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バーキンと法廷【短編小説】

    坂本 春彦


      被告人として法廷に立たされた私は、これから自分を裁く裁判の顔を見て驚いた。彼女は私がエルメスに勤めていた頃、必ず週に二度は来店していた顧客だったからだ。

      担当スタッフは私ではなかったけれど、それでも顔はよく覚えている。バーキンが大好きで、季節の新作や新しいラインの入荷があると必ず案内を受けていた上顧客だった。

      まだ誰も持っていませんよ、と勧めると、それって素敵ね、と言って必ず買う人だったから、相当欲の強い人なのだろうなと思っていたけれど(実際、柔らかいお肉を溜め込んだような顎をしている)、まさかそんな人が裁判官をしているなんて、当時は想像もしていなかった。

      法服を着ている彼女は、ハイブランドで着飾ってお店に現れる姿とはまるで別人で、派手な孔雀が羽を閉じているみたいだった。

     
     
     
    日常のすき間に、少しだけ不思議が生じてしまう短編小説を書いています。 あるいはそっくりそのまま不思議なこともあります。 しゃべる動物や、理由のない幸福がよく出てきます。 ご用件、ご依頼、ご質問はお気軽にメッセージまで。

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