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傷だらけの拳


    第䞀章 坂本韍銬の倢


     1972幎、高知県高知垂。
     安藀冎は暎力団・安藀組組長の息子ずしお生たれた。
     父・安藀和光は土䜐でも名の知れた男だった。
     しかし息子の冎にずっお、その肩曞は誇りではなく重荷だった。
     1987幎春。
     昭和62幎。
     䞖間は奜景気に向かい始めおいた。
     テレビではアむドルやトレンディドラマが人気を集め、高知の商店街にも掻気があった。だが安藀冎の毎日は暗かった。
     䞭孊䞉幎生。
    「ダクザの息子」 
     そのレッテルだけで十分だった。
     机には萜曞き。
     靎は隠される。
     教垫は知らぬふり。
     そしお技術宀では――。
    「おい、安藀」
     川厎が熱したハンダゎテを持っお近づいおくる。
    「お前、本圓に組長の息子か詊しおやるよ」
     冎が逃げる間もなかった。
     ゞュッ――。
     巊腕に激痛が走る。
     皮膚が焌ける臭い。
     呚囲の笑い声。
     教垫は窓の倖を芋おいた。
     数日埌。
     校舎裏。
     鳩尟に拳がめり蟌む。
     息ができない。
     膝を぀く冎。昭和の孊校には、ただ暎力が圓たり前のように存圚しおいた。
     誰も助けない。
     誰も芋おいないふりをする。
     その倜。
     鏡川の河原。
     遠くに高知城の灯が芋える。
     傷だらけになった冎は草むらに寝転んだ。
     そしお坂本韍銬の倢を芋る――。

     坂本韍銬が蚀った「日本の倜明け」ずは、このこずだったのだろうか。いや、絶察に違う。

    ​ 冎さえが目を芚たしたずき、脳裏に焌き付いおいたのは韍銬の顔ではなく、リヌれントにボンタン、そしお『ビヌ・バップ・ハむスクヌル』のヒロシずトオルが攟぀圧倒的な䞍良のオヌラだった。

     そしお同時に、謎の啓瀺が脳内に盎接響き枡った。

    ​「1日に7回、己の内なるガスを解攟せよ。さすれば、お前は無敵の拳を埗る。タヌゲットは川厎だ」


    ​「 なんの倢だ、ありゃ」

    ​ 額の汗を拭いながら、冎は起き䞊がった。空手郚の元゚ヌスの老人に䌝授された「傷だらけの拳」は、すでに鋌のように鍛え䞊げられおいる。だが、䜕かが足りないず感じおいたのも事実だった。それがたさか、**「屁ぞ」**だずいうのか。

    ​ 1987幎、高知。

    ​ 圓時の高知は、工業地垯の煙に巻かれた、荒くれ者たちがひしめく欲望ず暎力の街。ボンタン狩り、カツアゲ、タむマンは日垞茶飯事。地元の䞍良グルヌプ「川厎狂死郎」が街を牛耳っおいた。

     ​午前10時。冎は小さい駅に降り立った。

     キュルルル ず腹が鳎る。

    • ​1発目 駅の䌝蚀板「XYZ」ず曞かれた暪の前で、軜く䞀発。腹の底から力がみなぎる。

    • ​3発目 ゲヌセン『ゲヌムセンタヌあらし』の筐䜓前で、むンベヌダヌの音に玛れさせお。拳の皮膚が硬質化しおいく。

    • ​5発目 喫茶店でナポリタンを食べ終えた瞬間。背筋に電流が走った。

    ​「 いける。あず2回で、俺は最匷になる」

    ​ 芚醒のカりントダりン

     ​だが、運呜は埅っおくれない。垯屋町の路地裏。

    「おい、そこのシケたツラしたアニキ」

     目の前に珟れたのは、ケミカルりォッシュのゞヌンズに、これでもかず髪を膚らたせた「川厎狂死郎」の特攻隊長・テツ14歳ず、その手䞋30人だった。手にはバットや鉄パむプ。

    ​「おい挚拶もなしかここらじゃ俺たちに挚拶なしで歩くのは厳犁なんだよ」

     ​冎は静かに構えた。元ボクサヌの老人に教わった、鋭いゞャブのスタンス。

    「どけ。俺は今、それどころじゃない」

    「あぁん ナメおんじゃねぇぞ」

     ​襲いかかる30人の䞍良。冎の「傷だらけの拳」が火を吹く 空手仕蟌みのスピヌディヌな回し蹎りがテツの顎を捉え、ボクシング仕蟌みのボディブロヌが手䞋の肋骚を軋たせる。匷い。圧倒的に匷い。

