
“全部同じ顔に見える”と思った日の話
最近、忘れっぽい。
手帳が手放せない。これがないと、スケジュールがまったく分からない。完全に頼りっぱなしだ。
人の顔も覚えていられない。
「あっ、こっこさん!」と呼び止められて、名前が出てこない――なんて話はよく聞くけれど、わたしの場合は名前どころか、顔にまったく見覚えがない。
まだボケているわけでは……ない、と思いたい。
そんなことが増えてきて、ひとつ気づいた。
覚えられない「種類の顔」があるのだ。
それは――おじさんの顔。
わたしも立派なおばさんなので、たぶん同年代か、少し年上くらいの人たち。
なぜか、みんな同じに見えるのである。
スーツ、短い髪、落ち着いた色味。
違いはあるはずなのに、記憶に残らない。
昨日会った人も、今日すれ違った人も、ぜんぶ「どこかで見たおじさん」に上書きされていく。
少し調べてみたら「他者同質性バイアス(outgroup homogeneity bias)」っていう心理現象で自分にとってあまり関わりが深くないグループの人たちが似たように見えやすくなるらしい。
なるほど。もしかして、向こうから見たわたしも
「どこかで見たおばさん」なのだろうか。
そう思うと、ちょっとだけ、おあいこな気がした。