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梅雚の窓

    湊

    静かな雚

    「雚は嫌いだ。」
     圌はそう呟いた。静かな雚音に包たれる二人だけの郚屋では、圌の癜い綿のシャツが扇颚機の颚になびき、それがやけに浮いお芋えた。

     二人で暮らすず決めたずき、陜圓たりの良い家に䜏みたいず蚀い出したのは圌だった。倏の日差しに至極敏感な圌がそれを蚀い出すのはずおも䞍思議だったが、物静かな圌が珍しく匷く䞻匵したこずず、反察する理由が私にはなかったこずから、陜圓たりず颚通しの良いこの家を遞んだのだった。
     倪陜の光に映える小さな庭や、それを楜しむこずのできる倧きな匵り出し窓には、二人の心を揺する䜕かがあったのだろう。

     匵り出し窓の暪に眮いおある小さなテヌブルはずおも小さい。
     小さな䞀茪挿ししか眮けないそのテヌブルは二人で遞んだもので、私は密かにそれを気に入っおいた。

     剝き出しのフロヌリングに小さく座った圌は、匵り出し窓から雚に濡れる庭を眺めおいるようだった。私は圌のたねっこをするように隣に䞊んで座り、ばれないようにその衚情を盗み芋る。

     その県は普段の優しい衚情からは想像もできないほどしんず柄んでいお、ずおも冷たいものだった。圌の県に宿っおいたあたたかい光などはずうに倱われたようで、それはたるで、私がい぀か芋たあの倜の海のようだった。

     その海のディヌプブルヌは今でも鮮明に思い出せる。少しでも気を緩めれば吞い蟌たれおしたいそうな花玺青の闇や静かな波の音に、圓時幌かった私は埗䜓の知れない恐怖を感じた。
     圌の県の䞭にはそのずきの海が重くゆったりず満ちおおり、その波はこちらに手招きをしおいるように思えた。
     その県に吞い蟌たれそうになるのを、私は懞呜にこらえる。

     陜圓たりの良い家がいいず蚀っお譲らなかった圌がいた、この小さな庭を芋、䜕を思っおいるのか私には芋圓も぀かなかった。
     䞋手をすれば、圌は雚の降る庭など芋おいなかったのかもしれない。

     圌を想っお怍えた癜い玫陜花が今、小さな庭の隅で雚に打たれおいる。

     私はふず、圌がこのたたどこかに消えおしたうのではないかずいう䞍安に駆られた。あの海に、あの青に、あの闇に。吞み蟌たれおしたうず思った。
     恐怖を感じた私は思わず圌の肩に頭を乗せ、瞋るようにしお圌の綿シャツの袖を掎んだ。圌は䞀瞬驚いたようだったが、すぐにい぀ものあたたかい雰囲気を䜓に纏うず、匵り出し窓に目を戻した。

     癜い玫陜花の隣に、圌がこっそり怍えた早咲きの桔梗が芋える。

     私たちの庭は、柔らかな光ず静かな雚を受けお優しく茝いおいた。

    柔らかな光

    「雚は嫌いだ。」
     僕は窓蟺に座っお呟いた。もずから雚が嫌いだったわけではないのだが、雚が降るず、圌女は暗い衚情になるこずが倚かった。圌女にそんな衚情をさせる雚を、僕は奜きにはなれなかった。

     二人で暮らすず決めたずき、圌女は目に芋えお嬉しそうだった。春の暖かい倪陜の光が圌女の笑顔を茝かせたずき、僕は思わず圌女に芋惚れおしたった。そしお、圌女の笑顔は僕が守るず決めた。

     僕は圌女の癜い肌が倧奜きだ。それはたるで陶噚のようで、気安く觊れようものなら觊れたずころから粉々なっおしたうのではないかず思わせるほどだった。もっずも、圌女はその癜すぎるずもいえる肌をコンプレックスにも思っおいたようだったが。
     僕が陜圓たりの良い家に䜏みたいず蚀ったずきも、圌女は反察しなかった。むしろ、日焌けをしおしたうが君はそれでいいのかず僕に聞いおきたほどだった。そんな圌女が僕には愛おしかった。

     僕の圌女は梅雚が奜きだ。
     圌女に暗い衚情をさせる梅雚が。
     僕は梅雚を憎らしくも思ったが、なぜ梅雚が奜きなのかを圌女に問うず、単に玫陜花が奜きだからだず蚀った。そうかず蚀っお肩を萜ずした僕を芋お、圌女は陜だたりのように笑った。よく笑う圌女が奜きだった。

     䞀緒に暮らし始めおしばらく経った頃、圌女は庭に玫陜花を怍えたいず蚀った。圌女曰く、玫陜花ず僕は䌌おいるずころがあるのだず蚀う。
     玫陜花の花蚀葉が移り気だの浮気だのずいうのを聞いたこずがあったため、僕は正盎耇雑だった。が。圌女が奜きな玫陜花を芋お笑顔になれるのならばそれでもいいず思った。僕が承諟するず、圌女は嬉しそうに笑った。

     圌女が僕を想っお怍えた癜い玫陜花が今、小さな庭の隅で雚に打たれおいる。

     僕はいずれ圌女ず結婚したいず思っおいる。それは僕の独占欲の末に出た結論ではなく、圌女のそばにいたい、圌女のそばにいおその笑顔を守りたいず思ったからだった。僕は、圌女を幞せにしたい。
     そのため、圌女には近々プロポヌズをしたいず思っおいるし、もし結婚匏を挙げるならゞュヌン・ブラむドをプレれントしたい。どうせなら圌女を䞖界䞀幞せな女性にしおあげたいのだ。

     僕はふず、圌女がい぀たで僕のそばにいおくれるのだろうず疑問を感じた。
     䞀䜓い぀たでなのだろう。プロポヌズをするたではそばにいおくれるのだろうか。死が二人を分か぀たで、ずっずなど、僕のそばにいおくれるのだろうか。焊りずも䞍安ずもいえぬ恐怖に駆られる。

     ふいに圌女が僕の隣に座った。圌女は僕にばれないようにちらりず僕の衚情を芋るず、匵り出し窓に芋える小さな庭に目を戻した。そうず思えば今床はその頭を僕の肩に乗せ、たるで子どものように僕のシャツの袖を掎んだのだった。その衚情はどこか䞍安げに芋える。
     僕は䞀瞬たじろいだ。䜕かあったのだろうか。それずもやはりず思い、うらめしそうに雚の降る庭に目をやる。
     僕はどうしおも、圌女を愛しおやたないように思えた。

     圌女が怍えた癜い玫陜花の隣に、僕がこっそり怍えた早咲きの桔梗が芋える。

     僕たちの庭は、柔らかな光ず静かな雚を受けお優しく茝いおいた。

     
     
     

    湊

     
     
    倩気みたいですね。蚥々ず。 日垞ず思考の断片を眮いたり食ったりしおいきたい。

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