     ​だが、倚勢に無勢。鉄パむプの䞀撃が冎の肩をかすめた。

    「ハハハ 終わりだ」

    ​ その時、冎の腞内で、すさたじい゚ネルギヌのビッグバンが起きた。

     時蚈を芋る。午埌4時59分。

    ​「 くる」

    • ​6発目 ドゎォッ空気を震わせる重䜎音

    ​「ひぃっ なんだこの音は」怯む䞍良たち。

     冎の髪型が、なぜか䞀瞬でトオル颚のバシッずしたリヌれントに倉圢しおいく。

    ​「これで、最埌だぁぁぁヌヌヌ」

    ​ 冎は倩を仰ぎ、枟身の力を䞋腹郚に蟌めた。

    • ​7発目 ボゎォォォォォォンッッッ

    ​ それは、昭和62幎の高知の空を割る、もはや爆音だった。駅前の鳩たちが䞀斉に飛び立ち、近くの公衆電話のガラスが震えた。


     ​7回目の解攟。その瞬間、冎の肉䜓は神話の領域に達した。

    「傷だらけの拳」が、オヌラを纏っお黄金に茝く。

    ​「な、なんだあい぀は 化け物か」

     恐怖で動けないテツに向かっお、冎は音速を超えるスピヌドで螏み蟌んだ。

    ​「ビヌ・バップ・ハむスクヌルを ナメんじゃねぇ」

    ​ ドガガガガガガガガガッッッ

    ​ 路地裏に、肉䜓ず肉䜓がぶ぀かる凄たじい衝撃音が響き枡る。1人、たた1人ず宙を舞い、川厎狂死郎のメンバヌがゎミ捚お堎ぞず突っ蟌んでいく。

     最埌に残ったテツの顔面に、冎の魂のストレヌトが炞裂した。

    ​「あばよ、川厎」

    ​ ドサリ、ず倒れるテツ。

     倕暮れ時の街。静寂が戻った路地裏で、冎は鍛え䞊げられた拳を芋぀めた。

     やり切った。街をボコボコにし、己の限界を超えた。

     ​だが、最匷の力を埗た代償ずしお、呚囲には昭和の公害問題をも凌駕する、すさたじい異臭が立ち蟌めおいた。冎はリヌれントを指で軜く敎えるず、誰に蚀うでもなく呟いた。

    ​「 ちょっず、コヌラ奢っおくれや、韍銬さん」

    ​第䞀郚・完

     昭和62幎、高知。異臭隒ぎのバトルから数日埌。

     ​宿呜のコむンゲヌセン死闘篇1987

     ​朚曜の倜7時。テレビから流れるのは、装いも新たに始たった『北斗の拳2』。

     アミバやゞャギずは違う、倩垝だの元斗皇拳だのずいう新たな匷敵の登堎に、冎は胞を熱くしながら眠りに぀いた。

     ​その倜の倢は、䞖玀末だった。

    ​荒涌ずした荒野。目の前に立぀のは、肩パッドをこれでもかず盛った、どう芋おも『北斗の拳2』の雑魚キャラモヒカン・倧柄・トゲ付き肩圓お。

    「ヒャッハヌ 汚物は消毒だぁヌ」 ​「 おい、お前ら。アニメが『2』になったんだから、少しは新鮮なセリフを吐けよ」 ​冎の「傷だらけの拳」が、倢の䞭で北斗神拳の劂き茝きを攟぀。 「あたたたたたたたたヌっ」 倢の䞭で敵の秘孔を突き、次々ず爆発もちろんマむルドな昭和の衚珟でさせおいく。倒せば倒すほど、冎の肉䜓に「最匷」のデヌタが蓄積されおいくのが分かった。 ​「お前はもう、死んでいる」 ボガァン


     ​リアルな戊堎、闇のゲヌセンぞ

    ​ 翌朝、冎が目を芚たすず、郚屋の鏡に映った自分の倧胞筋が心なしか倍に膚れ䞊がっおいた。

    「倢の䞭で敵を倒すず、珟実の俺が最匷になる そういうシステムか」

     ​確信を埗た冎が向かったのは、薄暗くおタバコの煙が充満した**「ゲヌムセンタヌ」**である。圓時は『熱血硬掟くにおくん』や『1943』、そしお䜕より『アりトランン』が爆発的ヒットを蚘録しおいた時代だ。

    ​「䞡替、1000円分」

     ​冎は100円玉の山を握りしめ、筐䜓の前に座った。目的はゲヌムを遊ぶこずではない。ゲヌムの電子音ず100円玉の金属音が、冎の脳のアルファ波を刺激し、**「起きたたた倢の境界線ゟヌンに入る」**ためだった。

     ​ピコピコ、ドカバキ。

     呚囲の喧隒が遠のく。冎の意識は、ゲヌセンの怅子に座ったたた、再びあの䞖玀末の倢ぞずダむブした。

    ​倢のゲヌセン無双 

     ​倢の䞭の舞台は、なぜか「䞖玀末颚に荒廃したゲヌセン」になっおいた。

     むンベヌダヌの筐䜓を歊噚に振り回すモヒカンたちが、冎を取り囲む。

    ​「おいおい、100円眮いたのに連コ連続コンティニュヌしおんじゃねぇよ」ず叫ぶモヒカン。

    「ルヌル違反だ。 お仕眮きをしおやる」

     ​冎の拳が唞る。

     元ボクサヌの老人盎䌝の巊ゞャブは、倢の䞭のブヌストによっお**「残圱拳」ぞず昇華。空手郚の゚ヌスから盗んだ蹎りは、重力を無芖した「飛燕連脚」**ずなっおモヒカンどものアゎを砕く。

     ​10人、50人、100人。

     倢の䞭の敵キャラをボコボコに倒すたびに、珟実䞖界でゲヌセンの怅子に座る冎の身䜓から、バチバチず青い闘気が溢れ出し始めた。

    ​「ひ、ひぃ なんだあい぀ 座ったたた光り茝いおるぞ」

     リアルなダンキヌたちが、筐䜓の圱から恐怖に怯えながら冎を芋぀める。

     ​芚醒の「あたたた」

    ​ 倢の䞭で、぀いにボスキャラ総重量200キロの巚挢を撃砎した瞬間、冎はカッず目を芋開いた。

    ​「 北斗 元斗皇拳 いや、俺の拳だ」

     ​完党に「最匷」ぞず至った冎が立ち䞊がる。その県光だけで、ゲヌセン内にいた地元の䞍良グルヌプ「むンベヌダヌズ」の面々は腰を抜かした。

    ​「おい、お前ら。ゲヌムは1日1時間だ。それず、筐䜓を叩くんじゃねぇ」

     ​冎がそう蚀っお、100円玉を1枚、灰皿代わりに眮かれた空き猶の䞭に匟き入れる。その瞬間、ピンッず鳎り響いた音が合図だったかのように、ゲヌセンの入り口からツッパリたちが䞀斉に逃げ出しおいった。

     ​1987幎、高知。

     ビヌ・バップの屁の力に加え、北斗の倢で䞖玀末の匷さを手に入れた冎。圌の「傷だらけの拳」は、もはや珟䞖に敵なし。

     しかし、激しい闘いの代償ずしお、冎のポケットには、倧量の100円玉の代わりに**「䜿い道のわからないファミコンの裏技メモ」**だけが残されおいたのだった。

    ​第二郚・ゲヌセン死闘篇 完

     ​次は䞀䜓、どんな昭和のカルチャヌが冎を襲うのでしょうか
     
     1987幎昭和62幎、秋口。垯屋町の片隅にある、琥珀色のラむトが灯る玔喫茶。

     カチカチず秒針を刻む柱時蚈の音に混じっお、有線攟送からは圓時のチャヌトを賑わせるヒット曲たちが、次々ず流れおいた。

     ​昭和62幎、玔喫茶「玔情」の密談

    ​ ベロア調のえんじ色の゜ファに深く腰掛けた冎の前には、冷めかけたナポリタンず、氷の溶けたクリサワクリヌム゜ヌダ。

     そしおテヌブルの真ん䞭には、あの懐かしい**球䜓の「卓䞊占いマシン」**が鎮座しおいる。100円玉を入れ、自分の星座のレバヌを匕くず、小さな玙のおみくじが䞞たっお出おくる、あのプラスチックの機械だ。

    ​ 有線から流れおくる曲が倉わるたび、店内の空気はめたぐるしくその色を倉えおいく。

    ​1. 長枕剛「ろくなもんじゃねえ」〜「泣いおチンピラ」

    ​ 重々しいアコヌスティックギタヌのむントロが流れた瞬間、冎の向かいに座る「情報屋の男」が、声を朜めお切り出した。

    ​「 おい冎、聞いたか。川厎をボコボコにしたお前を狙っお、隣の愛媛からガチの『チンピラ』どもが動き出したらしい。お前、倢の䞭で北斗の拳の技を極めたそうだが、珟実の刃物には勝おねえぞ」

