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急行電車の通り雨

    春凪ルナ

    いつからだろう、生きるのが苦しいと感じなくなったのは。

    いつからだろう、小さなことで泣いたり、怒ったりしなくなったのは。

    どうして、生きるのだろう・・・



    最近になって、こんなことばかり考えている。嫌なことがあったわけでも、悩みがあるわけでもないのに。

    時折、もういいんじゃないか、とさえ思う。

    水曜日。ぐだぐだとした曇天。急行電車が橋に差し掛かった。
    カタンカタン、と浮ついた音が耳に入る。

    「はあ…」

    ため息をついて電車の窓から外を見る。手元の単語帳はのぞく気にもならなかった。いつもは穏やかに流れる眼下の川も今日は荒れ模様で、深い藍色の、穏やかではないその流れがどこか不吉に映る。

    とん、誰かの肩にぶつかった。すみません、と小声で謝る。
    また窓の外に視線を移そうとした時、目の前が真っ暗になった。

    電車の窓がガタン、と揺れる。

    電車はトンネルに入っていた。このトンネルを抜ければ都市に出る。低気圧のせいか、少し頭が痛かった。規則的なトンネルのライトが横顔を照らす。
    7個目のライトが通り過ぎた時、頬を雨粒が滴り落ちた。

    「…へ?」

    上擦った声が出た。自分は今トンネルの中に…いや、それ以前に電車の中にいる。雨に当たることなんてないはずなのに。

    しかし次第に雨は強くなった。
    ついには目の前の景色を滲ませるほど強く降りしきる。

    そうか。私は乾いていたんだ。
    心に雨が降らず、ずっと日に灼かれていたんだ。

    心がヒリヒリとした。
    両目からこぼれ落ちた雨が、心を満たして、潤わせる。


    トンネルを抜けると、雲の切れ間から朝日がのぞいていた。


     
     
     
    日常の中のちょっとした幸せを、おすそ分けいたします。 週一回ほどの投稿です。

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