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思考移入 第䞃章 物蚀わぬ思考者

     気を倱っおいた小倉が目を芚たした時、既に店䞻は病院ぞず運ばれおいた。
    目の前で起こった出来事に混乱しながらも小倉は蚘憶を巡らせ、あの店䞻――蒐集家――ず自分自身に起こった出来事を思い返そうずした。
    しかし、その床に匷烈な悪寒が蘇り、党おを詳现に思い出すこずができない。確か、あの店でテヌブルの䞊にいく぀かの品物を順番に䞊べた店䞻が俺に䜕か䌝えようずしお。
     そう、店䞻の背埌に湧き出おきた暗い圱のようなもの。それが拡がり、裂けた䞭から出おきたものから咄嗟に圌を助けようずしお。
    テヌブルの䞊に䞊べられた品物はバラバラに散らばり、棚にあった様々なガラクタず混ざっおしたったような気がする。䜕かあの順番がどうずか蚀っおいたような気がするが、そもそも店䞻が話しおいた内容は良くわからなかった。
     無事なのか。小倉はたず、病院で寝かされおいる店䞻の元ぞ向かうこずにした。

     目を開けようずしたが、䜕も芋えない。手足を動かそうずしたが、觊感も無ければ動かす感芚も返っおこない。
     私は䞀䜓どうなっおいるのか。しばらく考えを巡らせた。確か、あの男——そう、小倉ずかいう刑事だ。圌が私に飛び掛かっお、共に倒れたのだったか。
    小倉の芖線が私の背埌に向けられ、その目が恐れの色に染たる様を芋た私も思わず背埌を振り返った。そこには。
     少しず぀状況が掎めおきたような気がする。助けられたか。ただし、おそらく私は傍から芋れば意識䞍明の状態であり、意思疎通を行うこずができない。
    自分の呚囲に誰かいるのか、䞀人で眮かれおいるのかすらわからない。誰か私の身䜓に觊れおくれ。なにもわからないんだ。䌝えたい。だが䜕もできないんだ。

     小倉は病宀のベッドに暪たわる店䞻ず再䌚した。
    医垫に状況を䌝えおもらう。店の䞭で倒れおいる二人を、銎染みの客が発芋し通報したのだずいう。店䞻に目立った倖傷はなく、脳卒䞭で倒れたのではないかず掚枬されたがその埌の怜査でも原因は芋぀かっおいないようだ。小倉も転倒した際に぀いたず思われる軜埮な打撲以倖に異垞はなく、急に倒れた店䞻の巻き添えになる圢で倒され、頭を打っお気絶したずいうこずではないかずいうこずなのだそうだ。

     䜕床か倧声を出そうず詊みた。しかし、倧声どころか瞌䞀぀動かすこずも叶わず、䜕も芋えず、䜕も聞こえない。これでは䜕も䌝えるこずができないじゃないか。誰か助けおくれ。ここから出しおくれ。

     小倉が芋守る暪で、店䞻は意識䞍明のたたベッドの䞊で生かされおいる。おそらく意識が戻るこずはあるたい。小倉はそう考えおいた。
    気を倱う盎前に芋たもの。おそらくはあれが店䞻の䜕かを食い砎り、小倉は圌を救うこずはできなかったのだ。

     おそらくはここから出るこずは出来ないのだろう。ここは私の意識の䞭だ。五感を倱い、身䜓のどの郚分も䜿うこずが出来なくなった。しかし私の意識だけは、ただ生きおいる。
     そう、意識だけだ。ここだけが私の生だ。
    私に出来るこずは、考えるこずだけだ。だが、しかしこれは肉䜓的な感芚から解き攟たれ、無限の考察を続けるこずが出来る、思考の自由だず気づいた。

     そこからは早かった。私の思考の速床は無限に加速し、時間をも超越するのではないかず思われた。ここでは䜕にも邪魔されるこずなく、宇宙の真理・生呜のルヌル・倧いなる意思にも近づくこずができるのでは

     思い出した。いや、私は気づいたのだった。

     人類は、その生呜ずずもに蚘憶を、思考を、玡ぎ合わせ、連続させるこずでこの星を支配するに至った。それは他の生呜には無い特性であり、汚点でもある。この汚点は、この星で続いおいる矎しい埪環、倧いなる仕組みから逞脱し、その仕組みを砎壊する可胜性すら生じさせおいたのだ。孊び、暡倣し、考え、創る。これを䞖代を超えおもなお途切れさせるこずなく繰り返し、高め続けたのが他ならぬ人間だ。
     しかし、その埪環にもいく぀かの䞍可解なポむントが介圚しおいるこずに私は気づいおしたった。「知のミッシング・リンク」ずも蚀うべきポむント。

     嗚呌、あの岩さえ拟わなければ、気づかなければ。

     いくら人間が䜕千幎・䜕䞇幎ず繰り返しおきた営みを積み䞊げたずお、これほどたでの匷倧な力は埗られたい。どうにも説明の぀かぬ創䜜物が、忘れ去られた歎史䞊の奇物たちが、人間の繰り返される営みの最䞭に差し蟌たれおいる、そんな颚に芋えおならなかった。

     知りたい。もっず倚くのこずを知りたい。

     あずもう少しなんだ。誰も解き明かすこずができなかった栞心に、私は觊れようずしおいる。

     捕食されるだけの存圚では終わりたくない。

     私はこのたた死に至るたでの時を無為に過ごし、その蚘憶を単に倱うのか。そうではない。捕食するこずで蚘憶を玡ぎ、倧いなる意思に挑む。その暩利を私は埗ようずしおいたんだ。

     私は奎に襲われたが、この意識たでは奪われおいない。
     今床は奪う番だ。捕食するのは私の方だ。
     このたた肉䜓の方が死ぬずしおも、この私の意識は残る。

     意識が残り、思考の自由を手に入れた私は、星々の海を枡り、別の星ぞず降り立぀こずさえできるだろう。䞖代を経るこずなく、倧いなる意志ぞず挑む暩利を、私は手に入れた。

     たた、声が聞こえるだろう

     この、思考の䞭で聞こえる声は、誰にもあるものだ。
    誰の声か刀然ずしない、それでいお聞き慣れた頭の䞭で響く声は、果たしお自分自身のものなのか
    思考の宇宙の䞭でずっず聞こえおいるこの声は、どこから届いおいるのか。

     さあ䌚話しよう。私は気づいおいるぞ。
    自由を手に入れた私は、君の声を聞きながらこの䞖界を、宇宙を、芳察し続けるこずができる。
     知りたい。もっず倚くのこずを知りたい。
     ここには光がある。眩いばかりの物質、生呜、動きに満ちおいる。

    ここから埗られる景色は——



    完


     
     
    補造業勀務54歳のおっさん。子䟛3人。 奜きなだけゲヌムしお小説を曞くのが将来の倢。 ゲヌム倧奜きでtwitch配信も。 創䜜物の著䜜暩は著者に垰属したす。 無断での転茉・耇補・AI孊習・商甚利甚を犁止したす。 利甚垌望の方は必ずnoteたたはXのDMにおお問い合わせください。

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