    ​ 冎は䜕も蚀わず、卓䞊占いマシンの「蟹座」のレバヌに指をかけた。

     ピピッ、ず100円玉を投入する。

     ​2. 近藀真圊「愚か者」〜䞭森明菜「TANGO NOIR」

    ​「愚か者」のハスキヌな歌声が店内に響く。冎は出おきた小さな巻き玙を広げた。

    【運勢倧吉。ただし、近隣に宿敵あり。静かに身を朜めよ】

    ​「静かに身を朜めろ、か。 占いのマシヌンも、俺に『愚か者』になるなず蚀っおるらしい」

     冎が䞍敵に笑う。

     有線はそのたた、劖艶な䞭森明菜の「TANGO NOIR」ぞず移り倉わる。情熱的なタンゎのビヌトが、これから始たる新たな死闘の予感を駆り立お、喫茶店の密談は䞀気にハヌドボむルドの深みぞず沈んでいく。

    ​「マッチず明菜が連続で流れるなんお、有線もわかっおやがる。で、その愛媛の連䞭はどこにいる」

    「  🪩銀倩街のディスコだ。だが冎、今回はマゞでダバい」
     
     ​3. 埳氞英明「茝きながら 」〜䞭森明菜「難砎船」

    ​ 情報屋が怯えたようにガタガタず震え出した。その時、店内の空気を優しく包み蟌むように埳氞英明の柄んだ歌声が流れ出す。爜やかなCM゜ングずしおもお銎染みのあのメロディだ。

    ​「おいおい、そんなに怯えるなよ。『茝きながら』行こうぜ、䜕事もな」

     冎がコヌヒヌを䞀口すする。しかし、曲は非情にも䞭森明菜の「難砎船」ぞずバトンを繋いだ。䞀気にどん底たで萜ちおいくような、重く悲しいメロディ。

    ​「 難砎船、か。沈むのは俺か、それずも愛媛の奎ら frontline か」

    ​ 冎は立ち䞊がり、小銭入れから100円玉をもう䞀枚取り出すず、卓䞊占いマシンの䞊にトン、ず眮いた。

    ​「この100円は、次の死闘のコンティニュヌ甚だ。マスタヌ、お勘定」

     ​1987幎のヒットチャヌトを背景に、昭和の男たちの密談は終わりを迎えた。

     ビヌ・バップの屁の力、北斗の拳の倢の力、そしおこの喫茶店で埗た情報。すべおを携え、冎の「傷だらけの拳」は、次なる戊堎ぞず向かう――。

    ​ 

    第䞉章 銀倩街ディスコ炎䞊篇1987秋


    ​ 高知からフェリヌず列車を乗り継ぎ、冎は四囜のツッパリたちが血気盛んに集う街、愛媛県束山垂の「銀倩街」ぞず足を螏み入れおいた。

     ​目的の堎所は、地䞋にあるディスコ「マハラゞャ」  ではなく、その裏手にある超ロヌカルで怪しいディスコ「バブル城」だ。

     ​重䜎音のシンセサむザヌず、きらびやかなミラヌボヌルの光が地䞋階段から挏れおくる。有線攟送の次は、本堎のナヌロビヌトず、圓時䞖界を垭巻しおいたマむケル・ゞャク゜ンの『Bad』、そしお日本のフロアを揺らす荻野目掋子の『ダンシング・ヒヌロヌ』が冎の錓膜を震わせた。

     ​1987幎、玫の煙ずナヌロビヌト

     ​フロアのVIP垭ただのベロアの長怅子には、髪を「リヌれント」ではなく、さらに過激な「トサカ前髪」に固めた愛媛の凶悪ダンキヌ集団「䌊予柑爆匟いよかんばくだん」が陣取っおいた。

    ​「おい、高知の『屁こきリヌれント』が本圓に来やがったぞ」

     ​総長のケンゞ20歳・ダボシャツ着甚が、タバコの煙を吐き出しながら立ち䞊がる。その数、およそ50人。党員がワンレン・ボディコンの姉ちゃんたちを埓え、手にはなぜか朚刀ず、愛媛名産のミカンカチカチに凍らせた凶噚を握りしめおいる。

    ​「安藀冎だな。高知の川厎をハメたらしいが、ここは愛媛だ。お前の『昭和公害ガス』も、このディスコの匷力な換気扇の前には無力よ」

    ​ 冎は静かにステップを螏んだ。

     耳に飛び蟌んでくるのは、マむケル・ゞャク゜ンの『Bad』の重いベヌスラむン。

     その瞬間、冎の脳内で新たな昭和の奇跡システムが芚醒する。

    ​「ステップを刻め。マむケルの劂く、重力を眮き去りにしろ」


    ​「フゥヌッ」

     冎は思わず奇声を発し、぀た先立ちでタヌンを決めた。

     ​䞖玀末のステップず、凍結ミカンの嵐

    ​「やっちたえ」

     ケンゞの号什ずずもに、50人の愛媛ダンキヌが襲いかかる。

    ​ 飛び亀う凍結ミカンの嵐。だが、倢のゲヌセンで『北斗の拳2』のデヌタをむンストヌルした冎の肉䜓にはかすりもしない。

    ​「あたたたたたたたたヌっ」

     ​冎の「傷だらけの拳」から繰り出される高速ゞャブが、ナヌロビヌトの高速なBPMテンポず完党にシンクロする。『ダンシング・ヒヌロヌ』のサビに合わせお攟たれたアッパヌカットが、特攻隊長の顎を捉えお倩井のミラヌボヌルぞず叩き぀けた。

    ​ ドガシャァァヌン

     飛び散るガラスの砎片。悲鳎を䞊げるボディコンの姉ちゃんたち。

    ​「バ、バカな   ディスコのステップを螏みながら、北斗神拳を䜿いやがる  」

     ​残るは総長のケンゞ䞀人。

     ケンゞは最埌の手段ずばかりに、愛媛の裏番長から授かったずいう「䌝説のバトルペヌペヌスケバン刑事仕様」を取り出した。

    ​「これでお前も終わりだ」

     ​だが、冎の腞内はすでに、玔喫茶「玔情」で食べた冷めかけたナポリタンずクリサワが最悪の化孊反応を起こし、限界を超えおいた。

    ​「時蚈は芋ねえ。だが、今がその時だ」

    ​ 芚醒のムヌンりォヌク

     ​冎はケンゞに背を向け、滑らかな「ムヌンりォヌク」で埌退し始めた。

     ​ボゎォォォォォォンッッッ

    ​ 本日最倧の「音速の解攟」がフロアに炞裂。

     爆颚によっおディスコのDJブヌスのレコヌドが逆回転し、巚倧スピヌカヌが文字通り倧爆発した。異臭ず爆颚に煜られ、ケンゞはペヌペヌを構えたたた癜目を剥いおフロアに沈んでいった。

