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云わぬまま

    セラフィナ

    「これ、壱太郎(いちたろう)こんな人混みの中を走り回っては危ないよ」

    壱太郎は、父の声も聞かず、酉の市で賑わう町に、興奮を押さえきれなかった。

    「父様、見てください。あそこにも何やら面白そうなものが売っております」

    後方にいる父にそう告げながら、目的の出店に向かって駆け出そうとする壱太郎。

    「これ、せめて前を見て走らん…」

    父が言い終わる前に、壱太郎は前から歩いてくる人にぶつかった。

    「痛…」

    「おやおや、坊。こんな人混みでよそ見をしながら走り回っては、危ないよ」

    そう言って、尻もちをつく壱太郎に、与左衛門(よざえもん)は手を差し出した。

     
     
     
    ​ひとの“心の奥”に潜む、歪みや影を更に「消えない澱」として沈殿するような物語を、余白たっぷりに書いています。 ​あなたの心の深淵で、お待ちしています。 TALES: 鋭い短編 中心。現在、note創作大賞応募作『正義の悪心、悪の正義』を連載中 note: 中長編の販売など

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