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先回りのその先へ。

    仕事に限った話なのだが、私は起こるかもしれない問題を先回りして考えるようにしてきた。
    「これがダメだったら?」
    「万が一、こうなったら?」
    プランBはもちろん、Cくらいまでは考えるのが常だ。

    最近、仕事の打ち合わせで、いつも通りプランCまで想定した話をしたら、
    「それはそのときに考えましょう。いま考えても仕方がないから」
    と同世代の編集者に言われ、驚くのと同時に拍子抜けした。

    仕事というのは、地雷がありそうなところを掘り起こして事前に除去しながら進めるものだと思っていた。問題は起きてから考えるのではなく、起きないようにするものだと。
    それができる自分は、仕事ができる。そんなふうに、少しドヤ顔になっていたくらいだ。

    それなのに、起きたときに考えればいいの? 

    私がこんなふうに仕事を進めるようになったのは、痛い目に遭ってきたからだ。若い頃、何度か転職をしたが、その頃働いていた職場には、問題が起きると厳しく責められるところが少なくなかった。
    「こんなこともできないのか」
    「この仕事は向いてない」
    「代わりなんていくらでもいる」
    仕事のミスについてだけではなく、人格まで否定されることもあった。
    徹夜で対応に追われたこともある。

    だから失敗しないように、先回りして対策を練るようになった。取り越し苦労といわれても、自分を守るためにそうするしかなかった。

    ところがどうだ? 似たような仕事をしてきたはずの同世代が、何かあったら、それはそのときに考えればいいと言う。

    この年まで働いていれば、どんなに優秀な人だってトラブル知らずできたわけではないだろう。でも、問題が起きてもひとりで背負わず、チームで対応する環境にいたら、「起きてから考える」という感覚は自然なのかもしれない。

    そう考えたら、私は私がかわいそうで、涙が出そうになった。
    自分ひとりで、よくがんばってきたよ。
    でもそんなふうに働くことは、当たり前ではないのだ。

    これからは、私は私の仕事をするが、それ以上でも以下でもなくていい。
    それは周りを頼るとかそんな甘っちょろい話ではなく、境界を引くということだ。

    私が私をちゃんと守ってあげよう。
    長年の癖は、そう簡単には抜けないと思うが、もう昔と同じ働き方はしなくていい。

     
     
    執筆・翻訳・編集。東京外国語大学卒業。クレヨンハウス勤務を経て、2017年に独立。暮らしや人について取材・執筆しています。noteでは、仕事やひとり暮らし、買い物など、人生後半の日々に考えたことを。お仕事のご依頼はhasegawamio0408@gmail.comまで。

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