     ​静寂ずすさたじい異臭が戻った銀倩街の地䞋。

     冎はトサカ髪が少し乱れたリヌれントを指で軜く敎えるず、胞ポケットから「䜿い道のわからないファミコンの裏技メモ」を取り出しお床に萜ずした。

    ​「愛媛のミカンは、凍らせるより普通に食った方が矎味いぜ」

    ​ こうしお、高知ず愛媛のダンキヌ倧戊争は、䞀発の爆音ずずもに幕を閉じたのだった。

    ​第䞉郚・銀倩街ディスコ篇 完

     第四章 カセットに宿る機関銃、讃岐うどん血颚録篇

     ​昭和62幎1987幎、晩秋。

     高知・安藀組ず、銙川を牛耳る歊闘掟組織「十河組そごうぐみ」の火皮は、぀いに限界を超えお爆発しようずしおいた。

     ​瀬戞内を挟んだ極道たちの睚み合い。その緊迫した空気は、安藀組組長の嚘であり、冎の姉である**安藀貎子たかこ**の元にも届いおいた。

     ​カセットのバグず、セヌラヌ服の予感

     ​十河組の刺客がい぀高知に乗り蟌んでくるかもわからない、緊迫した金曜の倜。

     貎子は、自宀でブラりン管テレビに向かい合っおいた。ファミコンの赀い本䜓に差し蟌たれおいるのは、発売から2幎が経った今もなお囜民的人気を誇る**『スヌパヌマリオブラザヌズ』**のカセットだ。

    ​「最近、倉な倢ばかり芋るのよね  」

     ​貎子は呟きながらコントロヌラヌを握る。ここ数日、圌女の脳裏に焌き付いお離れない倢があった。

     ​それは、自分がなぜかセヌラヌ服を身にたずい、バカみたいに巚倧な機関銃M3サブマシンガンをぶっ攟した挙句、**「カ・む・カ・ン」**などず呟く、映画さながらの䞖玀末じみた倢だった。

    ​「ただの気のせい、気のせい。さあ、今日も1ヌ1からクッパを蚎䌐しに行くわよ」

     ​貎子はふぅっず息を吹きかけおカセットを挿し盎し、電源を入れた。

     だが、その倜の貎子の集䞭力は、たさに「ゟヌン」に入っおいた。

     ​党クリの瞬間、芚醒の「カむカン」

     ​Bダッシュでクリボヌを飛び越え、ノコノコの甲矅を蹎り飛ばし、無限増殖の裏技すら䜿わずに、貎子の指先は流れるようにステヌゞを駆け抜けおいく。

     ​8ヌ4。溶岩の海を飛び越え、぀いに本物のクッパの背埌に回り蟌み、斧を萜ずした。

     ピヌチ姫が画面に珟れ、゚ンディングのファンファヌレが鳎り響いた――その瞬間だった。

     ​ピピッ、バチバチバチッッッ

     ​ファミコンの画面が激しくバグり、眩い光が貎子の身䜓を包み蟌んだ。

     脳内に盎接、ファミコンの8bitサりンドでアレンゞされた『セヌラヌ服ず機関銃』のむントロが鳎り響く。

    ​「  あ、頭が、熱い  」

     ​貎子が目を芋開いたずき、その瞳からは普段の倧人しさが完党に消え倱せおいた。

     髪型はなぜか昭和のサラサラなショヌトボブに倉圢し、郚屋の隅に眮かれおいた安藀組の「ただの朚刀」が、たるで挆黒の機関銃のようなオヌラを纏い始める。

    ​「安藀組・若頭代行、安藀貎子。  いや、星泉ほしいずみよ。  カ・む・カ・ン」

     ​完党に映画の組長モヌドぞずシステムが切り替わった貎子は、朚刀を肩に担ぎ、郚屋を飛び出した。

     ​銙川・十河組の匷襲ず、星泉の無双

     ​時を同じくしお、安藀組の事務所には、銙川から瀬戞倧橋※ただギリギリ開通前なのでフェリヌを枡っおやっおきた十河組の粟鋭ダンキヌ極道たち50人が、日本刀や金属バットを手に乱入しおいた。

    ​「おい 安藀のオダゞを出せ 今日から高知はワシら十河組のシマじゃ」

     ​留守を預かる冎が「傷だらけの拳」を構えようずした、その時。

     ​バシャァァァヌンッッッ

     ​事務所のガラス戞をダむナミックに突き砎り、セヌラヌ服姿の貎子――いや、星泉が゚ントリヌした。

    ​「そこたでよ、十河組のトカゲども」

    ​「あぁん なんだこのセヌラヌ服のネヌちゃんは」

     ​十河組の組員が襲いかかる。しかし、ファミコンの「党クリ・無敵スタヌ状態」のデヌタをその身に宿した貎子の動きは、もはや人間のそれを持しおいなかった。

    ​「あたたた」ではなく、貎子の口から飛び出したのは、匟䞞の劂き咆哮。

    ​「ダダダダダダダダダダダダダッッッ」

     ​貎子が手にした朚刀を氎平に振り抜くず、そこから目に芋えない「8bitの匟䞞匟幕」が攟たれ、事務所の壁や十河組の面々を次々ずハゞき飛ばしおいった。

    ​「ぎゃあああ 匟が出おねえのに、身䜓がハチの巣にされるぅぅぅ」

    「無敵だ こい぀、スタヌを取ったマリオのBGMが背埌から聞こえるぞ」

     ​讃岐うどんのコシず、哀愁の゚ンディング

     ​わずか3分。

     十河組の突撃郚隊50人は、誰䞀人ずしお貎子のセヌラヌ服に觊れるこずすらできず、事務所の床に党滅マむルドな衚珟で気絶した。

     ​静寂が戻った事務所。

     貎子は朚刀の先から立ち䞊る芋えない硝煙をフッ、ず息で吹き消すず、映画のラストシヌンさながらに、少し寂しげな衚情で呟いた。

    ​「  バカね。倧人の喧嘩に、ファミコンを持ち出すなんお」

     ​呆然ず立ち尜くす匟の冎に向かっお、貎子はい぀もの姉の顔に戻り、にっこりず埮笑んだ。

    ​「さあ冎、片付けが終わったら銙川たでドラむブよ。十河組の事務所を完党に朰したあず、本堎の『讃岐うどん』を食べるわよ。もちろん、コシの匷い、出汁の効いたや぀をね」

     ​こうしお、安藀組の危機は、姉のファミコン党くりによっおもたらされた「機関銃の奇跡」によっお、電光石火で解決したのだった。

    ​第四章・讃岐うどん血颚録篇 完


     

    登堎人物


     安藀冎あんどう さえ
     䞻人公。
     1972幎、高知垂生たれ。
     暎力団・安藀組組長の息子。
     䞭孊時代に壮絶ないじめを受ける。
     元空手郚゚ヌスや元ボクサヌの老人から技を孊び、「傷だらけの拳」を䌚埗。
     なぜか倢や昭和カルチャヌの圱響で超人的な力に芚醒しおいく。
     奜物はナポリタンずコヌラ。
     安藀和光あんどう かずみ぀
     安藀組組長。
     土䜐では名の知れた極道。
     息子を心配しおいるが、䞍噚甚なため䞊手く接するこずができない。

     安藀貎子あんどう たかこ
     冎の姉。
     安藀組若頭代行。
     普段は冷静だが、ファミコン『スヌパヌマリオブラザヌズ』党クリをきっかけに「星泉モヌド」ぞ芚醒。
     朚刀から芋えない匟幕を攟぀。

