バイキンマンの努力を、僕は知っている
僕は、悪役が好きだ。
バイキンマン、ロケット団。少し大きくなってからは、『コードギアス』のルルーシュや『DEATH NOTE』の夜神月も好きになった。
並べてみると、全然違う。世界を変えようとする悪役もいれば、主人公にちょっかいを出す悪役もいる。
それでも、なぜか僕は悪役が好きだ。
その理由に少し気づいたのは、バイキンマンが木を切っているのを見た時だった。
いつもの巨大ロボを、完成した状態で出してきたわけではない。自分で木を切り倒し、削って、形を整えて、組み立てていく。
途中でドキンちゃんが「何作ってるの?」とやってきて、ちょっかいを出す。それでもバイキンマンはちゃんと説明して、また作る。
僕はそれを見ながら思った。
バイキンマン、苦労してるな。
普段は突然、とんでもないマシーンに乗って現れる。だから、ただの天才なんだと思っていた。
でも、その天才が木を切るところからやっている。
考えてみれば、ロケット団もそうだ。ピカチュウを捕まえるために作戦を考え、メカを作り、お金がなければバイトまでする。そして毎回のように吹っ飛ばされる。
それでも、諦めない。
しかも彼らがずっと追いかけていたピカチュウは、最後にはチャンピオンになったサトシの相棒だった。
そりゃ、捕まえられない。
むしろ見る目はあった。
ルルーシュも夜神月も、最後には命を落とす。でも、僕は彼らがただ負けたとは思わない。
やったことの善悪は別として、自分の考えを貫き、命まで賭けて、それぞれが世界を変えた。
そして、バイキンマンもそうだ。
毎回「バイバイキーン!」と飛ばされて終わる。でも、たまに反省する。みんなが楽しそうにしていれば、「俺様も入れてほしい」と言うこともある。
そういう姿を見ると、もしかしてアンパンマンと遊びたいだけなんじゃないか、と思ってしまう。
ただ、イタズラのレベルが段違いなのだ。
「入れて」がうまく言えないから、巨大ロボを作ってしまう。木を切って、削って、組み立てて、そこまでしてまたアンパンマンのところへ行く。
だから僕は、悪役が好きなのかもしれない。
悪役だからと、やったことだけを見るのではなく、その前後が気になる。何を考えたのか。何をしていたのか。本当は何がしたかったのか。
バイキンマンの努力を、僕は知っている。
今日も娘とアンパンマンを見る。バイキンマンが飛んでいく。娘が笑う。僕も笑う。
そして今日も娘と一緒に、
「バイバイキーン!」
おわり。
あとがき
この前、娘と『ばいきんまんとえほんのルルン』を見ていて、思った。
バイキンマン、めちゃくちゃ努力してるな。
でも、考えてみれば前々から、そういうところに好感を持っていた気がする。
うっすら覚えているのが、ドキンちゃんが、
「何してるのー? バイキンマーン」
と聞きにくるシーン。
するとバイキンマンが、
「俺様はこれを作ってるんだ。こうやって、こうやって……」
みたいな感じで、めちゃくちゃ丁寧に説明している。
何かを思いついて、作って、失敗して、また作る。
子どもが生まれて、改めてアンパンマンを見るようになり、『ばいきんまんとえほんのルルン』を見て思い出した。
バイキンマンは、天才というより努力の人なのかもしれない。
そして考えてみると、僕が好きな悪役は、そういう人たちが多い。
ロケット団。ルルーシュ。夜神月。
クロミちゃんや、ディズニーのピートも好きだ。
みんな、なんだかんだで苦労している。
そして意外と仲間思いで、自己犠牲も多い。
悪役が悪いことをしている場面より、なぜか僕はそんなところに目がいってしまう。
今回1000文字に収めるために、かなり我慢しました。
特にロケット団と『コードギアス』。
この二つは前々から、ちゃんと話したいと思っていた。
なので、たぶんしばらく悪役の話をします。
まずはロケット団かな。
……1000文字では、全然足りませんでした。
でも今回、この企画で「1000文字」という制限があったおかげで、逆になんだかまとまった気がします。
いつもなら、ロケット団の話をして、ルルーシュの話をして、気づけばどこまでも広がってしまう。
それを1000文字に収めようとしたからこそ、「僕は、悪役のこういうところが好きなんだ」というものが見えた気がしました。
素敵な企画を、ありがとうございます。
このエッセイは、note企画の
まきと須川の文藝大賞2026に応募しています。
1000文字で自分の好きなことをいうだけす。
これが意外と難しい。
けどやってみると、色々と整理できました。
審査員も優しい方たちばかりなので、皆さんも一歩踏み出してみたら、面白いかもです。
9月15日まで応募できます。
気になる方はこちらからどうぞ。
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