
ショートショート「花開キ、鳥歌フ。」 25/7/23
花開キ、鳥歌フ。 高橋春貴
ある日、温泉旅館の部屋で何度も寝落ちしたり目が覚めたりして、そのたびにそこにいる女とキスをした。女は俺を拒んだり、受け入れたりした。
あの女は誰だったか。
また別の日、俺は少女のようにあどけない顔の女の家に入り浸り、本を貸してもらったりして過ごしていた。
ラブホテル付きの温泉旅館に修学旅行で行くことになる、という官能小説だった。その大判を女は冷蔵庫の上から持ってくる。
文庫本が女の座ろうとしている椅子に置いてあったので俺はそれを取った。その時に俺の両手の爪のところがちょっと女の臀部に触れた。女はそれに気がついたはずだったが、気が付かないふりを続けた。
お互いに、頭を撫でたり抱きついたり、ちょっと臀部を触ったりした。
突然キスをしようか悩む。
「ハウンド・ドッグ」というアニメを1話見ることにした。
これを見終わったらキスをしよう。
しかし大男が家に入ってきて邪魔された。
「おい、俺のカップはどこだ!青いカップだよ」
女は答える。
「え、知らない」
「この辺に置いておいたんだよ、このカフェオレを飲むために、、そう、これだよこの青いカップ!ここに置いておいたんだ!」
女は俺に聞く。
「どう思う?」
俺は端的に答える。
「頑張ったんだなー、って思う。こいつの勝ち」
大男はガッツポーズでこう言った。
「よっしゃ」
俺の好きな英単語。
Hope-ホープ。
過去形、過去分詞形は
Hoped-ホープト。
全身が保っている約37兆個もの細胞をほぼ全て俺の意思だけで操作しているのだから、俺は基本的に自由なはずだ。最高のはずだ。
俺は好きな女を強く抱いて、キスをすることができる。
ある日の晩、交感した幽霊を見て酔う。
かうかんしたいうれいをみてゑふ
こうかんしたゆうれいをみてよう
*
ぜんぶがぐちゃぐちゃにまざってしまえばいいのに
きみとぼくだけでまちをあるけたらいいのに
ぼくはぼくはぼくはきみをほんとにあいしてる
なんかいきみがてんめつしてもぼくはきみをみつける
うきしずみかんけいないねぼくはきみをきにしてる
あいしてるあいしてるあいしてる
あいしてるっていっかいいってみて
完
受験に向け、親友に大量の、それは大量の、参考書や過去問を貸してもらった。以下は受け渡しの際の俺と親友の会話である。
「最初だから三時間くらい勉強したよ」
「最初は二分でいい」
「色んな意味で頑張るわ(この重い参考書と過去問の入った袋を家まで運ぶこと、受験勉強、早寝早起き、彼女を作ること、読書と創作をして文学と触れ合うこと)、お前も色んな意味で頑張れよ」
「うん、色んな意味で頑張る」
「また釣りに連れていってくれ、お父さんに釣りの出願しといて」
「うん、出願書類出しとく」
俺はその参考書たちを使って、4科目を合計5時間勉強することに成功した。
(さあ、ここで「えらい!」とコメントしてみよう!)
達成感がある。しかし疲れてはいない。明日はもう少しやってみよう。

ここで一句。
自転車のGIANTの四つ並びたる家をいみじううらやみけるかな