     川厎
     冎をいじめる同玚生。
     技術宀でハンダゎテによる根性焌きを行う。
     冎にずっお最初の宿敵。

     テツ
    「川厎狂死郎」特攻隊長。
     14歳。
     鉄パむプを振り回す乱暎者。
     冎ずの戊いで敗北する。

     ケンゞ
     愛媛の暎走族「䌊予柑爆匟」総長。
     凍らせたミカンを歊噚ずしお䜿甚。
     ディスコ「バブル城」で冎ず激突する。

     情報屋の男
     玔喫茶「玔情」に珟れる謎の人物。
     四囜各地の䞍良や極道の情報に粟通。
     冎ぞ次々ず危険な情報をもたらす。

     十河組そごうぐみ
     銙川県を拠点ずする歊闘掟組織。
     安藀組ず察立する。
     安藀貎子の芚醒によっお壊滅的打撃を受ける。
     

     䜜䞭に登堎する重芁な堎所
     高知垂
     冎の故郷。物語の出発点。

     鏡川
     冎が坂本韍銬の倢を芋る堎所。

     ゲヌムセンタヌあらし
     冎が倢ず珟実の境界ぞ足を螏み入れる堎所。

     玔喫茶「玔情」
     情報亀換が行われる昭和の秘密基地。


     銀倩街
     愛媛線の舞台。

     ディスコ「バブル城」 
     ナヌロビヌトず乱闘が亀差する地䞋戊堎。
     䜜品のキヌワヌド
     昭和62幎1987幎
     高知
     坂本韍銬
     䞍良挫画
     ファミコン
     ゲヌムセンタヌ
     ディスコ
     北斗の拳
     ビヌ・バップ・ハむスクヌル
     讃岐うどん
     青春
     ハヌドボむルド
     ギャグアクション

     党䜓ずしおは、1987幎の昭和カルチャヌを培底的に盛り蟌みながら、䞍良小説・バトル挫画・ギャグを融合した「昭和バカアクション小説」ずいう印象です。タむトルの『傷だらけの拳』に察しお内容が豪快なコメディになっおいる点が、この䜜品最倧の個性になっおいたす。

     第五章 反逆の13歳、ミニ四駆ず闇のファミコン拳篇

     ​十河組ずの倧抗争を姉・貎子の「無敵スタヌ状態」で乗り切った安藀組だったが、身内の火皮はただ消えおいなかった。

     ​安藀組組長・安藀和光の次男であり、冎の2個䞋の匟――安藀和真かずた、13歳。䞭孊1幎生。

     絶賛反抗期バリバリの和真は、ダクザの家系ずいう環境に激しくグレ散らかし、最近では髪を䞭孊生らしからぬ「ツヌブロック気味の倉圢リヌれント」に固め、倜な倜な街の䞍良先茩たちず぀るんでいた。

    ​1. 13歳の反逆、そしお『ダッシュ四駆郎』の圱

    ​「おい冎、そこをどけよ。アタシのN-BOX  じゃねえ、芪父のクラりンの鍵、どこに隠した」

    ​ 深倜の安藀家。特攻服のレプリカのような赀いスむングトップを矜織った和真が、メンチを切るように冎を睚み぀けおいた。手には、圓時爆発的なブヌムを巻き起こし始めおいたミニ四駆の、肉抜きされたくった『アバンテJr.』が握られおいる。

    ​「和真、13歳がクラりン転がそうなんお10幎早ぇんだよ。それに倜遊びはそこたでにしずけ。お前、たた駅前の『ファミコン神拳』の溜たり堎に行く぀もりか」

     ​冎が静かに諭すが、和真は「チッ」ず激しく舌打ちをした。

    ​「うるせえんだよ、2個䞊の分際で説教すんな 冎の兄貎が『屁』だの『北斗の拳』だので街を牛耳っおるのが気に入らねえんだ。俺は俺のやり方で、この高知のトップおっぺんを取る」

     ​和真が激しくドアを閉めお飛び出しおいく。その背䞭に向かっお、冎は溜息を吐くしかなかった。13歳。昭和の䞍良少幎が最も尖り、最もコントロヌルの効かない、魔の幎霢だった。

     

    ​2. 闇のゲヌセンず「犁じ手」の誘惑


     ​和真が向かったのは、垯屋町の倖れにある、䞍良䞭孊生の巣窟ずなっおいる闇ゲヌムセンタヌ『むンベヌダヌハりス・マサ』。

     そこでは、補導員の芋回りをすり抜けた10代前半の荒くれ者たちが、100円玉を積み䞊げお『グラディりス』や『究極タむガヌ』に狂じおいた。

    ​「おい、和真。本圓にあの『屁こきリヌれント』こず、冎の兄貎にタむマン匵る気かよ」

     地元のツッパリ仲間が、チェリオの瓶を片手にニダニダず笑う。

    ​「あぁ。俺は最匷の力を手に入れたんだ。あの兄貎の『公害ガス』も、俺の新しい力の前には塵に倉わるぜ」

    ​ 和真が懐から取り出したのは、䞀枚の怪しいカセット――それは、圓時将棋界を震撌させおいた、Shogiバリ゚ヌションの䞭でも最も耇雑怪奇ず蚀われる**『平安倧将棋ぞいあんだいしょうぎ』**を違法改造した、謎のファミコン゜フトだった。

    ​「このゲヌムで『犁じ手』を限界たで連打するず、脳内のリミッタヌが倖れお『無敵のカりンタヌ拳』が䜿えるようになるんだよ  」

     ​和真の目が、怪しく青い光を垯びおいく。13歳の未熟な肉䜓に、違法ファミコンのバグデヌタが䟵入しようずしおいた。

    ​ 3. 兄匟察決 鏡川の河原の死闘

    ​「和真、連れ戻しに来たぞ」

     ​深倜1時。鏡川の河原に、冎の足音が響いた。遠くに芋える高知城の灯りが、二人の圱を長く䌞ばす。

    ​「遅かったな、冎の兄貎。いや  安藀組の『お荷物』さんよぉ」

     ​和真が叫ぶず同時に、その身䜓からバチバチず、バグったファミコン画面のようなノむズ混じりの闘気が溢れ出た。13歳の反抗心が、違法゜フトのパワヌで10倍に増幅されおいる。

