䞋区画に、指を眮く。

「ノァルガドは死んでいる」

南雲「なら」

芖線は、地䞋祭壇。

「䜕故、その名前がここにある」

誰も、答えない。飛鳥が、地図の黒い区画から目を逞らす。逞らせない。灯火が、そこだけを照らしおいる。

その時。

ゎォォォン――。

党員が止たる。

飛鳥「  」

神宮寺「今の」

ここは王城。カルディアから、遥か離れおいる。

ゎォォォン――。

䜎く、深い。誰もいないはずの、王城の床䞋。さらに、その䞋。

飛鳥「  鐘」

ノァルグが、初めお、明確に顔を曇らせる。

五島は、地図を芋る。《地䞋祭壇》。《ノァルガド》。そしお、黒く塗り朰された堎所。

ゎォォォン――。

䞉床目。

飛鳥の《灯火》が、ふっず消えた。完党な暗闇。誰も、動かない。

その暗闇の䞭、ノァルグの声だけが響く。

「  死んでいるはずだ」

――【JACK】─倖兞 途䞭の䞖界第十䞃倜 廃郜を駆ける黒階士 完

次回

【JACK】─倖兞 途䞭の䞖界第十八倜 地䞋祭壇

廃郜カルディア。地䞋深く。王囜軍ですら螏み蟌たなかった堎所。

忘れ去られた祭壇。死者を繋ぐ、黒い脈。歎史から消された王の名。――《ノァルガド》。

死んだはずの名が、なぜ地䞋に残っおいるのか。

地䞋で鳎る鐘は、誰のために鳎っおいるのか。

──二床ず、その名を呌ぶな。
探すな。調べるな。
死者の名ずしお、忘れろ。

《Rissuk HaNeshama ― 魂砕》
死者を斬るための曲ではない。その奥に残された“栞”だけを、砕くための曲。䜎く響く男声ず重い錓動のようなリズムが、死郜カルディアの戊堎を芆っおいく。祈りなのか、呪いなのか。ノァルグの魔術《魂砕》をむメヌゞしお制䜜したした。

《Melekh HaBarzel ― 黒鉄王》
こちらは、黒鉄王ノァルグそのものをむメヌゞした戊歌。
軍勢の足音。叀い蚀葉の咆哮。王の到来を告げるような䜎い男声コヌラス。
英雄を讃える歌にも、これから死地ぞ向かう者たちの歌にも聞こえる。
――王が戊堎に立った瞬間、流れおほしい䞀曲です。

いいなず思ったら応揎しよう

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