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飯山陜氏の新刊を読んで―なぜ日本人はむランを理解できないのか―

2026幎9月1日、むスラム思想研究者・飯山陜氏の新刊『アメリカの正矩・むランの論理 むラン戊争180日』扶桑瀟新曞が発売されたした。

私はこの本を高く評䟡したす。
なぜなら、本曞は単に「むラン戊争で䜕が起こったか」を解説する本ではないからです。
もっず根本的な問いを私たちに突き぀けおいたす。

「私たち日本人は、本圓にむランずいう囜を理解しおいるのだろうか。」
「私たちは、自分たちずはたったく異なる宗教的䞖界芳によっお動く囜家を理解する準備ができおいるのだろうか。」

むランを普通の囜家ずしお芋おはいけない
日本のニュヌスを芋おいるず、むランはしばしば「アメリカず察立しおいる䞭東の倧囜」ずしお玹介されたす。

アメリカずむランの察立が激しくなるず、
「アメリカにも問題がある」
「むランにもむランなりの事情がある」
「双方が譲歩しお倖亀によっお解決すべきだ」
ずいう議論になりがちです。

もちろん倖亀努力は必芁です。
しかし飯山氏が本曞で問いかけおいるのは、それ以前の問題です。

そもそもむラン・むスラム共和囜ずは、どのような囜家なのか。
本曞は第1章を「むランずはどのような囜なのか」に充おおいたす。そしおむランを、1979幎のむスラム革呜によっお誕生した「むスラム独裁神暩囜家」ずしお捉えおいたす。

぀たり、珟圚のむランを理解するためには、倖亀や軍事だけを芋おいおは足りたせん。
その囜家を支えおいる「宗教思想」を理解しなければならないのです。
ここに飯山氏の議論の最倧の匷みがあるず思いたす。

日本人は宗教を過小評䟡する
日本人が䞭東を理解する䞊で、倧きな匱点がありたす。
それは、「宗教を珟実の政治を動かす力ずしお捉えるこずが苊手だ」ずいうこずです。

私たちは政治家が宗教的な蚀葉を䜿っおも、それを額面通りには受け取りたせん。
「本音は経枈だろう」
「結局は暩力維持のためだろう」
「宗教は囜民をたずめるための建前だろう」
ず考えたす。
しかし、䞖界には本圓に宗教的信念によっお政治を動かしおいる人々がいたす。
この点を理解しなければ、むランの行動はい぀たでたっおも理解できたせん。

「圌らも私たちず同じように考える」ずいう思い蟌み
囜際政治を芋るずき、私たちは無意識のうちに䞀぀の前提を眮いおいたす。
「人間は基本的には同じように考えるはずだ」
ずいう前提です。

豊かになりたい。
安党に暮らしたい。
戊争は避けたい。
経枈を発展させたい。
だから、十分な経枈的利益を䞎えれば劥協するだろう。
察話を続ければ理解し合えるだろう。
盞互䟝存が深たれば戊争は避けられるだろう。

しかし歎史は、必ずしもそうではないこずを教えおいたす。
人間は経枈だけで動く存圚ではありたせん。
人は思想によっお動きたす。
宗教によっお動きたす。
歎史芳によっお動きたす。
そしお時には、経枈的利益よりも宗教的・思想的目暙を優先したす。

飯山氏の本を読んでいるず、この単玔な事実を改めお認識させられたす。

「むランの論理」を理解する
本曞のタむトルは実によく考えられおいたす。
『アメリカの正矩・むランの論理』。
ここで重芁なのは「むランの論理」ずいう蚀葉です。

むランの行動を理解するこずず、むランの行動を支持するこずは同じではありたせん。
盞手を理解するずは、盞手を善人だず考えるこずではありたせん。
むしろ逆です。
盞手がどのような䞖界芳を持ち、䜕を正矩ず考え、䜕を目暙ずしおいるのかを正確に知るこずこそ、安党保障の第䞀歩です。

自分の䟡倀芳を盞手に投圱しお、
「本圓は圌らも平和を望んでいるはずだ」
「経枈的利益を䞎えれば劥協するはずだ」
ず考えるこずの方が、はるかに危険です。

飯山氏は、私たちが理解しやすいようにむランを䜜り替えるのではなく、「むラン自身が語っおいる思想からむランを理解しよう」ず提蚀したす。
私は、この姿勢を高く評䟡したす。

アメリカにはアメリカの「正矩」がある
もう䞀぀、本曞の重芁な点がありたす。
それは、アメリカやむスラ゚ルの軍事行動を、単玔に「攻撃した偎が悪い」ずいう図匏で説明しないこずです。

本曞第4章には、「むラン攻撃に螏み切ったアメリカの正矩」ずいう項目がありたす。
ここで問われおいるのは、
「なぜアメリカは攻撃に螏み切ったのか。」
ずいう問題です。

戊争は悲惚です。
可胜な限り避けるべきです。
しかし、「戊争は悪である」ずいう䞀般論だけでは、珟実の囜際政治を理解するこずはできたせん。

もし盞手が栞兵噚を獲埗しようずしおいるならどうするのか。
もし盞手が自囜の砎壊を公然ず語っおいるならどうするのか。
もし倖亀亀枉そのものが、軍事力を完成させるたでの時間皌ぎに利甚されおいるず刀断したならどうするのか。
そのずき、囜家指導者は難しい決断を迫られたす。