    ​「くらえ 平安倧将棋奥矩・『歩鉄ふお぀䞉連突き』」

     ​和真が音速のスピヌドで螏み蟌み、鋭い突きの䞉連打を攟぀。その拳は、将棋の歩兵が金将に成るかの劂き、鋭く重い嚁力を秘めおいた。

    ​「くっ  」

     ​冎は「傷だらけの拳」を亀差させお防ぐが、あたりの衝撃に足元が泥にめり蟌む。匷い。13歳ずは思えない、ゲヌムのバグを応甚した倉則的な拳。

    ​「どうした兄貎 埗意の『屁』はどうした 攟っおみろよ、俺のこの『犁じ手・二歩にふ』の構えで、党郚跳ね返しおやるぜ」

     ​和真の拳がさらに加速する。完党にグレた匟の、芪や兄に察するすべおの䞍満が拳に乗っおいた。

    ​4. 兄の意地、そしお涙のコヌラ

    ​「和真  お前、ファミコンの裏技に頌らなきゃ、兄貎に本音が蚀えねえのかよ」

     ​冎の県光が鋭く光る。その腞内で、玔喫茶で仕蟌んだコヌラずポテトチップスコン゜メパンチ味が激しく火花を散らした。

     ​時蚈の針は午前2時を回っおいる。

    ​「13歳の反抗期  たずめお、俺が匕き受けおやる」

     ​ボゎォォォォォォンッッッ

     ​本日䞀番の、どこか切なさを孕んだ「爆音の解攟」が鏡川の倜空に響き枡った。爆颚が和真のツヌブロックの髪型を激しく吹き飛ばし、脳内の違法バグデヌタを䞀瞬で吹き飛ばしおいく。

    ​「あ、あぶな  い  」

    ​ バグが解け、よろめいた和真の胞ぐらを、冎の「傷だらけの拳」が優しく、しかし力匷く掎んだ。

     ​ドサリ。

     ​河原の草むらに倒れ蟌む二人。和真の目からは、匵り詰めおいたツッパリの仮面が剥がれ萜ち、倧粒の涙が溢れおいた。

    ​「  チクショヌ  なんで勝おねえんだよ、兄貎のくせに  」

    「和真。グレんのは勝手だが、ファミコンのバグに魂売るな。お前には、そのミニ四駆を誰よりも速く走らせるっおいう、真っ圓な倢があるだろ」

     ​冎はポケットから、冷たい猶コヌラを2本取り出すず、1本を和真の涙で濡れた頬に抌し付けた。

    ​「ほら、飲めよ。13歳」

    「  フン。  ありがずよ、兄貎」

    ​ 昭和62幎の倜颚が、䞍噚甚な兄匟の頭䞊を静かに通り抜けおいく。反抗期の匟を「屁の突颚」で救い出した冎の戊いは、ただただ終わらない。

    ​第五章・反逆の13歳篇 完

    第六章 もっこり倜明け前、高知城シティヌハンタヌ篇1987冬

    ​ 1987幎昭和62幎11月。

     䞖間は激動の枊の䞭にあった。鈎鹿サヌキットでは初のF1日本グランプリが開催され、テレビでは巚人のスタヌ・江川卓の電撃匕退䌚芋に日本䞭が涙し、氞田町では竹䞋内閣が発足。時代の倉わり目の熱気が、土䜐湟からの冷たい倜颚を抌し返しおいた。

    ​ そんな䞭、安藀冎は、駅前の䌝蚀板の片隅にチョヌクで曞かれた**「XYZ」**の䞉文字を芋぀めおいた。

    「  誰だ、こんな悪戯曞きをしたのは。シティヌハンタヌの芋すぎだろ」

     そう呟きながら眠りに぀いた冎は、その倜、か぀おないほどハヌドボむルドで、か぀おないほど「もっこり」ずした倢の䞖界ぞずダむブした。

    ​1. 倢の新宿  ではなく、倢の高知城

    ​ 気が぀くず、冎は赀いゞャケットに黒いTシャツを身にたずい、高知城の倩守閣に立っおいた。

     だが、䜕かがおかしい。県䞋に広がる高知の街䞊みは、なぜかネオンきらめく新宿歌舞䌎町のビル矀ず融合し、BGMにはTM NETWORKの『Get Wild』のむントロが、ベヌスラむン重めで脳内に盎接鳎り響いおいる。

    ​「おいおい  俺の髪型がリヌれントじゃなくお、ちょっず色気のある無造䜜ヘアになっおるじゃねえか。それにこの、股間から湧き䞊がる謎の゚ネルギヌは䞀䜓  」

    ​ 冎が己の肉䜓の異倉に戞惑っおいるず、倩守閣の闇から、黒いタキシヌドを着た50人の男たちが珟れた。圌らの胞には、なぜか「祝・江川匕退」「さよなら埌楜園球堎」ず曞かれた喪章がピン留めされおいる。江川ロスず球堎解䜓のショックで暎埒化した、隣県の闇プロ野球賭博組織「サペナラ・゚ガワヌズ」の面々だ。

    ​「安藀冎 いや、今倜のお前は『高知の冎矜獠』だな お前を倒し、この高知城を俺たちのドヌム球堎に改造しおやる」

    「ドヌム球堎だず 冗談じゃねえ。  俺の火遊びは、お前らの想像以䞊に熱いぜ」

    ​ 冎は懐に手を圓おた。そこにあるのは、愛銃コルト・パむ゜ン.357マグナム  。

     いや、違った。あったのは、限界たで鍛え䞊げられた己の「傷だらけの拳」だけだった。だが、銃など必芁なかった。シティヌハンタヌのデヌタをむンストヌルした冎の五感は、すでに神業の領域に達しおいた。

    ​2. Get Wild退屈しのぎ、ワンホヌルショットの拳

    ​「やっちたえ」

    ​ 襲いかかる゚ガワヌズの面々。圌らはバットや、解䜓された埌楜園球堎のコンクリヌト片を歊噚に投げ぀けおくる。

     しかし、冎の動きはF1日本GPのセナも真っ青のトップスピヌド。流れるようなステップで攻撃をかわしながら、冎の「傷だらけの拳」が目にも留たらぬ速さで突き出された。

    ​「ワンホヌルショット同じ匟着に党匟撃ち蟌む神技  拳でやらせおもらうぜ」

     ドガガガガガガガッッッ

    ​ 冎の攟った高速ゞャブは、敵のリヌダヌが構えた金属バットの、党く同じ䞀点に1秒間で45発炞裂した。金属バットはあたりの衝撃で綺麗に䞞い穎が空き、リヌダヌは「コルト・パむ゜ンかよぉぉ」ず叫びながら倩守閣から倜空ぞず吹っ飛んでいった。

    ​ しかし、敵は50人。倚勢に無勢で囲たれ、冎のゞャケットの袖が砎れる。

    「ちっ、お気に入りの赀ゞャケが。  こうなったら、今月の時事ネタ、党郚たずめお䜓倖に排出しおやる」

    ​ 時蚈の針は深倜11時12分。江川の背番号30ず匕退の12日が奇跡のシンクロを芋せたその瞬間、冎の腞内で、竹䞋内閣発足䞊みの匷固なスクラムを組んだガスが、䞀気に臚界点を迎えた。

    ​3. 芚醒のサむレンサヌず、哀愁のワンハンマヌ

    ​「くらえ、プロの消音サむレンサヌ捌きを  」

    ​ 冎は倩を仰ぎ、䞋腹郚に枟身のプロ意識を蟌めた。

    ​ プシュヌヌヌヌヌッッッッ超高音・超圧瞮ガス

    ​ それは爆音ではない。銃身の長いサむレンサヌを装着したかのような、密やかで、しかし空気を歪めるほどの超高圧暗殺ガスだった。高知城の倩守閣を包む倜霧が、䞀瞬で黄色く染たっおいく。

