
お父さんは、亡くなってもなお、わたしに力をくれる。
今朝、お父さんと話をしました。
そんな特別に取り上げることでもない?
そう思うかもしれませんね。
でも、私の父は亡くなっています。
2年前、自分で命を絶ちました。
隠すことではありません。
わたしはこれから、自死した家族をもつ、
遺族の方々の役にも立ちたいと思っているからです。
話を戻します。
朝、ふと目が覚めた後に、
なんとなく、まどろみのなかで、お父さんを思い浮かべようと思いました。
お父さんの面影を探そうと、あたりを見回すと、そこは暗い座敷の部屋。
目の高さには、お父さんの顔が真っ黒く影で塗りつぶされたような大きな遺影がでんと鎮座していました。
その薄暗さに怯えながら、「お父さん!お父さん!」と
半分泣きべそをかいて明かりとお父さんを求める、そんな自分自身でおりました。
怖い……!!
倒れたお父さんを見たときの、あの冷たい空気と、わたしを覆い尽くそうとするどろっとした死の闇が、すぐそばまで迫ってきました。
わたしはギュッと目をつむり、拳に力を込めました。
──お父さん!
気がつくと、
いつの間にか、薄暗い死の気配は消え、目の前が神々しい光に包まれた空間にいました。
「お父さん……」
その光の空間の中央には、にこやかに笑うお父さんがいました。
お父さんの横には、本のタワーのようなものが建っていました。
それはクリスマスツリーのような形で、本がびっしりと張りついています。高さは20メートル以上、いや、もっというと天に向かってのびるそれは先が見えないくらい続いているようでした。
お父さんはタワーの一箇所、ある本の付近を指さしました。
わたしが何か言うより早く、言葉をくれたように思います。
「ここ(光の図書館)に書いてある。『私の物語で世界を救う』」
それは、わたしの人生の青写真(ブループリント)だと伝えてくれました。
「わたしの物語で、世界を救う……?」
それを、やりたいと思ってる。
でも、できるのかな。
そう思った瞬間、お父さんは、微笑んで、
「背中を押すよ」と伝えてくれました。
お父さんは、
無償の愛を注ぎ続け、家族を何よりも大切に想い、誰に対しても天使のような優しさを向けていた人でした。
──ああ、この人を、私は死なせてしまったのだ……。
その事実が胸の奥底から掘り起こされた瞬間、まぶたの裏にあった柔らかな光が音もなく崩れ、私の視界は途切れてしまいました。
両目の端から、熱い雫がボロボロとこぼれ落ちます。
これまで心の中に硬く積み上げてきた「後悔」という名の地層が、まだそこに深く存在していることを、その痛みで知りました。私はただ、その喪失の重みを全身で受け止めるしかありませんでした。
けれど、不思議なことがありました。
頬を伝うその涙は、冷たいはずなのに、驚くほど温かかったのです。それはまるで、乾いていた心を慈しみ、洗い流してくれるシャワーのようでした。
やがて私は、再びお父さんのいる「今」という時間へ戻ってきました。
目の前にいるお父さんは、あの日の記憶よりもずっと軽やかで、光に満ちて、美しく見えました。
お父さんは私をまっすぐに見つめ、あの穏やかな声で優しく言ったのです。
「みんな、光の天使なんだよ」
わたしは、そろそろ、お父さんを、深く苦しい記憶の底から、解放してあげる時が来たのかもしれません。
お母さんにも、わたしは時に冷たい態度をとってしまうけれど、
お父さんのいうように、お母さんだって、光の天使なんだ。
──わたしだって。
だから。
わたしは、わたしの作品で、世の中の家族がみんなで豊かに笑いあえる、そんな未来をつくりたいと思いました。
わたしは、お父さんと話しながら、わたしがこれからつくる作品のテーマを、ポンポンと出してみました。
●ママのゆるみ方
●魂は美しい
●愛されていた 事に気づくと愛される
愛の循環
しっくり来ました。
表現の方法はまだ確定はしていないけれど、
きっと、きっと、
みんなの役に立つ作品をつくりたい。
お父さんに応援してもらえているなら、
きっと道は間違っていない。
わたしは、お父さんに、勇気の火をもらいました。
お父さんは最後に、一言。
「ちびらによろしくな!」
いつもの、あの優しい目を細めて、笑いました。