
ルビーの涙
私は初めて献血を受けた。
人を救うためのものだ。
けれど正直に言えば、
私の目的は
無料のアイスだった。
水をたくさん飲みなさいと
医者に言われた。
渡されたペットボトルは二本。
私の胃の中は
いつの間にか滝になった。
ザーザーと流れる音。
もしかしたら
胃の奥で僧侶が一人、
滝行をしているのかもしれない。
私は自分の血液型を知らなかった。
もしAB型だったら。
少し特別で、
少し珍しくて、
宝くじが当たったような気分になれたかもしれない。
けれど結果はB型だった。
家族と同じ。
その瞬間、
どこかで宝くじの紙が
静かに破れる音がした。
左腕に針が刺さる。
小さな痛み。
けれど私は、
槍が腕を貫いたような気がした。
流れていく血を見る。
黒くない。
濁ってもいない。
燃えるような赤。
まるでルビーだった。
少しずつ、
少しずつ。
吸い上げられていく赤い雫。
私は思った。
これは
ルビーの涙だ。
私の血は
これから誰かを救う。
その人が誰なのか、
私は知らない。
けれど願う。
私のルビーの涙が
誰かの明日につながりますように。
そしていつか、
甘いアイスを食べて
笑える日がありますように。