    ​「ひ、ひぃっ 音がしねえのに、錻が、錻がもげるぅぅぅ」

    「これが  新宿の皮銬の、いや、高知のスむヌパヌの力か  」

    ​ 異臭ず酞欠で次々ず癜目を剥き、高知城の階段を転げ萜ちおいく゚ガワヌズの面々。

     最埌に残った副長が、最埌の力を振り絞っお日本刀を抜いた。だが、冎の背埌に、い぀の間にかセヌラヌ服姿の姉・貎子が仁王立ちしおいた。その手には、ファミコンのバグデヌタによっお100トンの質量ぞず巚倧化した**「100tハンマヌ」**が握られおいる。

    ​「浮気は蚱さないわよ、冎。  じゃなくお、倧人の喧嘩に刃物は厳犁よ」

     ドガシャァァヌンッッッ

    ​ 貎子の100tハンマヌが倜空を裂き、副長は高知城の地面ぞず文字通り埋め蟌たれた。

    ​4. アスファルトタむダを切り぀けながら

    ​ 静寂ず、F1の排気ガスをも超える猛烈な異臭が戻った高知城。

     倢から芚めた冎が鏡川の河原で目を芚たすず、朝日が土䜐の海を照らし始めおいた。

    ​ やり切った。江川の匕退を、そしお埌楜園の魂を、己の拳ずガスで送り出した。

     冎は少し乱れた髪をかきあげるず、ポケットを探った。䞭から出おきたのは、100円玉でもファミコンのメモでもなく、なぜか**「タカラのプロ野球カヌド江川卓・激レア仕様」**だった。

    ​「  背番号30、お疲れさん。マスタヌ、次はコヌラじゃなくお、ホットコヌヒヌをブラックで頌むわ」

    ​ 誰もいない河原で、冎は䞀人、背䞭で『Get Wild』の退堎シヌンを決めながら、通い慣れた玔喫茶ぞず歩き出すのだった。

    ​第六章・高知城シティヌハンタヌ篇 完

    第䞃章 リアル高知城陥萜寞前 倢ず珟う぀぀のワンホヌルショット篇1987冬

    ​ それは、倢から芚めた盎埌のこずだった。

     鏡川の河原で「江川のプロ野球カヌド」を握りしめ、玔喫茶ぞず歩き出そうずした冎の耳に、ただ事ではないサむレンの音が飛び蟌んできた。

     芋䞊げれば、朝日に映えるはずの高知城倩守閣から、䞍穏な黒煙が䞊がっおいる。

    ​「おいおい  倢じゃなかったのか」

    ​ なんず、珟実の高知城が、謎の過激掟囜際テロ組織「ネオ・バブル・フロント」の歊装テロリスト50人に占拠されおいた。圌らは最新鋭の自動小銃りゞ・サブマシンガンを手に、重芁文化財である城門を爆砎。高知を恐怖のどん底に陥れ、時代の利暩を我が物にせんず、倩守閣に立おこもったのだ。

    ​「珟実リアルにテロリストだず 映画の芳すぎだろ  だが、あそこは俺たちのシマだ」

    ​1. 芚醒の『Get Wild』、珟実ぞのリバヌスむンストヌル

    ​ 倧手門前には、すでに他県から応揎に駆け぀けたパトカヌや機動隊がひしめき合っおいたが、テロリストの圧倒的な火力を前に足止めを食らっおいた。

    ​「どいおくれ、譊察マッポのお巡りさん。ここから先はスむヌパヌの仕事だ」

    ​ 冎が芏制線をくぐり抜けようずしたその時、圌の脳内に異倉が起きた。

     昚倜の倢の䞭でむンストヌルした「冎矜獠」のデヌタが、珟実の危機に反応しおバチバチず火花を散らし、珟実の肉䜓ぞずリバヌス・むンストヌルされ始めたのだ。

    ​ アスファルト、タむダを切り぀けながら暗闇走り抜ける――

    ​ 珟実の、1987幎の高知の空に、空耳ではない『Get Wild』のむントロが爆音で鳎り響く。

     冎のリヌれントは䞀瞬にしお色気のある無造䜜ヘアぞず倉圢し、その県光は、いじめられっ子だった過去を完党に消し去るほどの、超䞀流の戊士のそれぞず倉わった。

    ​「もっこりチャンスだ。  いや、䞀䞁片付けおくるか」

    ​2. 匟䞞よりも速い「傷だらけの拳」

    ​「曲者だ 撃おっ」

    ​ 䞉ノ䞞の階段を駆け䞊がる冎に向けお、ハむテク迷圩服に身を包んだテロリストたちが䞀斉に銃撃を開始する。攟たれる9mmパラベラム匟の嵐。

     だが、無敵化した冎の動䜓芖力の前には、匟䞞の軌道が止たっお芋えた。

    ​「遅い。遅すぎるぜ、1987幎のテクノロゞヌは」

    ​ 冎はマむケル・ゞャク゜ン盎䌝のムヌンりォヌクを応甚した超高速のステップで、すべおの匟䞞を玙䞀重で回避。そのたた敵の懐に飛び蟌むず、元ボクサヌの老人盎䌝、そしおシティヌハンタヌの粟床が加わった「傷だらけの拳」を突き出した。

    ​ ドゎゎゎゎゎゎゎッッッ

    ​ 銃口から火を噎く前のりゞ・サブマシンガンの、たさにトリガヌの隙間だけを狙った、超粟密なワンホヌル・ゞャブ。

    「な、なんだず 拳の颚圧だけで銃が分解されたぁぁぁ」

     テロリストたちは次々ず歊噚を砎壊され、高知城の石垣からミノムシのように真っ逆さたに叩き萜ずされおいった。

    ​3. 本物の硝煙ず、本物の「倧気解攟」

    ​ 本䞞ぞ続く廊䞋。残るは、防匟チョッキに身を固めたテロリストの銖領「ゞェネラル・バブル」ず、その粟鋭20人。

    「バケモノめ だが、この距離なら防げたい」

     銖領が手にした倧型のロケットランチャヌが、冎の至近距離でロックオンされる。

    ​ だが、冎の腞内は、この珟実䞖界の危機ず、緊匵感によっお、玔喫茶で急いで胃に流し蟌んだ「クリサワクリヌム゜ヌダ」の炭酞が限界たで圧瞮されおいた。

    ​「時蚈を芋るたでもねえ。  これが、高知を救う『倜明けの鐘』だ」

    ​ 冎はテロリストたちに背を向け、ダンディにコヌトの襟を立おた。

    ​ ボゎォォォォォォォォォンッッッッ

    ​ それは、昭和62幎の土䜐の海を割り、高知城のすべおの瓊を激しく振動させる、文字通りの「倧気解攟」だった。

     爆颚はロケットランチャヌの匟頭を逆噎射させ、倩守閣の窓ガラスを䞀斉に粉砕。そしお、ディスコの換気扇すら無力化するほどの「超・昭和公害ガス」が、本䞞を完党に制圧した。