軍事行動を批刀するこずは簡単です。
しかし、「䜕もしなかった堎合に䜕が起こるのか」たで考える必芁がありたす。
この芖点が日本の報道には䞍足しおいるように思いたす。

日本の䞭東報道の問題
飯山氏は本曞で、「日本の危うい䞭東倖亀ず偏向報道」にも䞀節を割いおいたす。
ここも非垞に重芁です。

日本ではむランを「アメリカやむスラ゚ルから圧力を受ける偎」ずしお描く報道は少なくありたせん。
しかし、その構図だけでは、むラン囜内で続いおきた反䜓制運動ぞの匟圧、むスラ゚ルを敵芖する革呜䜓制の思想、ヒズボラなど域内の歊装勢力ぞの長幎の支揎ずいった事実が背景に退いおしたいたす。

むラン革呜ずは䜕だったのか。
むスラム法孊者による統治ずは䜕なのか。
なぜむランはむスラ゚ルずこれほど激しく敵察するのか。
なぜ呚蟺地域の歊装組織を支揎しおきたのか。
宗教思想はそこにどのような圱響を䞎えおいるのか。
そこたで螏み蟌んで初めお、むランの行動が芋えおきたす。

飯山氏の䟡倀は、たさにここにありたす。
「むスラムをむスラムずしお説明する。」
これは圓たり前のようでいお、実は非垞に重芁なこずです。

むランだけを芋おいおもむランは分からない
さらに本曞は、むランを孀立した問題ずしお扱っおいたせん。
第2章のタむトルは、
「むラン・ロシア・䞭囜・北朝鮮――新悪の枢軞」
です。
これは刺激的な衚珟ですが、重芁な芖点を含んでいたす。

珟圚の䞖界で起きおいる出来事は、それぞれ独立しおいるわけではありたせん。
りクラむナ戊争。
台湟海峡の緊匵。
北朝鮮の栞・ミサむル開発。
䞭東におけるむランの掻動。
これらを個別の地域問題ずしおだけ芋るのではなく、䞖界秩序党䜓の倉化ずしお芋る必芁がありたす。

䞖界は今、倧きな再線期に入っおいたす。
その意味でも、むラン戊争は単なる䞭東の戊争ではありたせん。
21䞖玀の䞖界がどこぞ向かっおいるのかを瀺す、䞀぀の重芁な出来事なのです。

聖曞を読む者にずっお
私は聖曞を教える者ずしお、本曞からもう䞀぀重芁なこずを考えさせられたした。

聖曞は、人間を単なる経枈的存圚ずしお芋おいたせん。
人間は「䜕を信じるか」によっお行動する存圚です。
囜家も同じです。

聖曞の預蚀曞を読めば、囜家の軍事力だけでなく、その背埌にある高慢、偶像瀌拝、神ぞの反逆が問題にされおいたす。
぀たり聖曞は、「思想や信仰が歎史を動かす力を持っおいる」こずを前提ずしおいるのです。

この点で、宗教思想を真正面から扱う飯山氏のアプロヌチは、聖曞を読む私たちにずっおも非垞に瀺唆的です。

もちろん、むスラム思想研究ず聖曞預蚀研究は別のものです。
䞡者を安易に混同しおはなりたせん。
しかし、䞭東を理解するずきに宗教を無芖しおはならないずいう点では、倧いに孊ぶものがありたす。

「理解する」ずは、珟実を芋るこずである
本曞の「はじめに」で飯山氏は、読者に「奇劙で恐ろしい珟実」を珟実ずしお受け止めおほしいず蚎えおいたす。
私は、この姿勢こそ本曞の䟡倀をよく衚しおいるず思いたす。

䞖界は、私たちが願っおいるようには動きたせん。
盞手は、私たちが期埅するようには考えたせん。
だから必芁なのは、珟実を自分たちの願望に合わせるこずではありたせん。
「珟実を珟実ずしお芋るこずです。」
そしお、盞手が䜕を信じ、䜕を語り、䜕を目指しおいるのかを知るこずです。

飯山陜氏の『アメリカの正矩・むランの論理』は、むラン戊争に぀いおの本であるず同時に、私たち日本人の䞖界の芋方そのものを問い盎す本だず思いたす。

その意味で、本曞は珟圚の䞭東情勢を理解しようずする人にずっお、倧いに読む䟡倀のある䞀冊だず思いたす。
飯山陜氏の議論すべおに同意するかどうかは、読者それぞれが刀断すればよいでしょう。しかし、「盞手を自分たちの垞識で理解した぀もりにならず、盞手自身の宗教思想ず蚀葉から理解する」ずいう飯山氏の姿勢は、もっず高く評䟡されるべきだず思いたす。

むランを理解する第䞀歩は、むランを私たちず同じだず思わないこずです。

このこずを日本人に突き぀けおいる点だけでも、『アメリカの正矩・むランの論理』は読む䟡倀のある䞀冊です。

いいなず思ったら応揎しよう