⑩「怖いから、辞めたい」そう言った子に、僕が伝えたこと

「怖いから、辞めたい」そう言った子に、僕が伝えたこと


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「サッカーを辞めたい」


そう言って来た子がいました。

いままでの指導者としての経験の中で、何人か言って来た子がいます。

今回はその中の、ある選手とのエピソードです。


その時、そう言ってきた子は、

サッカー自体が嫌いになったわけではありません。

むしろ、サッカーは大好きなままです。

ただ、

プレーすることが怖くなってしまった。



自信を失ってしまったのだと思います。

その子は、とても真面目で、素直で、大人しい。

言われたことには一生懸命取り組む。

吸収力はスポンジのようで、なんでもチャレンジし、

上手くいかないことがたくさんありながらも、着実に成長してる。

そんな子でした。


だからこそ、僕はその言葉を聞いたとき、胸が痛くなりました。


「サッカーが嫌いになった…もう辞めたい」

「サッカーを辞めて、新しいことに挑戦したい」

なら、まだ分かります。

でも、

「サッカーは大好きだけど、プレーすることが怖いから辞めたい」

というのは、少し違う。

サッカーが好きなのに辞める…

本当は続けたい。

でも、自分に自信がない。

失敗するのが怖い。

またミスしたらどうしよう。

そんな気持ちが、少しずつその子の心を小さくしていたのだと思います。

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僕は、その子と直接話をしました。

何を話せば、この子の心が動くのか。

どう言葉を掛ければ、自信を取り戻せるのか。

どう伝えれば、プレーする怖さを取り除けるか。

いろいろ考えました



でも、最初に僕が伝えたのは、すごくシンプルなことでした。

「怖いのは、君だけじゃないよ」

ということ。

そして、

「オレだって怖いことはある」

ということでした。



僕は大人です。

指導者として、これまで20年以上サッカーに関わってきました。

それでも、

自信がなくなることがあります。

失敗するのが怖いこともあります。

これでいいのかと悩むこともあります。

逃げたくなることだってあります。

嬉しくて、良かったことは一瞬で、なんなら毎日と言っていいくらい、こんな気持ちと向き合っていることの方が多い気がします。


だから、

怖いという感情は、弱いことじゃない。

僕はそう思っています。

だから、怖い感情はみんなあるんだよ。という、安心感を持って欲しいと思いました。


怖くなること自体をなくす必要はない。

むしろ、なくすことは出来ないと思います。

だけど、その上で、なにより大切なのは、

怖さを抱えたままでも一歩を踏み出せるか。


だと思うんです。

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怖さは、

何もしなければ、どんどん大きくなります。

「失敗したらどうしよう」

「また怒られたらどうしよう」

「できなかったら恥ずかしい」

そう考えているうちに、一歩目が出なくなる。

でも、

ほんの少しでも前に進んでみる。

やってみる。

失敗する。

またやってみる。

その繰り返しの中で、

少しずつ、

「あれ?やってみたら大丈夫だった」

という経験が増えていく。

その小さな経験が、

やがて自信になっていく。


僕はそう思っています。

だから、その子にも伝えました。

「怖さは消えないよ。怖いままでも一歩を出し続けて、プレーし続けなきゃ!怖さは自分で消していくんだよ!」

と。

当時小学5年生の彼は、真面目で一生懸命な子だからこそ、色々なことをド正面から受け止める傾向もありました。

大人とか子どもとか関係なく、同じサッカーの仲間として、

これを機に"メンタル面での強さ"を身に付けて欲しいのと、"悩んでるのはひとりじゃない"という心の拠り所を持ってて欲しいと、強く思って接しました。

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サッカーを続けていれば、これから先も壁にぶつかることは、たくさんあると思います。

思うようにプレーできない。

試合に出られない。

ミスをする。

努力しているのに結果が出ない。

仲間に追い越される。

自分より後から始めた選手に負ける。

などなど…

そんなことも、きっとあります。

そのたびに、

「もう辞めたい」

と思うかもしれません。

でも僕は、このタイミングで一度、

自分の弱さとも向き合う経験をしてほしい


と思いました。

サッカーが上手くなるためだけではありません。

これから先の人生でも、必ず「怖いこと」は出てくるからです。

その時に、

怖いから逃げるのか。

怖いけれど、一歩踏み出してみるのか。


その経験は、きっとサッカーを超えて、その子の人生に残る。

だから僕は、

「辞めないで」

だけを伝えたかったわけではありません。

続けることを押し付けたかったわけでもありません。

ただ、

「怖い自分と、ちゃんと向き合ってみよう」

と伝えたかった。

「怖いのはコーチも同じ」

「大人も子どもも関係ない。」

「ただ、怖さがある中でも、歩みを止めない、自分自身が歩みを続ける勇気を持つことが必要」

ということを伝えたかった。

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プロ指導者としての生活で20年が経ちました。

僕は、子どもたちにたくさんのことを教えてきたつもりです。

でも、こういう瞬間にいつも思います。

僕も子どもたちから、たくさんのことを教えてもらっている。色々と考えさせられてます。


自信がなくなること。

怖くなること。

逃げたくなること。

それは、子どもだけの感情ではありません。

大人だって同じです。

だからこそ、

「それでも頑張れ!」も、もちろんあるけれど、「怖いよね。」と寄り添える指導者でもありたい。

それは自分自身もそうだったから。

自信が持てなくて、怖くなって、逃げ出したくなる。


気持ちは痛いほど分かります。

その上で、

「それでも、一歩だけ出してみよう」

と背中を押せる指導者でありたい。

サッカーを教える。

技術を教える。

戦術を教える。

もちろん、それも大切です。

でも僕が20年間、子どもたちと向き合ってきて、今強く思うことがあります。

サッカーを通して、本当に育てたいのは
「自分の人生を自分の足で歩いていける力」なのかもしれない。


あの子が、あの日踏み出した一歩が、

いつかサッカーを離れた後の人生でも、

その子自身を支えてくれることを願っています。

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