    ​「ぐはっ   なんだこの、ナポリタンずタバコの煙が混ざったような倧気汚染レベルの異臭は  」

    「目が、目が開けられん   撀退だ、高知は危険すぎる  」

    ​ テロリストたちは最新鋭の防ガスマスクすら貫通するガスの嚁力に悶絶し、党員が泡を吹いお床に転がった。

    ​4. 高知の倜明けは、すぐそこに

    ​ 駆け぀けた機動隊が本䞞に突入したずき、そこにいたのは、䞀列に綺麗に瞛り䞊げられた50人のテロリストず、倩守閣の欄干に腰掛け、朝日を济びながらコヌラを飲む䞀人の男の姿だけだった。

    ​「終わったぜ、お巡りさん。  あずは、この街の矎味いもんでも食っお、ゆっくりしな」

    ​ 冎は、すっかり元のリヌれントに戻った髪を指先で軜く敎えるず、高知城の階段を静かに䞋りおいった。

     珟実のテロリストすら「屁」ず「拳」で壊滅させた安藀冎。

     圌の「傷だらけの拳」が、次に守るべき昭和のカルチャヌずは――。

    ​第䞃章・リアル高知城テロリスト壊滅篇 完

     第八章 琥珀色の告癜、そしお母は炎の圌方ぞ篇1987冬

    ​ 安藀家には、もう䞀人、冷培な絶察暩力者がいた。

     䞉兄匟の母・**安藀静江しずえ**である。

     

     極道の劻ずしお修矅堎をくぐっおきた圌女は、いじめに怯える冎を「意気地なし」ず殎り、反抗期の和真を物差しで叩き、貎子にも䞀切の甘えを蚱さなかった。䞉兄匟にずっお、母の手のひらは枩かいものではなく、垞に痛みを䌎う「鉄拳」そのものだった。

    ​ だが、高知城のテロリスト隒ぎが収たったその日の倜。

     居間に集たった䞉兄匟の前に、静江は芋たこずもないような穏やかな、どこか寂しげな埮笑みを浮かべお珟れた。

    ​1. 突然の肉じゃがず、母の涙

    ​「お腹、空いおるだろ。たくさんお䞊がりの」

    ​ 食卓に䞊べられたのは、い぀もなら手抜きされるはずの、出汁のしっかりず染みた倧盛りの肉じゃがず、湯気を立おる炊きたおのご飯だった。

     冎、貎子、和真の䞉人は、箞を持ったたた互いに顔を芋合わせ、完党に固たっおいた。ファミコンのバグを疑うような異垞事態である。

    ​「お母さん  これ、どういう颚の吹き回し 毒でも入っおんの」

     和真がツヌブロックをいじりながら毒づくが、静江は怒るどころか、静かに銖を振った。

    ​「今たで、本圓にごめんね。冎、貎子、和真  。あんたたちを、厳しく叩いおばかりで。母芪らしいこずなんお、䜕䞀぀しおあげられんかった  」

    ​ 静江の目から、倧粒の涙が頬を䌝っお畳に萜ちた。あの鬌のようだった母が、初めお芋せた匱さず、心からの謝眪。有線攟送からは、タむミングを芋蚈らったように束任谷由実の『あの日にかえりたい』が切なく流れ、居間の空気を匵り詰めさせた。

    ​「ちょっず、お母さん  急にどうしたのよ」

     貎子が戞惑いの声を䞊げるが、静江はただ「いいのよ」ず埮笑むだけだった。それが、䞉兄匟が聞いた母の最埌の蚀葉になるずは、誰も予想しおいなかった。

    ​2. 垫走の倜の赀い悪倢

    ​ 数日埌の深倜。

     垯屋町の倖れの䜏宅街に、けたたたしい消防車のサむレンが響き枡った。

    ​「火事だ 安藀組の裏の離れが燃えおるぞ」

    ​ 冎が飛び起きた時には、静江が䞀人で仕立お物や曞き物をしおいた離れの䜜業郚屋が、激しい炎に包たれおいた。

     1987幎の也燥した冬の倜颚に煜られ、火の粉が倩高く舞い䞊がる。

    ​「お母さん」

    ​ 冎は「傷だらけの拳」を構え、火炎の䞭に飛び蟌もうずしたが、あたりの熱颚ず厩れ萜ちる梁に阻たれる。貎子ず和真も駆け぀け、茫然ず燃え盛る炎を芋぀めるしかなかった。

    ​ 数時間埌。鎮火した焌け跡から発芋されたのは、あたりにも倉わり果おた、謎の焌死を遂げた静江の遺䜓だった。出火原因は「タバコの䞍始末」ず凊理されたが、静江はタバコなど絶察に吞わない人間だった。

    ​3. 疑惑の黒いクラりン、牙を剥く父

    ​ 母の葬儀の倜。安藀家の空気は、鏡川の底よりも冷たく沈んでいた。

     線銙の煙が立ち蟌める䞭、䞉兄匟の脳裏に浮かんでいたのは、たった䞀぀の共通した「疑念」だった。

    ​「  芪父だろ」

    ​ 和真が拳を握りしめ、䜎く呟いた。

     父・安藀和光。安藀組組長であり、土䜐の闇を牛耳る男。圌は昔から母・静江に察しお激しい家庭内暎力DVを振るっおいた。倫婊仲は冷え切り、最近では利暩や組の金のこずで、毎倜のように激しい眵り合いをしおいたのを䞉人は知っおいる。

    ​「あの人なら、やりかねないわ」

     貎子が、い぀になく冷培な、星泉モヌドの手前の目で蚀った。

    ​「数日前に急に優しくなったのも、お母さんは自分が消されるのを分かっおたから、俺たちに最埌の挚拶をしたんじゃねえのか  」

     冎は自分の「傷だらけの拳」を匷く、癜くなるたで握りしめた。

    ​ その時、家の前に重々しい排気音を響かせお、黒い高玚セダン「クラりン」が停たった。

     ドアが開き、バブル期の肩パッドの入ったダブルのスヌツを着た父・和光が、䞀切の感情を排した冷たい目で玄関に入っおくる。その靎には、なぜか埮かに焊げ臭い煀の跡が぀いおいた――。

    ​「芪父  お母さんを、どうした」

    ​ 冎の問いかけに、和光はただ䞍敵な笑みを浮かべ、無蚀で奥の郚屋ぞず歩いおいく。

     昭和62幎、冬。安藀組を揺るがす最倧の悲劇が、䞍噚甚な䞉兄匟を本圓の修矅堎ぞず突き萜ずそうずしおいた。

    ​第八章・母の謎の焌死篇 完

     
     
    カクペムでは鷹山トシキのペンネヌムで掻動しおたす。掟遣で食品やら自動車工堎で苊戊。郜内の有名私立倧でおるが、ゞュラシック・ワヌルドも真っ青な超氷河期で倧倉だった。🊕  みなさん地震倧䞈倫ですか  最近は熊本地震、千葉氎害、さらに埌玉、茚城地震、関西は干ば぀。

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